更新日:2020年08月24日(投稿日:2020年08月24日)
1週間のプログラム ドイツで、場面緘黙症の集中プログラム、あるいはキャンプ(試験版)が行われるようです。 ↓ そのページ。 ◇ INMUT - Start - Mutismus | Hasteworte (新しいウィンドウで開く ) といっても、私は専門家ではなく、ドイツ語も読めないのですが、翻訳サイトでドイツ語を英訳して何とか読み取ります。 題名:INMUT- Start 目的:緘黙児のコミュニケーションパターンを変えること 日にち:2020年11月23日(月曜日)~29日(日曜日) 時間:一日中 場所:Schullandheim Barkhausen(ユースホステル) 対象:5~12歳の緘黙児とその家族 参加者数:5~10家族 主催:Hasteworte(言語聴覚士などとして活動するSabine Busch氏が運営) 備考:Ehlerding Stiftung(財団)からの寄付があった この事実は、ドイツの緘黙団体Mutismus Selbsthilfe Deutschland e.V.が、Facebookページで取り上げています。 ↓ このプログラムを紹介するドイツの緘黙団体。 ◇ INMUT - Start Einwöchiges... - Mutismus Selbsthilfe Deutschland e.V. | Facebook (新しいウィンドウで開く ) リンク先からは分からないのですが、上の記事は「固定された投稿」で、要するに目立つよう投稿されています。団体としては、特に多くの人に知ってもらいたいと考えていることが窺えます。 ただ、ドイツでも新型コロナウイルスの感染が広まっています。開催はどうなるのでしょうか。プログラムのより詳しい内容や、理論的背景なども気になります。緘黙の集中プログラムやキャンプは、米国を中心に、世界各地で広まる 緘黙児者やその家族を集め、5日間程度の集中プログラムやキャンプを開催する動きは、アメリカを中心に、世界各地で広まっています。私が把握している範囲では、アルゼンチン、イタリア、ベルギー、香港でも行われてきました(細かい内容は、プログラムやキャンプによって異なります)。これまでこのブログでお話してきた通りです。 今回のプログラムは他国の影響を受けたものか、受けたとしたらどの国のどのプログラムの影響を受けたのかが気になるのですが、公式ページには特に書かれておらず、分かりません。 どちらにしろ、ドイツで行われることにインパクトはあります。
更新日:2020年06月24日(投稿日:2020年06月24日)
これまでお話ししてきたように、アメリカなどで近年、多数の場面緘黙症の子どもや保護者を集めた集中プログラムやキャンプが行われています。緘黙児を対象とした治療目的のプログラムだけでなく、保護者を対象とした緘黙改善のためのトレーニング等をも行うものです。 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される今の状況で、こうした催しは実施可能なのでしょうか。 集中プログラムやキャンプが行われなくなると、緘黙児者や保護者にとって痛手でしょう。支援の選択肢の一つを失うことになるからです。 また、推測ですが、主催者にとっても痛手かもしれません。主催者は民間の専門機関であることが多く、収入源につながる可能性が考えられるからです。集中プログラムやキャンプに限らず、新型コロナ感染拡大の影響により、緘黙児者や保護者の間で受診離れが進み、民間専門機関の経営を圧迫していないか心配です。 そこで、支援者らはどういう対応を取っているのか、プログラムのウェブページを見て確認してみることにしました。その結果、バーチャル開催のプログラム、新型コロナ対策を施した上で開催するプログラム、新型コロナについては今のところ特に何も書かれていないページなどがあることが分かりました。中止? この他、集中プログラムやキャンプの開催情報を載せなくなったところもあります。中止ということなのでしょうか。不明 これは、新型コロナの感染拡大を受けたバーチャル開催なのか、そうでないのか、どちらにも解釈できそうに思われた例です。 フロリダ国際大学子ども家族センターが主催するBrave Bunchという集中プログラムなのですが、プログラムの有効性を「ランダム化比較試験」という信頼性が高い方法で検証しようとしています。注目に値するのですが、果たしてどうなったのでしょうか。 ◇ Selective Mutism (新しいウィンドウで開く )結び バーチャルでの集中プログラムやキャンプの開催は、これまでにない動きです。アメリカはもともとウェブセミナーやオンライン診療が緘黙支援の世界でも広まっており、バーチャル開催が行われる土壌があります。 最後に、Mighty Mouth Kids Campを主催するニューヨークのKurtz Psychologyは、上記リンク先ページの中で次のような前向きなことを述べています。皮肉なことに、コロナ禍は、私たちが保護者や子どもたちをいかに支援するか再概念化する、素晴らしい機会を与えてくれました。 Ironically, this has given us an incredible opportunity to re-conceptualize how we help parents help their kids! 未曾有の状況の中で、新たな支援法が生まれれば面白いです。
更新日:2019年09月02日(投稿日:2019年09月02日)
※ 上の画像は、緘黙合宿とは無関係です。念のため。40年前の日本で、緘黙児の合宿プログラム こうした世界の流れは、日本には入ってきているのでしょうか。少なくとも私が知る範囲では、集中プログラムを実施したという話も、あるいは計画中だという話も、聞いたことがありません。 ただ、これとは趣を異にするのですが、緘黙児を対象とした合宿が日本で行なわれたことがあるという論文を読んだことがあります。それも、今を遡ること40年前、1970年代末の話です。興味深いのでご紹介します。 ◇ 安倍順子 (2002). 緘黙児の心理査定-心理教育プログラムの実践を通して-. 九州社会福祉研究, 27, 15-23. ※ 1970年代末に行なわれた合宿を、2002年に分析した研究です。 合宿プログラムの概要を、論文より少し書き出します。プログラムの概要 期間 ;197X年 8月3日~8月6日(3泊4日)場所 ;某県少年自然の家(渡船の必要な島に立地)方針 ;子どもグループの活動は遊びやゲーム中心で、緊張をとき、感情表出を促す。親グループでは、自由な話合いの中から相互の支え合いや気づきをめざす。参加者 ; (1)スタッフ;8名 (2)参加児童;8名(緘黙児6名、姉妹児2名) (3)保護者;6名(母親5名、父親1名) 集中プログラムとの共通点 この合宿は、今日海外で実施されている集中プログラムやキャンプと共通する点があります。といっても、海外のプログラムも全て同じ内容ではありませし、私は全てを把握しているわけでもないのですが、だいたい共通しているのではないかと思う点をいくつか挙げてみたいと思います。 まず、夏季に複数の緘黙児を集めて行なっている点です。やはり夏休みのような、学校が長期にわたって休みの時期でなければ、何日間にもわたるプログラムは実施できません。また、この時期だからこそ、こうしたプログラムの実施には意義があるのではないかとも思います。せっかく学校で緘黙が改善傾向にあっても、長期休暇を挟んでしまうと、休み明けには後退してしまうかもしれないからです。 また、参加児童と同等の数のスタッフが同行している点も、共通しています。スタッフがマンツーマンで支援に当たったのでしょう。それにしても、よくこれだけのスタッフを集められたものです。 それから、保護者もともに参加し、子どもとは別の支援が提供されている点も共通しています。やはり子どもが何日間にもわたって家を離れるとなると、保護者も同伴というかたちになるのでしょう。その結果、合宿所に緘黙児の保護者が多数集まるという状況ができるわけで、その状況が、有効に活用されています。それにしても、70年代末に緘黙児の保護者が6名も集まっていたとは、親の会はなかったであろう当時としては、極めて珍しかったのではないかと思います。集中プログラムとの違い 一方、今日の海外の集中プログラムやキャンプと異なる点もあります。まず、遊戯療法を志向していることです(論文では「遊戯療法オリエンテッド」という表現)。海外では、行動療法や親子間相互交流療法が軸です。 スケジュールも朝から晩まで本当に一日中です。スタッフは、お風呂まで一緒に入ったようです。 きょうだい児(姉妹児)が少数ですが混じっている点も、違いとして挙げられます。合宿には保護者も同伴するので、一緒に連れて来られたのかもしれません。合宿では、姉妹児が参加者の緘黙児と仲良くなり、積極的に話しかける場面もあったそうです。 そして、保護者向けの支援が自由な話し合いである点も、違っています。今日の海外の集中プログラムでは、親向けの教育が行なわれています。これには、プログラム終了後も、緘黙改善につながる関わり方ができるよう、親を指導する狙いもあるようです。その他、読んだ感想 その他、少年自然の家で合宿した点は、なるほどそういう活用可能な資源もあったと気付かされました。ただ、場所が場所だけに、緘黙児の他にもたくさんの宿泊者がいたそうです。 それから、この論文は心理査定(アセスメント)の視点から論じられています。合宿プログラムを通じて、個別の心理療法場面ではみられない生活場面(食事場面、入浴場面、就寝時の場面等)でのチェックも可能であると等の指摘もあります。今日海外で行なわれる集中プログラムは治療が目的なので、この視点は意外に感じました。1回限りの試行的なものだった この合宿は、1回限りの試行的なものだったそうです。合宿中に緘黙が改善した子も複数いたのですが、このため、その効果が学校場面に広がることはなかったそうです。 その40年後の今日、海外では集中プログラムやキャンプが盛んに行なわれています。私は専門家ではありませんが、今にして思うと、合宿という着想はよかったかもしれないだけに、1回限りで終了したのはもったいなかった気もします。にほんブログ村参加中です いつもクリックありがとうございます。にほんブログ村