「学校の先生には、緘黙の本を読む時間はない」(海外)

更新日:2018年01月26日(投稿日:2018年01月26日)
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わずか30ページの緘黙の本が、英国で出版


前回ご紹介したアメリカの場面緘黙症の本は、588ページもの分量がある本でした。大きな空白があるページも多いとはいえ、日本の一般的な緘黙の和書3冊分に相当するページ数で、分厚い本です。

これとは対照的に、わずか30ページの緘黙の本が、ほぼ同時期の2017年9月にイギリスで発売されています。Understanding Selective Mutism: A Beginner's Guide という本です。書名を和訳するとしたら、『場面緘黙症の理解-ビギナーズガイド』といったところでしょうか。

Amazon.co.jp の「なか見!検索」で目次を見た限りでは、「ビギナーズガイド」という副題の通り、初学者向けの基礎的な内容という印象を受けます。


「教師には、時間がない」


それにしても、わずか30ページとは、かなり薄そうな本です。どうしてここまでシンプルな本が出たのでしょう。その狙いを、著者の Lucy Nathanson 氏(チャイルドセラピスト)が語っています。

↓ Lucy Nathanson 氏の Facebook ページ へのリンク。Facebook に登録されていない方でもご覧になれます。
◇ Confident Children 2017年9月28日投稿分
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ポイントは、次の一文です(訳が下手ですみません)。

場面緘黙症の非常に優れた本がたくさんありますが、それらを時間を割いて読むのは、ごく一握りの非常に献身的な教師や学校スタッフだけかもしれません。--人には、特に教師には本当に時間がないのです!

There are a lot of fantastic books available on selective mutism but only a handful of super dedicated teachers and school staff may take the time to read them - people, especially teachers, genuinely don't have the time!

それで、このような時間をかけずに読める本を出したということです。

ただ、緘黙支援では、学校の役割は大きいはずです。これだと、教師や学校スタッフに対して、緘黙支援で必要な役割を期待することを諦めてはいないでしょうか。

とはいえ、全く本を手にとっていただけないよりかはよいでしょうし、現実的な判断のようにも思えます。とりあえず、私は合点がいきました。


日本の教師に、170ページの緘黙の洋書を読んでいただこうとしたが……


この Lucy Nathanson 氏の Facebook 投稿を読んで、私は十数年前のある出来事を思い出しました。日本の話なのですが、ある方が、緘黙の優れた本があるので学校の先生に読んでいただこうと、緘黙関係のブロガーに呼びかけられたのです(私のブログにも呼びかけのコメントを頂きました)。その本は、170ページほどの英語で書かれた本でした。当時、日本には緘黙の専門的な本が少なかったのです。

ですが、これは取りやめになっています。学校の先生は想像を絶するほど多忙なことと、英語にそれほど堪能ではないことがとりやめの理由でした。


多忙な教師に、どこまで期待するか


Lucy Nathanson 氏の「教師には時間がない」というお話は、あくまでイギリスのお話です。

日本の教師についても多忙という話はよく聞くものの、詳しい実情は、私は知りません。もしかしたら、日本の教師はイギリスの教師ほどには忙しくなく、200ページぐらいの緘黙の和書ぐらいなら読む時間はとれるし、緘黙支援に多くの期待ができるのかもしれません。逆に、実はイギリスの教師よりも時間がないのかもしれません。このあたりの実情については、読者の皆様の方がお詳しいかもしれません。

どちらにしろ、教師への期待については、理想と現実があるのはイギリスも日本もそう変わらないのではないかと思います。理想を言えば、緘黙児に関わる教師には、緘黙を専門的に扱った和書ぐらいはほぼ読破していただきたいところです。ですが、それは過大な期待かもしれません。教師には一体どこまで期待するのが現実的なところだろうと、Lucy Nathanson 氏の本出版を通じて考えさせられました。