2020年・緘黙関係ニュースを振り返る

更新日:2020年12月24日(投稿日:2020年12月24日)
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今年一年を、場面緘黙症に関係するニュースで振り返りたいと思います。毎年恒例の企画で、今年で11回目です!私が把握したニュースの中から、気になったものを選んで振り返ります。

2月 『かんもくの声』発売


2月10日、入江紗代さん著『かんもくの声』が、学苑社より発売されました。緘黙経験者によるコミックエッセイの出版が続いていた中、久しぶりの文章による本です。著者は当事者活動に携わっており、このためか、本書には緘黙経験だけでなく、緘黙と社会について述べた章がある点も特色でした。


2月 AbemaTVの動画がYouTubeに投稿、再生数大


2018年9月17日に放送されたAbemaTVの場面緘黙症特集の一部内容が、2月25日、YouTubeに投稿されました。これが大変な再生回数で、現在200万回以上を記録しています。


4月~JNNドキュメンタリー


4月より、JNN(TBS系列)のテレビ番組で「声なき声 ~場面緘黙症の女性たち~」と題するドキュメンタリー番組が全国的に放送されました。放送時間は、深夜や早朝です。多くの地域では、「JNNドキュメンタリー ザ・フォーカス」という番組名でしたが、地域によっては「JNN九州沖縄ドキュメント ムーブ」などとして放送されました。


9月 緘黙のツイートに大反響


9月14日、イギリスのTA(Teaching Assistant)という教育補助員をされている方が、Twitterで場面緘黙症に関する投稿をしたところ、大変な反響がありました。コメント約1,600件、リツイート約6万件、いいね約80万件という反響でした。これはアメリカ大統領のTwitter投稿に匹敵する規模です。


9月 『朝日新聞』朝刊に、高木潤野准教授


9月15日、『朝日新聞』朝刊「ひと」欄に、場面緘黙症に関心を持つ、長野大学の高木潤野准教授を紹介する記事が掲載されました。『朝日新聞』は、『読売新聞』に次いで発行部数が多い新聞です。


11月 ヒカリアメのCD『言葉の羽』発売


11月6日、かんもくアコースティックライブから生まれた音楽ユニット『ヒカリアメ』の初めてとなるCD『言葉の羽』がリリースされました。収録曲は3曲で、初回特典映像も用意されていました。


11月 『話せない私研究』発売


11月20日、モリナガアメさん著『話せない私研究』が合同出版より発売されました。緘黙経験者によるコミックエッセイですが、ある程度話せるようになった後の自分を客観的に観察した、これまでにない本です。


通年 ミスiD2021応募者に、緘黙経験者


講談社が主催するオーディション「ミスiD2021」に、場面緘黙症の経験者が複数応募していたことが明らかになりました。中には、ファイナリストにまで選ばれた方もいらっしゃいます。

今年のミスiDは選考過程が変わり、エントリーした方全員のお名前と「自己紹介PR」が、公式ホームページに掲載されることになりました。エントリーした方の中には「自己紹介PR」に緘黙のことを書いた方もいらっしゃったことから、明らかになりました。


通年 パティシエ「みいちゃん」


場面緘黙症がある中学生パティシエ(3月までは小学生)の「みいちゃん」こと、杉之原みずきさんが大きな注目を集めました。テレビや新聞では、数え切れないぐらい取り上げられました。10月には、杉之原さんのために設計された「みいちゃんのお菓子工房」が、2020年度のグッドデザイン賞金賞に選ばれました。11月には、食のサイト foodionのランキングで、杉之原さんが世界全部門1位になりました。


通年 新型コロナウイルス感染拡大


新型コロナウイルスの感染が拡大し、緘黙関係者にも大きな影響がありました。緘黙児者は休校や自粛生活でかえってストレスが少なかったという報告(かんもくネット)、感覚過敏などでマスクをつけたがらない緘黙児者がいるという報告(SMartセンター、長野大学高木研究室)などがありました。

従来のスモールステップの取り組みができないとして、英語圏では、オンラインを使った取り組みが発信されました。

緘黙関係のイベントは中止になったり、オンラインで開催になったりしたものが少なくありませんでした。


まだまだ、たくさんのニュースが


まだまだ、たくさんのニュースがありました。以前も書きましたが、今年は少なめでした。

1月 ノルウェー放送協会で、緘黙
1月 FM奄美に、かんもく奄美と、かんもくネット代表が出演
1月 平成31年保育士試験(前期)で、緘黙に関する出題でミス
2月 発達協会春のセミナー
2月 中日新聞「元記者の心身カルテ」に掲載
2月 京都新聞に掲載
3月 中日新聞「この人」に入江紗代さん
3月 Pete Paphides氏
3月 Rolling Stone Japanに掲載
3月 山崎ナオコーラ氏、緘黙経験を話す
3月 AKB48のメンバーの口から、緘黙経験?
4月 遠隔支援の研究が、科研費採択
4月 第114回医師国家試験に出題
5月 フィンランドの860事例の研究が発表される
5月 ゲーム「アンリアルライフ」に、「場面緘黙症」
7月 韓国の検索サイトでトレンドに
7月 『少女ファイト』第17巻に、緘黙
8月 「情緒障害『場面緘黙症』に漫画家ならではの対応法をとってみた」
8月 クラウドファンディングに100万円以上
8~9月 テレフォン人生相談に、緘黙
9月 The New York Timesに掲載
9月 特殊教育学会の大会開催
10月 かんもくフォーラム開催
10月 メリーランド州知事公邸、緘黙啓発でライトアップ
10~11月 ブラジルで、有名元サッカー選手のアマラウさんが動画コメント
11月 NeuroClasticに緘黙の記事
11月 テレ東「家、ついて行ってイイですか?」で、緘黙について触れられる
11月 中日新聞「この人」に、「緘黙を抱える3DCG制作者」
12月 Humans of New YorkというSNSアカウント(英語)の経験談に、大反響
12月 『毎日新聞』朝刊に、桂あやめさんの緘黙の話



『幸福な王子』と緘黙児者

更新日:2020年12月18日(投稿日:2020年12月18日)
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台灣選擇性緘默症協會の黃晶晶理事長が、場面緘黙症の話の中で、『幸福な王子』の物語を持ち出す場面がありました。『幸福な王子』は、イギリスの作家オスカー・ワイルドの童話です。

↓ 情報源です。
◇ 為選緘兒發聲 黃晶晶:用心傾聽「快樂王子」的聲音 | 親子天下
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幸福な王子は像で、言葉を話しません。ですが、意思を持ち、街の様子をよく観察しています。物語の中では、一羽の燕とだけ会話ができていて、その燕だけが幸福な王子の住民思いの内面を知ることができました。しかし、幸福な王子は、その内面を知らない住民に顧みられなくなり、溶鉱炉で溶かされてしまうのです。

黄理事長は、緘黙児者を、この幸福な王子に喩えているようです。そして、もし緘黙児者が話せるようになれば、彼女ら彼らが持っているかもしれない、その美しい内面を知ることができるかもしれないと話しています(このあたりよく読み取れず、間違っているかもしれません。機械翻訳で読んでいるので……)。

↓ 『幸福な王子』のあらすじです。ブログ「シロツメクサの夢」さんへのリンク。
◇ 幸福な王子(オスカー・ワイルド)のあらすじ。
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↓ こちらは、福娘童話集さんによるアニメ紙芝居。9分間のYouTube動画です。


※ 上の動画のYouTubeへの直接リンクはこちら。
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もっとも、『幸福な王子』の全体の話を見ると、これは口が利けない人や、緘黙児者のことを描いた話とは私には思えません。物語では、幸福な王子は自ら動けないながらも(像だから)、燕を通じて自己犠牲的な行動を繰り返しており、これが物語の柱となっています。

緘黙児者を幸福な王子で喩えるのは、しっくりこない部分があると私は思います。とはいえ、面白い喩えだとは思いますし、物語の解釈は様々ですので、ご紹介してみることにしました。


新刊『話せない私研究』

更新日:2020年12月12日(投稿日:2020年12月12日)
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場面緘黙症の新しい本が出版されました。ご紹介したいと思います(お待たせしました)。

本の基本情報


著者:モリナガアメ
解説:高木潤野
書名:話せない私研究-大人になってわかった場面緘黙との付き合い方-
出版社:合同出版
出版日:2020年11月20日
ページ数:242

モリナガアメさんは、緘黙を経験された方です。既刊に、コミックエッセイ『かんもくって何なの!?』(2017年)があります。その続編として本書を描かれました。緘黙経験者の中で、緘黙をテーマとした本を2冊以上出した方は、もしかしたら初めてかもしれません。ブログ村でもお馴染みの方です。

合同出版は過去にも『かんもくって何なの!?』『イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド』を出版しています。

本の概要


本書は、緘黙を経験したモリナガアメさんによるコミックエッセイです。前作『かんもくって何なの!?』では、モリナガアメさんが話せるようになった場面も描かれました。ですが、会話への苦手意識や感覚過敏など、関連する問題は残りました。その後、「場面緘黙を知ってからの約5年間で生きやすくなるために私が考えた事・行動した事」(9ページ)を描いたのが本書です。主な舞台は職場です。

全13話の構成です。緘黙経験記は時系列にまとめた本が多いですが、今回の本は「話せない私研究」というテーマゆえか、時系列への拘りは若干薄めです。テーマ別に話をまとめているのだろうかと思える箇所もあります(誤読していたらごめんなさい)。ですが、ストーリー性もあります。

各話の合間に「教えて高木先生」と題して、長野大学の高木潤野准教授の解説が挿入されています。全8カ所、各1ページあります。

本書は、pixiv(ピクシブ)というイラストコミュニケーションサービスなどで連載していた漫画作品『「話せない私」を考える-元かんもく少女のその後の話-』がもとです。前作を読んでいない方でも支障なく読めそうです。

感想


ある程度話せるようになった後のことがテーマ


本書は、緘黙経験者がある程度話せるようになった後のことがテーマです。こうした本は、私が知る限りこれまでにありません。緘黙はマイナーなテーマだと思うのですが、今回の本は、さらにマイナーなテーマを掘り下げているように私には思えます。出版不況と言われて久しい中、よく出版に至ったものです。

前作やpixivがよほど好評だったのかもしれません。いわゆる緘黙の後遺症への関心が高まっているのかもしれません。コロナ禍で巣ごもり需要が見込まれたのかもしれません。あるいは、緘黙が徐々にマイナーではなくなって、それに伴い緘黙の書籍市場の規模が拡大し、多種多様なテーマを扱った緘黙の本が出るようになってきたということなのかもしれません。

やや現在進行形に近い話


これまでの緘黙経験記は、30歳前後ぐらいの経験者が、子どもの頃からのことを振り返るものが多かったです。このため、どうしても話の多くにタイムラグ(時間差)がありました。昭和末期や平成初期に子ども時代を過ごした方の緘黙経験記が、近年出版されています。本の執筆は、大人になってからでなければ取りかかりにくいからだろうと思います。

今回の本はタイムラグが少なく、やや現在進行形に近い話です。

ご自身のことを観察


私は今作をpixiv連載時より読んでいましたが、1冊の本としてまとめて読むと、モリナガアメさんは実に鋭敏な方だと感じます。これは緘黙経験者にある程度共通した特徴なのかどうかは、私には分かりません。

モリナガアメさんは、ご自身のことをとてもよく観察されています。自己分析が鋭いです。いわば、もう一人のモリナガアメさんが、一段高いところからご自身の考えや行動などを俯瞰し、客観視されています。「メタ認知」と言ってよいのか分かりませんが、そうしたことに秀でていらっしゃるのでしょう。

そして、その記述も巧みです。モリナガアメさんが2冊も本を出されたのは、ただ単に漫画が描けるからというだけではないことが分かります。

あと、人間関係の細やかな話が、私にはやや多めに思えました。偏見かもしれませんが、このあたり、女性的な感性を感じました(モリナガアメさんは女性、私は男性)。モリナガアメさんは、周囲の人についても、よく見ています。職場環境の話は、複数の職場を経験したことがよく生きています。

話が具体的なので、モリナガアメさんが行動に移したことを、自分も取り入れてみようという方はいらっしゃるだろうと思います。

一つの生き方を提示


なお、私も学校で話せなかった経験を持つ者ですが、モリナガアメさんのように、極限のような状態には至りませんでした。また、自分の話せなさについて、そこまで強く意識もしません。そして、自分と「普通」を対比させて「普通にならなければ」と考えたこともそうなく、だいぶ違いを感じました。そもそもモリナガアメさんと私とでは、学校等で話せなかった期間、併せ持つ問題、性格、それまでの経験、価値観などで違いが多いです。

このあたりは、人それぞれなのかもしれません。緘黙経験者は多様で、こうした違いにこそ意味があるようにも思います。私としては「こういう方もいらっしゃるんだ」と勉強になりました。本書は一つの生き方を提示したものとして高く評価されるのでしょう。

書籍リンク




関連リンク


◇ 「話せない私」を考える-元かんもく少女のその後の話 - pixiv
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