厚労省「患者調査」年別推移

更新日:2023年06月01日(投稿日:2023年05月30日)
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厚生労働省の「患者調査」で、場面緘黙症の調査も行われていたというお話を先日しました。患者調査とは、病院および診療所を利用する患者について、その傷病の状況等の実態を明らかにし、医療行政の基礎資料を得ることを目的に行われる標本調査です。

しかし、このときお示しした数字は令和2年のもののみでした。ですが、政府統計の総合窓口「e-Stat」では、平成8年から令和2年までの数字を3年おきに確認できます(3年おきなのは、調査自体が3年おきなので)。せっかくですので、平成8年以降の数字を今回お示しすることにします。





「緘黙テキサス」でなく「血掟テキサス」

更新日:2023年05月22日(投稿日:2023年05月22日)
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ゲームのキャラクターの日本語訳


スマートフォン向けゲーム『アークナイツ』に、「緘黙テキサス」と呼ばれるキャラクターがいるというお話を、以前このブログでしました。

『アークナイツ』は中国発のゲームで、中国版(大陸版)のキャラクター名は「缄默德克萨斯」といいます。日本版では当時は未登場だったので、ユーザーが非公式に日本語に訳して「緘黙テキサス」と呼び、将来の日本版での登場を期していたようです。

「緘黙テキサス」という訳には、私が見た範囲ではごく一部ですが、疑問の声もありました。緘黙は、場面緘黙症を意味する言葉として使われることがあるからです。

これに対しては、私は全く不適切とは思わないという私見をこのブログに投稿しました。

↓ その時の記事です。
◇ 「緘黙テキサス」に思うこと
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「血掟テキサス」に決定


5月15日、ついに日本語版に登場することが決定したのですが、キャラクター名は「緘黙テキサス」ではなく、「血掟テキサス」となりました。血の掟により沈黙するというところから、こうした日本語訳になったようです。

「緘黙テキサス」とはならなかった詳しい経緯については知る由もありません。もしかすると、「血掟」の方が格好いいからとか、「緘黙」は読みにくいからといったシンプルな理由かもしれません。

ただ、お話ししたように、「緘黙」は場面緘黙症を想起させることから、不適切という声がごく一部から上がってはいました。最近明らかになったのですが、ある緘黙の当事者がこれに深く悩んで、運営者に問い合わせをしていたそうです。こうしたことも関わっていた可能性もあります。

↓ このキャラクターに対するファンの声。名称についても。
◇ コメント/血掟テキサス - アークナイツ攻略 Wiki
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「緘黙」はもともと、押し黙っていることを意味する言葉です。一般的な国語事典にも意味は載っていますし、文学作品でも古くから登場します。

「場面緘黙症」の「緘黙」はそこから派生した専門用語なのですが、今では「緘黙」というと、そちらを意味することが多くなってしまいました。その結果、緘黙当事者への配慮から、単に押し黙っている意味での「緘黙」が使われにくくなってきてはいないだろうかと思います。特に現代は、ポリティカル・コレクトネスへの意識が重視されている時代です。

「緘黙」は、折口信夫『死者の書』や中島敦『李陵』といった、文学作品の古典にも登場する豊かな日本語表現の一つです。それが上記のような理由で使いにくくなり始めているのだとしたら、複雑な思いです。場面緘黙症の認知度が上がった負の一面なのか、それとも場面緘黙症という命名が悪かったのか。

なお、医学的には、場面緘黙症以外にも「緘黙」という用語は使われることはあるそうです。「無動緘黙」など。



2023年度の科研費研究

更新日:2023年05月08日(投稿日:2023年05月08日)
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ASD傾向を示す緘黙児


場面緘黙症の研究が1件、2023年度の科研費に採択されました。

↓ その研究です。国立情報学研究所のサービス KAKEN へのリンクです。
◇ 場面緘黙児の認知・思考プロセスの特性が社会生活に及ぼす影響に関する研究 
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研究概要等は、今後、上記ページで更新されるものとみられます。

秋田大学の研究者からは、過去にも3度、科研費に採択された研究が出ています。以下のリンクからも、それが分かります。

↓ KAKEN へのリンクです。
◇ 「緘黙 秋田大学」で検索 
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なお、もしかしたら今年度のうちに、新たに科研費に採択される緘黙の研究が出てくる可能性もあります。

科研費とは


科研費こと科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、文部科学省と、その外郭団体である独立行政法人日本学術振興会による研究助成事業です。助成対象の研究は、人文学・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたります。その規模は、2022年度予算額で2,377億円です。

科研費は我が国最大の競争的資金制度です。同業者による審査「ピアレビュー」を経て、採択が決定されます。応募件数は2021年度で95,208件で、このうち83,973件(27.9%)が新規採択されています。

科研費には研究種目という区分があり、「科学研究費」「特別研究促進費」「研究成果公開促進費」「特別研究員奨励費」「国際共同研究加速基金」からなります。

今回採択された緘黙の研究は「科学研究費」の中の「基盤研究(C)」です。「基盤研究」は一人または複数の研究者が共同して行う独創的・先駆的な研究で、最も一般的な研究種目です。配分額や研究期間によって(S)~(C)に分類されますが、(C)は配分額500万円以下で、研究期間3~5年の研究です。


上記研究のほか、3件の科研費研究が進行中


緘黙をメインとする研究が科研費に採択されたのは2年連続10回目です。なお、上記研究のほか、現在3件の科研費の研究が進行中です。

◇ 場面緘黙児の早期発見・早期支援・経過把握の方法開発 
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◇ 縦断的調査による場面緘黙の実態解明と効果的な介入手法の確立 
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◇ ASD傾向を示す場面緘黙児に対する社会生活への適応を目指した支援方略の構築 
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