『特殊教育学研究』がネットで無料で読めます

2008年08月26日(火曜日)

場面緘黙症に関する研究が掲載されたことのある雑誌『特殊教育学研究』(日本特殊教育学会)が、インターネット上で無料で読むことができるようになりました。会員登録も必要ありません。

どういうことかというと、国立情報学研究所が提供するサービス CiNii(論文情報ナビゲータ)が、8月14日に、この雑誌の本文提供を開始したのです(私は昨日知りました!)。

現在読むことができる場面緘黙症に関する文献は、以下の通りです。リンク先ページ右上「本文を読む・探す」の「CiNii PDF」のボタンを押せば、読むことができます。一般向けの内容ではないので、余裕のある方、日本における場面緘黙症の先行研究に特に興味のある方が読むとよいと思います。

※ リンク先のページを新しいウィンドウで開きたい方は、リンク部分を右クリックして、「新しいウィンドウで開く」を選択しましょう!(インターネットエクスプローラー6.0の場合。他のブラウザでもだいたい同じだと思います) ⇒ 説明画像

◇ 相場嘉明 (1991). 選択性緘黙の理解と治療-わが国の最近10年間の個別事例研究を中心に-. 特殊教育学研究, 29(1), 53-59.

↑ 1980~1989年の、場面緘黙症の治療に関する個別事例研究39編をまとめたものです。日本では個別事例研究が多いので、このようにまとめられたものは重宝します。

◇ 加藤哲文, 小林重雄, 山中貴子 (1985). 軽度精神遅滞児の選択性緘黙反応への行動療法的アプローチ-刺激フェイディング法と社会的スキルトレーニングの併用による効果-. 特殊教育学研究, 23(2), 12-20.

↑ 多少のやり方の違いはありますが、『場面緘黙児への支援』と同じ行動療法による治療の事例です。治療経過が詳しく書かれており、行動療法を実際に行われている方には、何かの参考になるかもしれません。

◇ 石川清明, ニッ山実 (1980). 言語発達遅滞を伴った場面緘黙の改善過程について. 特殊教育学研究, 17(4), 44-50.

↑ 「再育児心理療法」という治療法が導入されていますが、場面緘黙症の治療には初めて聞きました。

◇ 石川清明, 谷俊治 (1979). 海外生活経験を有する言語発達遅滞児について. 特殊教育学研究, 17(2), 33-41.

↑ 場面緘黙症がメインの研究ではありません。3症例が考察されていますが、「帰国後、3症例に共通して選択性緘黙症がみられた」とのこと。もし、単にその国や地域の言語を知らずに話さないというだけなら、今日の DSM の診断基準に従えば、場面緘黙症ではないのですが、どうなのでしょう。

このほか、『特殊教育学研究』には、日本特殊教育学会第45回大会(2007年)のシンポジウムで報告された「体験者が語る緘黙症の指導体制を巡る日本の実情」も掲載されているのですが、なぜかこれだけ CiNii から読むことはできません。ごく最近の巻号に掲載されたものは、まだ無料一般公開には至っていないようです。

※ 大手ブログ検索サイト Technorati(テクノラティ)のトップページの「ヘッドライン」で、この記事が紹介されているのを発見(08/26/2008 19:40現在)。びっくりしました!


英国のある調査報告書

2008年08月24日(日曜日)

イギリスのお話です。発話、言語、コミュニケーションに特別なニーズを持つ子どもや若者への支援について、政府への様々な提言をまとめた Bercow Review というリポートの最終報告が、今年7月に公表されました。

この報告書は、児童・学校・家庭省の Ed Balls 大臣と保健省の Alan Johnson 大臣の要請により、John Bercow 下院議員が行った独立調査をまとめたものです。

http://www.dcsf.gov.uk/bercowreview/

報告書の諮問団には、場面緘黙症の支援団体 SMIRA(Selective Mutism Information and Research Association)の方も加わっています。政府に答申された報告書に場面緘黙症の支援団体が関わっていたとは、日本では考えられないことです。

この報告書では、発話、言語、コミュニケーションに関する様々な問題を抱えた子どもや若者が視野に入れられているようです。しかし、報告書のテーマは早期介入の重要性、医療と教育の連携などで、場面緘黙症児の支援にも共通する部分は実に多いです。見方を変えれば、これらは場面緘黙症のみの問題ではないということです。

報告書では、その数40にわたる様々な提言がなされていますが、その内容はずいぶんと踏み込まれたものです。分かりやすいものでは、例えば、コミュニケーションの重要性の理解を高めるために、「国民 発話、言語、コミュニケーション年」を定め、次の3年以内に実行に移す、というものがあります。

場面緘黙症児を含む、発話、言語、コミュニケーションに特別なニーズを持つ子どもや若者への政府の支援について、こうした踏み込んだ内容の報告書が政府に答申されたという事実は大きいと思います。もっとも、このことだけをもって、イギリスの方が日本より進んでいるかどうかの判断は私にはできません。

[今日の一言]

"Communication is a fundamental human right. Communication is a key life skill. Communication is at the core of all social interaction."(上記報告書より)

「コミュニケーションは基本的人権である。コミュニケーションは重要な生活技能である。コミュニケーションは全ての社会的相互作用の中心をなす。」

コミュニケーションが基本的人権とは、考えたこともありませんでした。残りの2つには同意です。緘黙の子や人は、重度の人を除けば、非言語コミュニケーションであればなんとかとることはできます。ただ、うなずいたり首を横に振ったりのコミュニケーションだけでは、不自由なことは言うまでもありません。


ドイツの緘黙の本読んでます

2008年08月16日(土曜日)

前々からドイツの緘黙の本を読んでみたいと思っていました。

緘黙症の研究はアメリカや日本よりも、ドイツの方が実は歴史があります。ドイツには緘黙症のしっかりした支援団体があり、緘黙症を扱った本も多く出版されています(場面緘黙症Journal 関連書籍・ドイツ語編参照)。他の国にはないノウハウの蓄積があるかもしれません。

そこで先日、Mutismus im Kindes-, Jugend- und Erwachsenenalter(『子ども、青年、大人の緘黙症』)という本を買いました。いま一生懸命読んでいるところです。

どうしてこの本を買ったのかというと、

1 値段が手ごろだったから
2 ページ数が少なく、最初に読むドイツ語の本としては良さそうだったから
3 大人の緘黙症について取り上げられているから

です。

* * * * * * * * * *

本は64ページの薄い本です。このページ数でこの値段というのは、難しいものです。

内容は、緘黙症(場面緘黙症、全緘黙症)全般について基礎的な知識をまとめたもののようです。写真やイラストがところどころに挿入されていて、読みやすくできています。

共著者のお一人、Boris Hartmann 氏は、ドイツでは緘黙症の研究、治療で大きな実績を上げている方です。多くの論文を発表されている他、この本以外にも著書があります。

共著者のもうお一人、Michael Lange さんは、10歳から37歳まで場面緘黙症で、今もなお発話を必要とする状況を避けているという意味のことが書かれてあり、びっくりしました。私はこの方から、英語ブログを通じて、メールをいただいたことがあります。

実を言うと、私はドイツ語はさっぱりです。日本語と、かろうじて英語を少し読むことができる程度です。そこで、インターネット上の機械翻訳 Babel Fishlivedoor 翻訳Infoseek マルチ翻訳等を使って、ドイツ語を英語、日本語に訳して読んでいます。苦肉の策ですが、そこまでしてでも読みたいのです!

まだ読んでいる途中ですが、気づいたことがあればまた何か書きます。