英緘黙団体が異例?の寄付の呼びかけ

更新日:2024年02月16日(投稿日:2024年02月16日)
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英国を代表する場面緘黙症団体SMIRA (Selective Mutism Information & Research Association) がこの度、寄付の呼びかけを行っています。

SMIRAの寄付の呼びかけそのものは珍しいことではありません。ですが、今回は状況から見て、やや異例の呼びかけではないかと思います。具体的には、次の2点が挙げられます。

(1) SMIRAウェブサイトのトップページ上段(つまり一番目立つところ)に、呼びかけの文章が掲載されています。また、あまり更新されないFacebook公開ページでも呼びかけが行われています。

(2) 呼びかけの文章に、やや切迫感があります。例えば、"If SMiRA is to survive beyond this year" という文章は、下手をするとSMIRAは来年まで生き残ることができないのではないかと思わせます。

なお、SMIRAのウェブサイトとFacebook公開ページは以下の通りです。

◇ SMIRAウェブサイトへのリンク
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◇ SMIRAのFacebookページへのリンク
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欧米には日本にはない寄付文化があり、SMIRAの財政も、その文化の上に成り立っています。

SMIRAの呼びかけによると、コロナ禍と近年の物価高により蓄えが「枯渇」(deplete)しているそうです。新型コロナウイルスの感染拡大や物価高は、多くの国が経験したことです。SMIRA以外の世界各国の緘黙団体は、同様の事態に陥ってはいないでしょうか。

SMIRAは緘黙の団体としては国際的に影響力があります。日本でもSMIRAの本が翻訳されて発売されるなどした過去があります。財政難により活動に支障をきたすようであれば、影響は英国内にとどまりません。


雑誌『児童心理』休刊について

更新日:2022年08月23日(投稿日:2022年08月23日)
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場面緘黙症を何度も扱ったことがある教育雑誌『児童心理』が休刊しました。

といっても、休刊は2019年2月のことです。当時このブログで話題にしようかどうか迷っていたところ、書きそびれてしまい、3年以上も経ってしまったのでした。

休刊の理由について、出版社の金子書房は「情報収集・伝達の多様化等、市場環境の変化も重なり」と記しています。

↓ 当時の休刊の「お知らせ」です。金子書房ウェブサイトへのリンク。Wayback Machineによるアーカイブ。
◇ 雑誌『児童心理』 休刊のお知らせ - 株式会社 金子書房
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『児童心理』は一般の書店でも見かけることがある雑誌でした。実際、緘黙の記事が掲載された時、私は地元の書店の店頭で同誌を買ったことがあります。同誌は古くから緘黙を取り上げていて、私が知る限りでは、1970年代からおよそ20回にわたって緘黙を取り上げています。それだけに、休刊のニュースを知った時はショックでした。

教育雑誌の休刊・廃刊は、以前から相次いでいたそうです。最近では、90年余の歴史がある小学館の『教育技術』が2022年にウェブ媒体に移行しています(ただし、『総合教育技術』は紙媒体での刊行を継続)。

何しろ、この種の雑誌は民間企業が出版している場合が多いです。市場環境の変化等で売れ行きが厳しくなると、休刊や廃刊につながるはずです。教育や緘黙支援といった分野に市場がどうこうという話を持ち出すと拒否感を持つ人がいるだろうと思うのですが、少なくとも民間企業の出版事業については、市場の論理を切り離して考えることはできないでしょう。

緘黙を何度も取り上げた雑誌が休刊したのは今思い出しても残念ですが、これも時代の流れなのだろうかとも思います。


緘黙で、いくらお金が動くか

更新日:2022年03月27日(投稿日:2022年03月27日)
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緘黙のテレビドラマを作ると、億かかる?


「場面緘黙症を扱ったドラマを作って欲しい」

こういう声が、緘黙関係者から出ることがあります。ドラマとは、キー局のテレビドラマのことでしょう。

私も学校で長期間話せない経験をした身として、気持ちは分かります。一方で、経済学部出身ゆえか、「いくらお金がかかるのだろうか」と考えてしまいます。

テレビドラマ制作費の実態については、正確なところは公にされていないようです。ただ、どこまで信用できるかは分かりませんが、以下のような週刊誌系の報道もあります。これによると、キー局のテレビドラマの制作費は、特殊な例は別とすると1本2,000万円~3,000万円といったところでしょうか。

↓ zakzakへのリンクです。
◇ NHK、コロナ禍も安定のドラマ製作費 大河は11年間で2000万円UP、民放は安価なバラエティー番組に走り
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↓ NEWSポストセブンへのリンクです。
◇ 1本1億円? 各局看板ドラマの制作費、果たしてペイするか
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連続ドラマだと、全話で億の制作費がかかるでしょう。そういえば、2016年に吃音のヒロインが登場するドラマ『ラヴソング』が、フジテレビの月曜夜9時台のドラマとして全10話放送されましたが、仮に制作費が1話2,000~3,000万円だとすると、全話で2~3億円かかった計算になります。

↓ ドラマ『ラヴソング』についての記事です。
◇ フジテレビ「月9」ドラマに、緘黙の絵本
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これほど制作費がかかるとすると、私のような遠慮がちの性格の者は、気安く緘黙のドラマを作ってくれと言うことはできません。特に、営利企業である民放についてはそうです。私たち緘黙関係者が出費してドラマを作るのではなく、一民間企業に出費して作ってもらうわけですから。

ただ、緘黙のドラマを作って欲しいという願いが間違っているとも思いません。私が遠慮がちなだけでしょう。


参考:緘黙で動いたお金


参考までに、これまで緘黙でお金がいくら動いたかについて、分かる範囲で見てみます。

仰天ニュース


上記zakzakの記事によると、バラエティ番組の制作費は1本1,000万円~1,500万円ほどだそうです。

バラエティと言えば、日本テレビ系番組「ザ!世界仰天ニュース」が、緘黙の経験者を全面的に取り上げたことが2度あります。1度目は、2時間スペシャルの中の4エピソードの1つ。2度目は、1時間の通常放送の中の2エピソードの1つでした。

仮に制作費が1時間1,000~1,500万円だとすれば、緘黙のエピソード2回で総額1,000~1,500万円かかった計算になります。

科研費


緘黙の研究に、科研費が配分されています。科研費とは、文部科学省と、その外郭団体である独立行政法人日本学術振興会による研究助成事業です。

交付金額は様々ですが、最も多い研究では、5年間で2,561万円というものがありました。最少額は、3年間で143万円。

総額では、緘黙の研究への配分額は6,958万円です。

↓ 過去に科研費に採択された緘黙の研究を閲覧できます。
◇ KAKENで「緘黙」と検索
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緘黙の本の売上高


2008年に出版された『場面緘黙Q&A』は、2019年に累計2万部に達したそうです(出版社情報)。2,000円ほどの本ですので、売上高は次のような計算になります。

12年間の売上高:約4,000万円
1年間平均:約330万円

なお、同書はロングセラーとして知られます。他の緘黙の本もここまで売れているかどうかは、分かりません。緘黙の本の売上は、公にされない場合がほとんどです。

緘黙団体への寄付額


かんもくネットは、同団体に寄せられた寄付金の額を公開しています。それによると、

2021年6月~2020年7月:54万2,000円
2019年7月~2020年6月:63万7,300円

などとなっています。

蛇足:場面緘黙症Journalサイト運営費



年間3,523円(人件費除く)


結び


こう比較してみると、億の金額で緘黙のテレビドラマが作られるとしたら、これは経済面でも大変なことが分かります。