緘黙を経験した現代画家

更新日:2023年09月26日(投稿日:2023年09月26日)
アイキャッチ画像。
イギリスにSophie Greenさんという現代画家がいます。場面緘黙症を経験したと話しています。

わりと有名な画家らしく、Instagramでは12万人以上のフォロワーがいます。2022年には、アメリカのCNNやNational Geographicで取り上げられています。受賞歴も色々とあるそうです。

◇ Sophie GreenさんのInstagramアカウント
新しいウィンドウで開く

◇ Sophie Greenさんを取り上げたCNNの記事
新しいウィンドウで開く

◇ Sophie Greenさんを取り上げたNational Geographicの記事
新しいウィンドウで開く

National Geographicの記事によると、Sophie Greenさんは子どもの頃に緘黙を経験、「極めて内向的」な子になり、ただ座って百科事典を読むなどしていたところ、野生生物に没入するようになったそうです。現在は動物の絵を極めて写実的に描いています。また、自然保護活動も行っています。

Sophie Greenさんは、あちこちのインタビュー等で、緘黙経験について話しています。それはおそらく、緘黙経験なくして現在の活動は語れないからではないかと思います。私は緘黙の経験から自由になることが、一つの緘黙克服の理想だろうかと思うのですが、このような方もいて、人生色々だと改めて考えさせられました。

緘黙を経験した方で絵がお上手な方、結構いらっしゃいます。なお、私が描く絵は、めちゃくちゃ下手です。


挨拶、私の経験は

更新日:2023年09月19日(投稿日:2023年09月19日)
アイキャッチ画像。
「場面緘黙症の子が、辛いと感じる」

挨拶運動を行う学校や教師に対して、疑問を呈する声をソーシャルメディアで目にすることがあります。

私も学校では話せない子でしたが、私の場合はどうだったかというお話を今回したいと思います(ただし、私は話せなかったことについて医師に診てもらったことはなく、したがって緘黙の診断は受けていません)。あくまで私の話で、現代の緘黙児者がどう感じているかという話ではありません。

挨拶はできなかったが、あまり困らなかった


実を言うと、私は学校での挨拶については、あまり覚えていません。私の過去を振り返る「緘黙ストーリー」(全100話)でも、特にこれといったことは書いてはいません。特別困った思いをしたことがなかったからではないかと思います。

もちろん、挨拶は苦手としていました。緘黙?が特に重かった小学校~中学時代には、相手に聞こえる声で挨拶をすることはほとんどできなかった覚えがかすかにあります。しかし、そのことで叱られた覚えはありません。おそらく教師は、児童生徒に挨拶の習慣をつけることは大事だけれども、富条(私のこと)については、できなくても仕方が無いと考えていたのではないかと思います。

また、私が通っていた小中学校は、挨拶についてそんなにうるさく指導していた覚えがありません。マンモス校だったので、なにも私1人に配慮してのことではないだろうと思います。確証はないのですが、当時の学校は、今ほど挨拶をうるさく言わなかったのかもしれません。近年、家庭の教育力が低下していて、昔であれば家庭で教えていたことを、学校で教えなくてはならなくなったという話をよく聞きます。そうした背景により、近年では学校の挨拶運動が盛んになっているのかもしれないと思いますが、お話しした通り確証はありません。


挨拶を指導する教育方針を、受け入れていた


挨拶を指導する学校の教育方針については、「僕のように話せない子だっているのに!」と不満を感じたこともなければ、疑問に感じたこともなかったように思います。従順な児童生徒だったからです。学校や先生が言うことだからと受け入れていたように思います。

また、当時の私は「場面緘黙症」という概念があることを知らず、自分が話せないのは性格の問題と考えていたからかもしれません。自分には緘黙という病気や障害のようなものがあると認識していたら、「僕は緘黙児だ!僕に挨拶を求めるのは、足が不自由な子に対して立てと言っているようなものだ!」などと反発していた可能性も、もしかしたらあったかもしれません。しかし、性格の問題と考えていたので、自分を責めていたように思います。もっとも、先ほどお話ししたように、そんなにしつこく挨拶指導する小中学校ではありませんでしたから、自分を責めていたといっても、小さく責めていた程度です。


現代の学校の挨拶運動について、所感


こうした経験をしているせいか、現代の学校の挨拶運動に対して、「場面緘黙症の子が、辛いと感じるからやめろ」と文句を言うつもりはありません。

児童生徒に挨拶の習慣を身につけさせることは必要なことでしょう。それを、500人に1人ぐらいの確立で存在する緘黙の児童生徒のために、学校全体として挨拶運動をとりやめるのは疑問に思います。もちろん、挨拶ができないのは緘黙児者だけではないでしょうが、それでも、そうした児童生徒のために挨拶運動そのものを廃止しなくてもよいだろうと思います。挨拶運動を推進する教師にしても、何も口が利けないような子にまで挨拶を求めるような考えを持った人はそういないでしょう。

しかし、緘黙の理解が広まっていないばかりに、その子が緘黙の児童生徒だと認識されず、挨拶のことで責められる子どもはいるかもしれません。また、全ての教員に、どの子が緘黙の児童生徒で挨拶ができないかという情報共有がなされるとは限りません。事情を知らない教員に緘黙が挨拶をしなければならない場面が訪れたら、辛いところかもしれないと思います。



ウォーミングアップの必要性

更新日:2023年09月12日(投稿日:2023年09月12日)
アイキャッチ画像。
Psychology Today という、アメリカの心理学の雑誌があります。ここのウェブサイトでは、専門家が場面緘黙症について解説することが時々あります。

先日も、臨床心理学者の Veronica Raggi博士による緘黙の寄稿が掲載されました。同氏は特に緘黙に関心を持ち、治療を行ってきた方です。

↓ その記事へのリンクです。
◇ Empowering Your Anxious Child’s Voice | Psychology Today
新しいウィンドウで開く

記事は、緘黙を改善させるための一つの方法を示したものです。具体的には、「親子相互交流療法」を緘黙に適用した PCIT-SM (Parent/Child Interaction Therapy for Selective Mutism)という技法の紹介です。この技法はアメリカを中心に世界で広がりを見せています。Psychology Today で取り上げられたのも、やはりアメリカでは有力視されている技法なのだと改めて感じさせられます。

PCIT-SMは日本ではまだあまり馴染みがありませんが、邦訳書『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』には説明があります。また、以下のかんもくネットの記事にも、簡単な説明があります。

↓ そのかんもくネットの記事へのリンクです。
◇ おしゃべり会でPCIT-SMを紹介
新しいウィンドウで開く

さて、その記事の中でも、次の箇所が個人的に印象に残りました。

いかなる新しい社会的環境でも、子どもには即座の質問を促さずに、ウォーミングアップの時間を与えてください。例えば、誕生日パーティーに到着したとき、子どもに「誕生日おめでとう」と言うように促さないでください。その代わりに、子どもとパーティーの場所を探検し、期待や要求をせずに、子どもに自由と肯定的な注意を与えてください。

Give your child time to warm up in any new social setting without prompting them with an immediate question. For example, when you arrive at the birthday party, don’t encourage your child to say "Happy Birthday." Instead, explore the birthday area with your child, giving them freedom and positive attention without expectation or demand.

緘黙児者は挨拶が苦手という話を、国内外で見聞きします。もしそれが事実なら、挨拶はウォーミングアップの時間がとりにくいことが一因ではないかと考えさせられました。イギリスのチャイルドセラピスト Lucy Nathanson氏も、そのようなことを話していました(関連記事参照)。

なお、別にPCIT-SMでなくても、緘黙児者に適切な方法で発話を促すためには、ウォーミングアップの機会が与えられることが望ましいでしょう。