NHK「ラジオ深夜便」が緘黙を扱います

2018年01月27日(土曜日)

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NHKラジオ第1「ラジオ深夜便」が、場面緘黙症を扱います。

場面緘黙経験を持つシンガーソングライターの若倉純さんが、番組内のコーナー「ないとエッセー」に出演される予定だそうです。2月26日(月曜日)から3月1日(木曜日)までの4日間です。詳しくは、若倉純さんのブログをご覧ください。

↓ 若倉純さんのブログへのリンクです。
◇ ラジオ深夜便「ないとエッセイ」
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ラジオ深夜便は、放送終了後1週間程度は、番組ホームページ内「聴き逃しサービス」で聴くこともできるようです。

私は「聴き逃しサービス」で過去の放送分を聴いてみたのですが、時間配分等から見て「ないとエッセー」の放送時間帯は、大雑把ですが午後11時30~35分頃から15分間近くではないかと思います。もしかしたら日や週によって変わることもあるかもしれず、あまり当てにしないで頂きたいのですが、一つの目安として参考までに。

[ラジオ深夜便 午後11台(予想)]

番組開始(午後11時15分)

日本列島くらしのたより

ないとエッセー

全国天気 明日の日の出

放送日が近づけば、場面緘黙症Journal トップページや、ブログ(パソコン版)に設置している「緘黙関連の予定」のリストに、番組のことが上の方に表示されるようになると思います。なお、「緘黙関連の予定」への直接リンクはこちらです。

↓ 直接リンク。初期設定ではリストではなく、カレンダー表示になっています。
◇ 緘黙関連の予定
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「学校の先生には、緘黙の本を読む時間はない」(海外)

2018年01月26日(金曜日)

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わずか30ページの緘黙の本が、英国で出版


前回ご紹介したアメリカの場面緘黙症の本は、588ページもの分量がある本でした。大きな空白があるページも多いとはいえ、日本の一般的な緘黙の和書3冊分に相当するページ数で、分厚い本です。

これとは対照的に、わずか30ページの緘黙の本が、ほぼ同時期の2017年9月にイギリスで発売されています。Understanding Selective Mutism: A Beginner's Guide という本です。書名を和訳するとしたら、『場面緘黙症の理解-ビギナーズガイド』といったところでしょうか。

Amazon.co.jp の「なか見!検索」で目次を見た限りでは、「ビギナーズガイド」という副題の通り、初学者向けの基礎的な内容という印象を受けます。


「教師には、時間がない」


それにしても、わずか30ページとは、かなり薄そうな本です。どうしてここまでシンプルな本が出たのでしょう。その狙いを、著者の Lucy Nathanson 氏(チャイルドセラピスト)が語っています。

↓ Lucy Nathanson 氏の Facebook ページ へのリンク。Facebook に登録されていない方でもご覧になれます。
◇ Confident Children 2017年9月28日投稿分
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ポイントは、次の一文です(訳が下手ですみません)。

場面緘黙症の非常に優れた本がたくさんありますが、それらを時間を割いて読むのは、ごく一握りの非常に献身的な教師や学校スタッフだけかもしれません。--人には、特に教師には本当に時間がないのです!

There are a lot of fantastic books available on selective mutism but only a handful of super dedicated teachers and school staff may take the time to read them - people, especially teachers, genuinely don't have the time!

それで、このような時間をかけずに読める本を出したということです。

ただ、緘黙支援では、学校の役割は大きいはずです。これだと、教師や学校スタッフに対して、緘黙支援で必要な役割を期待することを諦めてはいないでしょうか。

とはいえ、全く本を手にとっていただけないよりかはよいでしょうし、現実的な判断のようにも思えます。とりあえず、私は合点がいきました。


日本の教師に、170ページの緘黙の洋書を読んでいただこうとしたが……


この Lucy Nathanson 氏の Facebook 投稿を読んで、私は十数年前のある出来事を思い出しました。日本の話なのですが、ある方が、緘黙の優れた本があるので学校の先生に読んでいただこうと、緘黙関係のブロガーに呼びかけられたのです(私のブログにも呼びかけのコメントを頂きました)。その本は、170ページほどの英語で書かれた本でした。当時、日本には緘黙の専門的な本が少なかったのです。

ですが、これは取りやめになっています。学校の先生は想像を絶するほど多忙なことと、英語にそれほど堪能ではないことがとりやめの理由でした。


多忙な教師に、どこまで期待するか


Lucy Nathanson 氏の「教師には時間がない」というお話は、あくまでイギリスのお話です。

日本の教師についても多忙という話はよく聞くものの、詳しい実情は、私は知りません。もしかしたら、日本の教師はイギリスの教師ほどには忙しくなく、200ページぐらいの緘黙の和書ぐらいなら読む時間はとれるし、緘黙支援に多くの期待ができるのかもしれません。逆に、実はイギリスの教師よりも時間がないのかもしれません。このあたりの実情については、読者の皆様の方がお詳しいかもしれません。

どちらにしろ、教師への期待については、理想と現実があるのはイギリスも日本もそう変わらないのではないかと思います。理想を言えば、緘黙児に関わる教師には、緘黙を専門的に扱った和書ぐらいはほぼ読破していただきたいところです。ですが、それは過大な期待かもしれません。教師には一体どこまで期待するのが現実的なところだろうと、Lucy Nathanson 氏の本出版を通じて考えさせられました。




緘黙児の受容・表出言語スキルを高める新しい本(海外)

2018年01月20日(土曜日)

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場面緘黙症支援の本としてはこれまでにない本が、2017年11月にアメリカで発売されました。

この本はサイズが大きく、我が家にあるタウンページより大きいです。私が今まで買った緘黙の本の中では最も重量があり、我が家の量りで1.4Kg近くもあります。一般的な緘黙の和書は0.3~0.5Kgほどですから、その数倍です。ページ数も多く、私が所有する紙製の緘黙の本では最多の554ページに及びます(ただし、大きな空白があるページも多いです)。その分高価だったのですが、皆様が場面緘黙症Journal で本などを買ってくださったおかげで、入手できました。ありがとうございます。

私はまだこの本を読んでいる最中なのですが、読み終えるには時間がかかりそうなので、とりあえず速報として今回お伝えします。

本の基本情報


書名


本の題名は、Expanding Receptive and Expressive Skills through Stories: Language Formulation in Children with Selective Mutism and Other Communication Needs です。私は専門家ではないのでよく分からないのですが、訳すと、『物語を通じての受容・表出スキルの拡大-場面緘黙症や他のコミュニケーションに支援を要する子どもの言語構成』といったところでしょうか(少し自信ありません)。

著者


著者には、Klein,‎ R.L., Armstrong,‎ L.S., Gordon,‎ J., Kennedy,‎ D., Satko,‎ G.C., Shipon-Blum, E. といった方が並んでいます。

この多くは、フィラデルフィア近くにある民間の緘黙研究施設 Selective Mutism Research Institute や治療研究センター SMart Center(Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center)の関係者です。2つの施設は同じ場所に位置していて、関係が深いです。SMart Centerは、かんもくネットの Knet資料でもお馴染みです。

また、本書の著者には、言語聴覚士など、ことばの問題を専門とする方が多いです。フィラデルフィアにあるラサール大学の教授が2名、同大学で博士号を取得した方が2名です。

出版社、出版年月日


出版社は、Plural Publishing です。2017年11月の発売ですが、本には、2018年出版ともとれる記載があります。


本の概要


緘黙の子どもには、ことばの問題を併せ持つ子がいます。本書はそうした緘黙児に児童文学を読み聞かせ、問いに対して非言語的手段や言語的手段で段階的に答えさせることを通じて、受容言語スキル(言われたことを理解するスキル)と表出言語スキル(話すスキル)を高めるためのマニュアルです。このプログラムを、本書は「エクスプレス」(EXPRESS)と名づけています。

この本に先立つ研究として、Klein,‎ R.L. 氏らによる2013年に発表された論文があります(Klein et al. 2013)。フィラデルフィアの緘黙治療専門施設(おそらくは SMart Center)にかかっていた5歳から12歳までの33人の緘黙児に対してアセスメントを行なったものです。その中で、緘黙児は自分で物語を語る検査の点数が低いという結果が出ています(検査は専門家ではなく訓練された親が行なったにもかかわらず)。今回の本の中では、その研究により、緘黙児に次の問題が確認されたと例示されています(2ページ)。

○ センテンス毎に十分な数の単語を使うこと
○ 複合的で複雑な構文を使うこと
○ 聞いたばかりの物語を自分で語り直すこと
○ 見た絵から物語を作ること
○ 考えを伝えるために想像力を働かせること
○ decontextualized language(※)を用いて情報を伝達すること

※ すみません、どう訳せばよいか分かりません。

エクスプレス・プログラムは、この研究を受けて開発されました。

エクスプレス・プログラムは、緘黙がある子のために開発されたものですが、他のコミュニケーションに問題を抱える子や、英語を第二言語とする子に対しても、この本は使えるとしています。


コメント


こうしたことばやコミュニケーションの問題(と言えばよいのでしょうか)と緘黙の関係については、あまり聞いたことがないという方もいらっしゃるかもしれませんが、英語圏では以前から取り上げられていました。昨年、イギリスの本の邦訳『場面緘黙支援の最前線』が出版されましたが、その第5章で「場面緘黙とコミュニケーション障害の併存」が解説されたことから、日本でもようやく知られ始めているかもしれません。なお、この第5章では、先の Klein 氏らによる2013年の論文が繰り返し引用されています(本では2012年の論文とされています)。

Klein 氏らによる先の研究では、緘黙児の受容言語スキルには特に問題は確認されなかったと私は読み取ったのですが、この本ではその受容言語スキルの拡大も図っています。他の先行研究には受容言語スキルに問題がある緘黙児の存在を示唆するものがあるため、そこのところを考慮したのかもしれません。

それにしても、この本を読んでいると、緘黙支援はどこまで行われるべきなのだろうかと考えさせられます。ただ声が出るようになったら支援を打ち切るのではなく、年齢相応の表現で、筋道立てて、自ら話せるようにまでなるまでは支援が必要なのか。私自身は、だいたい後者の段階にまで至った時に、とりあえず自分は緘黙(診断は受けていませんが)を克服したと考えています。