サイレントピリオド(沈黙期)-異言語環境に転校した子ども

更新日:2017年10月28日(投稿日:2017年10月24日)
アイキャッチ画像。

サイレントピリオド(沈黙期)とは


学校で一日中黙っているからといって、その子が場面緘黙症だとは限りません。

緘黙との鑑別が必要なものの一つに、サイレントピリオド(沈黙期)と呼ばれるものが挙げられることがあります。英語で言われるところの silent period です。

これは、異言語圏から移住してきた子どもなどに問題とされるものです。例えば、転校により、それまで慣れ親しんだ言語とは違う言語が使われている学校環境に身を置くと、子どもは数日とか、場合によっては数ヶ月以上といった長期間、何も話さないことがあるそうです。この沈黙する期間が、サイレントピリオドです。通常の言語習得過程で起こるものですが、全てのバイリンガル環境の子どもに起こるものでもありません。

サイレントピリオドは、緘黙専門用語ではありません。むしろ、第二言語の習得と関係して使われることが多いです。例えば、以下のリンク、茂木健一郎さんのブログでも第二言語習得と関連して取り上げられています。

◇ 言語習得におけるサイレントピリオド
新しいウィンドウで開く


緘黙との鑑別は


ややこしいのが、バイリンガルの子どもは緘黙を発症するリスクが高いとされていることです。こうなると、学校でずっと黙っているバイリンガルの子はサイレントピリオドの期間中なのか、それとも緘黙なのか、より注意を払って見極めなければならなくなりそうです。

ではどう鑑別すればよいかというと、専門家ではない私には難しいです。Google ブックス や Google Scholar で "selective mutism" "silent period" と検索するどして、ご自身で考えてください(すみません)。

◇ Google ブックス で検索
新しいウィンドウで開く

◇ Google Scholar で検索
新しいウィンドウで開く

上の検索結果に、The silent experiences of young bilingual learners: A sociocultural study into the silent period という本が出てきますが、そこに Suki という、日本をルーツ?とする子どもの事例があります。全文を読めないのでよく分からないのですが、日本語を第一言語、英語を第二言語とする子の、緘黙とサイレントピリオドの鑑別の話でしょうか。出版社ホームページでは、この本を最初の41ページまで試し読みできるので、興味のある方は、こちらもご覧になってみてください。

↓ 出版社ホームページへのリンクです。
◇ The Silent Experiences of Young Bilingual Learners - A Sociocultural Study into the Silent Period - SensePublishers
新しいウィンドウで開く

また、Suki の事例は、Google Scholar の検索結果に出てくる論文 Perspectives on the ‘silent period’ for emergent bilinguals in England や Sociocultural understandings of the silent period: young bilingual learners in early years settings でも紹介されています。同じ著者が関わったものです。

それから上の検索サイトでは見られませんが、次の英語論文には Distinguishing Between the “Silent Period” and SM という節があります。英語を第二言語として学ぶ緘黙児に関するものですが、参考になるかもしれません。

◇ Mayworm, A.M., Dowdy, E., Knights, K., and Rebelez, J. (2014). Assessment and Treatment of Selective Mutism with English Language Learners. Contemporary School Psychology, 19(3), 193-204.
新しいウィンドウで開く


日本ではあまり話題にならないが……


先ほどは英語文献ばかりご紹介しましたが、緘黙とサイレントピリオドについての説明は、海外で目にすることがあります。例えば、イギリスの本を翻訳した『場面緘黙支援の最前線』にも、わずかではありますが、出てきます。ただし、この翻訳書では、サイレントピリオドではなく「無口になる期間」という訳がなされています(77ページ)。

日本では様々な場で緘黙の説明がなされていますが、緘黙とサイレントピリオドの鑑別について説明されることは海外に比べると少ないと感じます。先ほどお話した『場面緘黙支援の最前線』にしても、原書の索引には silent period が載っているのに、翻訳書の索引には「無口になる期間」はありません。これはおそらく、海外とは違って日本では異言語圏から移住する子どもは少なく、サイレントピリオドとの鑑別は、日本では重要ではないと考えられていることなどによるのではないかと思います。

とはいえ、日本は鎖国しているわけではありませんので、サイレントピリオドを経験する子どもがいても不思議ではないでしょう。また、Suki の事例のように、日本語を第一言語とする子に対して、緘黙とサイレントピリオドの鑑別が問題になることだってあり得ます。検索したところ、緘黙とサイレントピリオドの鑑別について報告された事例は少ないのに、その一つが日本をルーツとする事例というのは単なる偶然かもしれませんが、気にはなります。

緘黙とサイレントピリオドの鑑別は、確かに日本ではマイナーな問題かもしれません。ですが、これだけ緘黙の情報が増えてきたわけですし、場面緘黙症Journal もページ数が増えてきたので、この問題を一度は正面から取り上げてみたいと思い、そうしてみることにしました。緘黙というマイナーな問題を扱っている以上、少数派の人への意識を欠かすのはよくないという思いもあります。