『場面緘黙Q&A』10周年

更新日:2018年03月16日(投稿日:2018年03月15日)
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2008年3月15日初版発行


場面緘黙Q&A』の出版から、今日で10周年を向かえました。2008年3月15日に初版が発行されています。

当時、この本の情報をもとに支援を受けた子が例えば10歳だったとしたら、その子はもう成人している計算です。

この本が出た意味は非常に大きなものがありました。緘黙を主題とした日本オリジナルの本の出版は、『場面緘黙児の心理と指導』以来、実に14年ぶりだったのです(緘黙の経験談の本は除く)。

この本は、最初に読む緘黙の本としては、今でも最もおすすめできるものの一つだと思います。合理的配慮など最新動向についてはカバーされていないものの、国内向けに幅広くまとめられています。出版社である学苑社のホームページはこの本を「ロングセラー」としていますが、もっとものように思います。

◇ 学苑社ホームページ
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この本の大きな特色として、インターネット上の掲示板やメール交換による情報交換をもとに制作された点が挙げられます。保護者や経験者らによる110件ものコラムやイラスト、詩も掲載されています。

掲載された方の中には、当時、緘黙に関わる人の間ではよく知られている方もいらっしゃいました。このため、この本を読むと、2008年ごろにタイムスリップしたような気分になることも私にはあります。なお、恥ずかしながら、場面緘黙症Journalの内容も本には掲載されています。


もし……


もしこの10年という節目に、『場面緘黙Q&A』改訂版が出版されたら、どのような内容になるでしょう。やはり保護者や経験者らのコラムなどが数多く載るのでしょうが、10年前と今とでは、だいぶ顔ぶれが変わるはずです。

今日、緘黙について情報発信する保護者や経験者、当事者らの中には、10年前には見かけなかった人も多いです。イラストや漫画を描く人も増えました。さらに、今日では、ネット上だけでなく現実社会での交流も活発に行なわれています。そうした時代の新しい流れを反映した内容になるでしょう。想像すると楽しいです。

ですが、そうなると、せっかく初版に多く載っていた場面緘黙症Journalに関する記述が、大幅に削減されてしまいそうな気がします。そう考えると、複雑な思いがしてきます。

※ 『場面緘黙Q&A』改訂版の刊行は、私の空想です。そのようなお知らせ、ありません。勝手にこんなこと書いて、すみません。





『春が来たら、桜の花びらふらせてね。』を読んで

更新日:2018年04月30日(投稿日:2018年03月03日)
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以前ご紹介した新刊『春が来たら、桜の花びらふらせてね。 』(涙鳴著、スターツ出版、野いちご文庫)を読み終えました。場面緘黙症の女子高校生が主人公の小説です。

この本はフィクションですので、ある意味、ファンタジーとして読むのがよいのだろうと思います(実際、この話の男子高校生はちょっとかっこよすぎます!)。ですが、この本を読んで緘黙について少し考えさせられたことがあるので、そのことについて書いてみることにします。





丸山正樹『龍の耳を君に』

更新日:2018年02月22日(投稿日:2018年02月22日)
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丸山正樹著『龍の耳を君に』というミステリー小説が発売されました。この本に「緘黙症」の少年が登場することが、各種書籍情報サイトで明らかになっています。

この本を私はKindle版で読み終えました。そこで、どういう本だったのか、ここで簡単にご報告したいと思います。ただし、ストーリーの核心に迫ることは書きません。

手短にお話しすると、登場する緘黙の少年は、発達障害を併せ持った子でした。

本の基本情報


○ 著者:丸山正樹
○ 書名:『龍の耳を君に-デフ・ヴォイス新章-』
○ 制作日:2018年2月23日
○ 出版社:東京創元社

Amazon.co.jp では2月21日に発売されたのですが、本には上記の制作日が記されています。


内容


内容は、荒井という手話通訳士の男性を主人公とした三連作です。「荒井を主人公とした手話通訳士の事件簿」(あとがきより)という説明が分かりやすいかもしれません。

副題から窺えるように、この本は、2011年に刊行された『デフ・ヴォイス』(文藝春秋)という本の続編に当たります。前作を知っている方には特に面白く読めるのではないかと思うのですが、そうでない方にも楽しめるよう配慮がなされた書き方です。前作から一貫して、ろう者など聴こえない人に関することが、話の大きな軸です。

登場する緘黙症の少年は、発達障害を併せ持つ子です。後半の表題作「龍の耳を君に」で彼に焦点が当たります。ですが、三つの話は連続していて、最初の話から彼に関する描写があります。

本のメインテーマは聴こえない人に関することですし、登場する少年は発達障害を併せ持つとあってか、緘黙そのものについての話はそう多くはありません。発達に関わる話の方が多いように思います。