小学館『教育技術』で取り上げられた歴史

更新日:2023年03月16日(投稿日:2023年03月16日)
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教師向け雑誌


『教育技術』は、歴史ある雑誌でした。小学館より刊行されていた教師向けの雑誌で、『教育技術』のほか、『小一教育技術』~『小六教育技術』など学年別に分かれていました。1927年(昭和2年)に前身となる雑誌が刊行され、90年以上にわたる歴史を歩みました。ですが、雑誌は2022年冬号を最後に休刊、現在はウェブサイトに移行しています。時代の流れか、教育雑誌の休刊は近年多いと聞きます。

どちらにしろ、長きにわたって教師の間で愛読されてきた雑誌のようです。児童の指導方法に一定の影響力があったとしても、不思議ではありません。


緘黙も、何度も取り上げられてきた


その『教育技術』系の雑誌で、場面緘黙症が1950年代から何度も取り上げられてきたことを、今になって知りました。

この事実は、「国立国会図書館デジタルコレクション」というウェブサイトで知りました。このウェブサイトでキーワード「緘黙」をタイトル「教育技術」に絞って検索すると、234件の検索結果が出ます。

↓ 「国立国会図書館デジタルコレクション」へのリンクです。
◇ その検索結果
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検索結果に出てくる雑誌は、全て小学館の『教育技術』系の雑誌です。つまり、『教育技術』『総合教育技術』『幼児と保育』『小一教育技術』~『小六教育技術』です。

検索結果で最も古い号は、1952年6月の『小一教育技術』6[(3)]です。逆に、最も新しい号は、1999年8月の『総合教育技術』54(8)です。2000年以降の号が検索結果で出てきませんが、このデータベースでは今のところ見ることができないのでしょうか。

雑誌に掲載された内容の全文は、国会図書館に行かなければ読むことができません。私は国会図書館にまでは行けず、全文までは読んでいません。ですが、その雑誌にキーワード「緘黙」が何度登場するかや、前後の文章を一部見ることぐらいであれば、国会図書館に行かなくても見ることができます。

どうやら多くの号では、緘黙は1度きり、しかも軽く触れられた程度のようです。他の『教育技術』系雑誌の予告まで検索結果に出ます。そうした予告は、重複して検索結果に出てきます。

しかし、中には複数回登場したり、緘黙について踏み込んだ記述をしたとみられる号もあります。その中でも特筆するべきは、1988年12月の『小五教育技術』42(12)です。「『学校緘黙症』の子に、こう取り組む!!」と題して、緘黙が11ページにわたって特集されています。著者は、山本実氏。緘黙の特集は、『教育技術』系の雑誌では、このサイトで確認できる限り初めてのことです。


古くから関心を持たれてきた緘黙


こうして見てみると、緘黙は教師から、わずかながらも古くから関心を持たれてきたことが窺えます。この雑誌が、教師の緘黙に対する理解や具体的な指導に、どういう影響を、どの程度与えてきたのかが気になります。特に私は、これらの雑誌が刊行されていた当時に、小学校生活を送っていたので。



仰天ニュースから10年

更新日:2023年02月15日(投稿日:2023年02月15日)
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緘黙を取り上げた放送


あの「仰天ニュース」の放送から、10年が経っていたことに気づきました。

2013年2月13日、日本テレビ系の番組「ザ!世界仰天ニュース」の中で、「静かな少女の秘密」と題するドキュメンタリーが放送されました。その内容は、場面緘黙症があったカースティ・ヘイズルウッドさんというイギリス在住の方のエピソードでした。

当時、日本のテレビ番組が緘黙を正面から扱うのは極めて異例でした。この頃、私は緘黙に注目して10年ほど経っていましたが、日本のテレビ番組が緘黙を正面から取り上げられるなんて、リアルタイムでは聞いたことがなかったのではないかと思います。

しかも、「仰天ニュース」は地上派の番組、ゴールデンタイムの放送です。当時はまだブログをする人が一定数いた時代でしたが、多くの緘黙関係ブログは「仰天ニュース」の話題で持ちきりでした。

放送の影響は大きく、緘黙関係ブログでは、放送中とその直後、それまでとは全く比べものにならないほどのアクセスが殺到したということを書く人が複数いたように記憶しています。また、「仰天ニュースで緘黙を知った」という話も、ネット上でちらほら見かけるようになりました

なお、番組でスポットが当たったカースティーさんは、後にミス・イングランドやミス・イギリスに輝き、そのことも話題を呼びました。


一つのターニングポイントだった可能性


この「仰天ニュース」の放送は、今にして思うと、一つのターニングポイントだった可能性があります。

一般の報道番組や「ハートネットTV」「バリバラ」など、日本のテレビ番組が緘黙をある程度コンスタントに取り上げるようになったのは、私が知る限りこの後のことです。「仰天ニュース」自身も、2017年に再び緘黙を正面から取り上げています(今度は日本在住の緘黙経験者のドキュメンタリーでした)。

また、ネット上の検索トレンドを知ることができるサイト「Googleトレンド」を見ると、「仰天ニュース」が放送された2013年2月以降、「緘黙」の検索トレンドが以前よりも高水準で推移するようになったようにも見えます。ただし、「仰天ニュース」放送前からもある程度検索トレンドは上昇傾向にあり、このあたりの評価は単純ではありません。

◇ Googleトレンド「緘黙」の検索動向
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認知度はまだまだ


とはいえ、私は2014年1月にこんなことを書いてもいます。

地上波の全国ネットのゴールデンタイムの番組で緘黙を取り上げたにもかかわらず、このような極めて限定的な影響しかないことに、緘黙の認知度向上の難しさを感じました。

いくら人気のテレビ番組とはいえ、緘黙がたかが1回取り上げられたぐらいで、緘黙の認知度が十分な水準にまで上がるわけがありません。

そしてあれから10年経ち、緘黙がテレビ番組等で扱われることも増えましたが、緘黙が十分知れ渡ったと満足している人はいまだにほとんどいないのではないかと思います。緘黙の認知度や理解を広げることの難しさについて、改めて考えさせられもします。



映画 The Silent Twins

更新日:2023年01月22日(投稿日:2023年01月22日)
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場面緘黙症だったというイギリスの双子の実話が、 海外で映画化されています。The Silent Twins という映画です。

この双子については、イギリスなど少なくとも英語圏では、80年代からある程度知られた話でした。日本ではあまり知られていませんが、1990年に『沈黙の闘い:もの言わぬ双子の少女の物語』 として邦訳書が出版されています。ただ、この双子が緘黙だとしたら、かなり極端な例だろうと思います。

↓ 邦訳書を読んだ感想です。2020年にこのブログに投稿した記事へのリンク。
◇ 『沈黙の闘い:もの言わぬ双子の少女の物語』
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映画は2022年5月にカンヌ国際映画祭で初公開。次いで9月にアメリカで、12月にはイギリスでも公開されました。昨年までは、英語圏のウェブサイトで selective mutism(場面緘黙症)と検索したら、この映画のレビュー記事等が時々ヒットしました。

出演はレティーシャ・ライト、 タマラ・ローレンスなど。映画の評判はまずまずのようで、アグニェシュカ・スモチンスカ監督が、カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門でノミネートされるなどしています。

この映画により、緘黙の認知度がどの程度上がったかといえば、よく分かりません。緘黙をテーマとした作品ではないようですし、そんなに大ヒットした映画というわけでもなさそうですので、影響は限定的ではないかと思います。英語圏の緘黙関係者の間でも、私が知る限り、特に話題にはなっていません。とはいえ、まずまず評判が良い映画のようですし、認知度への影響も多少はありそうです。

↓ 映画の予告動画です。2分18秒。


上の動画をYouTubeで直接ご覧になりたい方は、下記のリンクをクリックしてください。
◇ THE SILENT TWINS - Official Trailer [HD] - Only in Theaters September 16
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