スウェーデン王室の基金が助成

更新日:2022年06月12日(投稿日:2022年06月12日)
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緘黙のサマーキャンプに対して


スウェーデン王室の基金から、助成が認められた--

スウェーデンの場面緘黙症団体のFacebookeが、先日大いに盛り上がりました。

↓ そのFacebookページへのリンクです。
◇ Tala om tystnad
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この基金は、ロイヤルカップルの結婚式基金(Stiftelsen Kungaparets Bröllopsfond)というもので、グスタフ国王とシルビア王妃が1976年に結婚した際に設けられた基金だそうです。障害がある子どもや若者のためのプロジェクトへの支援を行っています。

↓ 基金の解説。スウェーデン王室ウェブサイトへのリンクです。Google翻訳で日本語に訳しています。
◇ Kungaparets Bröllopsfond | Kungahuset
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今回助成が認められたのは、緘黙のサマーキャンプです。助成額は40,000クローナ(約51万円)です。なお、助成を受ける団体の数は、緘黙の団体を含めては25あります。

このサマーキャンプの内容なのですが、詳細は把握していません。情報が見つからないのと、スウェーデン語がよく分からないのと。ですが、分かる範囲でお話しすると、サマーキャンプを主催するスウェーデンの緘黙団体によると、このサマーキャンプはまだ実績が乏しい(ない?)らしいです。まずは小規模でスタートするそうです。それから、王室の基金以外からも、助成を受けているようです。


キャンプは、他国でも例あり


緘黙の治療キャンプは、海外では複数の国で行われてきました。私が把握している限りでは、以下の通りです。

アメリカ:CommuniCamp


◇ CommuniCampウェブサイト
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◇ 場面緘黙症Journalブログで取り上げた記事
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イタリア:Vacanzina


↓ Google翻訳で日本語に訳してあります。
◇ イタリアの緘黙団体ウェブサイト、Vacanzinaに関する情報
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◇ 場面緘黙症Journalブログで取り上げた記事
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ベルギー:(特に名前はありません)


↓ Google翻訳で日本語に訳してあります。
◇ ベルギーの緘黙団体ウェブサイト、キャンプに関する情報
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◇ 場面緘黙症Journalブログで取り上げた記事
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治療プログラム「SPACE」

更新日:2022年05月19日(投稿日:2022年05月18日)
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注意すべき「配慮」


臨床心理学者の Veronica Raggi 氏が、場面緘黙児など、子どもの不安への「配慮」について論じています。特に、親が行う子どもへの「配慮」についてです。

↓ その記事です。アメリカの雑誌 Psychology Today ウェブサイトのブログ。英語。
◇ Addressing Child Anxiety by Reducing Accommodation 
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例えば、誰かが緘黙児に発話が必要な場面に直面した時、親がすぐ代わりに答えたり、うなづきやジェスチャーを促したりするのではなく、緘黙児が答えるまで5秒待つとか、質問を繰り返すといった適切な調整を行って、返答できるよう促します。このあたりは子どもにもよりますが、いずれにせよ、不適切な「配慮」は、状況を悪化させる可能性があります。こうして不適切な親の配慮を減らし、子どもが不安に対処できるスキルを身につけるよう支援する必要性を説いています。

[追記(2022年5月19日)]

「配慮」と書きましたが、ここでは「巻き込まれ」の方が適切かもしれません。英語では accomodation と呼びます。


SPACEプログラム


この種の議論は、英語圏の緘黙支援ではよく聞きます。ただ、上の論考が他と違うのは、Supportive Parenting for Anxious Childhood Emotions (SPACE) という治療プログラムにまで言及されている点です。著者の主張は、このSPACEプログラムの考え方に沿ったものとみられます。

SPACEプログラムは、不安症や強迫症がある子どもや若者を持つ親をベースにした治療プログラムです。親の行動を変えることによって、子どもの不安症などの改善を図ります。これはランダム化比較試験という信頼性の高い方法で有効性が検証されています。北米ではメディア(大手含む)で何度も取り上げられるなど、少なくとも一定の注目度はあるようです。開発者はエール大学チャイルド・スタディー・センターのEli Lebowitz准教授です。

といっても、私は専門家ではないので、詳しい説明をするのは難儀です。そこで、SPACEプログラムの詳しい情報を解説したものを、いくつかご紹介したいと思います。

↓ 日本の学会でSPACEプログラムのお話を開発者から聴かれた方の報告。
◇ 認知療法学会・認知行動療法学会に参加しました 前編 - あらたまこころのクリニック | 名古屋市瑞穂区の心療内科・精神科 
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↓ 東京大学の大学院生(当時)による説明。論文。199ページ後半をご覧ください。PDF。1.2MB。
◇ 強迫性障害の患者に影響を与える家族の要因と家族に対する支援に関する研究の動向と展望 
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↓ SPACEプログラムの公式サイト。英語です。
◇ About SPACE - SPACE Treatment 
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SPACEプログラムについては、開発者がアメリカ最大の緘黙団体 Selective Mutism Association の年次総会(2019年)で基調講演を行うなど、北米では緘黙支援でも注目されているようです。



緘黙児者の隣に座って話しかける

更新日:2022年04月22日(投稿日:2022年04月22日)
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2013年に、場面緘黙症の重要な論文が出ました。ランダム化比較試験という信頼性が高い方法で、緘黙児へのある介入法の有効性を検証したものです。緘黙児者のランダム化比較試験は当時としては先進的でした。私が知る限り、日本ではいまだに発表されていません。

この論文の筆頭著者は、ノルウェーのBeate Oerbeck氏でした。

↓ その論文です。英文。
◇ A randomized controlled trial of a home and school-based intervention for selective mutism – defocused communication and behavioural techniques
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この研究で検証された緘黙児への介入法は、行動療法と "defocused communication" というものを軸にしたものです。行動療法は日本でも「スモールステップの取り組み」などと呼ばれポピュラーですが、"defocused communication"とは何ぞや?

defocused communication は、「焦点ぼけコミュニケーション」が直訳だろうかと思います。変な訳ですが、とりあえず以下ではそう記載します。なお、ノルウェー語では defokusert kommunikasjon となります。

焦点ぼけコミュニケーションとは


論文によると、焦点ぼけコミュニケーションは、(ノルウェーでの?)数多くの緘黙児との臨床経験から開発されたものだそうです。

詳しい説明は、以下のページの説明が分かりやすいのではないかと思うので、そちらをご紹介します。ノルウェー語のページですが、Google翻訳で日本語で読めるようにしています。

↓ そのページです。ノルウェーの場面緘黙症協会ウェブサイトへのリンクです。Google翻訳で日本語に翻訳されます。
◇ 場面緘黙症の治療
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私は専門家ではないのですが、上記サイトの説明にはうなづける部分があります。

例えば、緘黙児に話をする時は、隣に座るという箇所(2番目の項目)。これは緘黙関係だけでなく、一般的にも使われるテクニックです。相手の真向かいに座ると、緊張が高まりやすいからです。私がお世話になったある臨床心理士は、カウンセリングの場面では真正面ではなく、いつも斜め向かいに座っていました。また、私が大学時代に受けたある授業では、向かい合うのは「対決の構図」だとして、先生は黒板の前で学生に向かって話すのではなく、教室内をあちこち歩き回りながら話されていました。

それから、「たとえ反応しなくても、子供に話しかけてください」という箇所(3番目の項目)は、日本の一部の緘黙当事者・経験者の主張と重なります。何も反応がなくても、緘黙児者は話しかけられるだけで大体は嬉しいものだというものです。

ただ、うなずいたり首を振ったりして答えられる「はい」「いいえ」型の質問(5番目の項目)は、注意が必要ではないかと私などは思います。非言語コミュニケーションすら取れない場合なら、まずはそこから始めるというのは分かります。ですが、ある程度の段階に達したら、適切な方法で、発話を促すことも考えるべきではないかと思います。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

↓ 場面緘黙症Journalの過去の記事より。
◇ 緘黙児が口頭で答えやすい質問(症状が軽い場合)
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現在でもノルウェーでは行われている


この焦点ぼけコミュニケーションは、現在でもノルウェーでは行われているらしいです。最近発表された以下の文献でも、紹介されています。

↓ Psykologi i kommunenというノルウェーの心理学サイトへのリンク。Google翻訳で日本語に訳しています。ボリュームたっぷりの記事です!2022年公開記事。
◇ Selektiv mutisme hos barn og unge - hvordan arter det seg i barnehage og skole og hva er god hjelp?
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