新しい児童書『はるかちゃんが、手をあげた』

更新日:2020年01月19日(投稿日:2020年01月19日)
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家では話せるのに、学校では話せない少女が主人公の児童書が、2019年11月に発売されました。ご紹介してみたいと思います。

話の内容を少し書いているので、まだ知りたくないという方はご注意下さい。

本の基本情報


作者:服部千春
絵:さとうあや
書名:はるかちゃんが、手をあげた
出版社:童心社
発行日:2019年11月15日
対象年齢:小学1・2年生~
ページ数:63ページ

童心社の「だいすき絵童話」シリーズの1作です。絵本というよりはむしろ、挿絵が多めの読み物といったところだろうかと思います。

作者の服部千春さんは、児童文学作家です。私が立ち寄った図書館の児童書コーナーでは、本棚に服部さん専用の著者見出しがあって、そこに服部さんの本が何冊も並べられていました。人気作家であることが窺えます。


本のあらすじ


家では話せるのに、学校では話せない小学2年生のはるかちゃんが主人公です。

ある日、席替えであきらくんという子がはるかちゃんの隣に座ることになりました。このことが、はるかちゃんの学校生活を変えてゆきます。

「緘黙」「場面緘黙症」といった言葉は、本の中には出てきません。


感想


はるかちゃんの状態は、場面緘黙症を思わせます。本にははっきり書かれてありませんが、おそらく緘黙という設定なのではないかと思います。

話せないことに本人も同級生も慣れっこになっていたとか、本人はこのまま話せなくてもそれはそれで楽と感じていたとかいう話が、一つのあり得る状況として実にリアルで、驚かされました。著者は緘黙の経験者ではないかとさえ思ったほどです(童心社のInstagram投稿によると、著者は緘黙経験者ではないようです)。

↓ ストーリーについて、より詳しく紹介されているので、まだ知りたくないという方はご注意。
◇ 童心社のInstagram投稿
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思い返せば、確かに私が学校で話せなかった頃にも、そうした一面がありました。最近、当事者や経験者の悲痛な声をたくさん読んできたため、それに引きづられて記憶の上書きのようなことが起こり、「私は昔、学校で話せずに辛い思いばかりしていた」とつい考えてしまいがちになっていました。

なお、登場人物には緘黙の支援を行う専門家が登場するわけではありません。専門家の指導ではなく、クラス内の人間関係がはるかちゃんに変化をもたらすという展開は、物語らしいです。「専門家の指導のもと、スモールステップの取り組みを続けたところ、声が出るようになりました。めでたしめでたし」では、童話としてはつまらないですからね。現実には、専門家に相談した方がよいと思います。





フジテレビ系で、緘黙がある小学生パティシエ

更新日:2020年01月13日(投稿日:2020年01月13日)
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13日(月曜日)夕方のニュース番組


フジテレビ系の夕方のニュース情報番組「Live News it!」で今日、場面緘黙症がある小学生パティシエ「みいちゃん」が取り上げられました。全国放送です。番組では、緘黙についての説明もありました。

その時の模様とみられる動画は、FNN.jpプライムオンラインで公開されています。

↓ FNN.jpプライムオンラインへのリンクです。動画は5分20秒。
◇ “世界一”の小学生パティシエ 「障害とともに」12歳少女 夢への挑戦
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実はみいちゃんは、NHK大津放送局のニュース番組でも取り上げられていました。1月8日のことです。この時は、「発達障害(自閉症)」と「不安障害(場面緘黙)」があると紹介されていて、自閉症特性のこだわりの強さについても触られていました。

↓ NHKウェブサイトへのリンクです。
◇ おうみ発630 知りたがりっ! 過去の動画|NHK大津放送局
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今回のFNNのニュースは自閉症には触れておらず、同じテレビの取り上げ方でも、少し違った印象を受けます。


たくさんのメディアで取り上げられてきた


みいちゃんは、これまでにも、たくさんのメディアで取り上げられています。ニュースサイトで確認できるだけでも、1月6日には『毎日新聞』に、12月16日には『京都新聞』に、11月16日には『滋賀報知新聞』で記事になりました。

↓ 『毎日新聞』ウェブサイトへのリンクです。
◇ 場面緘黙症の小6パティシエ、工房実現にクラウドファンディングで資金募る 滋賀・近江八幡
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↓ 『京都新聞』ウェブサイトへのリンクです。
◇ 学校で話せない「場面緘黙症」少女がパティシエに 月1カフェ好評、夢の工房開業へ
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↓ 『滋賀報知新聞』ウェブサイトへのリンクです。
◇ 障がいを乗り越えて「みいちゃんの1日カフェ」に人気
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また、BBC(びわ湖放送)の番組でも取り上げられています。

↓ その動画。「みいちゃんのお菓子工房」Facebookページへのリンクです。
◇ その時の模様
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これだけ取り上げられると、お菓子工房オープン当日は、大繁盛しそうですね。





緘黙を深刻視しなければならない理由

更新日:2020年01月07日(投稿日:2020年01月07日)
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「場面緘黙症を深刻に受け止める必要がある5つの理由」
(5 MOTIVOS POR LOS CUALES EL MS DEBERÍA SER TOMADO SERIAMENTE!!!)
(5 Rasons Why You Need to Take Selective Mutism Seriously)

スペイン語圏で場面緘黙症の支援を行う Mutismo Selectivo Internacional が、昨年12月、Facebookページでこんな投稿を行ないました。

↓ その投稿です。
◇ Mutismo selectivo en niños: qué es y cuáles son los síntomas
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もともとは、イギリスの緘黙団体 SMIRA によるものだそうです。私は SMIRA の会員ではなく、一次情報の確認はできていません。

その「5つの理由」をご紹介し、私なりに少しコメントをしてみたいと思います。このコメントには、私の解釈が入っています。

理由1 場面緘黙症がある人を支援する戦略は、あらゆる人に、非常に大きなプラスの影響がある


不安を避けるのではなく受け入れ挑戦することや、スモールステップの取り組みを学ぶことなどによる、いわば教育的効果を指します。

緘黙そのものの話ではなく、支援を行うことによる得られる副産物のようなものの話ですね。

(原文:Strategies used to support people with SM have a huge positive impact on EVERYONE)


理由2 場面緘黙症は、あなたが考える以上に、発症率が高い


イギリスでは緘黙は140人に1人と言われており、上の投稿でもこの数字が紹介されています。日本では500人に1人と言われていて、もう少し稀と見られているようです。この理由3が日本でも当てはまるかどうかは分かりません。

(原文:Selective mutism is more common than you think)


理由3 場面緘黙症の感情的影響


要するに、本人が辛い思いをしているからという理由です。

(原文:The emotional impact of selective mutism)


理由4 場面緘黙症の財政的影響


理由4とまとめてお話します。

(原文:The financial impact of selective mutism)


理由5 場面緘黙症の経済的影響


理由4も5も、要するに、早期支援が行われないと、よりコストがかかるからという理由です。支援のための「社会的投資」 (social investment) が大きくなるとか、成人当事者の失業 (unemployment) についても、上の投稿では言及があります。

イギリスでは早くから、精神疾患の社会的コストの推計の試みが行なわれていました。理由4と5は、イギリスらしい視点かもしれません。緘黙についてはこの種の推計が行なわれたという話は聞かず、社会的コストも個人のコストもどれだけかかるかは知りませんが、早期支援によりコストを減らせることは予想されます。

この理由を挙げる場合、「緘黙は、成長すれば自然に治る」という見方を退ける必要がありそうです。何も特別な支援をせずとも治るのであれば、そのようにするのが最もコストがかからないからです。

(原文:The economical impact of Selective mutism)


緘黙は軽視されがちだからこそ、こうした理由を掘り下げる


緘黙は大人しいだけで問題ないなどと、軽視されがちではないでしょうか。軽視してはならず深刻に受け止める必要があるのなら、それはなぜかが問題になります。ですが、その理由については、あまり掘り下げられてはこなかったのではないかと思います。それだけに、この「5つの理由」は興味深いです。

理由2のように、本人が辛い思いをしているからという理由が挙げられることはあります。「当事者は苦しんでいます」「私は辛いです」などと必ずしも明記しなくても、暗にというかたちや、雰囲気などで伝えられることもあります。この場合、感情に訴えかける傾向になりやすいです。それが悪いわけでは決してないのですが、合理的な理由を他に挙げられれば説得力は増しそうです。


私ならば


私は専門家ではありませんが、私ならば緘黙を深刻視しなければならない理由は、次のように挙げます。

○ 緘黙は日常生活に大きな支障をきたすから
○ 緘黙で大変苦しい思いをしてきた当事者・経験者がたくさんいるから(上の理由3と同じ)
○ 緘黙が長期化すると、他の精神疾患を続発する可能性が指摘されているから
○ 緘黙が長期化すると、言語コミュニケーションの経験を積む機会を長期にわたって逸することになり、そのことは緘黙が治った後に響いてくるから

この4つを挙げても相手が納得してくれない場合は、先ほどの理由4や5のコストの問題を挙げます。先ほどの理由1は緘黙そのものの話ではありませんし、理由2は緘黙の発症率は日本では低めに出ていますので、挙げることはしません。

皆さんなら、どういう理由を挙げますか?