2002年に表明された、緘黙の追跡的研究構想

更新日:2020年08月12日(投稿日:2020年08月12日)
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幻に終わった?緘黙の追跡的研究


昔の場面緘黙症のウェブサイトのアーカイブを見ていたところ、懐かしいサイトを見つけました。

↓ 閉鎖されていて、アクセスできません。日本語サイトでした。
◇ Selective Mutism Research Institute
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これは、「現在場面緘黙の子供とその保護者、かつて場面緘黙(自称)であった方々の追跡的研究を目的とする」サイトでした。

2002年1月20日に開設され、ウェブリング「緘黙の輪」にも登録されていました。

サイトには当時「コンテンツを少しずつ増やしていきます」と記してあって、少なくとも2002年4月24日には更新が行われています。ですが、ウェブサイトのアーカイブWayback Machineによると、その後2004年11月1日まで更新が確認できません。そして、2004年12月16日には既にサイトが閉鎖されています。

このサイトは研究のための協力を呼びかけていましたが、その具体的内容や、研究の進展状況については何の情報も公開されないまま、サイト閉鎖に至っています。私としても、当時発表された緘黙研究の中に、思い当たる追跡的研究はありません。何らかの理由で計画が進まなかったのかもしれません。大きな構想だったのですが、幻の研究になってしまったのでしょうか。


研究企画者は、一般の方


注目すべきは、この研究を企画したサイトの管理人です。はっきりとは書かれていないのですが、「管理人は心理士でも医師でもありません」「現在は個人的な研究であり、団体、大学等とは一切関係ありません」との記述があります。

どうやら、一般の方らしいです。大学等とも無関係とのことですから、卒業論文などのために立ち上げたサイトでもなさそうです。また、「Selective Mutism(私の注:場面緘黙症のこと)によって不当な扱いを受けてきた子供たちを見ていると痛々しく思います」と、まるで第三者であるかのような記述もあったことから、緘黙の当事者や経験者ではない方の可能性も考えられます。


あの時代に緘黙はほぼ見向きもされなかった、自分たちで何とかするしかなかった


「なぜ一般の方が緘黙の研究を?」「研究は専門家に任せればいいのに」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、この時代をリアルタイムで知る私からすれば、もっともなことに思えます。緘黙の研究で、期待できる専門家は日本にはいないと思われたからでしょう。

当時は、緘黙は本にはあまり書かれていない、メディアもほとんど取り上げない、インターネットで検索してもヒットする情報が乏しいという状況でした。この意味で、緘黙は世間からはほとんど見向きもされていなかったのです。このため、専門家が研究してくれるとか、新聞が記事にしてくれるといった、誰かが何とかしてくれるという期待を持つことが難しかったのです。

ですから、一般の方が、自分の力で何とかするしかありませんでした。実際、当時の緘黙関係者の中には、よく勉強されている方がいらっしゃいました。「フユー」や「ほほえむ」という個人サイトの管理人さん(どちらも緘黙経験者)は、そんな本どこから見つけたんだというような専門書の中から、緘黙の説明をウェブサイト上で紹介していました。ネット上に緘黙の情報がないなら、自分たちで……ということだったのでしょう。

「ほほえむ」の管理人さんは、海外サイトの翻訳まで行ったこともあります。それも、大人の緘黙についての情報の翻訳です。なお、この管理人さんは、「英語がサッパリ」とのことでしたが、翻訳サイトを使ってまで翻訳していました。

今回お話しした緘黙の追跡的研究のウェブサイトを見て、そんな時代を思い出しました。今では、あの頃はほとんど見向きもされなかった緘黙に関わろうとする、当事者や経験者、保護者以外の人がにわかに増えています。例えば、専門家などです。そうした人たちが本当に期待できる存在なのかどうか、時によっては厳しい目で見極めることが、私たちの新しい課題となっています。

※ これまで毎年8月には、緘黙サイトの歴史をお話しすることにしてきました。来年からは、この投稿を4月10日前後に行いたいと思います。4月10日は、「緘黙の輪の日」ですので!これからも、長年緘黙についての動きを見てきた者として、昔のことを伝えていきます。



mixiコミュニティ「場面緘黙症」が10年

更新日:2020年05月14日(投稿日:2020年05月14日)
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コメント数2,700件の大規模コミュニティ


mixi(ミクシィ)のコミュニティ「場面緘黙症」が、開設10周年を迎えています。

このコミュニティは、2010年2月10日に、まんさくさんという方が開設しました。

5月14日現在、参加メンバー数は988人、トピック数は65件、トピックに寄せられた総コメント数は2,695件に上ります。この他、「つぶやき」や「イベント」にも多数の投稿があります。mixiには緘黙のコミュニティが9件あるのですが、その規模は群を抜いています。

[mixiの緘黙コミュニティ、参加メンバー数トップ3]

場面緘黙症 988人
~場面緘黙児 親の会~ 184人
緘黙(かんもく)~黙して語る~ 68人

[参考:Facebookの、主な日本語緘黙グループ]

場面緘黙をもっと知ってほしい 566人
場面緘黙症★子育て 213人


投稿は今年に入ってもある


mixiは、日本におけるSNSの火付け役とも言える存在です。かつては多くの人が利用していましたが、TwitterやFacebookなど他のSNSに押されて久しいです。ですが、コミュニティ「場面緘黙症」への投稿は今年に入ってもあります。ただ、もう少し投稿が以前のように活発になると、より利用しやすくなりそうです。

mixiの特徴の一つは、匿名制であることです。似たサービスのFacebookは実名制ですが、実名で緘黙について話をするのはハードルが高いと感じる人はいることでしょう。そうした人とは、mixiは相性が良さそうです。


緘黙関係者の声をまとめて読める貴重な場


それにしても、コミュニティの投稿を読んでいると、10年分の投稿の蓄積は本当に多いと感じます。緘黙関係者の声をまとめて読むことができる貴重な場となっており、もう少し評価されてもよいように思います。

このコミュニティで面白いのが、最もコメント数が多いトピックが「独り言」だということです。コミュニティは本来mixi利用者同士の交流の場で、わざわざそこで独り言をする必要はないのではないかと一見思えるのですが、何らかの理由で必要なのでしょう。他のメンバーと深く関わらず気楽に、しかし、みんなが集まるコミュニティの空気を感じながら独り言をつぶやきたい--もしかすると、こういう心理だろうかと推測します。

なお、このコミュニティは、mixiの緘黙コミュニティでは唯一の公開コミュニティです。このため、実はmixiに登録されていない方でも投稿を一部読むことができます。ただ、そのアドレスをご紹介するのはメンバーの方に申し訳ない気がするので、しないことにします。気になる方は検索してみてください。


場面緘黙症Journalの記録より


なお、mixiコミュニティ「場面緘黙症」の歴史も古いですが、場面緘黙症Journalの歴史も負けず劣らず古いです(今年で15年目!)。そこで、場面緘黙症Journalがmixiコミュニティについてどう書いてきたか調べてみました。

2010年「十大ニュース」の候補に


私が最初にmixiについて書いたのは、2010年の年末に投稿したブログ記事「緘黙・今年の十大ニュース」です。この記事の最後で、「mixi の人気コミュニティ」について軽く触れています。

おそらくこれはコミュニティ「場面緘黙症」のことで、当時十大ニュースの候補として検討するほど賑わっていたことが窺えます。

↓ その記事へのリンクです。
◇ 緘黙・今年の十大ニュース
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2012年当時、全ての緘黙コミュニティの参加者数は、延べ500人


また、2012年1月に投稿したブログ記事「ネット上で、緘黙に日ごろ関心を持っている人の数は?」でも関連する記述があります。mixi の緘黙を主題としたコミュニティ(「場面緘黙症」以外のコミュニティも含む)の参加者数は、延べおよそ500人と記録されています。

現在、コミュニティ「場面緘黙症」だけでも988人のメンバーがいます。下火になって久しいmixiとはいえ、2012年以降にも参加者数が伸びていたことが分かります。

↓ その記事へのリンクです。
◇ ネット上で、緘黙に日ごろ関心を持っている人の数は?
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↓ ちなみに、2012年当時のmixiの状況。既に下火になり出していたようです。日経電子版へのリンクです。
◇ 揺れるミクシィ、SNSの「老舗」はなぜ間違えたのか
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2017年当時、メンバー数900人


あと、「用語集」では、「場面緘黙症(mixi コミュニティ)」の項目を設けています。「メンバー数906人(2017年8月27日現在)」等という古い数字が記されています。すみません、サイトの更新が行き届いてなくて……。

↓ 場面緘黙症Journal用語集へのリンクです。
◇ ネット上で、緘黙に日ごろ関心を持っている人の数は?
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日本初の緘黙サイト開設から、20年

更新日:2020年04月10日(投稿日:2020年04月10日)
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「ココロのひろば」が、2000年4月10日に開設


日本初とみられる場面緘黙症のウェブサイト「ココロのひろば」の開設から、今日で20年です。

かつてインターネットで「場面緘黙」と検索しても、専門的な文献が1件ヒットしただけという時代がありました。そんな時代に、緘黙経験者の管理人さんにより、ココロのひろばは誕生しました。当初は緘黙のみならず、社会的ひきこもりなど、心の悩み全般を抱える人たちのオアシスのような存在のページとしてスタートしています(当時はこういうメンタル系サイトがいくつもありました)。

↓ そのあたりの経緯が詳しく書かれてあります。インターネットアーカイブ「Wayback Machine」2009年8月23日アクセス。
◇ 「ココロのひろば」あとがき
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こうした昔の「ホームページ」は、若い方はもしかしたらピンとこないかもしれませんが、掲示板やゲストブック、チャットといった交流の場があり、賑わったものです。

ココロのひろばと言えば、このサイトから派生したウェブリング「緘黙の輪」(2000年開設)も重要です。緘黙関係のウェブサイトが少しずつ増えていくにつれ、登録サイト数も増えていき、末期の2006年には30件を超えるまでに発展しました(このブログも登録されました)。主だった緘黙サイトは大体ここに登録されていました。

↓ 場面緘黙症Journal用語集へのリンクです。
◇ 緘黙の輪
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今日につながる当事者、経験者、保護者の交流の源流


私はココロのひろばが賑わっていた頃をリアルタイムで知る者です。あまりこれを言うと年齢が特定されそうなので、ぼかして言いますが、ココロのひろば開設1年目~3年目頃のいずれかの時期に、初めてこのサイトを訪問しています。

その私に言わせると、今日広まっている緘黙の当事者や経験者、保護者らの交流は、ココロのひろばが源流と言ってよいのではないかと思います。つまり……

ココロのひろばができて以降、緘黙を扱った個人ホームページが増え、緘黙の輪で結ばれていく

緘黙を専用に扱ったホームページ「場面緘黙症専用」ができる

「場面緘黙症Journal」が開設する

場面緘黙症Journal掲示板の交流から、「かんもくネット」ができる

現実世界で交流したり、活動したりする人も多くなってゆく

(以下略)


単純にまとめると、このような流れです。この他、当時のYahoo!掲示板や2ちゃんねるといった交流の場や、かんもくネットにわずかに先駆けてできた「緘黙児を支援する会」(現在のかんもくの会)などの存在も大きかったです。ネット上の交流の場も、個人ホームページからブログ、さらにはSNSへと変遷をたどっています。

ココロのひろばはまた、早くから緘黙のオフ会を開催したり、「大人の場面緘黙症」という言葉を使ったりと、先進的なことを行っていたことも見逃せません。


2000年は「緘黙の輪元年」 4月10日は「緘黙の輪の日」


私などは、ココロのひろばが開設された2000年(平成12年)を「緘黙元年」と呼んでもいいぐらいではないかとさえ思います。

ただ、緘黙支援はこの年以前から行われていましたし、全ての当事者、経験者、保護者らがお互いに交流を深めてきたわけでもありません。ですので、「緘黙の輪元年」ぐらいが妥当かもしれません。ネーミングですが、この年を境に、当事者や経験者、保護者らの輪が初めてできたことと、ココロのひろばから派生したウェブリングの名称から、こう勝手に名付けました。

また、これからは毎年4月10日を「緘黙の輪の日」と呼び、ココロのひろばが開設された日を個人的に記念することにします。

※ 初期の緘黙サイトの中には、ココロのひろばより早い1999年8月に開設された「浮遊」もありました。「日本全国緘黙症・元緘黙症探し」という掲示板でも知られたサイトです。ですが、そのサイトの管理人さんも「ココロのひろば」で場面緘黙症という言葉を初めて知り、緘黙のコンテンツを充実させていった経緯があります。

※ ココロのひろばは、現在は存在しません。