バイリンガル環境の緘黙児が、日本でも増える?

更新日:2019年07月16日(投稿日:2019年07月16日)
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バイリンガル環境の子は、そうでない子より緘黙になりやすい


バイリンガルの子ども、あるいは他国から移住してきた子どもは、そうでない子と比べて場面緘黙症になりやすいと指摘されています。

移民の子の間では緘黙の有病率は2.2%で、そうでない子も含めた有病率0.76%よりも4倍以上高いという、西エルサレムの幼稚園を対象とした調査結果もあります(Elizur and Perednik, 2003)。

特に海外では、この問題には一定の注意が払われてきました。皆様の中には緘黙の翻訳書を買われた方もいらっしゃると思うのですが、その中でも、例えば『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』や『場面緘黙支援の最前線』では、この点が指摘されています。

一方、日本では、この点についてはあまり省みられてこなかった節があります。最近出た和書を見ても、『学校における場面緘黙への対応』では、我が国では過去にこうした事例の報告がなかったことなどから、「日本の社会環境においては、移民や少数民族が日本における場面緘黙の主たるリスクの1つとまでは言えないだろう」(3ページ)とわざわざ述べられています。さらに、和書としては最新の『イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド』に至っては、この点が全く触れられていません。

日本は他国からの移住等がさほど多くない国だからでしょう。ただ、ここ最近、気になる動向があります。


外国人児童生徒数や、日本語指導が必要な児童生徒数が急増している


まず、日本の学校に在籍する外国人児童生徒の数が、ここ数年、急激に増えていることです。文部科学省「学校基本調査」によると、平成27年まで7万人台で推移してきたその数が、平成28年には8万人の大台に乗せ、平成29年にはさらに増えて、平成30年には9万人台にまで達しています。この数は、ここ最近の政府の政策変更により、さらに増加することも予想されます。

もう一つは、日本語指導が必要な児童生徒数も増加傾向にあることです。先ほどの「学校基本調査」によると、平成24年度33,184人、平成26年度37,095人、平成28年度43,947人という推移です。4年間で30%以上の増加率です。

このあたりの動向については、文科省「外国人児童生徒受入れの手引き」が分かりやすいです。

↓ PDF。741KB。文科省ホームページへのリンクです。
◇ 「外国人児童生徒受入れの手引き」第1章
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それにしても、結構な数です。覚えていらっしゃいますか。前回の記事では、小中学校における緘黙の児童生徒数は2万人程度と大雑把に推計しました。その数字と比べると、相当な数です。


我々の前に現れることはそうないかもしれない


それでもなお、移民やバイリンガルの緘黙の子どもやその保護者が、私たちの前に現れることはそうないだろうと思います。

まず第一に、増えているといっても絶対数がまだ少ないからです。前回お話した通り、小中学校の児童生徒数だけでも、日本には1,000万人います。その中で、9万人とか4万人という数字(高等学校含む)は、割合としては小さいです。仮に、エルサレムのように緘黙児が一般の有病率の4倍以上いたとしても、体勢に影響はそうありません。

第二の理由は、こうした子どもと保護者にとって、日本の緘黙コミュニティ(ネット含む)は、果たしてどれほど参加しやすいものだろうかという思いがあるからです。こうした方たちを受け入れる土壌がどれほどあるでしょうか。緘黙に関心のある方の中には、緘黙児者がもっと社会で受け入れられて欲しいという願いからか、「多様性」という概念を好む人がいると感じています。ここはまさに、多様性の問題です。

第三の理由は、こうした子どもを持つ保護者の中には、インターネットを駆使して、日本だけではなく海外のコミュニティや専門家を頼ることができる人も多いだろうからです。つまり、日本以外の選択肢があるのです。それこそ、日本国内のコミュニティや専門家を素通りして(ジャパン・パッシング?)、海外にのみ助けを求めることだってできます。海外の有名な緘黙専門家となると、様々な国での支援実績があります。日本でこうした子どもや保護者に対する配慮が十分になされなかったり、軽視されたりするほど、こうした日本素通りのような現象は顕著になり、彼女ら彼らは私たちの目の前には現れなくなるものと思われます。


以前よりも注意を払う必要


いずれにせよ、外国人児童生徒や、日本語指導が必要な児童生徒数が急増していることは事実です。バイリンガル環境にある子や、他国から移住してきた子と緘黙については、以前よりも注意を払う必要があるかもしれません。