台湾発の、緘黙の専門書が出版される

更新日:2019年12月07日(投稿日:2019年12月07日)
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台湾の臨床心理士による、場面緘黙症の本が出版されました。台湾発の緘黙の専門書の出版は、初めてではないかと思います(専門書は、翻訳書しかありませんでした)。

私はこの本の内容を読んではいないのですが、書籍サイト等の情報をもとに、分かる範囲で取り上げてみたいと思います。

↓ 情報源です。
◇ 著者のFacebookページ
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本の基本情報


著者:王意中
書名:選擇性緘默症: 不說話的孩子
出版社:寶瓶文化
発売日:2019年12月5日
ページ数:256ページ

著者の王意中氏は、子どもの障害や、問題行動(と言えばいいのかな?)に関する本を多数著しています。


本の概要


保護者や、教師、臨床家、そのほか緘黙に関わる様々な人を対象とした本です。小さな子どもの緘黙だけでなく、高校生の緘黙までが守備範囲に入っています。


本の印象


この本の章立ては、これまでの緘黙の本では見たことがないかもしれません。といっても、とっぴな構成ではありません。章立てから窺えるのは、保護者、教師、臨床家の三者に対して、具体的な対応方法を示すことに力点が置かれていることです。

緘黙の支援にはこの三者の連携が効果的とも言われますが、今回のような書き方をした本は、実は意外に少ないです。例えば、三者のうち一者のみ(例えば教師とか)を対象に書かれていたりします。

この本は、そういう意味で総合的、網羅的と言えます。半面、中途半端な内容になっていないか心配もあります。ですが、本書は台湾発の始めての緘黙の専門書ですので、こうした内容になるのも、もっともなことだろうと思います。これから台湾でも、さらなる緘黙の本が出版されることを期待します。

それにしても、台湾の言葉だからでしょうか、著者の言葉の選び方の問題でしょうか、第2章の題名「選擇性緘默症的班級經營策略」が面白いです。日本語に訳すと「場面緘黙症のための学級経営戦略」といったところでしょうか。こういう言い方だと、緘黙の児童生徒にどう対応するかというよりも、緘黙の児童生徒がいる場合に学級全体をどうマネジメントしていくかという点に意識が向いているように思われます。


台湾や中国本土の動きが面白い


ところで台湾といえば、台灣選擇性緘默症協會が今年9月、「台北NPO聚落」 (NPO HUB Taipei) というビルに入居しました。これによって、協会の活動拠点ができました。

このビルには、衛生福利部(日本の厚生労働省に相当か)の蘇麗瓊政務次長などが視察しており、注目されていることが窺えます。

◇ 入居決定時の台灣選擇性緘默症協會のFacebook投稿
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◇ NPO HUB Taipei │ 台北NPO聚落 ウェブサイト
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今年4月には、台湾出身のRochelleさんと、日本出身のAyahaさんの共著が出版されましたが、この本は電子書籍で Amazon.co.jpでも買うことができるようになりました。最近は中国本土でも新たな動きがあるようですし、ここのところのこうした動向は興味深いです。







緘黙と感覚処理障害、感覚過敏

更新日:2019年12月01日(投稿日:2019年12月01日)
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感覚処理障害や感覚過敏に重点を置いた、緘黙の解説


アメリカの場面緘黙症研究治療センター「SMartセンター」(Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center)が、緘黙理解のための小冊子をインターネット上で公開しています。URLから見て、2018年4月に公開されたものと思われます。

↓ その小冊子です。PDF。3.72MB。
◇ What is Selective Mutism?
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これを読んで驚いたのが、感覚処理障害や感覚過敏の記述に重点が置かれていることです。表紙や裏表紙を含んだ全28ページのうち、5ページ目と6ページ目が、感覚処理についての記述でした。序盤の、緘黙に関する本当に基本的な事柄の説明をするべき箇所で、2ページにわたってこの問題を取り上げているのです。

その5ページ目の冒頭には、次のように書かれてあります。

場面緘黙症研究所 (SMRI) の研究が示すところによると、場面緘黙症を呈する多くの子どもにはまた感覚過敏があり、感覚処理障害 (SPD) の基準に当てはまります。このように、SPD は緘黙行動の根源的な原因になることがあります。

Research from the Selective Mutism Research Institute (SMRI) indicates many children who present with Selective Mutism also have sensory sensitivities and meet the criteria for Sensory Processing Disorder (SPD). Thus, SPD can be an underlying reason for mute behavior.

場面緘黙症研究所は、SMartセンターと密接な関わりがある民間の研究所です。


その元となる研究を確かめると……


上の記述の真偽を確かめてみましょう。場面緘黙症研究所が関わった研究の概要は、公式サイト上で公開されています。

↓ そのページです。
◇ Research – Selective Mutism Research Institute
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このうち、先ほどの引用箇所で触れられた研究は、例えば次の2件と思われます。

A Large Sample Study of Comorbidities in Childhood Selective Mutism.
What Else is Going On? Selective Mutism Comorbidities.

これらは、緘黙の治療施設にかかった緘黙児の併存症の研究です。前者は2002年~2016年、後者は2002年~2015年までに緘黙の治療センターにかかった緘黙児それぞれ1,311例(!)と1,266例(!)を報告しています。

他にも、以下の研究が挙げられます(一部重複もあり)。

Gender Differences in the Sensory Profiles of Children with Selective Mutism.
Sensory Processing Patterns in Selective Mutism using the Sensory Profile.
Parents’ Perspective: Children with Selective Mutism and Sensory Processing.
Parents’ Perspective: Children with Selective Mutism and Sensory Processing.
Sensory Sensitivities in Children with Selective Mutism: Why Are They Important to Consider?
Sensory Sensitives in Children with Selective Mutism: Are They Different Than the Norm?

これらの研究を見ていると、例えば82%の緘黙児に少なくとも1つの感覚処理の問題があり、例えば音に過敏な緘黙児が35.7% (N=1,257) で、これに対して定型発達児の場合は11.9% (N=1,538) など (Sensory Sensitives in Children with Selective Mutism: Are They Different Than the Norm?)、確かに感覚過敏な緘黙児は多めであることを示す結果が見受けられます。

ただし、感覚処理障害の診断基準に当てはまった緘黙児は8.9%で、緘黙児でない子 (5-16%) と比べてもとりわけ高くないという結果もあります (A Large Sample Study of Comorbidities in Childhood Selective Mutism)。

他にも、緘黙児は全般として、定型発達児と感覚機能のほとんどの分野で似通っているけれども、無視できないほど大きい少数の緘黙児が、いくつかの特定の分野で感覚の問題があったという研究 (Sensory Processing Patterns in Selective Mutism using the Sensory Profile) などもあります。


問題提起の意味もあったのかも


公式サイトで公開されている範囲の研究成果ではありますが、これらを見ると、SMartセンターの小冊子が、この問題についてあそこまで強調したのは妥当だったのかというと、何もあそこまでという気がしないでもありません(専門家でもない私が言うのもなんですが)。

ただ、緘黙と感覚処理障害、感覚過敏については他にあまり研究がないようです。そんな中、先ほど見たように、この分野については場面緘黙症研究所が継続的に研究を行ってきました。こうしたことから、場面緘黙症研究所と関わりの深い SMartセンターが、この問題についてあれだけ重点的に書いたのではないかとも思います。やはり、自分たちが専門的に研究している分野は強調したいものでしょう。もしくは、問題提起の意味もあったのかもしれません。

どちらにしろ、あの小冊子の記述は気になります。



沈黙は金!?-話せるようになって学んだこと

更新日:2019年11月25日(投稿日:2019年11月25日)
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話せるようになったが、会話で失敗を重ねた


私が話せるようになって日が浅い頃、結構べらべらと自由におしゃべりをしていました。ですが、これで何度も失敗してしまいました。

例えば、会話の最中、気まずい沈黙ができてしまうことがあります。それを避けるため、とにかく話題をひねり出そうとするあまり、余計なことを口走ってしまったことが何度もあります。ある時は女性の前で「相撲パンツ」の話をして、嫌がられてしまったことがあります。

※ 相撲パンツは「まわし」の着用に抵抗がある人にも相撲ができるよう考案されたもので、この話題は下ネタでありません。ただ、問題は話の聞き手がどう感じるかです。

また、不適切発言をしたことが何度もあります。言葉の選択を誤り、本意でなく、しかもその場にふさわしくない発言をしてしまいました。「言葉の選び方を間違っただけだ!本当はそんなこと思ってはいないんだ!」と弁明しても、後の祭りです。

さらに、不確かな知識で、あれこれと話してしまうことも時々ありました。その結果、正確性に欠ける情報を広めてしまい、後で後悔してしまうことがありました。ブログを書くのであれば、自分のペースで裏付けをとってから書くこともできますが、日常的なおしゃべりの場ではそうもいきません。


教訓「沈黙は金」


これも、長い間まともに人と口を利けず、人と話す経験をしてこなかったためかもしれません。会話がこんなに難しいものとは思いませんでした。ですが、そうではなく、単に私の頭が悪いから、このような失敗を重ねただけのような気もします。どちらかは、私にも分かりません。

こうした失敗の末、たどり着いた教訓が「沈黙は金」。思えば、学校などで話せなかった頃は、「富条君は頭がいい」と過大評価してもらえたものです。話さない分、ボロが出にくかったのです。

それにしても、せっかく話せるようになったのに、そのたどり着いた先に見えた境地が「沈黙は金」とは……。優秀な方は、こうした失敗を糧に、話術を上達させていくのかもしれません。

私は逆に、おしゃべりは慎重にするようになりました。現在の私は少し口が重いです。また、あまり詳しくない知識や情報を語る必要に迫られた時は、「知らんけど」(関西人?)のような結び言葉を付け加えるという対策をすることもあります。


緘黙は治すべきだが、話せるようになれば「めでたし」とは限らない


緘黙がある人は話せるようになった方がよいと思います。

ただ、話せるようになれば「めでたし」とは限りません。もっとも、こういう失敗をする人が私の他にどれだけいるか分かりませんが……。