NHK『バリバラ』が9月9日に、緘黙当事者の一人旅を放送

更新日:2018年08月14日(投稿日:2018年08月13日)
アイキャッチ画像。
NHK Eテレの番組『バリバラ』で、緘黙当事者の一人旅の放送が予定されています。

「場面緘黙(かんもく)・加藤くんの大阪ひとり旅」
本放送:9月9日(日曜日)19時00分~19時30分
再放送:9月14日(金曜日)0時00分~0時30分(木曜深夜) ←通常ならこの日時にあるはず

↓ 情報源。番組ホームページへのリンクです。
◇ NHK バリバラ | 放送予定
新しいウィンドウで開く

『バリバラ』は「バリアフリーバラエティー」の略で、障害者のための情報バラエティーとして2012年にスタートした番組です。2016年4月からは、障害のある人に限らず「生きづらさを抱えるすべてのマイノリティー」の人たちにとっての“バリア“をなくすために考えている番組となっているそうです。

『バリバラ』は、過去にも緘黙を大きく扱っています。

2017年10月15日「知られざる場面緘黙(かんもく)の世界」
2018年1月21日「どきどきコテージ」前編~ぎこちない出会いの巻~
2018年1月28日「どきどきコテージ」後編~本当は伝えたいの巻~

※ 日付はいずれも、本放送日。

このうち「どきどきコテージ」は「吃音や場面緘黙でコミュニケーションが苦手な男女8人が集う『どきどきコテージ』」での交流が描かれたらしく、緘黙のみが主題ではなかったようです。

実は今年7月初旬に、加藤さんは大阪一人旅をされていて、その模様をTwitterで書かれていました。その時のことを放送するものとみられます。

↓ すみれさんのTwitter投稿へのリンクです。Twitterに登録していない方でもご覧になれます。
◇ 「バリバラの場面緘黙回(昨年10月放送)に出演されていた、緘黙当事者の方が、今、一人旅をしているようです!……」
新しいウィンドウで開く

過去『バリバラ』が緘黙を取り上げた際には好意的な感想も多かったです。その一方、番組に出演された方の一人が、収録後に公然と番組批判を展開し、反響を呼ぶ一幕もありました。

↓ その批判。「マイル日記」へのリンク。
◇ バリバラ「どきどきコテージ」の問題点
新しいウィンドウで開く

関連リンク


↓ 「Googleカレンダー」で作成。今回のテレビ放送も記しておきました。場面緘黙症Journalトップページからでもご覧になれます。
◇ 緘黙関連の予定bySMJ
新しいウィンドウで開く

「緘黙を知って」最初に言い出したのは誰か

更新日:2018年08月08日(投稿日:2018年08月08日)
アイキャッチ画像。
「場面緘黙症を知って欲しい」

啓発活動と言えばよいのでしょうか、緘黙児者や経験、保護者などがこう訴えているのを目にするのは、今日珍しくありません。

啓発イラストを描いて Twitter に投稿したり、文房具店の試し書きコーナーで「場面緘黙」と書いたりと、その方法も多彩です。中には、講演を行ったり、緘黙の歌を作って、ライブやラジオ番組で理解を訴えたりする人もいます。

こうした声に応えてか、小説家や漫画家、メディア関係者が緘黙を取り上げ、理解を広めようとしてくださった例もあります。

ですが、日本で最初に「緘黙を知って欲しい」と訴え出したり、具体的な取り組みを始めたりした人はいったい誰なのでしょうか。調べてみることにしました。

方法


緘黙児者や経験者、保護者らによる情報発信の歴史を遡ると、今日に繋がる動きは、2000年頃に緘黙を扱った個人ホームページが誕生したことにその起源を求めることができます。そこで、2000年頃以降のインターネット上の情報を中心に、緘黙の認知と理解の拡大を訴える動きの源流を探ってみることにしました。

昔のホームページのほとんどは閉鎖してしまい、現在は閲覧ができません。ですが、Wayback Machine を使えば、一部ではありますが、主要な過去のページはある程度見ることができます。


結果


「ほほえむ」


私が確認できた範囲で最も古かったのは、緘黙を経験したぴろりさんという方による個人ホームページ「ほほえむ」の開設でした(2000年10月23日開設)。「ほほえむ」では、2002年8月10日から9月27日の間の更新により、トップページに次の一文が加えられています。

「ほほえむ」は選択性緘黙、斜視、管理人の趣味などで構成されているサイトです。なかでもとりわけ人前で話せない選択性緘黙についての理解を広めるために存在します。
https://web.archive.org/web/20020929085729/http://www.hohoemu.com/

※ 既に閉鎖したホームページへのURLをご紹介するのは、もしかしたら当時の管理人さんにご迷惑かもしれません。ですが、情報の出所を明示したかったので、このようなかたちにしました。

この記述は、2003年1月30日から2003年3月20日までの間に、次のように更新されています。

「ほほえむ」は選択性緘黙(かんもく)の理解を広めるため、斜視の人を勇気づけるため作られました。
https://web.archive.org/web/20030320015650/http://www.hohoemu.com/

また、「ほほえむ」で緘黙を扱ったページの冒頭には、次のように書かれていました。理解を広める対象は、緘黙の当事者ではない一般の人と解釈できます。

これを期に皆さんが緘黙児について少しでも興味を持ち、第三者には非常に誤解されやすい彼等のことを、少しでも理解していただけたなら幸いです。
https://web.archive.org/web/20021210035415/http://www.hohoemu.com/selective_mutism/index.html

これが調べて分かった結果です。ついでに、緘黙への認知や理解を広めるその後の動きを、もう少し見てみることにします。


2002年


緘黙を経験したさくらかよさんという方が、『君の隣に―緘黙という贈り物』という本を出されています。現在は絶版で、私はこの本を持ち合わせていないのですが、「BOOK」データベースによると、次のような内容だそうです。

幼少期から緘黙と共に歩んできた著者が、緘黙症を広く世に知らしめたいと自らの体験を赤裸々に綴る。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4835547470/(孫引きです)

「ほほえむ」によると、この本は2002年11月15日発行とのことですが、構想や執筆は当然、それよりも前のことでしょう。


2003年頃


smiling_mamaさんと言う方が「smile_room」というホームページを開設されています。トップページには次の一文がありました。

☆場面緘黙児の母親のサイトです
その知名度UPと少しでも理解して戴けたらと思って
このHPを作ってみました
https://web.archive.org/web/20040218232230/http://plaza.rakuten.co.jp/smiling1126/

2004年


小学校教諭、井上賞子さんによる啓発作品「心の声が聞こえますか?」Web版が「ほほえむ」に公開されました。
https://web.archive.org/web/20050109075754/http://hohoemu.littlestar.jp/modules/news/article.php?storyid=4

「Web版」ということは、Web版でないものがそれ以前に存在した可能性が窺えます。ですが、これについては現在のところ私には分かりません。

現在はかんもくネットによって、かんもくネットホームページ上やYouTubeで公開されています。

↓ 一番下に「心の声が聞こえますか?」があります。PDFファイル。
◇ かんもくネット~啓発資料~
新しいウィンドウで開く

↓ YouTube版です。


考察


確認できた限りでは、2000年10月23日に「ほほえむ」が開設されたのが最初です。緘黙児者、経験者、保護者らによる日本初のホームページの開設は、2000年4月10日(「ココロのひろば」)が有力ではないかと思います。とすると、ネット上ではかなり早い段階から緘黙への認知や理解を広めようという動きがあったと言えます。

初期の緘黙のホームページは、メンタル系サイトの一種のようなものでした。メンタル系サイトは、同じ問題を抱える人が交流を深める目的で作られた、いわば内向きのものが多かったです。「心の病気にご理解のない方、荒らし目的の方の入室をお断りします」という断り書きがあるサイトもありました。そんな中、緘黙の理解を広めるため作ったという「ほほえむ」の外向きの意識は興味深いです。

さくらかよさんは、2002年、緘黙を広く世に知らしめるために本の出版までされています。出版社の文芸社は自費出版で有名な会社だったかと思います(ただし、文芸社だから自費出版と判断できるかはちょっと分かりません)。なお、この本は宮城県の新聞『河北新報』で紹介されています(2003年3月24日朝刊)。

さくらかよさん、smiling_mamaさん、井上賞子さんも、ともに「ほほえむ」との関わりがあった方です。もしかすると、「ほほえむ」が当時、緘黙の認知や理解を広める運動の拠点としての役割を果たしていたのかもしれません。ですが、そうではなくて、当時は緘黙のサイトが少なかったので、単に緘黙の世界が狭かったのかもしれません。

こうしたインターネットを中心とした動きはその後も続き、20年近く経った現在に繋がっています。活動は次第に拡大し、今日ではメディアで緘黙が大きく取り上げられるなどしています。一方、緘黙の認知や理解が十分に広まったという話はいまだに聞きません。

今回の調査対象は2000年代以降でしたが、90年代以前に、緘黙の認知や理解を世に広めようとした方がいらっしゃったかどうかについては、よく調べてみないと分かりません。ですが、ざっと思いつく限りでは、ちょっと心当たりが浮かびません。仮にあったとしても、今日の啓発活動との連続性は、今のところ確認できません。

※ 毎年8月には、緘黙サイトの歴史をお話しすることにしています。緘黙についての動きをおよそ15年にわたって見てきた者として、昔のことを伝えたいです。

世界6カ国から参加者が集った緘黙キャンプCommuniCamp

更新日:2018年08月02日(投稿日:2018年08月02日)
アイキャッチ画像。

先日まで開催されていた


アメリカにはSMartセンターという、場面緘黙症の治療センターがあります。中心人物のエリザ・シポンブラム博士は、緘黙治療で20年以上の実績があるそうです。SMartセンターの資料はかんもくネットに昔から公開されており、ご存知の方もいらっしゃるだろうと思います。

◇ かんもくネット~Knet資料~
新しいウィンドウで開く

そのSMartセンターがこの間から繰り返し宣伝していたのが、CommuniCamp™ というキャンプです。これは、緘黙がある3歳から15歳までの子どもを対象とした、グループ形式の集中治療プログラムです。主催はSMartセンターで、おそらく2017年から始まったものではないかと思います。

直近のキャンプは、7月27日から29日にかけて行なわれました。参加者は、アメリカ、カナダ、フランス、オーストラリア、オランダ、スイスの6つの国と、21のアメリカの州から集まったのだそうです。今年の CommuniCamp™は、8月と10月にも予定されています。

↓ CommuniCamp™ について。SMartセンターホームページへのリンクです。
◇ CommuniCamp
新しいウィンドウで開く

↓ CommuniCamp™の Facebookページ。Facebookに登録されていない方でもご覧になれます。
◇ CommuniCamp for Selective Mutism
新しいウィンドウで開く

↓ 6カ国から集まったという投稿。Facebookページへのリンクです。Facebookに登録されていない方でもご覧になれます。
◇ **July 2018 CommuniCamp™ is Sold OUT! We are happy to be hosting families from 6 countries and...
新しいウィンドウで開く

アメリカでは、緘黙児者を対象とした集中治療プログラムが広がっているというお話は、これまでもこのブログでお伝えしてきました。その嚆矢は、ニューヨークの Child Mind Institute 所属(当時)の Steven Kurtz 博士が開発した Brave Buddies です。後に広がったプログラムには、その全てかどうかは分からないのですが、Steven Kurtz 博士の影響を受けたことが示唆されているものがあります。

↓ 最近でも、アメリカではこれだけの集中プログラムが予定されています。アメリカの緘黙団体 Selective Mutism Association へのリンクです。
◇ Upcoming Events Selective Mutism Association
新しいウィンドウで開く

↓ 今年8月には、香港でも開催されます。
◇ Confident Crew Back to School 5-day Intensive Program - Central Health Child Department
新しいウィンドウで開く


他の集中プログラムとは少し違うらしい


ただ、CommuniCamp™は、他の集中プログラムとはどうも少し違うようなのです。

私は専門家でもありませんし、よく分からないのですが、学校に似せた状況で楽しみながら、短期集中的に、戦略的に不安に身をさらすという点は変わりないようです。楽しいゲームや活動を3日間にわたって行ないます。また、親に対して、緘黙治療について教育を行う点も同じようです。

CommuniCamp™独自とみられる特徴は、「社会的コミュニケーション不安治療」(S-CAT®)という、SMartセンターの長年にわたる治療アプローチに基づいている点です。これは、緘黙は単に話せないだけではない「社会的コミュニケーション不安症」であるという考え方に基づくものです。社会的コミュニケーションを増やし、社会的自信を育むために、行動療法、認知行動療法、洞察志向アプローチの要素を統合したものだそうです。

といっても、欧米で緘黙治療というと行動療法や認知行動療法が主流なので、極端に他と変わったことを行っているわけではないのではないかと思います。

S-CAT®というと、よく「緘黙のステージ」が引き合いに出されます。コミュニケーションがない段階から、非言語コミュニケーションの段階を経て、言語コミュニケーションの段階までを大きく4段階、細かくすると8段階に分けたもので、緘黙の尺度として用いられます。最新の「緘黙のステージ」では、非言語コミュニケーションと言語コミュニケーションの間に移行期の段階が置かれていて、この段階の重要性が強調されます。

↓ 移行期の段階についての記事。
◇ 「不安を和らげるだけでは、発話には不十分」
新しいウィンドウで開く

※ 「緘黙のステージ」は、かんもくネットの意訳をそのまま使ったものです。英語では Selective Mutism-Stages of Social Communication Comfort Scale と言います。

集中プログラムの嚆矢となった Steven Kurtz 博士の Brave Buddies は、親子相互交流療法(PCIT)という技法が取り入れられているのですが、CommuniCamp™の場合もPCITが取り入れられているかどうかは分かりません(たぶん取り入れられていないのではないかと思うのですが、もう一つ確証がありません)。仮にPCITの要素がないとしたら、親への教育の内容も変わってくることになるはずです。

CommuniCamp™は、世界でも有力な緘黙治療機関が力を入れて行なっているものなので、こうした取り組みもあるということは頭に入れておきたいと思っています。