結婚して子どもがいて、就労もしている-ある豪州の成人当事者

更新日:2018年09月15日(投稿日:2018年09月15日)
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37歳女性の記事


オーストラリアの情報サイトでしょうか、ten daily というサイトで9月13日、場面緘黙症の記事が掲載されました。

El Earlさんという、37歳の成人当事者に取材を行なったものです。結婚や就労といった、成人当事者特有の話があります。臨床心理学者のElizabeth Woodcock博士による解説も挿入されています。

↓ その記事へのリンクです。
◇ The Mute Photographer: How Her Photos Do The Talking
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Elさんはこれまで20人以上の専門家と会ってきたにも関わらず、当時は専門家に緘黙への理解が不足していたことから、適切な治療を受けられなかったようです。Elさんの緘黙がここまで長引いた一因は、ここにあるのかもしれません。


非言語コミュニケーション、結婚式の誓いの言葉も筆記で


Woodcock博士が指摘するように、年齢が高くなればなるほど緘黙は治しにくくなるとされます。Elさんほどの年齢になると、緘黙を治すことはもちろんですが、同時に、緘黙でありながらどう社会適応を図るかという視点が重要になってくるのではないかと思います。

記事でも、緘黙を治すことよりも、緘黙のままでも非言語コミュニケーションなどで人と関わるElさんの姿に焦点が当たっています。

実はElさん、結婚して子どもがいます。これには、非言語コミュニケーションが大きな役割を果たしたようです。Elさんはオンラインで現在の夫と出会い、二人の関係はオンライン上の書き言葉で深まりました。結婚式では、誓いの言葉を筆記で行なったのだそうです(!)。なお、記者へのインタビューも、書き言葉によって行なわれています。

また、Elさんは写真家として働いていらっしゃいます。自ら写真家の仕事を立ち上げたそうです。写真撮影も、言葉を使わないコミュニケーションのようです。

Elさんにはいまだ緘黙による困難はあるだろうと思うのですが、記事を読む限り、写真家として一定の社会適応を果たしているように見えます。


一つのロール・モデルになるか


そういえば、2016年にスイスの新聞で取り上げられた緘黙の成人当事者も非言語コミュニケーションはとれる方で、一定の社会適応を果たしていました。奇しくも、その方の職業も写真家でした。

↓ そのスイスの新聞の記事について。
◇ 大人の緘黙当事者、非言語コミュニケーションで生きる(スイス)
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Elさんは話せるようになったら、なおよいと思います。ただ、緘黙が成人期に続いても、理解者がいて、非言語コミュニケーションがとれて、自分に合った仕事に出会うことができれば、ある程度何とかやっていけるかもしれないという一筋の光明を感じさせる記事だとは思います(ただし、非言語コミュニケーションがとれない緘黙児者もいます)。

もっとも、それが簡単にはいかないから次のような現実があるのですけれども。

失業は、緘黙当事者の間ではよくあることだとWoodcock 博士は言います。

「私が関わった多くの成人当事者は、話さないゆえに仕事に就いていなかったり、学校を卒業していなかったり、進学していなかったりします。ですので、彼女ら彼らの人生に、本当に大きな影響を及ぼしているのです」

Dr Woodcock says unemployment is common among people with Selective Mutism.

“Many of the adults I work with don’t have jobs or didn’t finish school or go on to further study because they don’t talk so it’s really impacted their lives,” Dr Woodcock said.

※ なお、これはオーストラリアでの話です。Elさんにしても、誰も雇ってくれなかったことから、起業したという経緯があります。

大人の緘黙当事者、非言語コミュニケーションで生きる(スイス)

更新日:2017年10月29日(投稿日:2017年07月25日)
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スイス最大の日刊紙に掲載


スイス最大の日刊紙が、成人の場面緘黙症当事者を正面から取り上げていたことを知りました。2016年12月24日のことです(電子版で確認)。

↓ Tages-Anzeiger (『ターゲス・アンツァイガー』)電子版へのリンクです。ドイツ語。
◇ Ich kann nicht sprechen – ich bin Mutist (新しいウィンドウで開く


非言語コミュニケーションはとれる成人当事者の例


記事で取り上げられたのは、27歳の男性当事者です。緘黙は幼稚園入園時から続いています。

この男性は言語コミュニケーションはとれないのですが、非言語コミュニケーションをとることができます。目の前の記者にも、スマートフォンの文字入力アプリやジェスチャーを通じてコミュニケーションをとっています。

また、上の記事のページには動画もあるのですが、これを見る限り表情も豊かで、緘黙でない人と比べても差がなさそうなほどです。

緘黙児者の中は、非言語コミュニケーションも満足にとれなかったり、表情が乏しかったりする人もいるのですが、この男性はそこまでではありません。

この男性はセラピストのもとに通っていて、緘黙克服はまだ途上です。一方、写真家としての仕事を始めていて、話さなくてもジェスチャーを使うなどしてこなしているようです。電話ができないので、この方のウェブサイトには電話番号を載せていないとか。話さなくても仕事がこなせるのであれば、社会適応はある程度できていると見ることもできそうです。


20代後半にまで緘黙が続くと、治るのに時間がかかりそう


成人期の緘黙は研究がとりわけ進んでいない上、私は専門家ではないのでよく分からないのですが、20代後半にまで緘黙が続くと、緘黙を治すのには時間がかかりそうです(ただし、治らないとまでは思いません)。

記事にも、男性は緘黙がアイデンティティの一部になってしまい、アイデンティティを変えるのは長い道のりだという意味のことが書かれてあります。話さない状況が持続すると起こり得る問題として「緘黙identity」という造語を荒木冨士夫氏が1979年に用いていますが、それを連想させる記述です(荒木, 1979)。

このように治りにくいとなると、緘黙を治すことはもちろんですが、同時に、緘黙でありながら社会適応を図るという福祉的な視点がますます重要になってくるのではないかと思います。このスイスの男性の例はその点、一つのモデルになるかもしれません(もっとも、このように上手くは、なかなかいかないかもしれませんが)。


非言語コミュニケーションで一定の社会適応、だが……


ただ、気になる点があります。私はこの男性にお会いしたことがないのでいい加減なお話になるのですが、非言語コミュニケーションが上手すぎるように思います。あくまでこの男性の場合ですが、ある程度非言語コミュニケーションがとれるようになっても、何らかの原因で言語コミュニケーションに移行できず、非言語コミュニケーションばかりが発達してしまったなんてことはないだろうかと思います。そのため、発話の回避行動が維持・強化され、緘黙が長期化してしまった可能性を考えてしまいます。

話さなくても非言語コミュニケーションで社会適応というのもよいですが、緘黙は治せるなら治した方がよいとも思います。非言語のみのコミュニケーションには限界があるでしょうし、不安症である緘黙が持続すると他の精神疾患を続発する可能性も指摘されています。ですが、大人の緘黙は治りにくそうですし、このあたり難しいです。







「大人の場面緘黙症」専用コーナーを作りました

更新日:2017年11月01日(投稿日:2016年07月21日)

大人の緘黙コーナー作りました


「大人の場面緘黙症」専用コーナーを作りました。

◇ 大人の場面緘黙症 (新しいウィンドウで開く

パソコン、スマートフォン、タブレット端末での閲覧に対応しています。従来型携帯電話での閲覧については、申し訳ございませんが、しばらくお待ちください。

[2016年7月24日追記]

従来型携帯電話版の公開は見送ることにしました。このコーナーは、PDFや海外サイトへのリンクが多い内容だからです。申し訳ございません。


また、ページ上部の緑のナビゲーションバーに、新たに「大人の緘黙」を設けました。「特選記事」は「その他」に移しました。


大人の緘黙には、昔から問題意識を持ってはいたが……


大人の緘黙については、昔から問題意識を持ってはいました。古くは緘黙サイトのパイオニア「ココロのひろば」で、「大人の場面緘黙症」について書かれてあるのを読んだことがあります。

↓ 「ココロのひろば」へのリンク。2000年の記録。緘黙サイトの黎明期から大人の緘黙を取り上げた「ココロのひろば」の先見性には驚かされます。

◇ 大人の場面緘黙症 (新しいウィンドウで開く

また、私自身、20歳の時は緘黙でこそなかったとは思うのですが、こんなシャイな20歳は見たことがないというぐらいに話せない青年でした。このため、緘黙が成人期にまで至る人がいても不思議ではないと感じていました。

ただ、大人の緘黙については情報が少なく、取り上げにくい話題であるとも感じていました。

大人の緘黙については、海外情報ですら乏しいです。緘黙全般の情報が日本に少なかった一昔前によく使った、海外情報を持ってくるという手法が、大人の緘黙については使いにくいです。


Twitter をきっかけに反省、知っている範囲のことだけでも


ですが、先日 Twitter で、成人当事者は見捨てられたのではないかという趣旨の投稿があり、しかもその投稿が多数の人にシェアされていたのを目にして、これまでの姿勢を反省しました。自分が知っている範囲の情報だけでも、まとめてみることにしました。

といっても、内容は少ないですし、皆様にとっては「これぐらい知っている」という情報も多いかもしれません。今後、できれば更新を重ね、情報を増やしていきたいです。