緘黙少女が主人公の新著『私の世界を変えてくれた君へ。』

更新日:2019年10月11日(投稿日:2019年10月11日)
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「ケータイ小説サイト 野いちご」より


場面緘黙症の高校生が主人公の、新たな小説が出版されることが分かりました。

著者:なぁな
イラスト:岩ちか
書名:私の世界を変えてくれた君へ。
出版社:スターツ出版
発売日:2019年10月25日

この本は、「ケータイ小説サイト 野いちご」に掲載された作品「斜め45度の世界を変えてくれたのは、キミだった。」を書籍化したものです。その内容は、下記のページで読むことができます。

↓ 「ケータイ小説サイト 野いちご」へのリンクです。
◇ 『私の世界を変えてくれた君へ。』 なぁな /著 | ケータイ小説サイト 野いちご
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私は上のページで公開されている作品を最後まで読んだのですが、緘黙の理解や説明云々よりも、何より主人公の心理描写が巧みで、このあたりはさすが小説を書かれる方だと、うならされました。

著者のなぁなさんは、これまで多数の著書をスターツ出版から送り出していますが、今回の本は文庫本ではなく、単行本という扱いです。このためか、これまでの本に比べて、価格が倍ほどに設定されています。本としてどのような物が出来上がるのか、注目したいです。


『春が来たら、桜の花びらふらせてね。』と同じ出版社


ところで、「スターツ出版」や「野いちご」という名前、見たことがあるという方がいらっしゃるかもしれません。そう、昨年発売された緘黙の高校生が主人公の小説『春が来たら、桜の花びらふらせてね。』もスターツ出版から発売された本で、「ケータイ小説サイト 野いちご」から生まれた作品でした。

『春が来たら、桜の花びらふらせてね。』は涙鳴(るいな)さんの作品でしたが、今回は別の方が書いていらっしゃいます。複数の方が緘黙に関心を持ってくださったのはありがたく思います。






日本出身の緘黙当事者が、台湾出身の当事者と共著

更新日:2019年04月06日(投稿日:2019年04月04日)
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Ayahaさんという日本出身の場面緘黙症当事者が、台湾出身の当事者と共著を出したことが分かりました。

○ 著者:Rochelle・Ayaha
○ 書名:不說話的女孩:雖然我們有選擇性緘默症,但是有話想說
○ 書名(英語):We have selective mutism, but we have something to say.
○ 出版社:釀出版
○ 出版日時:2019年4月

Rochelleさんは、台湾出身の20歳の大学生。Ayahaさんは日本出身で、現在はフィンランド在住の22歳の大学院生です。ともに女性で、お二人は友人同士です。

[2019年4月6日修正]

Ayahaさんから頂いた情報によると、内容は、去年3月に香港で行われたRuth Perednik氏(心理学者)のワークショップの話や、お二人が今まで交換してきた手紙の中国語訳だそうです。話の軸はRochelleさんの緘黙体験が中心だそうです。


以下は、情報源です。

◇ 不說話的女孩:雖然我們有選擇性緘默症,但是有話想說 - Rochelle、Ayaha - 秀威書店
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◇ 一本來自「選緘者」最真實的聲音!--《不說話的女孩:雖然我們有選擇性緘默症,但是有話想說》 - 創作 - 作家生活誌
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このお二人には心当たりがあるという方もいらっしゃるかもしれません。多国語のFacebookページを共同運営している、あのお二人です。このFacebookページには、日本の「かんもく自助グループ言の葉の会」の交流会に参加したリポートが投稿されたこともあります。

↓ お二人によるFacebookページ。「場面緘黙症」という用語も使っているあたり、日本の読者も意識していることが窺えます。
◇ Dear Ayaha, Dear Rochelle selective mutism 選擇性緘默 場面緘默症
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↓ 「言の葉の会」の交流会に参加した時の報告。
◇ 【言の葉の会主催の場面緘黙の交流会に参加しました】
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台湾でも近年緘黙の本が出版されていますが、どれも翻訳書でした。翻訳書ではない台湾オリジナルの本の出版は、初めて聞きました(もし過去にあったら、ごめんなさい)。また、日本出身の方が、海外で緘黙の本を出版したという話も、初めて聞きました。

日本からこのお二人を応援しています。

[2019年4月6日追記]

※ 日本からでも、オンラインでこの本を買えるそうです!



『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』読みました

更新日:2019年04月01日(投稿日:2019年04月01日)
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先日お話した新刊『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』を読み終えました。

原書は2014年に通読し、その後もつまみ食いのような形で部分的に何度も読んできたのですが、今回翻訳書という形で久々に通読しました。改めて読んで、具体的な支援法をよくまとめた本だと感じました。

もう少し読んだ感想を書いてみたいと思います。まずは、本の基本情報のおさらいからです。

本の基本情報


○ 著者:エイミー・コトルバ(Aimee Kotrba)
○ 監訳: 丹明彦
○ 訳: 青柳宏亮、宮本奈緒子、小暮詩織
○ 書名:場面緘黙の子どものアセスメントと支援:心理師・教師・保護者のためのガイドブック
○ 原書名:Selective Mutism: An Assessment and Intervention Guide for Therapists, Educators and Parents
○ 出版社:遠見書房
○ 初版発行日:2019年3月1日
○ ページ数:212

著者のエイミー・コトルバ氏は、緘黙や社交不安を専門とする臨床心理学者。ミシガン州ブライトンでクリニックThriving Mindsを運営されています。かつてアメリカ最大の緘黙団体の理事長を務められた経験もあります。2018年8月には、主に保護者を対象とした緘黙の本を共著で出されました。

◇ 保護者向けに書かれた、新しい緘黙の本(米)
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監訳者の丹明彦氏(目白大学准教授)は、「大学に所属しているものの、過去20年以上にわたって、継続的に週20セッションを行う臨床家」であり、「場面緘黙のセラピーも現在進行形で複数行っている」(197ページ)そうです。翻訳を担当した青柳宏亮氏(横須賀市児童相談所・児童心理司)とともに、緘黙の論文を発表するなどされているのを目にしたことがあります。


本の概要


本の内容は、書名通り、「場面緘黙の子どものアセスメントと支援」について具体的に述べたものと言ってよさそうです。想定読者も副題通り、心理師・教師・保護者の三者です。

ただ、アセスメントについては本文11ページ分と付録11ページ分の合わせて22ページ分で、ページ配分としては全体の1割程度です。具体的な介入方法に関する内容が、総ページ数の多くを占めています。

巻末には「付録資料」があります。169ページから196ページまでの27ページ分あります。

今年発売された別の緘黙の和書とは対照的に、文章が多いです。


感想


今や海外では主流の支援法の一つでは


本書で示されている支援法には「ブレイブワーク」「親子相互交流療法」(PCIT)といった、日本の読者にはおそらく馴染みが薄いと思われる支援用語が、重要な位置を占めています。

私は専門家ではありませんが、これらによる支援法は、今や海外では主流の一つとなっていると言っても過言ではありません。今回の翻訳書の出版で、ようやく日本に本格的に紹介されました。

「ブレイブ」(brave)は「勇敢な」という意味ですが、これは海外、特に北米では頻繁に目にする言葉です。海外では、緘黙支援のキーワードの一つといってもよさそうなほど頻出しています。

親子相互交流療法にしても、この支援法においては数少ない認定マスタートレーナーのスティーブン・クルツ博士(Steven Kurtz)や、同博士がかつて勤務していたChild Mind Institute(ニューヨーク)を中心に、緘黙支援で取り入れられ、普及活動も行なわれています。

これまでの緘黙の本のように、行動療法が支援の中心ですが、このように日本の類書にはないことも書かれてあります。このほか、学外の心理相談室での集中的治療や動機づけ面接法、認知的介入など、本書は多様な支援法を示しています。

保護者が果たすべき役割


近年、日本で発売された緘黙の和書2冊は、いずれも学校場面で緘黙がある児童生徒にいかに対応するかがテーマでした。このため、主に教師が果たすべき役割に焦点が当たっていました。

今回の本は扱う範囲が広く、保護者が果たすべき役割にも重きが置かれています。この点も、既存の類書との違いとして挙げられます。

翻訳が非常に読みやすい


本書は、翻訳書としては日本語が自然で、非常に読みやすいです。翻訳の正確性については、逐一原文と照らし合わせたわけではないので分からないのですが、問題なく意味が通る日本語です。特に最後の、第8章末尾の翻訳は傑作です。

「監訳者あとがき」が面白い


丹明彦氏による「監訳者あとがき」は率直な書き方で、かなり面白く思われました。これまで緘黙の本を書かれた日本のどの専門家とも、違う文章です。

本書はアメリカの本ですが、この「監訳者あとがき」では「日本の学校環境での支援実践の可能性」についても述べており、日本の読者には役立ちそうな内容です。

主人公は緘黙児者本人


本書、特に「監訳者あとがき」を読んで確信したのは、心理士・教師・保護者はあくまで援助者であり、主人公は緘黙児者たち本人だということです。

北米で緘黙児者に「ブレイブ」であれと勇気付ける支援者を私はよく目にして、緘黙を乗り越える主体は緘黙児者本人ではないかと私も感じていました。日本ではこうした勇気付けについてこれまであまり触れられなかった一方で、緘黙児者の環境に注目が集まっています。確かに環境は重要ですが、主人公は緘黙児者本人なのだということも忘れないでいたいです。




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