SMartセンターの緘黙キャンプの冊子

更新日:2019年09月02日(投稿日:2019年06月27日)
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場面緘黙症の臨床経験30年で、6,000人の治療を行なってきたという、アメリカのエリザ・シポンブラム氏。[注]

同氏が運営する緘黙の治療センター「SMartセンター」(Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center)の新たな本が出ました。私はこれを読み終えたので、ご紹介したいと思います。

基本情報


2冊あります。1冊は低年齢の緘黙児、もう1冊は十代の緘黙児者への支援を念頭に置いたものです。

[1冊目]

○ 書名:Overcome Selective Mutism with The Social Communication Bridge
○ 著者:エリザ・シポンブラム氏とSMartセンターか
○ 出版日:不明(Amazon.co.jpには2019年6月13日とあり)
○ 出版社:不明(本の末尾に「Printed in Japan 落丁、乱丁本のお問い合わせはAmazon.co.jp カスタマーサービスへ」の記載あり)
○ ページ数:47
○ 本のサイズ:A4サイズに近い


[2冊目]

○ 書名:同上 (「for teens!」の記載あり)
○ 著者:同上
○ 出版日:同上
○ 出版社:同上
○ ページ数:同上
○ 本のサイズ:同上


著者などの基本情報がはっきり本に書かれていません。ページ数も少ないですし、本というよりは冊子と言った方がよいかもしれません。なお、私はこの2冊をAmazon.co.jpで購入しました(リンクは、そのアソシエイトリンクです)。


内容


2017年からだと思うのですが、SMartセンターはCommuniCamp™と題する、キャンプ型の集中グループ治療プログラムを実施しています。今回の冊子は、そのCommuniCamp™を中心に、緘黙支援についてまとめたものです。

明らかに保護者向けに書かれたもので、支援の場で役立つワークブック形式になっているページもあります。

この冊子は、実際にCommuniCamp™で使われているものを一般向けに販売したもののようにも見えます。少なくとも、CommuniCamp™の保護者向け案内ではあろうかと思います。

2冊とも、内容はほぼ同じです。ただ、ワークブック形式になっている一部のページに違いがみられます。


感想


緘黙児者への集中プログラムは、近年、アメリカを中心に各国で行われています。プログラムの内容は実施者によって違いもあるようですが、緘黙児者のみならず、親への介入も行うところもあるようです。

親への介入とは、具体的に言うと、教育です。親が緘黙支援の担い手の一人となれるように教育を行うようです。これにより、緘黙児者が集中プログラムで活動し終えた後の、効果の持続を図っているようです。

CommuniCamp™もその一つです。その概略とみられるものも、この冊子には書かれています。

この冊子を読み、アメリカを代表する緘黙団体 Selective Mutism Association の今年の年次総会の基調講演の予定を私は思い出しました。その基調講演の内容は、不安が強い子どもに対する親の関わり方に関する新たな知見の紹介だそうです。

↓ Selective Mutism Associationウェブサイトへのリンク。少し下に降りると、基調講演の情報が載っています。
◇ Keynote Address | How the Science of Parenting Leads to Effective New Treatment for Childhood Anxiety Disorders, Eli Lebowitz, Ph.D.
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もしかすると、緘黙治療における親の役割が、アメリカで注目を集めているのかもしれません(が、確証はありません)。

近年、日本で専門家による緘黙についての和書(翻訳書除く)が2冊出ましたが、いずれも教師向けのものでした。緘黙支援において教師が果たす役割は確かに大きいですが、親が果たす役割も重要であることを、この冊子を読んで改めて考えさせられました。









中华选择性缄默症协会とは何か

更新日:2019年06月21日(投稿日:2019年06月21日)
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中華選択性緘黙症協会


中华选择性缄默症协会(中華選択性緘黙症協会)という団体があります。公式サイトは、中国のcnドメインです。

↓ そのページです。
◇ 欢迎访问中华选择性缄默症协会网站
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公式サイトによると、団体の目的は、緘黙の知識や認知を広めるとともに、多くの緘黙児者やその保護者が適時に支援を得ることができるようにすることです。

この団体は俊华さんという緘黙児(者?)の親御さんが、専門家や親のボランティアと共同で始めた非営利の団体です。英語表記はSelective Mutism Association of Chinaで、略称はSMACです。

団体の規模は分かりません。ウェブサイトの掲示板にまだ投稿があまりないので、もしかしたら、小規模の団体の可能性もあります。

団体のシンボルマークは不死鳥です。緘黙児が不死鳥のように、勇気をもって緘黙から抜け出して欲しいという願いが込められています。

いつから存在した団体かは分かりません。ですが、ウェブサイトの末尾には "Copyright 2018 - 2019" とあること、団体のフォーラム型掲示板の最古の投稿が2018年10月25日であることから、遅くとも2018年には存在していたとみられます。

中国には微信というメッセージアプリがあり、このアプリを活用しているようです。

以前「緘黙関連ニュース」でお伝えした中国の緘黙ブログ「聪明的艾米」とコラボレーション?を行なっています。このブログは2018年に開設、記事が投稿され、多くのアクセス数を記録しています。

↓ そのブログです。
◇ 聪明的艾米_文学城博客
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英語圏の影響


さらにこの団体は、緘黙のeラーニング(無料)の提供を行なっています。いずれも、英語圏の専門家の講義等を視聴できます。

このeラーニングにも窺えますが、団体は英語圏の知見を積極的に取り入れようとしているようです。ウェブサイトで紹介されているおすすめの緘黙の書籍も、緘黙の専門家も、全て英語圏のものです。

先ほどのシンボルマークの不死鳥にしても、「勇気」という言葉を持ち出していることから、英語圏の影響が窺えます。「勇気」(ブレイブ)は海外(特にアメリカ)の緘黙支援のキーワードです。今年出たアメリカの本の翻訳書『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』にも、ブレイブという言葉は登場します。

このほか、団体には英語のYouTubeチャンネルがあります。

↓ そのYouTubeチャンネルです。
◇ Selective Mutism China - YouTube
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団体では英語圏の緘黙の本を中国語に翻訳する試みが行なわれていて、5冊の書籍の簡体字版が2019年に出る予定だそうです。そんなにたくさんの本を一気に翻訳できるものなのかと、にわかには信じがたい思いです。中华选择性缄默症协会の今後の動きに注目したいと思います。

最後に、私は中国語ページを機械翻訳で英訳して読み取っています。ひょっとしたら不確かな部分もあるかもしれません。ごめんなさい。



続・話し言葉に障害のある子、増加か

更新日:2019年06月16日(投稿日:2019年06月16日)
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以前もお話した厚生労働科学研究「吃音、トゥレット、場面緘黙の実態把握と支援のための調査研究」が、2019年度から始まっているようです。この研究についてインターネットで検索すると、分担研究者のウェブページが2件ヒットしますが、そこでは2019~2020年度の事業であることが示唆されています。

↓ ネット検索で見つかる研究分担者の一人。
◇ 高木 潤野 | 教員紹介 | 教育・研究:長野大学
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↓ ネット検索で見つかる研究分担者の一人。
◇ 九州大学-研究者情報 [菊池 良和 (助教) 九州大学病院 耳鼻咽喉・頭頸部外科]
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↓ これは2020年度ですが、78ページに、この研究について書かれてあります。厚労省ホームページへのリンク。pdf形式。914KB。
◇ 令和2年度研究事業実施方針 | 厚生科学審議会 科学技術部会 | 令和元年5月24日
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↓ この研究について取り上げた過去のブログ記事です。当時は「言語を用いるコミュニケーションに困難さを持つ発達障害児者(吃音、トゥレット症候群、場面緘黙)の実態把握と支援のための研究」という名称でした。
◇ 厚生労働科学研究、緘黙等の研究の公募開始
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↓ この研究は国会でも話題になりました。
◇ 参院で緘黙が議題に、厚労省「支援策を検討することが必要」
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話し言葉に障害のある幼児、児童、生徒の罹患率の推移


これとは直接関係ありませんが、いい機会ですので、2014年に投稿したブログ記事「話し言葉に障害のある子、増加か」を書き改めようと思います。これは、学校保健統計調査をもとに、緘黙症など、話し言葉の働きに障害のある幼児、児童、生徒の罹患率が上昇傾向にあることを示したものでした。

↓ その2014年のブログ記事です。
◇ 話し言葉に障害のある子、増加か
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あれから5年が経ち、学校保健統計調査では、新しい罹患率の数字が出ています。

学校保健統計調査


今回も参照する学校保健統計調査は、文部科学省が毎年実施する標本調査です。幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校に通う幼児、児童、生徒の発育状態や健康状態について調査がなされています。

詳しくは、以下のページに書かれてあります。文部科学省ホームページへのリンクです。

◇ 学校保健統計調査-調査の概要
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この調査では、緘黙症など、話し言葉の働きに障害のある幼児、児童、生徒を「言語障害の者」として、その被患率が推計されています。

* 以下、引用 *

言語障害の者

話し言葉の働きに障害のある者をいい、吃(きつ)音(どもり)、発音の異常、発声の異常(聞き手が理解しにくい程度の発音や声の障害)、口蓋裂、脳性麻痺等に伴う言葉の異常、難聴による発音の異常、その他情緒的原因による緘黙(かんもく)症、自閉症や言語中枢に障害のある失語症等である。


※ 先ほどの厚生労働科学研究とは、該当する障害が必ずしも重なりません。


「言語障害の者」罹患率の推移


さて、その罹患率の推移をお示しします。今回は全体の罹患率が公表されなくなったようなので、学校種別にお伝えします。最近20年の推移です。


幼稚園


平成11(1999)年度 0.18%
平成12(2000)年度 0.18%
平成13(2001)年度 0.23%
平成14(2002)年度 0.15%
平成15(2003)年度 0.22%
平成16(2004)年度 0.19%
平成17(2005)年度 0.30%
平成18(2006)年度 0.37%
平成19(2007)年度 0.38%
平成20(2008)年度 0.52%
平成21(2009)年度 0.57%
平成22(2010)年度 0.41%
平成23(2011)年度 0.38%
平成24(2012)年度 0.43%
平成25(2013)年度 0.39%
平成26(2014)年度 0.44%
平成27(2015)年度 0.54%
平成28(2016)年度 0.52%
平成29(2017)年度 0.56%
平成30(2018)年度 0.42%

小学校


平成11(1999)年度 0.16%
平成12(2000)年度 0.15%
平成13(2001)年度 0.15%
平成14(2002)年度 0.15%
平成15(2003)年度 0.15%
平成16(2004)年度 0.14%
平成17(2005)年度 0.18%
平成18(2006)年度 0.30%
平成19(2007)年度 0.35%
平成20(2008)年度 0.32%
平成21(2009)年度 0.34%
平成22(2010)年度 0.34%
平成23(2011)年度 0.32%
平成24(2012)年度 0.33%
平成25(2013)年度 0.37%
平成26(2014)年度 0.39%
平成27(2015)年度 0.38%
平成28(2016)年度 0.43%
平成29(2017)年度 0.40%
平成30(2018)年度 0.43%

中学校


平成11(1999)年度 0.04%
平成12(2000)年度 0.03%
平成13(2001)年度 0.03%
平成14(2002)年度 0.05%
平成15(2003)年度 0.04%
平成16(2004)年度 0.05%
平成17(2005)年度 0.05%
平成18(2006)年度 0.09%
平成19(2007)年度 0.08%
平成20(2008)年度 0.07%
平成21(2009)年度 0.08%
平成22(2010)年度 0.07%
平成23(2011)年度 0.07%
平成24(2012)年度 0.07%
平成25(2013)年度 0.08%
平成26(2014)年度 0.08%
平成27(2015)年度 0.08%
平成28(2016)年度 0.08%
平成29(2017)年度 0.10%
平成30(2018)年度 0.10%

高等学校


平成11(1999)年度 0.01%
平成12(2000)年度 0.00%
平成13(2001)年度 0.01%
平成14(2002)年度 0.02%
平成15(2003)年度 0.01%
平成16(2004)年度 0.01%
平成17(2005)年度 0.01%
平成18(2006)年度 0.02%
平成19(2007)年度 0.02%
平成20(2008)年度 0.02%
平成21(2009)年度 0.02%
平成22(2010)年度 0.02%
平成23(2011)年度 0.02%
平成24(2012)年度 0.02%
平成25(2013)年度 0.02%
平成26(2014)年度 0.03%
平成27(2015)年度 0.03%
平成28(2016)年度 0.02%
平成29(2017)年度 0.04%
平成30(2018)年度 0.04%


やはり増えている


増加傾向が止まっていません。平成11(1999)年度に比べると、平成30(2018)年度は倍以上の水準にまでなっています。

幼稚園は標本数が最も少ないためか、年度によって罹患率のゆれが大きいです。逆に、小学校は標本数が最も多いためか、比較的安定した推移を示しています。

納得がいかないのが、小学校の平成18(2006)年度です。前年度は0.18%だったのに、この年度は0.30%に急増しています。そんなに新一年生に言語障害児が多かったとは思えません。どこまでこの数字は信頼できるのでしょう。

なお、より詳しい数字をお知りになりたい方は、以下のリンクより、「学校種別 疾病・異常被患率等の推移 (昭和23年度~平成30年度) 」をご覧ください。男女別の数字や、平成11(1999)年度以前の数字も見ることができます。

↓ 政府統計の総合窓口「e-Stat」へのリンクです。
◇ 学校保健統計調査 年次統計
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