日本の緘黙の小説、翻訳書が出ていた

更新日:2018年09月09日(投稿日:2018年09月08日)
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重松清『青い鳥』


重松清さんの短編集『青い鳥』(2007年)に、「ハンカチ」という話が収録されています。この「ハンカチ」は、場面緘黙症の中学生が主人公です。それも、短編集の第一話という重要な扱いです。

この「ハンカチ」が先日、台灣選擇性緘默症協會の理事長である黃晶晶(Anita Huang)氏のブログで紹介されました。調べたところ、2008年や2015年に、台湾で翻訳書が出版されていたようです。

↓ そのブログへのリンクです。
◇ 《青鳥》~口吃老師與選緘學生
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↓ 台湾のネット書店「博客來」による書籍情報。2015年出版の本のようです。
◇ 博客來-青鳥
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↓ 台湾の「金石堂書店」ホームページによる書籍情報。こちらは、2008年出版の本のようです。
◇ 青鳥-金石堂
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台湾だけでなく、中国や韓国でも


さらに調べたところ、『青い鳥』は、分かった範囲では、中国や韓国でも翻訳書が出版されていました。下で挙げた中国や韓国のページを見ると、感想が相当数寄せられており、広く読まれていたことが窺えます。

↓ 中国サイト「豆瓣读书」へのリンク。2012年出版のようです。
◇ 青鸟 (豆瓣)
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↓ 韓国のポータルサイト「Daum」へのリンク。2009年出版のようです。
◇ 말더듬이 선생님 – Daum 책
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日本の小説が、海外の緘黙認知度に影響を与えたかも


フィクション、ノンフィクション、専門書問わず、緘黙に関する日本の出版物が翻訳され、海外で読まれる例は珍しいです。ちょっと聞いた覚えがありません。重松清さんのような有名な作家の本なら、探せば他にも翻訳された例が見つかるかもしれません。

日本の本が翻訳され、それが海外での緘黙の認知度に影響を与える--『青い鳥』の翻訳書出版で、こんなことが起こった可能性も考えられます。「緘黙を知ってほしい」という(潜在的な)声は、台湾や中国、韓国にもおそらくあるでしょう。日本の本が、海外での緘黙の認知向上に何らかの役割を果たせたとしたら嬉しいです(といっても、私が出版に関わったわけではないのですが……)。

海外に翻訳されたら面白そうな読み物は、他にもあります。私としては、『私はかんもくガール』や『かんもくって 何なの!?』は翻訳されたら面白いのではないかと思います。こういうコミックエッセイ形式の緘黙の本は、私が知る限り、海外にはありません。でも、やっぱり難しいかな。


余談:『校庭に東風吹いて』が中国サイトで紹介


緘黙の少女が重要人物として登場する映画『校庭に東風吹いて』が、2016年に中国サイトで紹介されたことがあります。この時、緘黙についても書かれてあります。翻訳書出版とは違うのですが、ついでにお伝えします。

↓ 中国サイト「腾讯网」へのリンク。
◇ 泽口靖子新片《校园吹东风》讲述选择性缄默症
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翻訳書『場面緘黙の子どもの治療マニュアル』が出ます

更新日:2018年08月20日(投稿日:2018年07月08日)
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場面緘黙症の新しい翻訳書が発売されます。

書名:場面緘黙の子どもの治療マニュアル-統合的行動アプローチ-
原題:Treatment for Children With Selective Mutism: An Integrative Behavioral Approach
著者:R・リンジー・バーグマン(R. Lindsey Bergman)
監訳:園山繁樹
出版社:二瓶社
発売予定日:2018年7月20日

※ 私はネット書店でこの本を予約注文したのですが、2018年8月20日現在、まだ発送されません。

※ Amazon.co.jpアソシエイトリンク
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原書については、場面緘黙症Journalでも何度か取り上げてきました。治療専門家向けに、20回のセッションで、スモールステップで発話に持っていくためのマニュアルといったところでしょうか。

↓ その時の記事です。書き方が浅いです……。
◇ オックスフォード大出版局2冊目の緘黙の洋書
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この緘黙の本で示された治療法は、ランダム化比較試験という信頼性が高い方法で有効性が検証されたことがあります。

◇ Bergman, R.L., Gonzalez, A., Piacentini, J., and Keller, M.L. (2013). Integrated Behavior Therapy for Selective Mutism: A randomized controlled pilot study. Behaviour Research and Therapy, 51(10), 680-689.
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また、ランダム化~ではないのですが、別の、有効性に関する研究もあります。

◇ Siroky, K.A., Carlson, S. J., and Kotrba, A. (2017). Investigation of Integrated Behavior Therapy for Selective Mutism: A Replicated Single-Case Study Design. International Journal of Psychological Studies, 9(2), 82-88.
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著者のバーグマン氏は、緘黙に関する重要な研究を発表してきた方です。 「SMQ-R (場面緘黙質問票)」という、緘黙の程度を調べることができる質問票をご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、これはバーグマン氏らが作成したものを翻訳したものです。

↓ かんもくネット Knet Newsへのリンクです。
◇ SMQ-R (場面緘黙質問票)について
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二瓶社は、緘黙の本を出版したのは初めてではないかと思います。同社は、公式ホームページによると、「学習心理学、行動分析学を中心に特殊教育、教育、行動療法、心理療法などをおもなジャンルにする出版社です」とのこと。今回は行動療法の本なので、納得です。

◇ 二瓶社 ホームページ
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私は専門家ではないのでよく分からないのですが、原書を読む限り、この治療マニュアルはしっかりした背景で開発されてきたようです。後には、緘黙の研究としては当時初めて(か2番目)だった、ランダム化比較試験での有効性の検証も行なわれています。それだけに、邦訳書の発売は歓迎したいです。


『場面緘黙Q&A』10周年

更新日:2018年03月16日(投稿日:2018年03月15日)
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2008年3月15日初版発行


場面緘黙Q&A』の出版から、今日で10周年を向かえました。2008年3月15日に初版が発行されています。

当時、この本の情報をもとに支援を受けた子が例えば10歳だったとしたら、その子はもう成人している計算です。

この本が出た意味は非常に大きなものがありました。緘黙を主題とした日本オリジナルの本の出版は、『場面緘黙児の心理と指導』以来、実に14年ぶりだったのです(緘黙の経験談の本は除く)。

この本は、最初に読む緘黙の本としては、今でも最もおすすめできるものの一つだと思います。合理的配慮など最新動向についてはカバーされていないものの、国内向けに幅広くまとめられています。出版社である学苑社のホームページはこの本を「ロングセラー」としていますが、もっとものように思います。

◇ 学苑社ホームページ
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この本の大きな特色として、インターネット上の掲示板やメール交換による情報交換をもとに制作された点が挙げられます。保護者や経験者らによる110件ものコラムやイラスト、詩も掲載されています。

掲載された方の中には、当時、緘黙に関わる人の間ではよく知られている方もいらっしゃいました。このため、この本を読むと、2008年ごろにタイムスリップしたような気分になることも私にはあります。なお、恥ずかしながら、場面緘黙症Journalの内容も本には掲載されています。


もし……


もしこの10年という節目に、『場面緘黙Q&A』改訂版が出版されたら、どのような内容になるでしょう。やはり保護者や経験者らのコラムなどが数多く載るのでしょうが、10年前と今とでは、だいぶ顔ぶれが変わるはずです。

今日、緘黙について情報発信する保護者や経験者、当事者らの中には、10年前には見かけなかった人も多いです。イラストや漫画を描く人も増えました。さらに、今日では、ネット上だけでなく現実社会での交流も活発に行なわれています。そうした時代の新しい流れを反映した内容になるでしょう。想像すると楽しいです。

ですが、そうなると、せっかく初版に多く載っていた場面緘黙症Journalに関する記述が、大幅に削減されてしまいそうな気がします。そう考えると、複雑な思いがしてきます。

※ 『場面緘黙Q&A』改訂版の刊行は、私の空想です。そのようなお知らせ、ありません。勝手にこんなこと書いて、すみません。