障害者差別解消法の改正

更新日:2021年05月29日(投稿日:2021年05月29日)
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障害者差別解消法


学校現場などで、場面緘黙症がある人への「合理的配慮」が行われています。

その根拠となる法律が、「障害者差別解消法」(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律)です。障害がある人に対する不当な差別的取扱いの禁止や、合理的配慮の提供などが定められています。

↓ 第7条第2項より。合理的配慮とは、このことです。
……障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。

改正案が成立


この法律が改正されることになりました。5月28日(金曜日)、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律案」が、参議院本会議で全会一致で可決、成立しています。

↓ 情報源です。
※ 民間事業者にも障害配慮義務付け 改正差別解消法成立 | 共同通信
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改正案の大きなポイントは、民間事業者による合理的配慮の提供が「義務」になったことです。これまでは「努力義務」でした。なお、国や自治体は以前より「義務」でした。

施行日は公布から3年を超えない日とされており、いつになるかはまだ分かりません。また、今回の法律の改正が、緘黙児者支援にどの程度の影響があるかは、専門家ではない私には分かりません。とりあえず、ご報告します。

[改正案成立までの経緯]

3月9日 閣議決定
4月16日 衆議院内閣委員会で可決
4月20日 衆議院本会議で可決
5月27日 衆議院内閣委員会で可決
5月28日 参議院本会議で可決





Hear Me-緘黙の短編映画(米)

更新日:2021年05月23日(投稿日:2021年05月23日)
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YouTubeで公開中


場面緘黙症の架空の人物を主人公とした Hear Me というアメリカの短編映画が、2019年に公開されました。その短縮版と見られる動画が、制作会社によってYouTubeに投稿されています。

↓ その動画です。

※ YouTubeで直接ご覧になりたい方は、こちらをクリックしてください。
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映画は24分の内容だそうですが、上の動画は18分です。

主人公のケネディは、夢見ていた大学に入学するチャンスをつかみます。ですが、入学のためには奨学金面接を通らなければなりません。話せないケネディにとって、これは難題です。そこでケネディは、コミュニケーション・スキルを育成するため、短期の演劇の集まりに参加、指導を受けます。

動画の概要欄に「場面緘黙症と闘うある少女は……」(A girl struggling with selective mutism is) とあることなどから、ケネディは緘黙であるという設定は間違いありません。ただ、上の動画の中では、緘黙という言葉は登場しません。

様々な賞を受賞した作品です。


感想


アメリカでは大学の学費が高騰していて、多額のローンを抱える学生は少なくないそうです。それだけに、奨学金はストーリー上、重要になっているのでしょう。

外国語の映画ゆえか、それとも短縮版ゆえか、よく分からなかったのですが、ケネディが子どもの頃、家族が事件に巻き込まれて、その時のトラウマから話せなくなったという設定なのでしょうか?フィクションにありがちですが、緘黙の描き方か゛、あまり適切ではないように思われました。

また、緘黙は大抵の場合、家では話せますが、ケネディが家で話す場面は描かれません。実の家族とではなく里親の元で暮らしていることから、家でも話せないということなのでしょうか?

終盤は、私としては予想外の展開でした。アメリカにも緘黙への配慮 (accommodation) は行われており、この映画のようなことが現実的にどれほどあり得ることなのかは私には分からないのですが、一つの問題提起ではあるかもしれません。





緘黙のPCIT治療専門家として認定(海外)

更新日:2021年05月17日(投稿日:2021年05月17日)
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親子相互交流療法


アメリカでは、場面緘黙症の心理療法の一つとして、「親子相互交流療法」が広まっています。英語では Parent Child Interaction Therapy と呼ばれ、よくPCITと略されます。緘黙へのPCITの適用は、特に PCIT-SM と呼ばれることもあります。

日本の緘黙支援ではあまり広まっていないらしく、日本語での情報も乏しいのですが、邦訳書『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』には説明があります。


専門家を対象に、親子相互交流療法のトレーニング


ニューヨークで緘黙治療などに携わる民間の専門施設 Kurtz Psychology PC は、専門家を対象に、緘黙児に親子相互交流療法を行うためのトレーニングを行っています。指導の中心的人物とみられる Steven Kurtz博士は、PCITインターナショナルという組織からグローバルトレーナーとして認定されている方で、PCIT-SMのプロトコルの開発者でもあります。

↓ 専門家へのトレーニングについて。2021年6月実施予定分。
◇ PCIT-SM Virtual Training 2021
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↓ 専門家へのトレーニングについて。2021年10月、11月実施予定分。
◇ Parent-Child Interaction Therapy for Selective Mutism (PCIT-SM) Training for Professionals
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このトレーニングは、米国心理学会とPCITインターナショナルの「継続教育」(Continuing Education)プログラムの対象になっています。受講すると、継続教育の証明書?を受け取ったり、一定の単位を取得することもできます。

なお、継続教育とは、学校教育終了後も継続的に受ける教育のことです。継続教育は免許や資格の制度と連携していて、一定期間内に継続教育の単位を取得しなければ、免許や資格の更新がなされない場合もあるようです。アメリカで行われる緘黙支援のトレーニングや講座等には、時々このように継続教育プログラムの対象となっているものがあります。


親子相互交流療法を行える専門家であることを認定


さて、所定のトレーニングを受講すると、緘黙に対して親子相互交流療法を行える専門家であると認定されます。認定されると、「認定PCIT-SMセラピスト」(Certified PCIT-SM Therapist)となります。認定された専門家は、以下のページで名前や職場等を列挙されます。

↓ その認定された専門家の一覧です。現在、40人以上の専門家の名前があります。
◇ PCIT-SM Certified Therapists
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上のリスト、大半がアメリカの専門家で、特にニューヨーク(NY)が多いです。ですが、よく見ると、下の方に香港(HK)の専門家が5人名を連ねていることが分かります。他に、CHという場所を拠点とする専門家もいて、リンク先がドイツ語のページなのですが、これはチェコでしょうか。また、カナダのブリティッシュ・コロンビア(BC)を拠点とする専門家もいます。このように、アメリカ国外にも認定された専門家が一部にいるようです。

経済学の用語を借りれば、こうした認定の試みには、「情報の非対称性」を緩和する役割がありそうです。つまり、治療専門家は自分自身の能力を知っているけれども、利用者の側は知りません。上のリストは、ここの治療専門家は緘黙に対して親子相互交流療法を行う能力があるという「シグナル」となり、利用者が情報を得る手助けになります。特に緘黙は理解に乏しい治療専門家の存在が指摘されていることから、このようなシグナルが果たす役割は大きそうです。

※ 資格制度となると、これは経済学の関心分野です。資格制度は情報の非対称性の緩和というプラス面がありますが、参入障壁を作るなどマイナス面もあり、その是非は難しいところです。