2018年・緘黙関係ニュースを振り返る

更新日:2018年12月30日(投稿日:2018年12月27日)
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今年一年を、場面緘黙症に関係するニュースで振り返りたいと思います。今年で9回目の企画です。私が把握したニュースの中から、気になったものを選んで振り返ります。

1月 バリバラ「どきどきコテージ」で当事者登場


NHK Eテレの番組「バリバラ」1月21日と28日の放送分で、「どきどきコテージ」と題する放送がありました。「吃音や場面緘黙でコミュニケーションが苦手な男女8人が集う『どきどきコテージ』」での交流が描かれたそうです。再放送も行なわれています。

この放送には好意的な感想も多かったです。その一方、番組に出演された方の一人が収録後に公然と番組批判を展開し、反響を呼ぶ一幕もありました。


2月 緘黙の高校生が主人公『春が来たら、桜の花びらふらせてね。』発売


2月25日には、緘黙がある高校生が主人公の小説が発売されました。『春が来たら、桜の花びらふらせてね。 』です(涙鳴著、スターツ出版、野いちご文庫)。本の裏表紙やミニ広告にも「場面緘黙症」の文字がありました。涙鳴さんは、「あとがき」の中で緘黙について訴えてくださっています。


3月 かんもく自助グループ「言の葉の会」設立


3月には、緘黙の当事者、経験者運営による自助グループ「言の葉の会」が設立されました。全国各地で交流会を開催しています。

かつては沖縄の緘黙の当事者会がブログを運営されていましたが(現在も活動されているかは存じません)、全国規模の自助グループができたのは、もしかしたらこれが初めてかもしれません。


5月 『読売新聞』朝刊に緘黙の記事


5月21日には『読売新聞』朝刊くらし面で、緘黙の記事が掲載されました。「【子どもを守る】学びの場で(4)「場面緘黙」発話一歩ずつ」という記事のようです。


5月 共同通信が「場面緘黙バー」の記事を配信


5月12日には、共同通信が「場面緘黙バー」の記事を配信しました。短いながらも写真付きの記事でした。「公での発言困難『知って』場面緘黙バー、当事者主催」という題名だったようです。


9月 バリバラ、緘黙当事者の一人旅


9月9日には、富山在住の緘黙当事者の一人旅が放送されました。「場面緘黙(かんもく)・加藤くんの大阪ひとり旅」と題するものです。この放送は再放送もされています。

その内容は通天閣から大阪を一望したい、メイドさんと話してみたいといった夢を「音声アプリ」や「お助けアイテム」を使って実現していくというものだったそうです。


9月 AmebaPrimeで緘黙の特集


9月17日には、インターネット番組 AmebaPrime において、緘黙の特集がありました。45分近い内容でした。

放送内容はネットニュースの記事になったほか、AbemaTV公式サイトに1ヶ月間ほど無料公開されました。


9月  『場面緘黙の子どもの治療マニュアル』発売


場面緘黙の子どもの治療マニュアル 』(二瓶社)が発売されました。7月20日発行の本ですが、ネット書店で予約注文した私のもとには9月に届いています。

これは、R. Lindsey Bergman(R・リンジー・バーグマン)によるTreatment for Children with Selective Mutism: An Integrative Behavioral Approachを翻訳したものです。園山繁樹筑波大学教授監訳。


12月  『イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド』発売


12月19日には『イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド』(合同出版)が発売されました。小児科医の金原洋治氏と、長野大学の高木潤野純教授の共著です。合同出版から発売された緘黙の本は、これで3冊目です。


通年 発達障害者支援法、緘黙の名称について動きあり


WHO(世界保健機関)による「国際疾病分類」が改訂されました。ICD-10からICD-11への改訂です。緘黙は不安症群のカテゴリに移動することになりました。ですが、これにより、日本では緘黙が発達障害者支援法の対象から外れる可能性が指摘されました。

そこで、緘黙を同法の対象から残すとともに、日本語訳では「選択性緘黙」から「場面緘黙」へ変更するよう要望する組織的な動きがあったそうです。


まだまだ、たくさんのニュースが


まだまだ、たくさんのニュースがありました。

1月 『毎日新聞』朝刊に、若倉純さんの記事
1月 NHK「おはよう日本」が緘黙を取り上げる
1~2月 『北方ジャーナル』に、緘黙の記事
2月 『日刊ゲンダイ』に掲載
2月 『新潟日報』朝刊投書に掲載
2月 琉球放送が緘黙を特集
2月 緘黙の少年が登場、丸山正樹『龍の耳を君に』発売
2~3月 NHK「ラジオ深夜便」が緘黙を1週間扱う
2~3月 『毎日新聞』に、緘黙の投書掲載が相次ぐ
3月 愛知県日進市で定員250名の講演会
3月 台湾の緘黙講座に500名以上参加、大手メディア取り上げる
4月 緘黙の研究に科研費
4月 小学校で英語の授業が増える
4月 高校でも「通級による指導」開始、緘黙支援も
5月 『北海道新聞』オホーツク面に、緘黙の記事
5月 『朝日新聞』朝刊に、緘黙の記事
6月 台湾で緘黙経験者の実話を元にしたCM
6月 WHOが、ICD-11を公表
6月 『西日本新聞』朝刊に、緘黙の記事
6月 静岡で講習会
7月 名古屋で研修会
7月 ラジオNIKKEIの番組が緘黙を2日間取り上げる
7月 「夢ライブ」で緘黙の講義
8月 かんもくフェスin富山
8月 緘黙の研究に科研費
9月 長野で親の会「りんごの会」ができる
9月 北見市で講演会
9月 『中日新聞』夕刊に、緘黙の記事
9月 特殊教育学会の大会でシンポ2件ほか
11月 東海地方CBCテレビ「イッポウ」が緘黙を取り上げる
11月 伊賀市でパネル展
11月 絵本『やましたくんはしゃべらない』発売
11月 かんもくフリーペーパーが出る
11月 障害者週間ポスター、中学生最優秀賞に緘黙の作品
11月 奄美で第1回交流会
12月 mananaさんが新潟で緘黙ライブ&トーク
12月 ミス・ユニバースのトルコ代表が緘黙経験を語る

通年 マルテさんがノルウェーのメディアで繰り返し取り上げられる
通年 富山で緘黙がメディアで繰り返し取り上げられる
通年 けいはんなサロン



厚生労働科学研究、緘黙等の研究の公募開始

更新日:2018年12月21日(投稿日:2018年12月21日)
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吃音、トゥレット症候群、緘黙


平成31年度(2019年度)の厚生労働科学研究費補助金の第一次公募研究課題が、12月21日に発表されました。その中の一つに、次のものがあります。

「言語を用いるコミュニケーションに困難さを持つ発達障害児者(吃音、トゥレット症候群、場面緘黙)の実態把握と支援のための研究 (19GC0101)」

※ 太字は私が施したものです。

求められる成果には次の二つが挙げられています。当事者や保護者としては、多少の期待も湧いてくるかもしれません。

「吃音症、トゥレット症候群、場面緘黙における生活の困難さと医療、福祉、就労等日常生活での有効な支援に関する調査結果」

「吃音、トゥレット症候群、場面緘黙の困難さを示す指標・尺度及び測定方法やその支援手法についてのガイドラインの作成」

研究費の規模は1課題当たり年間3,500~5,000千円程度だそうです。少なくとも、金額面では大規模な研究ではないようです。

↓ 115ページに書かれてあります。PDF(1,353KB)。厚労省ホームページへのリンクです。
◇ 2019年度第一次公募要項
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※ PDFを閲覧するには Adobe Reader が必要です。こちら新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。

↓ 今回の厚生労働科学研究公募全体については、こちら。厚労省ホームページへのリンクです。
◇ 2019年度 厚生労働科学研究費補助金公募要項(1次)
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当事者や家族、支援の実施者の意見が反映されるはず


今回公募される研究費補助金は、これまで何度かお話してきた「科研費」とは異なります。「科研費」は、文部科学省と、その外郭団体である独立行政法人日本学術振興会による研究助成費で、全ての学問分野にわたる「競争的研究資金」です。今回公募が行なわれた厚生労働科学研究では、緘黙に関わる研究が行なわれたことはありません(科研費はあります)。

↓ 科研費に採択された緘黙に関わる研究。国立情報学研究所のサービスKAKENへのリンク。
◇ KAKEN - 研究課題をさがす | 緘黙
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今回の公募の採択条件には次のように書かれてあるので、私たちにも何らかの関わりが出てくることも予想されます。

「吃音症、トゥレット症候群、場面緘黙等の当事者や家族、支援の実施者(専門家、行政、関係団体等)の意見が反映される体制が整備されていること(研究計画書の「2 研究計画・方法」において意見聴取の機会等が記載されていること)」

それから、診断名称の「選択性緘黙」ではなく、「場面緘黙」という名称で厚労省が公募を行っているのが気になります。「選択性緘黙」という名称だと話さないことを本人が選択しているという誤解を与えかねないとして、「場面緘黙」という名称を推す声が緘黙関係団体などの間にあります。ただ、正式な診断名称は「選択性緘黙」ですし、「症」をつけた「場面緘黙症」という呼び方も当事者や経験者らの間で根強いです。「場面緘黙」とした意図はどこにあるのでしょうか。

また、細かいことですが、緘黙が発達障害として扱われています。確かに緘黙は法律上発達障害とされることがありますが、緘黙は発達障害者支援法の対象から近い将来外れる可能性があるという観測もありました。今回の研究実施機関は最長2年間が予定されていますが、このあたり、問題になることはないだろうかと思います。

◇ 緘黙が、発達障害者支援法の対象から外される?
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なお、厚生労働科学研究は成果がまとまれば、下記のページで閲覧できます。

◇ 厚生労働科学研究成果データベース MHLW GRANTS SYSTEM
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ミス・ユニバースのトルコ代表、緘黙経験を語る

更新日:2018年12月19日(投稿日:2018年12月19日)
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Tara de Vries(タラ・デ・ヴリーズ?)さん


ミス・ユニバース2018


ミス・ユニバース2018の世界大会が、12月17日に開かれました。そのトルコ代表であったTara de Vries(タラ・デ・ヴリーズ?)さんが5歳の時、場面緘黙症の診断を受けていたそうです。

このことについては、Tara de VriesさんのInstagramアカウントや、ミス・ユニバース2018のホームページなどに書かれてあります(この記事の最後にリンクをご紹介します)。

※ なお、ミス・ユニバース2018世界大会の優勝者は、フィリピン代表の方に決定しています。


Tara de Vriesさんの緘黙経験


Tara de VriesさんはInstagramアカウントの中で、4歳の時に緘黙になったと話されています。ちょっとよく読み取れない箇所があったのですが、4歳下の弟さんが100万人に1人のanomaly(障害または病気か)を持って生まれたことから、集中的なケアを行なったり、sign language(手話か)を使ったりしました。その弟さんが原因で、Tara de Vriesさんは緘黙になったと話されています。

もしTara de Vriesさんの症状が場面緘黙症だったとしたら、発症のきっかけとしては珍しいかもしれません。これはあくまで推測ですが、Tara de Vriesさんはもともと不安を極端に感じやすく、寡黙な子だったのではないかと思います。そうしたところに、手話に頼りすぎるなどの、何らかの引き金があって緘黙になったのではないかと思います(繰り返しますが、あくまで推測です)。

どちらにしろ、「私は、自分がいかなる社会的活動に参加することも、世間の目に触れることも、決してできないだろうと思っていました」 (I thought I would never be able to take part in any social activity or being in the public eye) という言葉には、多いに共感できます。同じような経験をされた方なのでしょう。

そして、「誰とも話せない時期が1年半続いた後、私は緘黙を克服し、緘黙に勝利しました。そして、素晴らしく、自信に満ちて、情熱的で、思いやりがあり、愛情あふれる、力強い若い女性に成長しました」 (I overcome and won this sickness after not being able to talk to anyone for 1,5 year and grew up to be a wonderful confident, passionate, sensitive, loving, powerful young lady)と話されています。ここまで自信にあふれた表現をする方は、緘黙を経験した方にしても、そうでない方にしても、日本ではあまりいません。海外の方ならではの感性のような気がしますが、国を背負ってコンテストに参加している立場ゆえの発言のようにも思えます。


「私の人生における最大のモチベーション」


そしてTara de Vriesさんは、障害がある子どもの認識を高めたいと話されています。これは、これまで何十回も外科手術を受けてきた弟さんのことを踏まえてのことかもしれませんし、ご自身の緘黙のことを踏まえてのことかもしれませんし、それとも両方かもしれません。弟さんのことと、ご自身の緘黙経験は「私の人生における最大のモチベーション」(My biggest motivation in life)とおっしゃっています。


Tara de Vriesさんとは


Tara de Vriesさんは20歳。アムステルダムのお生まれで、12歳までオランダで育ちました。トルコ人の母親とオランダ人の父親の間から生まれた方ですが、母親もミス・ユニバース・トルコ1992に選ばれていたそうです。

現在、イスタンブールのコチ大学で経営学を学ばれています。なお、コチ大学は優秀な大学なようで、イギリスの教育専門誌Times Higher Educationによる2019年世界大学ランキングで400位台、トルコでは2位に入っています。

◇ 2019年世界大学ランキング(トルコ)
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過去には、ミス・イギリスに選ばれた緘黙経験者も


緘黙を経験した方がこの種のコンテストに選ばれ、緘黙の啓発活動を行なった例が過去にあります。

Kirsty Rose Heslewood(カースティ・ローズ・ヘイズルウッド)さんは、ミス・イングランド2013やミス・イギリス2013に選ばれています。カースティさんは、テレビ番組『ザ!世界仰天ニュース』で取り上げられたり、コミックエッセイ『私はかんもくガール』の帯に映ったりと、日本でも比較的知られています。

◇ カースティさん まとめ
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2018年には、Marte Fredriksen(マルテ・フレドリクセン?)さんがミス・ノルウェーの最終選考に残りましたが、辞退されています。緘黙の啓発活動を優先しての辞退でした。

◇ 緘黙経験者が、ミス・ノルウェーの最終選考に残る
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