ある専門家「緘黙放置の結果、自殺思考が起こることも」

更新日:2018年10月26日(投稿日:2018年10月25日)
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起こり得る負の結果の一つとして、挙げられる


場面緘黙症が治療されなければ、何らかの負の結果が起こり得ます。

アメリカを代表する緘黙専門家の一人、Elisa Shipon-Blum(エリザ・シポンブラム)氏は、この起こり得る負の結果を9つ挙げ、その最後の一つに「自殺思考と、自殺の可能性」(Suicidal thoughts and possible suicide)を挙げています。

↓ 動画です。29分33秒から始まります。2018年3月12日投稿。


このシポンブラム氏の見解は、同氏が運営する緘黙の研究治療センター(SMartセンター)のホームページにも書かれてあります。

↓ そのホームページです。中盤あたりに書かれてあります。ここでは負の結果は8つ挙げられています。
◇ What Is Selective Mutism – Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center | SMart Center
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この問題について言及した専門家は、シポンブラム氏が初めてではありません。認定臨床専門カウンセラーの Donna Mac氏も、著書の中で取り上げています(Mac, 2015)。

同氏は、緘黙の診断そのものは自殺既遂の特定のリスク要因ではないものの、緘黙児者の多くは孤独、絶望、無力、無価値、重荷といった多くのリスク要因となる類の思考や感情を、長期的に経験すると述べています。

同氏はまた、強い不安が自殺既遂の一つのリスク要因である可能性を示唆しています。


今のところ研究がない、明らかになって欲しい


緘黙の経験者と見られる方で、この種の話をした方は、日本でも以前からインターネット上等で見かけることがありました。場面緘黙症Journalも、コメントを頂いたことがないことはありません。

ただ、緘黙と自殺の関係については、私が知る限り研究は出ていないはずです。冒頭のシポンブラム氏も、何を根拠にあのようにおっしゃったのかは、はっきりしません。

緘黙を経験していない人でも、命を絶ちたいと考えることはあるでしょう。緘黙経験者と見られる方が、その種の投稿をネット上で行っているのを見たからといって、では緘黙にはそのリスクがとりわけ高いかというと、そこまでのことは言えません。

とはいえ、シポンブラム氏があのような見解を示したことはインパクトがあります。緘黙と似た社交不安症など、他の不安症については研究があるようです。そうした先行研究を調べると、緘黙についてもそのリスクがあっても不思議ではないと思わされます。緘黙についても詳しいことが明らかになることを期待します。

どちらにせよ、緘黙が軽く見られて放置されることは無くしたいです。





場面緘黙症とトラウマ性緘黙症は違う

更新日:2018年04月22日(投稿日:2018年04月22日)
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場面緘黙症とトラウマ性緘黙症の違い


場面緘黙症とトラウマ性緘黙症(心的外傷性緘黙症)の違いを説明するなどしたこの記事が、海外で好評のようです。

◇ Q and A Cover Reveal: After Zero by Christina Collins
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書かれてある通りで、トラウマ性緘黙症は、災害、事故、虐待といった強いショック体験の後に、あらゆる場面で急に話せなくなるものです。上の記事では、心的外傷後ストレス反応(PTSR: posttraumatic stress response)と説明されています。

一方、場面緘黙症は、学校など特定場面で話せなくなる不安症です。もともと不安が強い子が学校で声をからかわれて話せなくなるといったことなら時にありますが、トラウマ性緘黙症のような強いショック体験が原因で話せなくなることは稀です。


「ハリウッド版緘黙症」


上の海外記事によると、海外のフィクションで見られる緘黙は、トラウマ性緘黙症が多いそうです。似たようなことを主張した方は過去にもいて、「ハリウッド版緘黙症」(Hollywood version of mutism)という造語を残したアメリカの精神科医がいます(Dummit, n.d.)。海外では緘黙児者には何らかのトラウマがあるという誤解がわりとあるようで、このように両者の区別が強調されることがあります。

こうしたこともあって、場面緘黙症Journalでは、場面緘黙症を扱っているとされる海外フィクションを取り上げるのは、これまで慎重に行なってきています。

日本でもフィクションでトラウマ性緘黙症が多いのかどうかは、私には分かりません。強いショック体験の後に話せなくなる子のフィクションはあっていいと思いますが、それがもし「場面緘黙症」という設定だった場合は注意したいです。

なお、冒頭でご紹介した記事は、場面緘黙症とトラウマ性緘黙症の違い以外にも興味深いことが色々と書かれてあります。インタビュー記事なのですが、インタビューを受けた方は緘黙の経験者です。この方は、緘黙がある人物が主人公の子ども向けフィクション After Zero という本を出版されるそうです。





緘黙のレベル--Ruth Perednik氏の講演より

更新日:2018年04月30日(投稿日:2018年04月14日)
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台湾で3月11日、場面緘黙症の講座が開かれたというお話を以前しました。

◇ 台湾の緘黙講座に500名以上参加、大手メディア取り上げる
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その模様を簡単に紹介した動画が、YouTubeで公開されています。



動画は、台湾で緘黙に関わっていると見られる方たちのお話から始まります。

次いで46秒頃からは、講師の Ruth Perednik氏による講演です(英語)。同氏は20年にわたって緘黙治療に携わってきた、イスラエルの心理学者です。

緘黙のレベル


動画は、Ruth Perednik氏のお話のうち、緘黙のレベルの話に最も時間を割いています(1分20秒頃から3分15秒頃まで)。緘黙のレベルについては、同氏の著書にも、ほぼ同じことが書かれてあります(Perednik, 2016, pp.9-10)。

緘黙のレベル (Levels of Selective Mutism)

1 コミュニケーションの欠如 (non-communication)
2 非言語コミュニケーション (nonverbal communication)
3 囁き声や音を出すことによるコミュニケーション (whispering and emitting sounds)
4 言語コミュニケーション (verbal communication)

最後の「言語コミュニケーション」については、これができるなら緘黙ではないと思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、例えば友達とだけなら話せるなど、これには少しだけ話せる程度のものも含んでいます。

本によると、上の4つの分類はさらに細かく分けることもできます。また、同じ緘黙児者でも、このうちのどれに分けられるかは状況によって変わってきます。


「緘黙のステージ」に似ている?


私は専門家ではないのでよく分からないのですが、この「緘黙のレベル」は、「緘黙のステージ」によく似ていると思います。

「緘黙のステージ」は、アメリカの「場面緘黙症不安研究治療センター」(スマート・センター)によるものです。英語ではSelective Mutism-Stages of Communication Comfort Scaleと呼ぶのですが、日本のかんもくネットが「緘黙のステージ」と分かりやすく訳しています(Shipon-Blum, 2006)。

↓ 英語の画像ファイル。913KB。「スマート・センター」ホームページへのリンクです。
◇ 「緘黙のステージ」を図式化したもの
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「緘黙のレベル」も「緘黙のステージ」も、どちらも非言語コミュニケーションの段階と、言語コミュニケーションの段階に分けて、その間に中間段階を設けていると解釈すると分かりやすいかもしれません。[注]

「緘黙のレベル」は、「緘黙のステージ」に比べるとシンプルです(これに限らず、Ruth Perednik氏の本に書かれてあることは全体的にシンプルです)。緘黙の状態を大雑把に把握するぐらいであれば、シンプルな「緘黙のレベル」が役立つかもしれません。


緘黙の程度


程度も人によって様々


緘黙というと、よくあれができない、これができないといった話になります。例えば、緘黙児者には筆談をすればよいという話もあれば、いや、緘黙児者は筆談もできないのだという話もあります。

ただ、それは緘黙児者にもよるのではないかと思います。中には、少しだけ声を出せるといった場合もあるでしょう。「緘黙のレベル」のように、緘黙にも程度があることを念頭に置くと、このあたりのところが理解しやすくなるのではないかと思います。


スモールステップの取り組みで


また、スモールステップで緘黙に取り組む場合にも、このような程度別の分類は役立ちそうです。全くコミュニケーションが取れない緘黙児者にいきなり言語コミュニケーションをとらせようとするのではなく、まずは非言語コミュニケーションをとることから始めるのです。

ただ、実際のスモールステップの取り組みの際には、もっとステップを細かく分ける必要があるだろうと思います。例えば、イギリスで定番の緘黙治療の本は、1対1のコミュニケーションだけで10段階のステージを示しています(Johnson and Wingtgens, 2016, p.74)。


「緘動」も「コミュニケーションの欠如」として分類できそう


あと、「緘黙のレベル」では、日本で言う「緘動」も「コミュニケーションの欠如」として分類できそうなのが面白いです。動画でも、Ruth Perednik氏は緘動に相当することを話しています。

それにしてもあの動画、500名以上集まる会場の様子は迫力があります。