緘黙のPCIT治療専門家として認定(海外)

更新日:2021年05月17日(投稿日:2021年05月17日)
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親子相互交流療法


アメリカでは、場面緘黙症の心理療法の一つとして、「親子相互交流療法」が広まっています。英語では Parent Child Interaction Therapy と呼ばれ、よくPCITと略されます。緘黙へのPCITの適用は、特に PCIT-SM と呼ばれることもあります。

日本の緘黙支援ではあまり広まっていないらしく、日本語での情報も乏しいのですが、邦訳書『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』には説明があります。


専門家を対象に、親子相互交流療法のトレーニング


ニューヨークで緘黙治療などに携わる民間の専門施設 Kurtz Psychology PC は、専門家を対象に、緘黙児に親子相互交流療法を行うためのトレーニングを行っています。指導の中心的人物とみられる Steven Kurtz博士は、PCITインターナショナルという組織からグローバルトレーナーとして認定されている方で、PCIT-SMのプロトコルの開発者でもあります。

↓ 専門家へのトレーニングについて。2021年6月実施予定分。
◇ PCIT-SM Virtual Training 2021
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↓ 専門家へのトレーニングについて。2021年10月、11月実施予定分。
◇ Parent-Child Interaction Therapy for Selective Mutism (PCIT-SM) Training for Professionals
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このトレーニングは、米国心理学会とPCITインターナショナルの「継続教育」(Continuing Education)プログラムの対象になっています。受講すると、継続教育の証明書?を受け取ったり、一定の単位を取得することもできます。

なお、継続教育とは、学校教育終了後も継続的に受ける教育のことです。継続教育は免許や資格の制度と連携していて、一定期間内に継続教育の単位を取得しなければ、免許や資格の更新がなされない場合もあるようです。アメリカで行われる緘黙支援のトレーニングや講座等には、時々このように継続教育プログラムの対象となっているものがあります。


親子相互交流療法を行える専門家であることを認定


さて、所定のトレーニングを受講すると、緘黙に対して親子相互交流療法を行える専門家であると認定されます。認定されると、「認定PCIT-SMセラピスト」(Certified PCIT-SM Therapist)となります。認定された専門家は、以下のページで名前や職場等を列挙されます。

↓ その認定された専門家の一覧です。現在、40人以上の専門家の名前があります。
◇ PCIT-SM Certified Therapists
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上のリスト、大半がアメリカの専門家で、特にニューヨーク(NY)が多いです。ですが、よく見ると、下の方に香港(HK)の専門家が5人名を連ねていることが分かります。他に、CHという場所を拠点とする専門家もいて、リンク先がドイツ語のページなのですが、これはチェコでしょうか。また、カナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)を拠点とする専門家もいます。このように、アメリカ国外にも認定された専門家が一部にいるようです。

経済学の用語を借りれば、こうした認定の試みには、「情報の非対称性」を緩和する役割がありそうです。つまり、治療専門家は自分自身の能力を知っているけれども、利用者の側は知りません。上のリストは、ここの治療専門家は緘黙に対して親子相互交流療法を行う能力があるという「シグナル」となり、利用者が情報を得る手助けになります。特に緘黙は理解に乏しい治療専門家の存在が指摘されていることから、このようなシグナルが果たす役割は大きそうです。

※ 資格制度となると、これは経済学の関心分野です。資格制度は情報の非対称性の緩和というプラス面がありますが、参入障壁を作るなどマイナス面もあり、その是非は難しいところです。



緘黙を克服した子どもたちが登場する動画(米)

更新日:2021年05月05日(投稿日:2021年05月04日)
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米国の緘黙団体が企画


場面緘黙症を克服した、もしくは克服途上にある子どもたちの話を動画で発信。それも、子どもたち自らが動画に登場する--

アメリカを代表する場面緘黙症の団体 Selective Mutism Association の企画です。Kid to Kid Tip という名前のシリーズで、4月下旬より始まっています。動画の配信は、団体のFacebookページ等で行われています。

↓ 団体のFacebookページへのリンク。
◇ Kid to Kidの予告
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↓ 同じく。動画が自動再生されるかもしれません。
◇ 第1回の動画
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↓ 同じく。動画が自動再生されるかもしれません。
◇ 第2回の動画
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団体のFacebookページによると、この企画の狙いは、緘黙児の経験や、緘黙克服のための戦略の理解を深めることにあるようです。

第1回の登場は、Leelaさん(8歳)。人と話す際に深呼吸したり、顔をつぶしたり(聞き間違いかも)して落ち着くようにするなどといったことを、30秒ほど話されています。

第2回の登場は、Noelleさん(16歳)。学校で昼食をとるのがNoelleさんにとっては困難なことがあるので、それに対してとった工夫について50秒ほど話されています。


動画を見て感じたこと


こうした動画を見ると、実際に話せるようになった子がいることや、頑張っている緘黙の子がいることを実感できそうです。希望を見出したり、励みになったりする子もいることでしょう。

アメリカの人は、日本人に比べると、インターネット上で割と顔を出す傾向があると感じます。今回の企画には、そうしたネット文化が背景にあるのかもしれません。

また、アメリカの緘黙支援では、Brave(勇敢な)という言葉を多用して緘黙児者に動機付けを図るなど、緘黙児者も頑張るよう促す傾向があります。動画はその一環かもしれません。

この企画のよいところは、 Selective Mutism Association という、日本なら「かんもくネット」に相当する団体が行っているところにあると思います。Selective Mutism Association は治療を行っていませんし、また、団体には米国内の様々な緘黙関係者が参加しており、特定医療機関の利害を代表する性格は薄いです。

これが治療を行う特定の専門機関が行うと、「ここの先生の指導に従って、緘黙が治りました!」などといったように、宣伝の意味合いが出てきます。そうなると、素直に話を聞けません。

なお、日本の場合、医療機関が「患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告」を自らのウェブサイト等に受診等を誘引する意図で掲載すると、医療法違反になります。





厚労省の研究の一環で、緘黙のセラピー(2011年)

更新日:2021年03月22日(投稿日:2021年03月22日)
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「厚生労働科学研究」という、厚労省が推進する研究があります。その研究の一つとして、2019年度から2年計画で「吃音、トゥレット、場面緘黙の実態把握と支援のための調査研究」が行われています(今年の3月で終わりやん!)。

ですが、それ以前にも、厚生労働科学研究の中で、緘黙に関する研究が行われていたことを今になって知りました。平成22~24年度(2010~2012年度)に行われた「児童青年精神科領域における診断・治療の標準化に関する研究」の中の分担研究「不安障害を中心とする不登校・ひきこもりの診断・治療の標準化に関する研究」の中で行われていました。

研究の内容は「国府台シャイネス」と題する、場面緘黙児に対するグループ・プレイセラピーです。国立国際医療研究センター国府台病院児童精神科の研究グループによるものです。平成23年度の総括・分担研究報告書に詳しい報告があります。

↓ 61ページ(65枚目)移行をご覧下さい。PDF。15.1MB。
◇ 児童青年精神科領域における診断・治療の標準化に関する研究 平成23年度総括・分担研究報告書
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↓ 関連記事。一般社団法人 日本集団精神療法学会ホームページへのリンク。
◇ リレーコラム08 「選択性緘黙児の外来グループ-『シャイネス』」 渡部京太
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緘黙で診断・治療の標準化に関する研究を行うなら、プレイセラピーより行動療法の方が妥当ではないかと思うのですが、私は専門家でもないのでよく分かりません。

ただ、グループでのセラピーには興味を引かれます。プレイセラピーではないものの、海外では現在、グループ形式による緘黙の集中プログラムや治療キャンプが行われています。