2009年に出ている日本の緘黙関連論文(確認分)

更新日:-0001年11月30日(投稿日:2009年06月23日)
近年、わが国においては、場面緘黙症の(元)当事者やその関係者らが中心となって、緘黙に関する本が次々に出版されています。私などは、これに刺激を受けて、学術の世界でも、緘黙の研究がもっと活発に行われるようになるのではないかとか、これまでにない緘黙の論文が出るようになるのではないかなどと少し期待していました。しかし、私の知る限り、今のところそうした動きはありません。

さて今回は、場面緘黙症に関連する日本の新しい論文2本を取り上げ、簡単なコメントを加えます。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

◇ 中山たまき, 中山篤, 浦源次 (2009). 特別支援学級在籍児童の居場所獲得の過程-A児の事例-. 群馬大学教育実践研究, 26, 277-285.

これは面白かったです。特別支援学級に在籍する緘黙の子の事例ですが、普通学級の緘黙の子への支援を考える上でも、示唆するところがあると思います。緘黙の子(特に小学校低学年前後)をお持ちの保護者の方や、そうした子を受け持つ先生方には、面白い内容かもしれないと思います。

この論文では、話すことを支援の目標には置いていないのですが、不安を軽減させ、活動の範囲を増やすことに成功しています。

ところで、論文の中で気になった箇所を二つ。

○ 「A児の気持ちを第一に決めたいと思ったが、本児というより母親の意向が強いような印象を持った」

緘黙の子と保護者の意向が対立した場合、支援する立場の者は、どちらの意向をより尊重すればよいのだろうかと考えさせられました。緘黙の子の年齢が上であればあるほど、本人の意向を尊重ということになるのでしょうか。このあたり、私にはちょっと分かりません。

○ 「母親は担任教師に対してとても協力的で、A児の理解の助けになればと多くの資料を提供してくれたり」

資料とは、もしかすると、以前このサイトでも配布していたものでしょうか(現在、資料はかんもくネットさんに移り、「Knet 資料」となっています)。そうかどうかは分かりませんが、いずれにせよ、保護者のこうした協力が、担任の子どもに対する理解を深め、子どもが変わることにつながる、ということはやはりあるようです。保護者の頑張り次第で、子どもは変わります!

※ この論文は、以下のページよりPDF形式で無料で読むことができます。ページ下部「View/Open」をクリック。PDFを閲覧するにはAcrobat Readerが必要です。Acrobat Readerはこちら(新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。

群馬大学学術情報リポジトリ
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◇ 松浦直己, 岩坂英巳 (2009). 通常学級における認知行動療法の適用に向けて-事例検討と特別支援教育研究センターと地域連携の取り組み-. 教育実践総合センター研究紀要, 18, 203-209.

緘黙の子に、認知行動療法を学級担任が通常学級で行ったおそらくかなり珍しい事例で、興味深いです。ただ、少し専門的な内容で、教師や専門家向けだろうと思います。ただ、場面緘黙症の経験者(自己診断ですが)の私が読んでも、自分の認知の歪みについて考える上で、勉強になる箇所がありました。

※ この論文は、以下のページよりPDF形式で無料で読むことができます。ページ下部「View/Open」をクリック。PDFを閲覧するにはAcrobat Readerが必要です。Acrobat Readerはこちら(新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。

奈良教育大学学術リポジトリ
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緘黙経験者の社会適応

更新日:-0001年11月30日(投稿日:2009年01月08日)
このブログでは、時々緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回は、これです。個人的に面白いと思ったので、取り上げます。

南陽子, 門慎一郎, 西尾博, 大塚隆治, 梁川恵, 奥田里美, 片岡朗 (1987). 選択緘黙の社会適応に関する研究. 安田生命社会事業団研究助成論文集, 23(1), 109-129.

■ 概要

一言で言うと、場面緘黙症経験者の社会適応などについての研究です。

かつて京都市児童福祉センターが治療的にかかわった場面緘黙症児のうち、アンケートによる予備調査を行った上で、面接や電話聴取することのできた34名(男子17名、女子17名)について、発症後6~27年の期間(平均15.8年)を経た予後像とそれに関連があると考えられるいくつかの要因を検討、考察しています。

調査の結果、34名中29名(85%)に緘黙症状の改善が見られました。また、25名(74%)は集団適応が、26名(76%)は社会適応が良好でした。そのほか、様々なことが明らかになっています。

■ 考察

私なりに気づいたこと考えたことをまとめます。

◇ 場面緘黙症児の予後、集団適応、社会適応を調査

場面緘黙症児の予後、社会適応は重要な論点だと思います。場面緘黙症の予後は良く社会適応にも問題がないのか、それともそうではないか。どちらかによって、緘黙の問題の重要性や支援のあり方も変わってくるでしょう。

この問題に一石を投じたものが今回の論文と言えます。今回の論文では、34名もの場面緘黙症児の予後と社会適応を調べています。調査期間も長期にわたり、緘黙症児の義務教育終了後の予後、社会適応を調べた貴重な研究です。そうした意味で、私はこの論文をとても興味深く読んだのですが、学界ではあまり注目されていないようで、被引用回数は少ないです。





緘動か「カタトニア」か

更新日:-0001年11月30日(投稿日:2008年11月24日)
このブログでは、時々緘黙症の論文を取り上げています。私は専門家ではないのですが、自分自身の勉強も兼ねて。

今回は、2007年12月に発表された、日本の新しい研究です。

◇ 桜井優子, 汐田まどか. (2007). 広汎性発達障害にカタトニアを合併したと考えられた全緘黙の思春期例. 小児の精神と神経, 47(4), 281-286.

■ 概要

初診時15歳の男児で、緘黙を主訴とした症例の事例研究です。全緘黙症で、広汎性発達障害が背景にあり、カタトニア様症状が見られます。

■ 考察

私なりに気づいたこと考えたことをまとめます。

◇ カタトニア

カタトニアについては、以下のリンク先のページに良い説明があります。

○ 「カタトニア」の説明別ウィンドウ
○ 別の「カタトニア」の説明別ウィンドウ

例えば、18段の階段を上るのに3時間かかってしまう子どもの例が報告されているそうです。