ノルウェーに注目する理由

更新日:2018年04月25日(投稿日:2018年04月25日)
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実は、私たちの緘黙理解に影響を与えてきた国の一つ


場面緘黙症の本をお持ちの方。巻末の参考文献一覧に、次の文献が載っていないでしょうか?

◇ Kristensen, H. (2000). Selective mutism and comorbidity with developmental disorder/delay, anxiety disorder, and elimination disorder. Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry, 39, 249–256.

場面緘黙Q&A』でも『場面緘黙支援の最前線』でも、どの本でもいいです(ただし、コミックエッセイや絵本、90年代以前の本は除きます)。大抵の緘黙の本では、参考文献に挙げられているはずです。

この文献、実はノルウェーの研究です。著者の Hanne Kristensen 氏は、オスロの Nic Waals Institutt という医療機関の所属です(当時。現在は存じ上げません)。調査対象の緘黙児も、ノルウェーで集められています。

日本の緘黙の本に限らず、この文献は国際的によく引用されます。それだけ影響力が大きいと言えます。その内容は、緘黙児が併せ持つ様々な障害を調べたものです。

ノルウェーの専門家は英語で論文を発表することがあり、そのためか、論文が国際的に引用されます。ノルウェーの研究者では、他にも Oerbeck, B.(Beate Oerbeck氏)や Omdal, H. (Heidi Omdal氏)などがお馴染みです。

↓ Heidi Omdal氏については、この記事で最近取り上げました。同氏の動画もあり。
◇ 「緘黙は社交不安」に異論も
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ノルウェーの研究に国際的な影響力があるのは、水準が高いことも理由だろうと思います。例えば、緘黙への認知行動療法の効果を「ランダム化比較試験」という信頼性が高い方法で検証した研究があります(Oerbeck, et al., 2014)。緘黙の研究でランダム化比較試験を行なった例は、当時世界でも稀でした。最近ではそのときに認知行動療法を受けるなどした緘黙児の5年後の調査が出て(Oerbeck, et al., 2018)、日本でもTwitterなどで話題になりました。

ノルウェーの人口は500万人超で、北海道の人口よりも少ないです。ですが、その割りに国際的に影響力がある緘黙の研究が出ていて、日本の緘黙の本でも引用されてきました。そういうわけで、私は緘黙については、ノルウェーには以前から注目しています。


ノルウェーの緘黙団体は、今年リニューアルか


ノルウェーには緘黙の団体もあります。 Foreningen for selektiv mutisme という名前です。私はノルウェー語はよく分からないのですが、Google の機械翻訳を参考にすると、団体名は「場面緘黙症協会」かもしれません。

◇ Foreningen for selektiv mutisme
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団体ホームページによると、正式に発足したのは2007年春です。なお、日本のかんもくネットも、同時期の2007年4月に誕生しています。

ノルウェー語がよく読み取れないのですが、団体は今年に入ってリニューアルしたようです。団体の Facebookページも参考にすると、先ほどお話したノルウェーの専門家 Heidi Omdal氏が研究プロジェクトの中で、2017年秋にリニューアルのアイディアを出したそうです。

今年からは、団体の主催で Fagdag selektiv mutisme 2018 i Oslo という催しが始まりました。4月21日のことです。日本語に訳すと、「場面緘黙症アカデミックデー In オスロ2018」だろうかと思うのですが、自信がありません。

◇ Fagdag selektiv mutisme 2018 i Oslo
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マルテさん


この催しには、ミス・ノルウェー2018の最終選考に残っていたマルテ・フレドリクセン(Marte Fredriksen)さんも参加されています。ご自身の緘黙の経験をお話されたそうです。

↓ その時の模様。写真付き。マルテさんのブログへのリンク。ノルウェー語と英語の両方で書かれてあります。
◇ Selektiv Mutisme – Foredrag!
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マルテさんは、緘黙の認知を高めることを一つの大きな目的に、今年のミス・ノルウェーのコンテストに参加されました。ミス・ノルウェー候補としての活動を通じて、メディアから取材を受けることもありました。

ですが、マルテさんは今月、コンテストから降りられたそうです。ブログの中でお話しされています。緘黙を多くの人に知ってもらいたいという強い思いが、コンテストから離れることにつながったようです。今はもう少し長くノルウェーに滞在し、場面緘黙症についてもっと話をするなどしようと考えていらっしゃるそうです。


今後もノルウェーに注目


リニューアルした団体、緘黙の啓発活動を続けられるマルテさん、そして緘黙研究など、今後もノルウェーの動向には注目したいと思います。このブログで海外の話をしても、正直受けが悪いのですが……。



緘黙の研究に、4度目の科研費

更新日:2018年04月23日(投稿日:2018年04月23日)
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3年連続4度目


場面緘黙症の研究が新たに1件、科研費に採択されました。

↓ 国立情報学研究所のサービス KAKEN へのリンクです。
◇ 複合的場面緘黙児の実態解明と教育機関と第三者機関の連携した支援の実践と効果の検証
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緘黙を主題とした研究が科研費に採択されたのは3年連続4度目です。緘黙の研究史は、日本では1950年代にまで遡りますが、科研費が交付されたのはいずれも2010年度以降です。

これまでに採択された研究は、以下の通りです。

↓  2017年度より継続中の研究。KAKEN へのリンクです。
◇ 場面緘黙児・者のセルフ・エフィカシーが治療への参加意欲に及ぼす影響
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↓ 2016年度より継続中の研究。KAKEN へのリンクです。
◇ 選択性緘黙児童生徒の多様な状態像の解明と個に応じた支援方法の検討
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↓ 2010-2012年度に行なわれた研究。KAKEN へのリンクです。
◇ 選択性緘黙の内的世界の探究と治療教育的アプローチの開発
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科研費とは


科研費は、文部科学省と、その外郭団体である独立行政法人日本学術振興会による研究助成費です。助成対象の研究は、人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたります。その規模は、平成28年度予算額で2,284億円です。応募件数は平成28年度で約101,234件で、このうち26,674万件が新規採択されています。

科研費には研究種目という区分があり、「特別推進研究」「基盤研究」「若手研究」「新学術領域研究」「挑戦的萌芽研究」等からなります。今回採択された緘黙の研究は「基盤研究(C) 」です。「基盤研究」は科研費の中核となる研究種目で、これまでの蓄積に基づいた学問分野の深化・発展を目指す研究を支援し、学術研究の足場を固めていく研究種目群です。研究期間と研究費総額によってS、A、B、Cのいずれかの区分に分類されます。

科研費の交付を受けるには、申請を行なった上で、審査に通らなければなりません。審査方式は平成30年度助成(平成29年度9月公募)から変わり、「基盤研究(C) 」の場合、2段階の書面審査を通らなければなりません。今回の緘黙の研究も、審査に通ったということになります。



場面緘黙症とトラウマ性緘黙症は違う

更新日:2018年04月22日(投稿日:2018年04月22日)
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場面緘黙症とトラウマ性緘黙症の違い


場面緘黙症とトラウマ性緘黙症(心的外傷性緘黙症)の違いを説明するなどしたこの記事が、海外で好評のようです。

◇ Q and A Cover Reveal: After Zero by Christina Collins
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書かれてある通りで、トラウマ性緘黙症は、災害、事故、虐待といった強いショック体験の後に、あらゆる場面で急に話せなくなるものです。上の記事では、心的外傷後ストレス反応(PTSR: posttraumatic stress response)と説明されています。

一方、場面緘黙症は、学校など特定場面で話せなくなる不安症です。もともと不安が強い子が学校で声をからかわれて話せなくなるといったことなら時にありますが、トラウマ性緘黙症のような強いショック体験が原因で話せなくなることは稀です。


「ハリウッド版緘黙症」


上の海外記事によると、海外のフィクションで見られる緘黙は、トラウマ性緘黙症が多いそうです。似たようなことを主張した方は過去にもいて、「ハリウッド版緘黙症」(Hollywood version of mutism)という造語を残したアメリカの精神科医がいます(Dummit, n.d.)。海外では緘黙児者には何らかのトラウマがあるという誤解がわりとあるようで、このように両者の区別が強調されることがあります。

こうしたこともあって、場面緘黙症Journalでは、場面緘黙症を扱っているとされる海外フィクションを取り上げるのは、これまで慎重に行なってきています。

日本でもフィクションでトラウマ性緘黙症が多いのかどうかは、私には分かりません。強いショック体験の後に話せなくなる子のフィクションはあっていいと思いますが、それがもし「場面緘黙症」という設定だった場合は注意したいです。

なお、冒頭でご紹介した記事は、場面緘黙症とトラウマ性緘黙症の違い以外にも興味深いことが色々と書かれてあります。インタビュー記事なのですが、インタビューを受けた方は緘黙の経験者です。この方は、緘黙がある人物が主人公の子ども向けフィクション After Zero という本を出版されるそうです。