緘黙児者の兄弟姉妹の人生

更新日:2022年08月08日(投稿日:2022年08月08日)
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「きょうだい児」


「きょうだい児」という言葉が、ほんの少しずつですが、広まりを見せてきたように思います。

きょうだい児とは、障害がある人たちの兄弟姉妹のことです。きょうだい児には特有の悩みがあります。親が障害児にかかりきりで孤立感を覚えた、自分は二の次の存在なのかと感じた、障害児の分まで頑張りすぎてしまう、同じ学校に通いたくない、親亡き後の面倒を見なければならない、結婚で不利な扱いを受けるほか、様々です。

最近では、ヤングケアラーと関連付けて論じられることもあります。障害がある兄弟姉妹の世話をしている人もいるのです。「きょうだいケアラー」という呼び方をすることもあります。


緘黙児者の兄弟姉妹は


場面緘黙症の本の中に、『負けたらあかん!』(1995年)という本があります。場面緘黙症を克服した少女と、その少女に寄り添った母親の実録です。この母親は、緘黙の娘のことを優先するあまり、弟(緘黙ではない)に寂しい思いをさせたり、精神的に追い詰めたりする場面もありました。緘黙の娘は弟に、「我慢させてごめんね」と書いています。

緘黙児者のことに親が心を配るのはもっともなことです。ですが、親には、その兄弟姉妹のことに心を配ることも忘れないで欲しいです。私自身、学校で話せなかった経験を持つので、かえって、私のような者ばかりが配慮されて、他の人が蔑ろにされるようなことになるのは耐えがたいです。

今のところ、緘黙児者の兄弟姉妹が、そうした悩みを持っているという話はあまり耳にしたことはありません。そのためか、緘黙児者の兄弟姉妹については、特に議論になっていないように思います。今回の記事が、私の杞憂ならよいのですけれども。





国会で、緘黙が軽く言及される

更新日:2022年08月01日(投稿日:2022年08月01日)
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今年1月から6月にかけて開催された国会(第208国会)で、場面緘黙症に軽く言及される場面が2度ありました。

といっても緘黙をテーマとした質疑での言及ではありませんでした。とはいえ、国会で緘黙について言及されるのは3年ぶりのことで、よくあることではありません。そこで、ここでご紹介してみます。

都立高の英語スピーキング試験


1度目は、衆議院文部科学委員会での質疑(3月2日)です。吉田はるみ議員(立憲民主党)が、東京都立高校の入試における英語スピーキングテストについて質問したのですが、その中で、話すことが難しい子どももいるとして、その例として吃音と緘黙の子どもを挙げました。

都立高校の入試のあり方が国会で議論になったわけです。では、都議会ではスピーキングテストと緘黙について議論になったのでしょうか。会議録を検索してみたのですが、今のところ該当する会議録は見つかりません。ちなみに、吃音については質疑があったのを確認しています。

なお、このスピーキングテストは、2023年春に進学予定の現中学3年生を対象として、2022年11月に実施されるものです。


代表者聴取


2度目は、参議院法務委員会での質疑(5月19日)です。東徹議員(日本維新の会)が、障害者ある人への「代表者聴取」という制度について質す中で、緘黙の女性が性被害に遭った事件に言及しました。

「代表者聴取」とは、児童虐待や性犯罪の被害を受けた子どもや障害ある人を対象に、検察と児童相談所、警察らが一括して聞き取りを行う制度です。複数の人から繰り返し事情聴取を受けると精神的負担が増すため、代表者が聴取を行います。今回被害に遭った緘黙の女性も、代表者聴取を受けており、今回言及されました。

代表者聴取はもともと子どもが対象の制度だったのですが、2021年度からは障害ある人にも試行されています。試行段階の制度なので、本格導入を見据え、国会で質問されたのでしょう。





「場面緘黙犬」は存在するのか

更新日:2022年07月25日(投稿日:2022年07月25日)
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不安症であれば、犬にもある


場面緘黙症の犬もいるという話を読んだ覚えがあります。もう10年以上前でしょうか、海外の緘黙専門のウェブサイトにそう書いてあるのを読んだ覚えがあるのです。

ですが、その時以外で、犬の緘黙に関する話は聞いたことがありません。学術論文でも読んだことがありません。ガセネタか、私の記憶違いかもしれません。

もっとも、不安症は犬にも表われることがあります。分離不安症、雷恐怖症、音に対する恐怖症、人や物に対する恐怖症、全般性不安症などがあるそうです(倉持, 2018)。このうち音については、「ガンシャイ」という言葉もあります。銃(ガン)の音を怖がる(シャイ)猟犬のことですが、銃声に限らず音を怖がる犬のことをこう呼ぶ場合もあるようです。

これには環境要因の関わりが指摘されています(倉持, 2018)。一方、遺伝的要因がどの程度関与しているかは、専門家ではない私には分かりません。不安症に結びつくほど強い不安を生まれつき感じやすい犬はいるのでしょうか、いないのでしょうか。


犬は言葉を話さない


ただ、犬は人間と違って言葉を話せません。ですので、特定場面で口を利けない緘黙は、犬には成立しないのではないかと思います。強いて言えば、特定場面で吠えることができない犬なら、いるかどうかといったところでしょう。吠えない犬も心配ですが、口が利けない人間に比べれば、どれほど問題視されるのでしょう。このあたりは、犬を飼ったことがない私には分かりません。

そもそも、人間とは違って、犬は飼い主の手を離れて社会的に活動する場面が注目されることは少なさそうです。例えば、学校に通う犬はいません。このため、緘黙のような症状を示す犬が仮にいたとしても、そういう場面が気づかれ、問題視されることは多くはないような気がします。

結局のところ、緘黙は、言葉を話すことができ、学校など家族から離れた活動が重要視される人間だからこそ、問題視されるのではないかと今のところは思います。人間と犬の不安症の比較研究をしてみると、人間の不安症の特徴が浮き彫りになるかもしれず、面白そうです。