「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」作成の義務化について

更新日:2018年11月15日(投稿日:2018年11月15日)
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次期学習指導要領では、通級による指導や特別支援学級でも「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」の作成が義務になります。

このブログではまだ取り上げていませんでしたし、既存の場面緘黙症の本にもまだ書かれていませんので、今回お話してみることにします。私は専門家ではありませんが、私自身の勉強も兼ねて、基礎事項の確認です(詳しい内容にまでは踏み込みません)。

おさらい「通級」「特別支援学級」


専門用語がたくさん出てきたので、まずは簡単なおさらいからです。このあたりは皆様の方がお詳しいかもしれませんが、念のため。

まず、場面緘黙症(選択性緘黙)がある児童生徒は特別支援教育の対象です。必要に応じて通級による指導を受けたり、特別支援学級に在籍したりすることができます。

↓ その根拠です。
◇ 緘黙は特別支援教育の対象。根拠は?
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このうち通級による指導とは、特別な支援が必要な比較的軽度の障害を持つ児童生徒を対象に、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校または中等教育学校において、普通学級に在籍しながら、一部、障害の程度に応じて行う特別な指導のことです。このうち高校の通級制度は最近始まったもので、平成30年度(今年度)から実施されています。

一方、特別支援学級とは、特別な支援が必要な児童生徒を対象に、小学校・中学校・高等学校または中等教育学校内に開設される学級のことです。実際のところ、高校の特別支援学級は、私が知る限りありません。

特別支援学級に在籍する緘黙の児童生徒は少ないのではないかと思います。通級による指導を受けている児童生徒はもう少し多いことと思います。


おさらい「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」


次に、個別の教育支援計画とは、障害のある幼児児童生徒一人一人のニーズを正確に把握し、教育の視点から適切に対応していくという考え方の下に、福祉、医療、労働等の関係機関との連携を図りつつ、乳幼児期から学校卒業後までの長期的な視点に立って、一貫して的確な教育的支援を行うために、障害のある幼児児童生徒一人一人について作成した支援計画を言います(文部科学省「平成29年度特別支援教育に関する調査の結果について」より、長い文章すみません)。

また、個別の指導計画は、幼児児童生徒一人一人の障害の状態等に応じたきめ細かな指導が行えるよう、学校における教育課程や指導計画、当該幼児児童生徒の個別の教育支援計画等を踏まえて、より具体的に幼児児童生徒一人一人の教育的ニーズに対応して、指導目標や指導内容・方法等を盛り込んだ指導計画を言います(同上)。

現行の学習指導要領では、個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成は、特別支援学校(特別支援学級ではありません)のみ義務とされていました。このため、通級による指導や特別支援学級では、作成されないこともありました。


次期学習指導要領に、こう書かれてあります


次期学習要領では、個別の教育支援計画と個別の指導計画の作成が義務化されます。

その根拠を見てみます。次期学習要領のうち、個別の教育支援計画と、個別の指導計画について書かれた部分を抜粋します。小学校の要領には、次のように書かれてあります(太字は私が施したものです)。

障害のある児童などについては、家庭、地域及び医療や福祉、保健、労働等の業務を行う関係機関との連携を図り、長期的な視点で児童への教育的支援を行うために、個別の教育支援計画を作成し活用することに努めるとともに、各教科等の指導に当たって、個々の児童の実態を的確に把握し、個別の指導計画を作成し活用することに努めるものとする。特に、特別支援学級に在籍する児童や通級による指導を受ける児童については、個々の児童の実態を的確に把握し、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成し、効果的に活用するものとする。

前段は普通学級にのみ通う、障害ある児童に関するものです。この児童の場合、計画の作成は努力義務とされます。そして、後段の太字で強調した箇所が、今回お話した通級と特別支援学級の児童に関するものです。こちらは明確に義務とされています。

中学校と高校の要領も、同様に記されています。ただし、高校の要領には、特別支援学級の記述がありません。

なお、文部科学省による解説「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編」112-113ページにも、次のように記されています(太字は私が施したものです)。

個別の教育支援計画及び個別の指導計画は、障害のある児童など一人一人に対するきめ細やかな指導や支援を組織的・継続的かつ計画的に行うために重要な役割を担っている。

今回の改訂では、特別支援学級に在籍する児童や通級による指導を受ける児童に対する二つの計画の作成と活用について、これまでの実績を踏まえ、全員作成することとした。

中学や高校についても、同様に解説されています(「中学校学習指導要領解説 総則編」111ページ、平成29年7月。「高等学校学習指導要領解説 総則編」161ページ、平成30年7月)。


次期学習指導要領はいつスタートするか


次期学習指導要領の全面実施は、以下のスケジュールで始まります。

小学校:平成32年(2020年)4月1日
中学校:平成33年(2021年)4月1日
高校:平成34年(2022年)4月1日


むすび


通級による指導や特別支援学級における、個別の教育支援計画と個別の指導計画作成の義務化について、ざっとお話しました。

昨年(2017年)3月に出たある緘黙の本には、特別支援学校(特別支援学級ではありません)の児童生徒以外は、これらの計画の作成は義務づけられていないと書かれていました。それが、こんなに短期間で変わるとは、情勢が日々変化していることを感じます。





合理的配慮、自治体の取り組み

更新日:2018年10月05日(投稿日:2018年10月05日)
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不勉強で知らなかったのですが、合理的配慮については自治体によって違いがある場合があるようです。緘黙児者も合理的配慮の対象とされています(高木, 2017, p.45)。今回はこの話題について少し書いてみたいと思います。

合理的配慮とは


合理的配慮は、2016年4月1日に施行された「障害者差別解消法」のキーワードの一つです(法律の正式名称は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」)。この法律は、障害者基本法の基本理念にのっとり、障害を理由とする差別の解消を推進し、共生社会の実現を図ることを目的としたものです(第一条)。

この法律により、国公立学校を含む行政機関には、障害者に合理的配慮を行なうことが義務化されています(第七条第二項)。民間事業者は努力義務です(第八条第二項)。

行政機関:義務
民間事業者:努力義務

第七条
2 行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

第八条
2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。

※ 太字は、私が施したものです。

↓ この法律を分かりやすく解説したリーフレット(PDF)。内閣府ホームページへのリンクです。
◇ 障害者差別解消法リーフレット
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↓ 条文や政府の基本方針の解説。内閣府ホームページへのリンクです。
◇ 障害を理由とする差別の解消の推進
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民間事業者に義務を課す条例も


ただし、これは国の法律のお話です。障害者差別解消については、これとは別に、自治体の条例もあります。

例えば、東京都では10月に「障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例」が施行されました。これにより、民間事業者についても、合理的配慮の提供が義務化されます(単なる努力義務ではなく)。確証はないのですが、おそらく、私立学校も義務というかたちになるのではないかと思います。

↓ 朝日新聞デジタルへのリンクです。
◇ 朝日新聞デジタル 東京)障害者への配慮、条例で義務化 悪質例は公表も(2018年9月15日)
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他には、例えば明石市でも、民間事業者に合理的配慮の提供が条例で義務付けられていますが、こちらは市が助成を行っているそうです。

↓ 福祉新聞へのリンクです。
◇ 明石市が合理的配慮に全国初の助成制度 障害者差別解消で
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このあたりのお話は皆様の方がお詳しいかもしれませんが、このように国とは別に自治体の取り組みもありますので、留意が必要そうです。



自治体が確認した緘黙児の数

更新日:2018年09月13日(投稿日:2018年09月13日)
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教育行政の担当者の答弁より


緘黙児者の数を確認しようとしているのは研究者だけではありません。

あまり知られていませんが、自治体の議会で、教育行政の担当者が「緘黙児を○○人確認している」という趣旨の答弁をすることが稀にあります。そうした例を調べたところ、4例見つかりました。全てご紹介してみることにします。

長野県佐久市:2人(平成27年)


まず、佐久市議会「平成27年3月定例会(第1回)3月4日2号」より、黒岩肇教育委員長の答弁です。

市内の小・中学校には、場面緘黙症の疑いのあるお子さんも含めて在籍はしておりますが、本年1月に場面緘黙症の支援が必要なお子さんにつきまして、市内の小・中学校に調査いたしましたところ、来入児が1名、小学校2年生が1名の合計2名との報告がございました。

http://www.kaigiroku.net/kensaku/cgi-bin/WWWframeNittei.exe?USR=nagsaks&PWD=&A=frameNittei&XM=000100000000000&L=1&S=3&Y=%95%bd%90%ac27%94%4e&B=255&T=0&T0=70&O=1&P1=&P2=&P3=&P=1&K=177&N=1232&W1=%e3%67%96%d9&W2=&W3=&W4=&DU=0&WDT=1

率にすると何%なのでしょうか。求めてみることにしました。

佐久市の小中学校の児童生徒数(平成27年)は分からないのですが、それに近い数字として平成30年の0~14歳の人口を見ると、0~4歳で3,977人、5~9歳で4,306人、10~14歳で4,574人です(佐久市ホームページ「佐久市の人口データ 5歳階級別」より;住民基本台帳に外国人登録を加えた人口)。これをもとに佐久市が把握した緘黙児を百分率で表すと、次のようになります。

0~4歳:0.025%(約4,000人に1人)
5~9歳:0.023%(約4,000人に1人)
10~14歳:0%

ただ、上の答弁では、厳密には「場面緘黙症の支援が必要なお子さん」の数とされています。支援が必要でないと考えられている緘黙の児童生徒が他にいるとも解釈でき、はっきりしない部分もあります。


長野県軽井沢町:0人(平成24年)


次は、軽井沢町議会「平成24年6月第1回定例会(6月会議)6月13日3号」での、荻原勝教育長の答弁です。

当町の現状ですけれども、各保育園、小学校、中学校、園児、児童・生徒には、場面緘黙症と判定されている子供さん、おりません。過去にも報告されておりません。

(中略)今、児童・生徒数1,500強おりますけれども、(後略)

http://www.kaigiroku.net/kensaku/cgi-bin/WWWframeNittei.exe?A=frameNittei&USR=nagkarc&PWD=&L=1&DU=1&R=K_H24_06130003_TXT_L00000133_00000455

軽井沢町が町制を敷いたのは大正12年からだそうです。それ以来、緘黙の児童生徒の報告が1件もなかったというのは意外で、ちょっと信じられないぐらいです。


愛知県扶桑町:1人(平成20年)


それから、これは扶桑町議会「平成20年第5回定例会(第2号9月8日)」での河村共久教育長の答弁です。

現在、場面緘黙の児童は、特別支援学級に在籍している児童で1人おります。(中略)また、過去には昨年度、中学校で1人おりました。

http://chiholog.net/chiholog/viewer.html?docid=23362-20080908-a694948

扶桑町ですが、平成22年で0~14歳の人口が5,092人だったそうです(扶桑町ホームページ「扶桑の統計 平成23年版」より)。緘黙児が1人として、これで百分率を求めてみると次のようになります。

0~14歳:0.02%(約5,000人に1人)

ただ、これも特別支援学級に在籍している児童のみを数えたとも解釈でき、はっきりしない部分があります。


千葉県船橋市:40数人(平成2年)


最後に、船橋市議会「平成2年第3回定例会9月12日4号」より、渡辺俊彦学校教育部長の答弁です。

本市でも、先ほどご質問者の方では、全国で1,000人に2.5ないし5人ということでございますが、このどこからどこまでの判定も難しゅうございますが、現在、私どもの調査では約6万人の小中学生の中で、小中合わせまして40数名の該当者がございます。

http://funabashi.gijiroku.com/voices/cgi/voiweb.exe?ACT=200&KENSAKU=1&SORT=0&KTYP=1,2,3,0&FBKEY1=%E3g%96%D9&FBMODE1=SYNONYM&FBMODE2=SYNONYM&FBMODE3=SYNONYM&FBMODE4=SYNONYM&FBCHK=AND&KGTP=1,2,3&TITL_SUBT=%95%BD%90%AC%81@%82Q%94N%91%E6%82R%89%F1%92%E8%97%E1%89%EF%81%7C09%8C%8E12%93%FA-04%8D%86&KGNO=43&FINO=298&HUID=22149&UNID=K_H020912000439

約6万人、40数名というのは、あやふやですが、仮に6万人と40人としましょう。これで百分率を求めると、緘黙の児童生徒の割合は次のようになります。

小中学生:0.07%(約1,500人に1人)


思ったよりだいぶ少ないような……


「500人に1人」ではなかったのか


思ったより、だいぶ少ないというのが率直な印象です。これまで引用されてきた、主に研究者らによって発表されてきた出現率に比べるとです。

主に研究者らによって示された緘黙の出現率については、このサイト「出現率は?」でまとめています。

◇ 出現率は?
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「出現率は?」では、例えば、平成27年に神戸市の公立小学校に在籍する全児童77,038人を対象とした調査をご紹介しています。それによると116人の緘黙児が確認され、出現率は0.15%だったそうです(約660人に1人)。上でご紹介した数字は、どれもそれより1桁低いです。

今夏には、長野大学の高木潤野准教授が、高校生向け講義の中で次のように述べています。

500人に1人ぐらいるって言われています。500人に1人だと、小学校に1人ぐらいの割合だと思います。


大学の准教授の発言ですし、おそらくは、先行研究をもとにした発言でしょう(⇒その講義について)。ところが、今回の記事でお話した自治体の緘黙の児童生徒の割合は、「500人に1人ぐらい」どころか、5,000人に1人ぐらいです。「小学校に1人ぐらいの割合」どころか、小規模自治体に1人ぐらいの割合です。


教育関係者に把握されてない緘黙の児童生徒がたくさんいるという意味だったら……


なぜこのような差があるのかは、ちょっと分かりません。もしかしたら、たまたま少なく出た自治体ばかりを見つけただけかもしれません。また、各自治体によって確認方法も違うかもしれませんし、一概にも言えないでしょう。

一番問題なのは、教育関係者に把握されていない緘黙の児童生徒が多数存在していた場合です。もしも本当は500人に1人の割合でいるのに、教育関係者は5,000人に1人しか把握していないようなことがあったとしたら、どうでしょう。緘黙の児童生徒のうち10人に1人しか把握されていないことになります。そうでなかったのだとしたら、よいのですが。

※ 肩書きは、いずれも当時のものです。