「緘黙の治療は、やりがいがある」

更新日:2023年03月08日(投稿日:2023年03月08日)
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豪州の臨床家が、ポッドキャストに出演


「場面緘黙症クリニック」が、オーストラリアにあります。

↓ クリニックのウェブサイトへのリンクです。
◇ Selective Mutism Clinic, Sydney
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このクリニックの創設者である Elizabeth Woodcock博士が先日、あるポッドキャストにゲスト出演し、緘黙について話していました。45分近くの内容です。英語ですが、珍しいと思ったのでご紹介します。

↓ そのポッドキャスト。Apple Podcastsへのリンクです。
◇ Well, hello anxiety with Dr Jodi Richardson: 74. Overcoming Selective Mutism w/ Dr Elizabeth Woodcock, Selective Mutisim Clinic Founder, Director and Principal Psychologist on Apple Podcasts
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↓ こちらはSpotifyへのリンクです。
◇ 74. Overcoming Selective Mutism w/ Dr Elizabeth Woodcock, Selective Mutisim Clinic Founder, Director and Principal Psychologist - Well, hello anxiety with Dr Jodi Richardson | Podcast on Spotify
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ポッドキャストとは


ポッドキャストとは、インターネットを通じた音声配信です。ウェブラジオとは異なり、既に録音されているものをオンデマンドで聴くかたちを取ります。数多くの団体や個人が、国内外で様々なポッドキャスト配信を行っています。

緘黙のポッドキャストも、国内外に存在します。有名どころでは、アメリカの緘黙治療センター「スマートセンター」がポッドキャストを配信し続けています。また、最近は更新がなされていませんが、Outloud という海外のポッドキャストも知られています。

↓ スマートセンターのポッドキャスト。Apple Podcastsへのリンクです。
◇ Unspoken Words: A Selective Mutism Podcast by Dr. Elisa Shipon-Blum
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↓ ポッドキャスト「Outloud」。Apple Podcastsへのリンクです。
◇ Outloud The Selective Mutism Podcast
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今回のポッドキャストについて


今回お話しするポッドキャストは、Jodi Richardsonさんという方による Well, hello anxiety with Dr Jodi Richardson というシリーズの1つです。

長いポッドキャストなので、目次をつけてみました。あまり厳密なものではありませんが、ご参考になれば幸いです。

00:00 オープニング
00:43 導入
02:24 ゲスト登場
07:34 緘黙とは
13:15 有病率
15:10 パンデミックの影響
16:12 話さないことを選んでいるのか
18:46 緘黙のサイン(親視点)
21:38 親向けの本、資源等
23:22 どう緘黙の治療にあたっているか
27:36 スライディング・インについて
33:13 子どもの治療中、親とは
34:57 5段階モデル(5-stage model)
39:58 緘黙は治る
42:00 コンタクト

話題は緘黙の一般的な説明から、具体的な治療方法にまで及んでいます。オーソドックスな構成かもしれません。実際に治療にあたってきた方とあって、実地に基づいたお話がなされています。

スライディング・インは、緘黙児者に徐々に人を近づけていく治療法です。イギリスでポピュラーな技法だと思っていたのですが、このオーストラリアの専門家もこの技法を採用しているようです。

5段階モデル(5-stage model)は、Woodcock博士が開発したモデルです。コミュニケーションの5段階モデル(5-stage model of communication)とも呼ぶらしいです。


「緘黙の治療には報いがある」


お話の中で印象に残ったのは、冒頭でハイライトされている発言です。

緘黙について素晴らしいことは、完全に治療可能なことです。そればかりでなく、一度治療すると、ぶりかえしがほとんど起こらない傾向にあります。ですから、緘黙以外の障害とは異なり、一度子どもが人々に話すと、その後の人生で緘黙が起こらない傾向があります。ですので、それが、私が緘黙児者と関わるのが好きな理由です。とてもやりがいがあります。

The wonderful thing about this condition is that it's completely treatable. Not only that, but once it's treated, it pretty much doesn't tend to come back. So, unlike other conditions, and once the child talking to people they don't tend to develop selective mutism again later in life. So, that's (聴き取れない) the reason I love working with this population. It's so rewarding.

最後はとりあえず「やりがいがあります」と訳しましたが、対応する英単語は "rewarding" です。前後の文脈からも判断して、やればちゃんと見返りがある、治療すると良い結果となって返ってくる、報いがあるという意味合いだろうと思います。

一臨床家の感想なのか、一般論のつもりで言ったのか分かりませんが、心強いことを言う臨床家もいるものだと感じました。



安心できる環境づくりだけでは…

更新日:2023年01月29日(投稿日:2023年01月29日)
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「話せるようになる見込みは低く」


ある場面緘黙症の研究概要に、こんなことが書かれてあるのを見つけました。

安心できる環境づくりや発話に代わる表現手段の保障といった、いわゆる合理的配慮のみでは話せるようになる見込みは低く……

これは、信州大学の奥村真衣子助教による科研費研究「場面緘黙の専門資源へのアクセスが難しい地域における遠隔支援の検討」の研究概要の一部です。

↓ 国立情報学研究所のサービスKAKENへのリンクです。
◇ 場面緘黙の専門資源へのアクセスが難しい地域における遠隔支援の検討
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環境づくりは必要だが、それだけでは不十分


私は専門家ではありませんが、全くその通りだと思います。

SNS上で、緘黙児者への支援において、安心できる環境づくりを非常に重視している人を見かけたことが複数回あります。まるで、そうした環境を整えれば、緘黙児者は話し出すとも解釈できるような意見です。しかも、そうした意見は多数シェアされたりします。

おそらくそれは、安心できる環境づくりに配慮されないまま、発話を求められた経験のある人が多いからではないかと思います。また、緘黙児者に適度な頑張りを促すよりも、環境を整えることを強調する意見の方が、耳障りがよいからだろうとも思います。

確かに、安心できる環境づくりは重要です。しかし、そうした環境をつくりさえすれば緘黙児者が話し出すかというと、そういうことは起こりにくいのではないかと思います。米国の場面緘黙症センターも、緘黙児の不安を和らげても、それだけでは大抵の場合、非言語コミュニケーションのステージに留まってしまい、言語コミュニケーションのステージに至るには不十分であるとしています。

↓ 詳しくはこちら。このブログの下記の記事へのリンクです。
◇ 「不安を和らげるだけでは、発話には不十分」
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また、特定の場面(人、場所、活動)で話さない経験を積み重ねると、その場面ではますます話せなくなってしまいます。英語圏では、こうした効果をcontamination(コンタミネーション)と呼ぶこともあります。そうした場面では、安心できる環境づくりをするだけでは、発話には至りにくいのではないかと思います。

↓ contamination(コンタミネーション)について。このブログの下記の記事へのリンクです。
◇ contamination(コンタミネーション)効果とは何か
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結局のところ、安心できる環境づくりは必要ですが、それだけでは十分でなく、その上でスモールステップの取り組みを行うなどしなければ、発話には至りにくいのではないかと思います。



スウェーデン王室の基金が助成

更新日:2022年06月12日(投稿日:2022年06月12日)
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緘黙のサマーキャンプに対して


スウェーデン王室の基金から、助成が認められた--

スウェーデンの場面緘黙症団体のFacebookeが、先日大いに盛り上がりました。

↓ そのFacebookページへのリンクです。
◇ Tala om tystnad
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この基金は、ロイヤルカップルの結婚式基金(Stiftelsen Kungaparets Bröllopsfond)というもので、グスタフ国王とシルビア王妃が1976年に結婚した際に設けられた基金だそうです。障害がある子どもや若者のためのプロジェクトへの支援を行っています。

↓ 基金の解説。スウェーデン王室ウェブサイトへのリンクです。Google翻訳で日本語に訳しています。
◇ Kungaparets Bröllopsfond | Kungahuset
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今回助成が認められたのは、緘黙のサマーキャンプです。助成額は40,000クローナ(約51万円)です。なお、助成を受ける団体の数は、緘黙の団体を含めては25あります。

このサマーキャンプの内容なのですが、詳細は把握していません。情報が見つからないのと、スウェーデン語がよく分からないのと。ですが、分かる範囲でお話しすると、サマーキャンプを主催するスウェーデンの緘黙団体によると、このサマーキャンプはまだ実績が乏しい(ない?)らしいです。まずは小規模でスタートするそうです。それから、王室の基金以外からも、助成を受けているようです。


キャンプは、他国でも例あり


緘黙の治療キャンプは、海外では複数の国で行われてきました。私が把握している限りでは、以下の通りです。

アメリカ:CommuniCamp


◇ CommuniCampウェブサイト
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◇ 場面緘黙症Journalブログで取り上げた記事
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イタリア:Vacanzina


↓ Google翻訳で日本語に訳してあります。
◇ イタリアの緘黙団体ウェブサイト、Vacanzinaに関する情報
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◇ 場面緘黙症Journalブログで取り上げた記事
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ベルギー:(特に名前はありません)


↓ Google翻訳で日本語に訳してあります。
◇ ベルギーの緘黙団体ウェブサイト、キャンプに関する情報
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◇ 場面緘黙症Journalブログで取り上げた記事
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