「緘黙を知って」最初に言い出したのは誰か

更新日:2018年08月08日(投稿日:2018年08月08日)
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「場面緘黙症を知って欲しい」

啓発活動と言えばよいのでしょうか、緘黙児者や経験、保護者などがこう訴えているのを目にするのは、今日珍しくありません。

啓発イラストを描いて Twitter に投稿したり、文房具店の試し書きコーナーで「場面緘黙」と書いたりと、その方法も多彩です。中には、講演を行ったり、緘黙の歌を作って、ライブやラジオ番組で理解を訴えたりする人もいます。

こうした声に応えてか、小説家や漫画家、メディア関係者が緘黙を取り上げ、理解を広めようとしてくださった例もあります。

ですが、日本で最初に「緘黙を知って欲しい」と訴え出したり、具体的な取り組みを始めたりした人はいったい誰なのでしょうか。調べてみることにしました。

方法


緘黙児者や経験者、保護者らによる情報発信の歴史を遡ると、今日に繋がる動きは、2000年頃に緘黙を扱った個人ホームページが誕生したことにその起源を求めることができます。そこで、2000年頃以降のインターネット上の情報を中心に、緘黙の認知と理解の拡大を訴える動きの源流を探ってみることにしました。

昔のホームページのほとんどは閉鎖してしまい、現在は閲覧ができません。ですが、Wayback Machine を使えば、一部ではありますが、主要な過去のページはある程度見ることができます。


結果


「ほほえむ」


私が確認できた範囲で最も古かったのは、緘黙を経験したぴろりさんという方による個人ホームページ「ほほえむ」の開設でした(2000年10月23日開設)。「ほほえむ」では、2002年8月10日から9月27日の間の更新により、トップページに次の一文が加えられています。

「ほほえむ」は選択性緘黙、斜視、管理人の趣味などで構成されているサイトです。なかでもとりわけ人前で話せない選択性緘黙についての理解を広めるために存在します。
https://web.archive.org/web/20020929085729/http://www.hohoemu.com/

※ 既に閉鎖したホームページへのURLをご紹介するのは、もしかしたら当時の管理人さんにご迷惑かもしれません。ですが、情報の出所を明示したかったので、このようなかたちにしました。

この記述は、2003年1月30日から2003年3月20日までの間に、次のように更新されています。

「ほほえむ」は選択性緘黙(かんもく)の理解を広めるため、斜視の人を勇気づけるため作られました。
https://web.archive.org/web/20030320015650/http://www.hohoemu.com/

また、「ほほえむ」で緘黙を扱ったページの冒頭には、次のように書かれていました。理解を広める対象は、緘黙の当事者ではない一般の人と解釈できます。

これを期に皆さんが緘黙児について少しでも興味を持ち、第三者には非常に誤解されやすい彼等のことを、少しでも理解していただけたなら幸いです。
https://web.archive.org/web/20021210035415/http://www.hohoemu.com/selective_mutism/index.html

これが調べて分かった結果です。ついでに、緘黙への認知や理解を広めるその後の動きを、もう少し見てみることにします。


2002年


緘黙を経験したさくらかよさんという方が、『君の隣に―緘黙という贈り物』という本を出されています。現在は絶版で、私はこの本を持ち合わせていないのですが、「BOOK」データベースによると、次のような内容だそうです。

幼少期から緘黙と共に歩んできた著者が、緘黙症を広く世に知らしめたいと自らの体験を赤裸々に綴る。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4835547470/(孫引きです)

「ほほえむ」によると、この本は2002年11月15日発行とのことですが、構想や執筆は当然、それよりも前のことでしょう。


2003年頃


smiling_mamaさんと言う方が「smile_room」というホームページを開設されています。トップページには次の一文がありました。

☆場面緘黙児の母親のサイトです
その知名度UPと少しでも理解して戴けたらと思って
このHPを作ってみました
https://web.archive.org/web/20040218232230/http://plaza.rakuten.co.jp/smiling1126/

2004年


小学校教諭、井上賞子さんによる啓発作品「心の声が聞こえますか?」Web版が「ほほえむ」に公開されました。
https://web.archive.org/web/20050109075754/http://hohoemu.littlestar.jp/modules/news/article.php?storyid=4

「Web版」ということは、Web版でないものがそれ以前に存在した可能性が窺えます。ですが、これについては現在のところ私には分かりません。

現在はかんもくネットによって、かんもくネットホームページ上やYouTubeで公開されています。

↓ 一番下に「心の声が聞こえますか?」があります。PDFファイル。
◇ かんもくネット~啓発資料~
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↓ YouTube版です。


考察


確認できた限りでは、2000年10月23日に「ほほえむ」が開設されたのが最初です。緘黙児者、経験者、保護者らによる日本初のホームページの開設は、2000年4月10日(「ココロのひろば」)が有力ではないかと思います。とすると、ネット上ではかなり早い段階から緘黙への認知や理解を広めようという動きがあったと言えます。

初期の緘黙のホームページは、メンタル系サイトの一種のようなものでした。メンタル系サイトは、同じ問題を抱える人が交流を深める目的で作られた、いわば内向きのものが多かったです。「心の病気にご理解のない方、荒らし目的の方の入室をお断りします」という断り書きがあるサイトもありました。そんな中、緘黙の理解を広めるため作ったという「ほほえむ」の外向きの意識は興味深いです。

さくらかよさんは、2002年、緘黙を広く世に知らしめるために本の出版までされています。出版社の文芸社は自費出版で有名な会社だったかと思います(ただし、文芸社だから自費出版と判断できるかはちょっと分かりません)。なお、この本は宮城県の新聞『河北新報』で紹介されています(2003年3月24日朝刊)。

さくらかよさん、smiling_mamaさん、井上賞子さんも、ともに「ほほえむ」との関わりがあった方です。もしかすると、「ほほえむ」が当時、緘黙の認知や理解を広める運動の拠点としての役割を果たしていたのかもしれません。ですが、そうではなくて、当時は緘黙のサイトが少なかったので、単に緘黙の世界が狭かったのかもしれません。

こうしたインターネットを中心とした動きはその後も続き、20年近く経った現在に繋がっています。活動は次第に拡大し、今日ではメディアで緘黙が大きく取り上げられるなどしています。一方、緘黙の認知や理解が十分に広まったという話はいまだに聞きません。

今回の調査対象は2000年代以降でしたが、90年代以前に、緘黙の認知や理解を世に広めようとした方がいらっしゃったかどうかについては、よく調べてみないと分かりません。ですが、ざっと思いつく限りでは、ちょっと心当たりが浮かびません。仮にあったとしても、今日の啓発活動との連続性は、今のところ確認できません。

※ 毎年8月には、緘黙サイトの歴史をお話しすることにしています。緘黙についての動きをおよそ15年にわたって見てきた者として、昔のことを伝えたいです。

Yahoo!カテゴリが終了、緘黙サイトも登録されていました

更新日:2018年03月27日(投稿日:2018年03月27日)
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かつては利用者が多かった「Yahoo!カテゴリ」


「Yahoo!カテゴリ」が、2018年3月29日にサービスの提供を終了します。

◇ お知らせ - Yahoo!カテゴリ
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Yahoo!Japan創業時から続く検索エンジンが終了することに、時代の移り変わりを感じざるを得ません。

検索エンジンというと、今日ではGoogleを思い起こす方が多いでしょう。キーワード入力によって、ロボットにより収集されたウェブページ情報を探すものです。このタイプの検索エンジンを、一昔前は「ロボット型検索エンジン」と呼びました。

これに対するのが、Yahoo!カテゴリを代表とする「ディレクトリ型検索エンジン」でした。人の手によってカテゴリ分けされたリンクを辿ってウェブサイトを探すものです。

昔は、Yahoo!カテゴリを利用する人はとても多かったです。このため、ホームページを運営する側としては、いかにして自分のホームページをYahoo!カテゴリに登録させるかが課題とされました。ですが、Yahoo!カテゴリに登録されるのは至難の業で、ごく限られたホームページしか登録されませんでした。

ところが……


「場面緘黙症専用」「子リスくんのおはなし」が登録された


今から十数年前、「場面緘黙症専用」というホームページを訪問したところ、トップページに「このサイトはYahoo!登録サイトです」の文字が!

「東大に合格するよりも難しい」とも言われたYahoo!カテゴリ登録審査に、緘黙サイトが通ったことに驚きました。また、緘黙サイトがYahoo!カテゴリに初めて登録されたことで、「これで場面緘黙症が世の中に認められた」とまで私は考えてしまいました。

2006年頃には「子リスくんのおはなし」が登録され、緘黙サイトとしては2番目のYahoo!カテゴリ登録サイトになりました。


うちのサイトは登録されなかった


実は私も、場面緘黙症Journalを立ち上げた時に、Yahoo!カテゴリへの登録を申請しました。併せて、Yahoo!カテゴリに緘黙の専用カテゴリを設けてもらえないかという要望もお送りしました。ところが、審査は通りませんでした。一度ならずも、何度申請してもです。

「緘黙の会」(現・かんもくの会)という会のホームページも、2006年にYahoo!カテゴリへの登録を申請したのですが、却下されたそうです。

◇ ヤフー登録失敗?
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かくも難しいYahoo!カテゴリへの登録。結局、緘黙サイトで登録されたのは、先ほどの「場面緘黙症専用」「子リスくんのおはなし」の2件だけでした。それでも、Yahoo!カテゴリに緘黙サイトが2件も登録されたのは心強く感じたものです(現在は「子リスくんのおはなし」の1件のみです)。ですが、欲を言えば、緘黙の専用カテゴリは作ってもらいたかったなあと思います。



ウェブ掲示板--おそらく日本初の、緘黙についての交流の場

更新日:2017年10月28日(投稿日:2017年08月06日)
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場面緘黙症についての交流の場としては、日本では初めてではないか--

2000年頃にインターネット上で生まれた、緘黙などをテーマとした掲示板のことです。

アメリカやイギリスとは違い、日本ではインターネット普及以前には、緘黙の支援団体はありませんでした(初の団体設立は2006年)。小さな親の会などの存在も、少なくとも私は聞いたことはありません。日本では、ネット上の掲示板が、緘黙の当事者・経験者、保護者らの最初の交流の場だったのではないかと私は見ています。

今回は緘黙の掲示板を、その初期である2000年代前半を中心に取り上げたいと思います。今となってはネット上にあまり残っていない幻の交流の場です。私は当時をリアルタイムで知る者として、しっかりとお伝えしたいと思います。お付き合いいただけると幸いです。

今回の記事では、緘黙の掲示板を2通りに分類してお話します。一つは、業者運営型。もう一つは、個人運営型です。整理してお話したいと思います。

業者運営型の掲示板


緘黙掲示板の代表格だった「Yahoo!掲示板」


「Yahoo!掲示板」というツリー型掲示板がかつて Yahoo!Japan にあり、数多くの書き込みが寄せられていました。緘黙についても「緘黙症」というトピックがありました。

↓ 現在アクセスできません。
◇ Yahoo!掲示板「緘黙症」 (新しいウィンドウで開く

webアーカイブスサービス「Wayback Machine」で調べたところ、トピックが立ち上がったのは2000年11月13日のことでした。確認できる最後の投稿は2003年4月26日で、この時点で1,624件の書き込みが寄せられています。

その後間もなく、後継トピック「緘黙症(再)」が立ち上がりました。この後継トピックは、確認できる最後の投稿が2004年7月15日で、この時点で251件の書き込みを記録しています。両者合わせると、1日平均1件以上の書き込みがなされた計算になります。

育児カテゴリに保護者が立てたトピックとあって、当事者・経験者よりも保護者の書き込みの方が多かったようです。

トピックは早くも2000年に立ち上げられていますし、書き込み頻度も多く、さらに緘黙を掲示板の明確なテーマとして掲げていることから、緘黙に関する初期の掲示板では最も代表的なものと言えるのではないかと思います。

なお、Yahoo!掲示板の投稿によると、これ以前にも「しゃべらない子」と題する、緘黙に関するトピックが立てられていたようです。その詳細についてまではつかめませんでした。


裏の代表格だった「2ちゃんねる」


Yahoo!掲示板が、緘黙掲示板の表の代表格とすれば、裏の代表格は2ちゃんねるでしょう。

2003年6月16日に最初のスレッドが立てられ、およそ2年後の2005年3月11日に書き込み数が1,000件に達しました。ここでも1日平均1件以上の書き込みがなされた計算になります(ただし、スレッドの趣旨とは無関係な書き込みも含みます)。緘黙のスレッドは以後も続きますが、2000年代後半以降の掲示板の状況については今回の記事の対象外ですので、触れずにおきます。

この2003年に立てられた最初の緘黙スレッドは、現在でも閲覧できます。この時期の掲示板での緘黙に関する書き込みが現在でも全て残っているのは、この2ちゃんねるスレッドぐらいです。貴重ですので、ご紹介することにします。保護者の書き込みも少なくありませんが、どちらかと言えば当事者・経験者の書き込みが多いかもしれません。

↓ 2ちゃんねる「場面緘黙症」最初のスレッド。
◇ ◆場面緘黙症◆ (新しいウィンドウで開く