緘黙とひきこもりの問題は

2017年10月30日(月曜日)

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ひきこもる緘黙当事者、経験者の存在


引きこもっていて、より困り果てている人もいるので、「かんもく・ひきこもりの会」という全国組織を作ってもいい。

これは、2013年9月1日に行なわれた日本特殊教育学会第51回大会の自主シンポジウム「緘黙症当事者の多様性と類型化-個性に応じた対応のために」での、藤田継道氏(現・兵庫教育大学名誉教授)の発言です(池上, 2013年9月5日)。

「かんもく・ひきこもりの会」がその後できたという話は聞きません。ですが、この発言からは、ひきこもる緘黙当事者が当時少なからず程度存在していて、そのことに対して問題意識を持つ方がいたことが窺えます。

ひきこもりになる緘黙当事者、経験者の存在は、以前より知られていたと思います。2007年から2011年にかけて発表された、かんもくの会の「緘黙症体験記集」には、ひきこもりの話も含まれています。また、匿名掲示板の緘黙のトピックには、ひきこもっていると見られる当事者の書き込みもかつては目にしました。

ところが、最近、この話題は気のせいか低調のように感じます。大人の緘黙については、関心がやや高まっているようにも感じるのですが。特に最近は、緘黙に関わる催しが花盛りです。それだけに、かえって私は、外に出にくいひきこもる人のことが気になります。

もっとも、これは私の考えすぎかもしれません。ひきこもる緘黙の当事者や経験者は実は減っていて、そのため関心が薄れているのかもしれません。そうしたところも含めて、関連情報が近年あまり見つからず、正確なところが分かりません


長期高年齢化の懸念


このように、緘黙とひきこもりの実態は、私には分かりません。ですが、私の「勘ピューター」で言うと、近年、ひきこもる緘黙の当事者や経験者の間で、長期高年齢化が進んではいないだろうかと思います。ひきこもり全般に長期高年齢化が進んでいることが指摘されているからです。もし私が想像するようなことが現実に起こっているとしたら、問題は深刻さを増していることでしょう。

昔から私のブログを読んでくださっている方はご存じかもしれませんが、私自身、ひきこもりを経験しています。このブログも、元は2005年11月に開設したブログ「ニートひきこもりJournal」の緘黙コンテンツが起こりです。ある時期より非正規で働きに出たりもしていますが、何もせずに、誰とも関わらない日も多いです。

高年齢化したひきこもる緘黙当事者、経験者は、緘黙への理解が今ほど進んでいなかった頃に、子ども時代を送っていたと考えられる人たちです。「かんもく・ひきこもりの会」という全国組織を作るべきかどうかはともかく、私としては関心を持っています。





サイレントピリオド(沈黙期)-異言語環境に転校した子ども

2017年10月24日(火曜日)

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サイレントピリオド(沈黙期)とは


学校で一日中黙っているからといって、その子が場面緘黙症だとは限りません。

緘黙との鑑別が必要なものの一つに、サイレントピリオド(沈黙期)と呼ばれるものが挙げられることがあります。英語で言われるところの silent period です。

これは、異言語圏から移住してきた子どもなどに問題とされるものです。例えば、転校により、それまで慣れ親しんだ言語とは違う言語が使われている学校環境に身を置くと、子どもは数日とか、場合によっては数ヶ月以上といった長期間、何も話さないことがあるそうです。この沈黙する期間が、サイレントピリオドです。通常の言語習得過程で起こるものですが、全てのバイリンガル環境の子どもに起こるものでもありません。

サイレントピリオドは、緘黙専門用語ではありません。むしろ、第二言語の習得と関係して使われることが多いです。例えば、以下のリンク、茂木健一郎さんのブログでも第二言語習得と関連して取り上げられています。

◇ 言語習得におけるサイレントピリオド
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緘黙との鑑別は


ややこしいのが、バイリンガルの子どもは緘黙を発症するリスクが高いとされていることです。こうなると、学校でずっと黙っているバイリンガルの子はサイレントピリオドの期間中なのか、それとも緘黙なのか、より注意を払って見極めなければならなくなりそうです。

ではどう鑑別すればよいかというと、専門家ではない私には難しいです。Google ブックス や Google Scholar で "selective mutism" "silent period" と検索するどして、ご自身で考えてください(すみません)。

◇ Google ブックス で検索
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◇ Google Scholar で検索
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上の検索結果に、The silent experiences of young bilingual learners: A sociocultural study into the silent period という本が出てきますが、そこに Suki という、日本をルーツ?とする子どもの事例があります。全文を読めないのでよく分からないのですが、日本語を第一言語、英語を第二言語とする子の、緘黙とサイレントピリオドの鑑別の話でしょうか。出版社ホームページでは、この本を最初の41ページまで試し読みできるので、興味のある方は、こちらもご覧になってみてください。

↓ 出版社ホームページへのリンクです。
◇ The Silent Experiences of Young Bilingual Learners - A Sociocultural Study into the Silent Period - SensePublishers
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また、Suki の事例は、Google Scholar の検索結果に出てくる論文 Perspectives on the ‘silent period’ for emergent bilinguals in England や Sociocultural understandings of the silent period: young bilingual learners in early years settings でも紹介されています。同じ著者が関わったものです。

それから上の検索サイトでは見られませんが、次の英語論文には Distinguishing Between the “Silent Period” and SM という節があります。英語を第二言語として学ぶ緘黙児に関するものですが、参考になるかもしれません。

◇ Mayworm, A.M., Dowdy, E., Knights, K., and Rebelez, J. (2014). Assessment and Treatment of Selective Mutism with English Language Learners. Contemporary School Psychology, 19(3), 193-204.
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日本ではあまり話題にならないが……


先ほどは英語文献ばかりご紹介しましたが、緘黙とサイレントピリオドについての説明は、海外で目にすることがあります。例えば、イギリスの本を翻訳した『場面緘黙支援の最前線』にも、わずかではありますが、出てきます。ただし、この翻訳書では、サイレントピリオドではなく「無口になる期間」という訳がなされています(77ページ)。

日本では様々な場で緘黙の説明がなされていますが、緘黙とサイレントピリオドの鑑別について説明されることは海外に比べると少ないと感じます。先ほどお話した『場面緘黙支援の最前線』にしても、原書の索引には silent period が載っているのに、翻訳書の索引には「無口になる期間」はありません。これはおそらく、海外とは違って日本では異言語圏から移住する子どもは少なく、サイレントピリオドとの鑑別は、日本では重要ではないと考えられていることなどによるのではないかと思います。

とはいえ、日本は鎖国しているわけではありませんので、サイレントピリオドを経験する子どもがいても不思議ではないでしょう。また、Suki の事例のように、日本語を第一言語とする子に対して、緘黙とサイレントピリオドの鑑別が問題になることだってあり得ます。検索したところ、緘黙とサイレントピリオドの鑑別について報告された事例は少ないのに、その一つが日本をルーツとする事例というのは単なる偶然かもしれませんが、気にはなります。

緘黙とサイレントピリオドの鑑別は、確かに日本ではマイナーな問題かもしれません。ですが、これだけ緘黙の情報が増えてきたわけですし、場面緘黙症Journal もページ数が増えてきたので、この問題を一度は正面から取り上げてみたいと思い、そうしてみることにしました。緘黙というマイナーな問題を扱っている以上、少数派の人への意識を欠かすのはよくないという思いもあります。



10月25日発売『緘黙の歌声』ミュージックビデオが公開

2017年10月18日(水曜日)

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メインの曲『歌声』のミュージックビデオ


若倉純さんのシングルCD『緘黙の歌声』が、10月25日にリリースされます。そのメインの曲『歌声』のミュージックビデオが、YouTube で公開されました。



若倉純さんは、場面緘黙経験を持つシンガーソングライターです。2014年に、緘黙だった子どもの頃の経験を歌にした曲『歌声』を発表。現在、緘黙をより多くの人に知ってもらうための活動を行なっています。今回発売される『緘黙の歌声』で、CDデビューされます。

『歌声』はCD化をきっかけに歌詞が新しくなり、アレンジも変わっています。以前聴いたことがあるという方も、ぜひ動画をご覧になってみてください。

このブログでは若倉純さんの『歌声』を、2014年10月11日に紹介していました。私は当時 YouTube で聴いた曲でした。その曲が3年を経てここまで大きな展開を見せたことに、ちょっとした感慨のようなものがあります(別に私は曲に関わったわけではないのですが……)。

↓ 当時の記事です。
◇ 漫画、歌、ウェブ小説で緘黙経験を語る(元)当事者たち
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関連情報


10月22日(日曜)かんもくアコースティックライブ


10月22日(日曜日)に開催される「かんもくアコースティックライブ」に、若倉純さんが出演されます。『緘黙の歌声』の先行発売もあるそうです。このライブは緘黙経験を持つアーティストによるもので、出演者には mananaさん、中越千春さん、AIRIさんもいらっしゃいます。完全予約制で、既に予約受付は終了しています。詳しくは、公式ホームページをご覧ください。

↓ 公式ホームページへのリンクです。
◇ かんもくアコースティックライブ2017
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10月22日(日曜)ラジオ番組『緘黙の歌声』


また、かんもくアコースティックライブ開催日と同じ10月22日(日曜日)に、若倉純さんがメインパーソナリティーを務めるラジオ番組『緘黙の歌声』が放送されます。23時00分~23時15分までです。エフエム世田谷での放送ですが、世田谷区外の方でも、インターネットを通じてお聴きになれます。

この日の放送では、ゲストに角田圭子氏(かんもくネット代表)をお迎えするそうです。

↓ ここから番組を聴けます。エフエム世田谷ホームページへのリンクです。
◇ エフエム世田谷83.4MHz
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↓ 過去の放送分はここで聴けます。WWRadio ホームページへのリンクです。9月24日放送分では、CD音源の『歌声』が流れました。
◇ 若倉純の緘黙の歌声
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ツイキャス配信


さらに、インターネットによるライブ配信「ツイキャス」で、若倉純さんは「緘黙ラジオ」に参加されたり、「ツイキャス弾き語り」をされたりしています。気になる方は、若倉純さんのブログでスケジュール等をチェックしてみてください。ライヴのスケジュールも確認できます。

◇ 若倉純さんのブログ
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