更新日:2021年02月26日(投稿日:2021年02月26日)

遅発性の子にも、もともと緘黙になりやすい素因がある
場面緘黙症の臨床経験が豊富なエリザ・シポンブラム(Elisa Shipon-Blum)博士が、遅発性の緘黙について話す場面があり、興味深く聴きました。
シポンブラム博士の見解を、私なりの解釈でまとめると……
○ 「静か」だけれども緘黙ではない子が、転校や進学といった環境の変化によって遅発性緘黙になることがある。
○ そうした子には、もともと緘黙になりやすい素因がある。
○ (18歳で緘黙になった人を診たことがあるかという質問に対して)ない。
シポンブラム博士は、特に、素因について強調していると感じます。比較的遅い年齢で緘黙になる子にも、もともと緘黙になりやすい素因があると強調したいのでしょう。
↓ その場面です。42分1秒から始まります。このブログでは便宜上「遅発性」という言葉を使っていますが、この話の中では「遅発性」という言葉は出ません。英語。
※ 上の動画のYouTubeへの直接リンクはこちら。
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余談ですが、上の動画はOutloudという緘黙のポッドキャストです。緘黙を経験した方と、その保護者によるものです。YouTubeの他にも、iTunesやSpotifyなど、各種サイトで配信されています。この回は大人の緘黙についての話です。
私が話せなくなった時期は、遅い
実は私、学校で話せなくなった時期はかなり遅いです。小学4年生の時に経験した2度にわたる転校で、話せなくなりました。専門家に診てもらったことがないため診断も受けておらず、自分は緘黙だったかどうか、はっきり分かりません。
ただ、話せなくなる以前から、大人しい子だったようです。小学3年生の頃、クラスの行事で同級生全員から誕生日メッセージを貰ったことがあるのですが、そのメッセージには「(富条君は)大人しいね」というコメントがいくつもありました。
シポンブラム博士の話と重なるようにも思えます。もともと大人しいという素因があって、そこに転校という環境変化が重なって緘黙?になったのかもしれません。
更新日:2021年02月14日(投稿日:2021年02月14日)

大人の場面緘黙症のトーキングサークル "SM Talking Circles" のお話を先日しました。イギリスのサークルです。
◇ 大人の緘黙サークル(英)
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その中で、このサークルが、就労や大学進学等の際に、緘黙を説明したり、合理的配慮を求めたりするのに役立つ文書のひな形を作っているというお話もしました。
↓ そのひな型です。英文。PDF。240KB。
◇ letter-template-teens-adults-applications-jobs-etc.pdf
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このひな型に、気になる文章がありました。仕事に応募する際に添える文書の一節です(6ページ)。「自分を売り込め!」(Sell yourself!)という趣旨で書かれています。
場面緘黙症は、私が働いたり、理解したり、あるいは、この役割を果たす全責任をとったりする能力には影響しないことを確約したいです。
I want to assure you that SM does not affect my ability to work, understand or take full responsibility for this role.
こう書かれてはいますが、緘黙は働く能力に大いに影響があるのではないかと私は疑問に思いました。具体的に言えば、言語コミュニケーション能力です。話せないと、仕事をする上で大いに支障があります(理解する能力には、確かに影響はないと思います)。
病気や障害の中には、働く能力にさして影響がないものもあります。ですが、緘黙はそうではなく、ここが大きな問題なのです。
しかし、よくよく考えてみれば、上の一文は、話すこと以外は働く能力に影響しないという意味ではないかとも思えてきました。緘黙だと話せないのは自明なので、そこを除いた話なのではないかと。このあたり、どう解釈すればよいのかは、はっきりとは分かりません。
最後に余談ですが、日本では、緘黙はその人が持っている力を発揮できない障害というような独特の認識がある程度広まっています。私はこうした認識は誤っていると考えます。これだと、理解力を含め、ありとあらゆる能力が発揮できないという誤解を与えかねません。
更新日:2020年07月18日(投稿日:2020年07月18日)

ある保護者の疑問に、多くのコメント
場面緘黙症は、決断力に影響があるのか?
ある緘黙児の親御さんが、Facebookの緘黙コミュニティ(英語)でこう質問しています。なんでも14歳の娘さんが、「飲み物はいかがですか」のような簡単な質問に対して、通常は「はい」と答えるのに、肩をすくめたというのです。
◇ そのFacebook投稿
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この投稿に、57件ものコメントが寄せられています(投稿主のコメントも一部含む)。内容は、それは不安で話せなかったのではというもの、うちの子もそうだというもの、自分も緘黙だけど決断はひどく苦労するというもの、など様々です。
緘黙になると、本当に決断力が鈍るのかどうかは分かりません。研究もないのではないかと思います。
私の場合は……
私もかつて学校などでは話ができなかった者です(ただし、専門家にかかったことはなく、診断も受けていません)。その個人的経験から言うと、確かに話せない場面では、決断しにくかったことがあります。
私の場合、2つの理由からだったような気がします。
(1) 決断をすると、誰かに知られることがあるが、それが嫌だった
以前「緘黙ストーリー」で書いたことがあるのですが、例えば、将棋で一手を指すのに、かなりの時間がかかっていました。それは、「富条君はこう考えているんだ」と相手や観戦者に評価されるのを極端に嫌ったからです。これは緘黙というより、社交不安的なところがあるかもしれません。
他にも、自分の好みや内面を相手に知られるのをひどく嫌ったため、そうしたことに関わる決断は苦手としていたように思います。
※ 「緘黙RPG」でも、「人が見てると選びにくいな……」という場面を作りました。

(2) 緘黙?の自分ができないような選択をせざるを得ない場合、決断しにくかった
これはなかなか具体例が思い出せないのですが、例えば、発話や、活発な活動を求められるような結果になる決断は、なかなかできなかったように思います。それはもちろん、緘黙?の私に、そのようなことはできないからです。
これらはあくまで私の話で、人によって違いはあるだろうと思います。
上の2つとは別に、話せない場面になると、決断力そのものが鈍っていたような気もするのですが、そうでもなかったような気もして、このあたり記憶が曖昧です。