サイレントピリオド(沈黙期)-異言語環境に転校した子ども

2017年10月24日(火曜日)

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サイレントピリオド(沈黙期)とは


学校で一日中黙っているからといって、その子が場面緘黙症だとは限りません。

緘黙との鑑別が必要なものの一つに、サイレントピリオド(沈黙期)と呼ばれるものが挙げられることがあります。英語で言われるところの silent period です。

これは、異言語圏から移住してきた子どもなどに問題とされるものです。例えば、転校により、それまで慣れ親しんだ言語とは違う言語が使われている学校環境に身を置くと、子どもは数日とか、場合によっては数ヶ月以上といった長期間、何も話さないことがあるそうです。この沈黙する期間が、サイレントピリオドです。通常の言語習得過程で起こるものですが、全てのバイリンガル環境の子どもに起こるものでもありません。

サイレントピリオドは、緘黙専門用語ではありません。むしろ、第二言語の習得と関係して使われることが多いです。例えば、以下のリンク、茂木健一郎さんのブログでも第二言語習得と関連して取り上げられています。

◇ 言語習得におけるサイレントピリオド
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緘黙との鑑別は


ややこしいのが、バイリンガルの子どもは緘黙を発症するリスクが高いとされていることです。こうなると、学校でずっと黙っているバイリンガルの子はサイレントピリオドの期間中なのか、それとも緘黙なのか、より注意を払って見極めなければならなくなりそうです。

ではどう鑑別すればよいかというと、専門家ではない私には難しいです。Google ブックス や Google Scholar で "selective mutism" "silent period" と検索するどして、ご自身で考えてください(すみません)。

◇ Google ブックス で検索
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◇ Google Scholar で検索
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上の検索結果に、The silent experiences of young bilingual learners: A sociocultural study into the silent period という本が出てきますが、そこに Suki という、日本をルーツ?とする子どもの事例があります。全文を読めないのでよく分からないのですが、日本語を第一言語、英語を第二言語とする子の、緘黙とサイレントピリオドの鑑別の話でしょうか。出版社ホームページでは、この本を最初の41ページまで試し読みできるので、興味のある方は、こちらもご覧になってみてください。

↓ 出版社ホームページへのリンクです。
◇ The Silent Experiences of Young Bilingual Learners - A Sociocultural Study into the Silent Period - SensePublishers
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また、Suki の事例は、Google Scholar の検索結果に出てくる論文 Perspectives on the ‘silent period’ for emergent bilinguals in England や Sociocultural understandings of the silent period: young bilingual learners in early years settings でも紹介されています。同じ著者が関わったものです。

それから上の検索サイトでは見られませんが、次の英語論文には Distinguishing Between the “Silent Period” and SM という節があります。英語を第二言語として学ぶ緘黙児に関するものですが、参考になるかもしれません。

◇ Mayworm, A.M., Dowdy, E., Knights, K., and Rebelez, J. (2014). Assessment and Treatment of Selective Mutism with English Language Learners. Contemporary School Psychology, 19(3), 193-204.
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日本ではあまり話題にならないが……


先ほどは英語文献ばかりご紹介しましたが、緘黙とサイレントピリオドについての説明は、海外で目にすることがあります。例えば、イギリスの本を翻訳した『場面緘黙支援の最前線』にも、わずかではありますが、出てきます。ただし、この翻訳書では、サイレントピリオドではなく「無口になる期間」という訳がなされています(77ページ)。

日本では様々な場で緘黙の説明がなされていますが、緘黙とサイレントピリオドの鑑別について説明されることは海外に比べると少ないと感じます。先ほどお話した『場面緘黙支援の最前線』にしても、原書の索引には silent period が載っているのに、翻訳書の索引には「無口になる期間」はありません。これはおそらく、海外とは違って日本では異言語圏から移住する子どもは少なく、サイレントピリオドとの鑑別は、日本では重要ではないと考えられていることなどによるのではないかと思います。

とはいえ、日本は鎖国しているわけではありませんので、サイレントピリオドを経験する子どもがいても不思議ではないでしょう。また、Suki の事例のように、日本語を第一言語とする子に対して、緘黙とサイレントピリオドの鑑別が問題になることだってあり得ます。検索したところ、緘黙とサイレントピリオドの鑑別について報告された事例は少ないのに、その一つが日本をルーツとする事例というのは単なる偶然かもしれませんが、気にはなります。

緘黙とサイレントピリオドの鑑別は、確かに日本ではマイナーな問題かもしれません。ですが、これだけ緘黙の情報が増えてきたわけですし、場面緘黙症Journal もページ数が増えてきたので、この問題を一度は正面から取り上げてみたいと思い、そうしてみることにしました。緘黙というマイナーな問題を扱っている以上、少数派の人への意識を欠かすのはよくないという思いもあります。



10月25日発売『緘黙の歌声』ミュージックビデオが公開

2017年10月18日(水曜日)

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メインの曲『歌声』のミュージックビデオ


若倉純さんのシングルCD『緘黙の歌声』が、10月25日にリリースされます。そのメインの曲『歌声』のミュージックビデオが、YouTube で公開されました。



若倉純さんは、場面緘黙経験を持つシンガーソングライターです。2014年に、緘黙だった子どもの頃の経験を歌にした曲『歌声』を発表。現在、緘黙をより多くの人に知ってもらうための活動を行なっています。今回発売される『緘黙の歌声』で、CDデビューされます。

『歌声』はCD化をきっかけに歌詞が新しくなり、アレンジも変わっています。以前聴いたことがあるという方も、ぜひ動画をご覧になってみてください。

このブログでは若倉純さんの『歌声』を、2014年10月11日に紹介していました。私は当時 YouTube で聴いた曲でした。その曲が3年を経てここまで大きな展開を見せたことに、ちょっとした感慨のようなものがあります(別に私は曲に関わったわけではないのですが……)。

↓ 当時の記事です。
◇ 漫画、歌、ウェブ小説で緘黙経験を語る(元)当事者たち
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関連情報


10月22日(日曜)かんもくアコースティックライブ


10月22日(日曜日)に開催される「かんもくアコースティックライブ」に、若倉純さんが出演されます。『緘黙の歌声』の先行発売もあるそうです。このライブは緘黙経験を持つアーティストによるもので、出演者には mananaさん、中越千春さん、AIRIさんもいらっしゃいます。完全予約制で、既に予約受付は終了しています。詳しくは、公式ホームページをご覧ください。

↓ 公式ホームページへのリンクです。
◇ かんもくアコースティックライブ2017
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10月22日(日曜)ラジオ番組『緘黙の歌声』


また、かんもくアコースティックライブ開催日と同じ10月22日(日曜日)に、若倉純さんがメインパーソナリティーを務めるラジオ番組『緘黙の歌声』が放送されます。23時00分~23時15分までです。エフエム世田谷での放送ですが、世田谷区外の方でも、インターネットを通じてお聴きになれます。

この日の放送では、ゲストに角田圭子氏(かんもくネット代表)をお迎えするそうです。

↓ ここから番組を聴けます。エフエム世田谷ホームページへのリンクです。
◇ エフエム世田谷83.4MHz
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↓ 過去の放送分はここで聴けます。WWRadio ホームページへのリンクです。9月24日放送分では、CD音源の『歌声』が流れました。
◇ 若倉純の緘黙の歌声
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ツイキャス配信


さらに、インターネットによるライブ配信「ツイキャス」で、若倉純さんは「緘黙ラジオ」に参加されたり、「ツイキャス弾き語り」をされたりしています。気になる方は、若倉純さんのブログでスケジュール等をチェックしてみてください。ライヴのスケジュールも確認できます。

◇ 若倉純さんのブログ
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緘黙の研修-日本は数時間、海外では丸一日以上も

2017年10月06日(金曜日)

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場面緘黙症に関する催しは、海外でも行なわれています。そうした海外の催し物情報を、先日から「緘黙関連ニュース」で、新たにお伝えすることにしました。

「海外の催しなんかお伝えしても、どなたが参加するのか?」と考え、以前はほぼお伝えしませんでした。また、そうした情報を見つけても、私自身軽く読み流していました。ですが、考えを改めることにしました。日本で緘黙に関する催しが増える中、海外の催しを知ることで、何か発見があるかもしれないからです。

海外の催しをお伝えする中で、改めて気付いたことがあります。それは、海外では緘黙の研修やワークショップに丸一日とか、場合によっては丸二日かける場合があることです。日本ではこのような長時間のものはおそらくなく、数時間ほどです。

香港の緘黙ワークショップは丸二日!台湾の団体とも連携


例えば、これは香港で2018年3月に開かれる、専門家向けワークショップの情報です。

↓ 「緘黙関連ニュース」へのリンクです。
◇ 香港で2日間のワークショップ
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午前9時30分から午後5時00分まで、しかも二日間連続です。丸二日といってもいいスケジュールです。

講師は Ruth Perednik 氏。イスラエルの専門家で、このブログでも取り上げた The Selective Mutism Treatment Guide の著者です。プログラムの内容を見るに、理論と実践の両面に目が行き届いていますし、10代や大人の緘黙も取り上げますし、なかなか充実していそうです。

ただ、参加費が、日本の相場では考えられないぐらい高いです。早めの予約で3,800香港ドル(約5.5万円)、そうでない場合は4,500香港ドル(約6.5万円)もします。

なお、8月に誕生した台湾の団体「台灣選擇性緘默症協會」が、このワークショップと連携しているようです。私は中国語が読めず、機械翻訳に頼っているのでよく分からないのですが、台湾の団体が緘黙支援に携われる専門家の育成に力を入れていることが窺えます。

↓ 「台灣選擇性緘默症協會」ブログへのリンクです。
◇ 台灣選擇性緘默症協會種子人才計畫;研習資訊
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丸一日や丸二日かけるものもある、海外の緘黙研修


海外にはこのように、緘黙の研修やワークショップに丸一日とか、丸二日をかけるものもあります。先の香港のもの以外にも、ご紹介してみましょう。

※ いずれも「緘黙関連ニュース」へのリンクです。

◇ 英国ウェールズのAfasicが、緘黙のワークショップ2件連続開催
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◇ ポーランドで、11月に2日間の研修
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◇ 豪州で、10月に8時間のワークショップ
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◇ シティ大学ロンドンで11月、丸1日の短期講習
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私が見つけたものだけでも、これだけあります。しかもこれは、9月から11月という最近のものに限っています。

なお、海外の研修やワークショップの全てが、このように丸一日以上のものであるわけではありません。今のところ「緘黙関連ニュース」では主な催しのみを取り上げることにしているので、結果的にこのような長時間のものの情報ばかり集まっているだけです。例えば、カナダの慈善団体 Anxiety BC が11月3日に開く予定のワークショップは、午前9時から午後1時までのスケジュールです。

↓ カナダの Eventbrite というウェブサイトへのリンクです。
◇ Selective Mutism - Advanced Strategies for Professionals
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このような長時間の研修、日本にはない


このように、丸一日以上にわたる研修やワークショップは、私が知る限り、日本ではありません。

例えば、日本緘黙研究会という団体が主催する研修会が、2016年と2017年に実施されました。この研修会ですが、過去2回とも午後2時00分から午後4時45分 (開場午後1時30分)までの、3時間ほどの内容でした。参加費は1,000円と、これまで見てきたものとは比べ物にならない低さです。

↓ 2017年の研修会。日本緘黙研究会ウェブサイトへのリンクです。
◇ 研修講座「場面緘黙の理解と支援」開催のお知らせ
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↓ 2016年の研修会。日本緘黙研究会ウェブサイトへのリンクです。
◇ 研修講座「場面緘黙の理解と支援」開催のお知らせ
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ただ、日本では、研修会というよりも講演会の方が目立つかもしれません。これも、低参加費で2~3時間ほどのものです。

では、日本では緘黙の研修やワークショップが海外に比べると充実していないのかとかいうと、今のところ私にはまだ分かりません。一概に時間だけ比べてどうこう言うことはできないのではないかと思います。

どちらにしろ、今回のことで私は色々と考えさせられました。例えば、緘黙への支援を行える人材を育成するには、研修やワークショップにどれだけの時間が必要なのか。2~3時間で十分なのか、丸一日や丸二日の研修でみっちり鍛え上げることが必要なのか、それでもまだ足りないのか。おそらくそれは、研修やワークショップの到達目標や、受講者の対象、水準にもよるのではないかと思います。

また、研修やワークショップの時間だけでなく、参加費など、他の要素とのベストな組み合わせはどういったものか。高額費用で丸一日や丸二日の研修だと、高度な知識や技能を持った人材を少数育成するというかたちになりそうです。一方、日本のような低い参加費用で数時間の研修だと、高度な知識や技能をその研修だけで受講者に身につけさせるのは難しそうですが、参加者は多数集まりやすそうなことから、広く薄く教育する効果がありそうです。

何にせよ、私は専門家ではないのでよく分かりません。今後も情報を収集して、海外の動向も研究していきたいです。