香港の絵本『敏敏不說話』

更新日:2023年04月24日(投稿日:2023年04月24日)
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香港で、場面緘黙症の絵本が出版されました。

書名:敏敏不說話
著者:Ms. Wincy
絵:A-Four
出版日:2023年3月10日
出版社: 紅出版(青森文化)
ページ数:24ページ
価格:125香港ドル(約2,000円)

緘黙を理解するための絵本です。こうした本は国内外に存在しますが、香港では初めてだそうです。

著者は言語聴覚士で、言語治療を行う「香港童協」の会長。また、香港の緘黙団体「香港選擇性緘默症協會」の創設者。そして、緘黙の経験者でもあります。本書は、著者の幼少期の経験を描いているそうです。

著者のInstagramアカウントによると、本書の全ての収益は、経済的に困難を抱える家庭(緘黙児者がいる家庭のうち、経済的に困難を抱える家庭のことか)を支援するサービスに使われるそうです。緘黙の本の出版で、こうした例は珍しいです。経済的に困難を抱えた家庭の多くは、治療費の支払いに苦労していたことを著者は感じていたそうです。

本書は、日本のAmazon.co.jpや楽天では、購入することができません。ただ、出版社のウェブサイトから、ごく一部を試し読みすることができます。




『場面緘黙の少女が話せるようになった理由』

更新日:2022年06月23日(投稿日:2022年06月23日)
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場面緘黙症の電子書籍の出版が相次いでいます。ここでお話ししているのは紙の本を電子書籍化したもののことではなく、電子書籍専用の本です。英語圏で目についていたのですが、最近では日本でも見かけるようになってきました。

中には、Amazon.co.jpで多くのレビューがついている電子書籍もありました。なぜあんなにレビューがついているのか疑問に感じたので、気になって読んでみました。次の本です。

本の基本情報


書名:話したいのに話せない!場面緘黙の少女が話せるようになった理由 そのうち話せる?!待っていてもそのうちはやってこない!!~心理師とかんもく母子の3人4脚!3年半の実話~
作者:中之園由美子
出版日:2022年5月17日
ページ数:90ページ
Kindle価格:550円

長い書名です。著者は、公認心理師。

Amazonの電子書籍Kindleで読めます。楽天の電子書籍Koboでは読めません。

ページ数は90ページですが、1ページ内の文字数が少ないため、情報量としては30~40ページ分ぐらいだろうかと思います。


本の概要


本の内容は書名通り、著者が自身のカウンセリングルームで関わった場面緘黙症の高校生(女)の事例を紹介したものです。3年半で克服に至っています。もちろん、個人は特定されないよう配慮された書き方がなされています。

専門家向けに書かれた本ではなく、家以外で話すことが難しい緘黙の子どもと、その保護者に向けて書かれてあります。

感想


著者が行ったセラピーは、行動療法をベースに様々なセラピーを組み合わせたものです。私は専門家ではなく詳しくはないのですが、行動療法そのものは緘黙治療での科学的根拠(エビデンス)が蓄積されてきており、怪しげなものではありません。

緘黙とは直接関係ないのですが、52ページのコラムからは、著者の行動分析に対する考え方が徹底されている印象を持ちました。

こういった緘黙支援の事例発表は、専門家を対象としたものであれば、論文や学会発表等で古今東西行われてきたものです。ですが、本書は当事者や保護者向けの電子書籍ということで、珍しいかたちをとっています。

読者対象や媒体が異なるため、書き方も論文と異なっています。論文であれば、感情を込めずに淡々と、非人格的である意味冷たい書き方をするのものですが、本書は語りかけるような文体です。

例えば、本書の冒頭で、本の概要が「女子高生サユリ(仮名)ちゃんの物語です」(2ページ)と紹介されていますが、論文であれば「ちゃん」付けで呼ぶことはありませんし、「物語」という位置づけをすることもありません。ついでに言うと、年齢はもっとはっきりさせます。Amazon.co.jpの読者レビューには、本書の感想として「とても感動しました!」とか「ホント泣けます」といった感情的なものが含まれているのですが、仮にこれが論文の文体だと、そうはならないだろうと思います。

なぜあんなにAmazonレビューがついているのかを読後に考えたのですが、著者が公認心理師であることが購入の際の安心材料として働き(電子書籍は怪しいと思っている方もいらっしゃるでしょう)、比較的多くの人が買ってレビューにつながったのかもしれません。また、低価格の本で分量が少なく、やさしい文体で書かれていて、読みやすいことも大きかったように思います。


緘黙の電子書籍について


最近相次ぐ国内外の緘黙の電子書籍(紙の本の電子書籍化を除く)を数冊買ったことがあるのですが、私が買ったものに限って言うと、どれもページ数が少なく、紙の本として出版するのは無理がありそうな本ばかりでした。電子書籍という媒体が選ばれたのも、それが一因かもしれなせん。

偏見かもしれませんが、本の表題などから「この電子書籍、大丈夫か」と思われ、購入する気がしないものもあります。平均的な品質は、紙の本の方が上だろうかと見ていますが、そんなに多くの電子書籍を読んだことがないので、大きなことは言えません。





緘黙の絵本に携わった方が、世界イラスト賞(海外)

更新日:2021年10月19日(投稿日:2021年10月19日)
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世界各国で、多数の受賞歴を持つ方


場面緘黙症の絵本でイラストを担当した経験がある方が、2021年の世界イラストレーション賞(World Illustration Awards 2021)を受賞しました。

もっとも、緘黙の絵本が評価されて受賞したわけではありません。ですが、大きなニュースかもしれないので、ご紹介したいと思います。

受賞者は、Fatinha Ramosさん。ベルギーにお住まいながら、過去のクライアントにはニューヨーク近代美術館、グーグル、『ニューヨークタイムズ』、『ワシントンポスト』、『タイム』(雑誌)なども含みます。言われてみれば、この方の絵柄、私にもどこかで見覚えがあります。

世界各国で、数々の受賞歴を持つ方です。変わったところでは、日本イラストレーター協会のJIA Illustration Award 2020で、銀賞を受賞しています。なお、Fatinha Ramosさんは、日本イラストレーター協会の会員でもあります。このように、国境をあまり問わず活躍されているようです。

今回の受賞作も、『サイエンティフィック・アメリカン』というアメリカの科学雑誌の自殺特集に掲載されたものだそうです。

↓ その受賞作です。表示に時間がかかる場合があります。
◇ The Other US Epidemic
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世界イラストレーション賞には部門賞のような賞がいくつもあります。最上位の賞が総合プロフェッショナル賞で、2作品が選ばれました。今回の作品はそのうちの1つです。

この世界イラストレーション賞ですが、どれほど権威がある賞なのか、私には分かりませんでした。このため、今回の賞の受賞がどれほどのニュース性があるのかも、分かりません。なお、賞の主催者は、ロンドンに拠点を置くイラストレーター協会(AOI: Association of Illustrators)です。


Fatinha Ramosさんが携わった緘黙の絵本


せっかくですので、ここで受賞されたFatinha Ramosさんがイラストを担当した緘黙の絵本を簡単にご紹介します。

絵本の概要


書名:Woordenwolken
作者:Winny Ang(著)、Fatinha Ramos(イラスト)
出版日:2019年2月
出版社:Studio SESAM
言語:オランダ語

書名は、英語で Word Clouds と訳されています。言葉の雲といったところでしょうか。

著者の Winny Ang氏は、児童青年精神科医。中国、インドネシア、ベルギーにルーツを持つ方だそうです。以前にも、同じ出版社からFatinha Ramos氏とコンビで絵本を出しています。

この本は、ベルギーの緘黙団体の要請で作られたそうです。出版にあたっては、クラウドファンディングによる資金集めが行われました。

本の内容は、緘黙があるReniという少女が、医師や友達とともに話せるようになる道を探っていく話です。私は絵本を読まずにオーディオブック(後述)を聴いただけなのですが、文章表現が、やはり絵本的だと感じました。

無料オーディオブック(英語)あり


なお、この絵本は、英語のオーディオブック形式でも配信されています。オーディオブックは、次のサイトから無料で聴くことができます。サイトはオランダ語ですが、絵本の内容は英語ですので、ご心配いりません。

↓ そのサイトへのリンクです。出版社ウェブサイトへのリンク。ページ後半をご覧ください。CDの販売ページですが、オーディオブックは無料で聴けます。
◇ Luisterverhaal 'Word Clouds', CD & MP3 | Studio Sesam
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↓ こちらのサイトでも聴けます。ベルギーの緘黙団体ウェブサイトへのリンク。一番下をご覧ください。
◇ Prentenboek Woordenwolken over praatangst - Selectiefmutisme.be
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むすび


今回の受賞を機に、Fatinha Ramosさんのことを私は初めて知りました。

緘黙の絵本に関わったことがある方が世界イラストレーション賞を受賞して嬉しい!……というよりはむしろ、このような国際的に活躍されている方を招いて緘黙の絵本の出版を実現したことが、私には大きな驚きです。