緘黙を深刻視しなければならない理由

更新日:2020年01月07日(投稿日:2020年01月07日)
アイキャッチ画像。
「場面緘黙症を深刻に受け止める必要がある5つの理由」
(5 MOTIVOS POR LOS CUALES EL MS DEBERÍA SER TOMADO SERIAMENTE!!!)
(5 Rasons Why You Need to Take Selective Mutism Seriously)

スペイン語圏で場面緘黙症の支援を行う Mutismo Selectivo Internacional が、昨年12月、Facebookページでこんな投稿を行ないました。

↓ その投稿です。
◇ Mutismo selectivo en niños: qué es y cuáles son los síntomas
新しいウィンドウでひらく

もともとは、イギリスの緘黙団体 SMIRA によるものだそうです。私は SMIRA の会員ではなく、一次情報の確認はできていません。

その「5つの理由」をご紹介し、私なりに少しコメントをしてみたいと思います。このコメントには、私の解釈が入っています。

理由1 場面緘黙症がある人を支援する戦略は、あらゆる人に、非常に大きなプラスの影響がある


不安を避けるのではなく受け入れ挑戦することや、スモールステップの取り組みを学ぶことなどによる、いわば教育的効果を指します。

緘黙そのものの話ではなく、支援を行うことによる得られる副産物のようなものの話ですね。

(原文:Strategies used to support people with SM have a huge positive impact on EVERYONE)


理由2 場面緘黙症は、あなたが考える以上に、発症率が高い


イギリスでは緘黙は140人に1人と言われており、上の投稿でもこの数字が紹介されています。日本では500人に1人と言われていて、もう少し稀と見られているようです。この理由3が日本でも当てはまるかどうかは分かりません。

(原文:Selective mutism is more common than you think)


理由3 場面緘黙症の感情的影響


要するに、本人が辛い思いをしているからという理由です。

(原文:The emotional impact of selective mutism)


理由4 場面緘黙症の財政的影響


理由4とまとめてお話します。

(原文:The financial impact of selective mutism)


理由5 場面緘黙症の経済的影響


理由4も5も、要するに、早期支援が行われないと、よりコストがかかるからという理由です。支援のための「社会的投資」 (social investment) が大きくなるとか、成人当事者の失業 (unemployment) についても、上の投稿では言及があります。

イギリスでは早くから、精神疾患の社会的コストの推計の試みが行なわれていました。理由4と5は、イギリスらしい視点かもしれません。緘黙についてはこの種の推計が行なわれたという話は聞かず、社会的コストも個人のコストもどれだけかかるかは知りませんが、早期支援によりコストを減らせることは予想されます。

この理由を挙げる場合、「緘黙は、成長すれば自然に治る」という見方を退ける必要がありそうです。何も特別な支援をせずとも治るのであれば、そのようにするのが最もコストがかからないからです。

(原文:The economical impact of Selective mutism)


緘黙は軽視されがちだからこそ、こうした理由を掘り下げる


緘黙は大人しいだけで問題ないなどと、軽視されがちではないでしょうか。軽視してはならず深刻に受け止める必要があるのなら、それはなぜかが問題になります。ですが、その理由については、あまり掘り下げられてはこなかったのではないかと思います。それだけに、この「5つの理由」は興味深いです。

理由2のように、本人が辛い思いをしているからという理由が挙げられることはあります。「当事者は苦しんでいます」「私は辛いです」などと必ずしも明記しなくても、暗にというかたちや、雰囲気などで伝えられることもあります。この場合、感情に訴えかける傾向になりやすいです。それが悪いわけでは決してないのですが、合理的な理由を他に挙げられれば説得力は増しそうです。


私ならば


私は専門家ではありませんが、私ならば緘黙を深刻視しなければならない理由は、次のように挙げます。

○ 緘黙は日常生活に大きな支障をきたすから
○ 緘黙で大変苦しい思いをしてきた当事者・経験者がたくさんいるから(上の理由3と同じ)
○ 緘黙が長期化すると、他の精神疾患を続発する可能性が指摘されているから
○ 緘黙が長期化すると、言語コミュニケーションの経験を積む機会を長期にわたって逸することになり、そのことは緘黙が治った後に響いてくるから

この4つを挙げても相手が納得してくれない場合は、先ほどの理由4や5のコストの問題を挙げます。先ほどの理由1は緘黙そのものの話ではありませんし、理由2は緘黙の発症率は日本では低めに出ていますので、挙げることはしません。

皆さんなら、どういう理由を挙げますか?



No child or teen should remain mute!

更新日:2019年08月21日(投稿日:2019年08月21日)
アイキャッチ画像。

緘黙を放置してはならない


一人の子どももティーンエイジャーも、緘黙のままにしておくべきではありません!

No child or teen should remain mute!

SMartセンターが繰り返し使っているフレーズです。

SMartセンター(Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center)は、アメリカにある場面緘黙症の研究治療センターです。かんもくネットのKnet資料でもおなじみです。


強い意思を感じる表現


ここでのNoは「一人も~ない」という意味です。義務や妥当性を表すshouldと合わせて、強い表現となっています。治療されずに放置される緘黙児者が一人たりともいてはならないという、強い意思を感じます。

また、緘黙は個性であるとか、みんなが同じように話せるようになる必要はないというのではなく、緘黙は治すべきだというSmartセンターの思想が窺えます。

ただ、shouldはmustに比べると控えめな表現ではあります。ここでmustを使うと、冒頭のnoと合わせて意味が強すぎるので、もしかしたらshouldに止めているのかなと思います(※根拠なく言っています)。


最近見るようになった表現


このフレーズは、比較的最近見るようになりました。私が確認した最古の用例は、2018年11月30日のFacebookでの投稿です。

◇ そのFacebook投稿へのリンクです。
新しいウィンドウで開く

私が知る限り、Facebookの他にも、これまでSMartセンターのウェブサイトやInstagramアカウントでも使われてきました。

◇ ウェブサイトでの使用例。5番目をご覧ください。
新しいウィンドウで開く


キャッチーなフレーズ


それにしても、キャッチーなフレーズだなと感心します。

緘黙関係では他に、「沈黙を破れ」(Break the silence)というフレーズを、英語圏では目にすることもあります。こういうキャッチャーなフレーズやスローガンができれば、緘黙の支援や啓発に役立ちそうです。



食事や栄養に注目する緘黙関係者がいる

更新日:2019年08月16日(投稿日:2019年08月15日)
アイキャッチ画像。

アメリカのSMartセンター


GABA(ギャバ)は不安を和らげるのに役立つことが知られています。GABAを多く含んだ食物を、家族の食事に取り入れてみましょう。例えば、アーモンド、バナナ、ブロッコリー、玄米、全粒の食物、かんきつ類、ホウレンソウ、クルミなどです。食物についてのさらなるヒントのために、私たちのウェブセミナーをチェックしましょう:https://cutt.ly/aFAXXd

GABA is known to help reduce anxiety. Try incorporating GABA-filled foods into your family’s diet. Some examples are almonds, bananas, broccoli, brown rice, whole grains, citrus fruits, spinach, and walnuts. For more food tips, check out our diet webinar: https://cutt.ly/aFAXXd

出展:https://www.facebook.com/SelectiveMutism.SMartCenter/posts/1357039267753904

いつからか、SMartセンターがたまに食事の話をするようになりました。SMartセンターは、アメリカにある場面緘黙症の研究治療センターで、Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center の略です。かんもくネットのKnet資料でもおなじみです。

上の他にも、SMartセンターは、例えば以下のページやPDFファイルで、食事について取り上げています。

↓ 「食事や栄養が、緘黙にどのように影響するか?」おすすめの栄養素や、注意すべき食物について書かれてあります。
◇ How Does Diet and Nutrition Affect Selective Mutism?
新しいウィンドウで開く

↓ 「食事と緘黙の間に効果はあるのか?」PDFファイルです(229KB)。
◇ Is there an effect between Diet and SM?
新しいウィンドウで開く

上のPDFファイルによると、正式な研究はないものの、緘黙児者の不安を和らげるのに役立つ栄養の取り方があるとSMartセンターは推測しているようです(緘黙児者には、不安を併せ持つ場合が多いです)。「根拠に基づいた」治療を強調するSMartセンターにしては、少しトーンが弱いです。


ニュージーランドの VOICE for Selective Mutism


実際、他の緘黙団体等で、食事や栄養の話題に繰り返し触れているのは、私が知る限り ニュージーランドの VOICE for Selective Mutism ぐらいです。最近、食事やサプリメントで腸内細菌を制御することにより不安が軽減される可能性を示唆するレビュー論文が発表されたのですが、このニュージーランドの団体は、それにいたく感心している様子でした。

↓ 食事について話題にするニュージーランドの緘黙団体。
◇ Yes, yes, yes. Some great studies are ...
新しいウィンドウで開く

↓ 腸内細菌と不安の研究について話題にするニュージーランドの緘黙団体。
◇ Yes, yes, yes. Some great studies are ...
新しいウィンドウで開く

↓ ここでは、「栄養精神医学」の記事を紹介しています。
◇ https://theconversation.com/why-nutrition ...
新しいウィンドウで開く

比較的最近注目されたというか、まだ確証をもって言えないところがあるというか、そういう話題なので、今のところ緘黙関係者の間ではあまり取り上げられていないのかもしれません。今後、研究が進展し、食事や栄養が緘黙に与える影響が明らかになると面白そうです。