英語民間試験での緘黙等への配慮、東大WGの見解

更新日:2018年07月18日(投稿日:2018年07月17日)
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大学入試で活用される、英語民間試験


以前もお話しましたが、大学入試センター試験は廃止され、2020年度からは大学入試制度が変わります。

新制度では、英語に「民間事業者が実施する試験」が活用されます。例えば、英検などです。これは、従来のセンター試験で問うてきた「読む」「聞く」能力に加え、「書く」「話す」能力をも測るためです。これからの大学入試では、英語を「話す」能力の重要性が増してくることになります。

東京大学ではこの英語民間試験の活用について、「入学者選抜方法検討ワーキング・グループ」(WG)が検討を行いました。その結果、答申がまとまり、7月14日にインターネット上で公表されました。

↓ 東大ホームページへのリンクです。
◇ 入学者選抜方法検討ワーキング・グループ答申の公表について
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↓ 教育情報サイト「リセマム(ReseMom)」へのリンクです。
◇ 東大、共通テスト「英語」民間試験は不使用か…年内に実施方針決定
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その答申の中に、次の文を見つけました(太字は私が施したものです)。

また「障害等のある受験生への合理的配慮」を要件にしているとあるが、これについても一部を除いて多くの試験実施団体が同じ文言で将来的な対応に言及しているに過ぎず、何を配慮すべき事項とするか、これにどう対応するかなどについては、少なくとも現時点ではほとんど明らかにされていない。特にスピーキングテストを一律に課す場合、緘黙など「話すこと」に関わる障害をどう扱うかという、きわめて困難な問題が生ずると思われるが、こうした点について議論された形跡もほとんどうかがえない。

↓ PDF(312KB)。7ページ下段に、上の引用文があります。
◇ 入学者選抜方法検討ワーキング・グループ答申
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※ PDFを閲覧するには Adobe Reader が必要です。こちら新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。

前段の「『障害等のある受験生への合理的配慮』を要件にしているとあるが」とは、おそらく、次の文部科学省ホームページに書かれてあることのことと思われます。

↓ 文科省ホームーページへのリンクです。
◇ 資格・検定試験においては、障害者への配慮はなされるのでしょうか。
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現時点での話だが、事実だとしたら少し心配


私は専門的なことはよく分からないのですが、もし東大ワーキングループの指摘する通りだとしたら、緘黙に関わる者としては少し心配ではあります。ただ、何しろあの東大です。東大ワーキンググループのこの見解は他の大学に影響を与える可能性も考えられます。つまり、英語民間試験の活用に消極的な大学が、他に出てくるかもしれません。

また、東大ワーキンググループによる英語民間試験への見解は、あくまで現時点でのものです。今後、緘黙も含めた、障害等のある受験生への合理的配慮の議論が進む可能性は考えられられます(緘黙は認知度が低いので、議論が行われるか少し心配なのですが)。

もっとも、今回の東大ワーキンググループの見解は、まだ東大としての公式見解ではありません。新入試制度についてもまだ十分固まってはいませんし、今後の動向に注目したいです。

ちなみに、私は高校時代、センター試験を国立大学の一次試験として受験し、最終的に国立大に進学しています。あの頃は口がきけなくても、ペーパー試験さえなんとかなれば、一般入試はハンディなく受けられたのでした。それだけに、今回の大学入試改革を他人事とは思えない部分があります。

[2018年7月18日]

一部内容を、若干書き改めました。



英語検定試験、緘黙への配慮は

更新日:2018年07月03日(投稿日:2018年07月02日)
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「話す」能力を問う検定試験の重要性が増している


大学入試センター試験は無くなります。既に繰り返し報道されている通り、2020年度からは、新たに「大学入学共通テスト」が始まります。

新しい制度では、英語に「民間事業者が実施する試験」が活用されます。従来のセンター試験で問うてきた「読む」「聞く」能力に加え、「書く」「話す」能力をも測るためです。しばらくは現行のマークシート方式の試験と併存するかたちになりますが、2024年度からは、民間の検定試験に全面移行します。

特に、「話す」(スピーキング)能力を問う試験は、緘黙がある受験生には重要な問題です。単に話すだけでなく、「積極的にコミュニケーションを図ろうとする意欲や態度」(英検3級以上)を評価する検定もあり、これはなかなか厳しいです。大学入試に限らず、民間の英語検定試験を受ける人は多いと思うのですが、緘黙児者にとってはどうなのでしょうか。

こうした検定試験では、障害がある受検者への配慮が提供されています。緘黙については、何らかの配慮が行なわれているのでしょうか。調べてみました。


方法


英語検定試験も様々ですが、今回は、特に新しい大学入試制度での活用が認定されている9種類の試験について、配慮の情報を公式ホームページで確認しました。

[調査対象]

ケンブリッジ英語検定TOEFL iBTテスト、IELTS、TOEICGTEC、TEAP、TEAP CBT、実用英語技能検定(英検)

※ リンク可能なページについては、リンクを貼っています。なお、GTECについてはPDFファイルです(387KB)。PDFを閲覧するには Adobe Reader が必要です。こちら新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。


結果


緘黙に対する配慮を明記した検定試験はありませんでした。

近いと思われるものとして、「言語障害」(ケンブリッジ英検)と「音声言語障がい」(英検)への配慮があります。例えば英検では、「音声言語障がい(吃音症・その他)」に対して、次のような「発話への配慮」を提供しています。

話がつまる、大きな声がでないなどの状況を面接委員に伝え、注意して聞くよう配慮します。面接の実施方法・評価方法は通常通りです。

また、次のような配慮項目を挙げる検定試験もありました(TOEFL iBTテスト)。言語障害等がある受検者に対し、スピーキング試験を省略する用意があるそうです。

(only applicants who are deaf or hard-of-hearing or have speech disabilities)
○ Listening section omitted
○ Speaking section omitted

それから、これは中学生レベルですが、英検4級と5級のスピーキング試験の場合、「発話に関する配慮」として問題文の音読免除が選択できるほか、質問への解答方法として音声での録音以外(テキスト入力・代理タイピング・代理応答)を選択できるそうです。なお、配慮のあるなしに関わらず、4級と5級のスピーキング試験は専用サイトにアクセスして受検する形式で、自宅、学校などで好きなときに受検できます。

この他、「受検上の特例措置」について明記したものもありました(ケンブリッジ英検)。「独自の裁量により、受検者の該当テストのスコアに、加点し調整することがあります」とのことです。適用の条件としては「一時的・恒久的に身体的に障害のある受検者で、受検の際に身体上の障害による受検上の配慮が受けられなかったり、十分でなかったりした場合にも適用されます」と書かれてあります。

ただ、これらの措置が、緘黙について適用されるかどうかは分かりません。

考察


配慮について


緘黙のようなあまり知られていない障害だと、なかなか配慮の対象として明記してはもらえないのかもしれません。なんとか該当しそうな障害を探すなり、個別に問い合わせるなりすることになりそうです。

先程の英検の「音声言語障がい(吃音症・その他)」は、もしかすると緘黙のような障害も視野に入れているのかもしれません。ただ、あの配慮内容は緘黙にはちょっとしっくりこないのではないかと私などは思います。緘黙の場合、全く声が出なかったり、出たとしても、ごく小さな声で単語や、せいぜい一語文、二語文を話せる程度だったり、そうした傾向があるのではないかと思います。これだと通常の評価は難しそうです。

緘黙の症状も様々ですので、配慮のあり方も様々ではないかと思いますが、緘黙全般にほぼ共通して言えそうなこととしては、「安心できる環境を設定する」や「視線を見ない」「返事はゆっくり待つ」といった配慮が欲しいです。緘黙への配慮については、緘黙の状態によっても、また、試験によっても違うと思うので、検定試験の主催者に問い合わせてみることも場合によっては必要かもしれません。ただ、こうした配慮でどこまで積極的に話せるようになるでしょうか。

いっそ、TOEFL iBTテストの言語障害等に対する措置のように、スピーキング試験を免除という選択肢を用意していただければ、という思いもないではありません。GTECという検定試験でもスピーキング試験が免除されることがあるのですが、それは高度・重度難聴があり、かつ口話にも障害がある受検者の場合であり、緘黙に適用される見込みはどうでしょうか。


申し込みについて


ただ、配慮の申し込みには事前申請が必要です。申請の際には診断書や障害手帳のコピーなどが必要とされる場合があります。ですが、緘黙がある未成年の中には、家族の理解が得られず、診断を受けるまでには至らない人もいるものと考えられます。そうした人の場合、配慮の申請ができません。

気になるのは、学校単位など団体で受検する場合です。私は最近の高校の動向は知らないのですが、大学入試で民間試験が導入されるとすると、団体で受検を申し込む高校が増えることはないでしょうか。その場合の配慮については、どうなるのでしょう。高校に緘黙への理解がない場合はどうなるのか、また、周囲とは違う方法で受検することを本人がどう感じるか、そのあたりのところが気になります。

あと、配慮案内が英文で書かれている検定試験がありました。高校卒業レベル以上の英文のように思われます。受検生はこれを読みこなせるのでしょうか。もっとも、水準の高い英語学習者が受ける検定であれば、これも分かります。


たとえ話せるようになったとしても……


少し話せるようになったものの、発話に苦手意識が残るといった人にとっても、スピーキングは難しい問題だろうと思います。下手に話せてしまうと、かえって配慮は受けられなくなってしまう可能性も考えられます。

また、かなり話せるようになった人でも、緘黙だった頃に学校場面で英語を話す訓練を十分に積めず、そのことがハンディになっている人がいるのではないかと思います。


むすび


英語検定試験の実情を知りもしない私が、ホームページ上の情報だけで悲観的なことを並べてしまいました。ですが、緘黙経験者にも英検に合格した人はいます。

それにしても、民間の検定試験は国公立大学も活用するはずなのに、民間試験とはいえ、緘黙がある受検生への配慮がもし提供できなければ遺憾です。合理的配慮の提供は、国や地方の行政機関なら法的義務です。

※ 事実かどうかは分かりませんが、このような情報があります。



歯医者と緘黙

更新日:2018年06月26日(投稿日:2018年06月26日)
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歯科医から見た緘黙


場面緘黙症の専門文献を探すと、歯科関係のものがちらほら見つかります。緘黙の専門文献が少ない中、ちょっと目立ちます。

◇ 科学技術総合リンクセンター「J-GLOBAL」で「緘黙 歯」と検索
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そのうち以下の文献は、インターネット上で一般公開されています。いずれも、学会発表をまとめたものです。

◇ 種市梨紗・大島昇平・八若保孝 (2017). 子供療養支援士の支援を受けた場面緘黙症患児の歯科適応への取り組みの一例. 小児歯科学雑誌, 55(2), 195.
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◇ 松谷博人・若林宏紀・永田心 (2014). 場面緘黙症患者における歯科治療経験. 三重医学, 57(1), 39.
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◇ 尾口仁志・軽部康代・奥野典子・森戸光彦 (2008). 選択性緘黙の一例. 日本歯科心身医学会雑誌, 23(1-2), 68.
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自意にて近医を受診するも、診療への協力が得られず、平成26年3月当院を紹介で受診された。(種市ら, 2017)

近歯科を受診するも恐怖心が強く、治療困難のため当科初診となった。(松谷ら, 2014)

2か月前に近歯科医院を受診。症状軽減せず、また患者の緘黙状態に対してどのように対応すれば良いか分からず紹介来院となった。(尾口ら, 2008)

緘黙の程度にもよるのでしょうが、緘黙児者に対応できない歯科があるようです。3例とも揃いに揃って、そうした歯科からの紹介での受診でした。緘黙というと学校で起こるイメージが強いですが、このように学校以外の場所で起こることもあるのです。

2例目は、話せないことそのものよりも、その根っこにある不安の強さゆえに治療困難になったのかもしれません。

緘黙児者を受け付けた歯科医も、対応に骨を折った様子が窺えます。例えば……

診療室への入室は多大な労力と時間を要し、壁に張り付いたままで、診療台から離れた椅子に座ってもらうことも困難であった。(種市ら, 2017)

初診時にX線検査や口腔内診査は可能であったが、視線を合わせることはなく、問診に返答はなかった。(松谷ら, 2014)

患者の訴えは必要最小限の言葉と緘黙のみであり、さらに表情もほとんどない。よって患者の訴えやその背景を理解するにはあまりにも少ない情報である。(尾口ら, 2008)

1例目は、いわゆる「緘動」を思わせます。緘黙児者の動作そのものに抑止が強く働き、動き自体を封じてしまう状態のことです。この事例の緘黙は重そうです。

それにしても、問診に返答がないとか、患者の訴えは必要最小限の言葉と緘黙だけとか、このようなことは歯科に限って起こる話ではないのではないかとも思います。他の診療科の医師は、こうした患者にどう対応しているのでしょう。


緘黙を経験された方、どうでしたか?


以上は、歯科医の視点でのお話です。今現在緘黙がある方や、経験者の方は、歯医者はどうされたのでしょう。対応に苦慮する歯科医がいるということは、見方を変えれば、歯科の受診に困難がある緘黙児者がいるということでもあります。

私自身のお話をすると、私は緘黙の診断は受けていないものの(そもそも専門家にかかっていなかった)、学校では長期にわたって話せない経験をしました。歯医者は学校ではなかったことから、少しぐらいは話せたような気もしますが、はっきり覚えていません。少なくとも、学会発表されるような、歯の治療に支障をきたすことはなかったと思います。

私たちの側としては、場合によっては、歯科医に事前に説明を行なって理解を得るとよいかもしれません。かんもくネットのリーフレットや提示カードは、受診の際に役立ちそうです(ただし、このリーフレットやカードの申し込みができるのはかんもくネット会員のみです)。

↓ かんもくネットホームページへのリンクです。
◇ 会員専用 リーフレット・提示カードお申し込み
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↓ はやしみこさんのマンガ第1回『病院で困っています』(PDFファイル)では、提示カードの活用や事前連絡について説明されています。
◇ 知ってサポート☆場面緘黙(かんもく)-学校で話せない子どもの子育て
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