昭和56年に出た、知られざる緘黙の専門書

更新日:2018年02月08日(投稿日:2018年02月08日)
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流王治郎『子供の緘黙症』


1981年(昭和56年)に、緘黙症の本が出ています。流王治郎『子供の緘黙症』という本です。おそらくは専門書で、分量は210ページあるそうです。ところがこの本、ほとんど知られていないのではないかと思います。私も手に取ったことはありません。

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◇ 子供の緘黙症
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おそらくはメジャーな流通に乗らなかった本で、それゆえ知られていないのかもしれません。出版元と思われる「五和工芸」は、インターネットで検索してもほとんど何もヒットしません。また、大学図書館の本を探せる「CiNii 図書」で検索しても、所蔵図書館は倉敷市立短期大学付属図書館のみという結果です。


流王氏は1960年代に、緘黙の研究発表を行なっていた


ただ、著者の流王治郎氏は、見覚えがあるお名前です。1960年代に緘黙の研究発表を行っており、関連文献を読んだことがあるのです。私が把握している流王氏の緘黙関連文献は、以下の通りです。いずれも、著者の所属は岡山県中央児童相談所です。

○ 流王治郎 (1962). 心因性無言症の研究ー症例を中心としてー. 臨床心理, 4(2), 36-42.

○ 佐藤修策・繁永芳己・流王治郎 (1963). 児童における行動異常の研究ー場面緘黙ー. 日本心理学会大会発表論文集第27回. 382.

次のものは学会発表です。1967年の『児童精神医学とその近接領域』第8巻1号19-20ページに収録されています。

◇ 緘黙児の臨床的研究 I. 発生要因について
流王治郎・篠原清彦・佐藤修策

◇ 緘黙児の臨床的研究 II. 心理療法について
佐藤修策・篠原清彦・流王治郎


この時代に緘黙の専門書が出ていても、不思議ではない


1981年(昭和56年)という時代に、緘黙の専門書が本当に出ていたのだろうかといぶかしく思う方もいらっしゃるかもしれません。ですが、私は十分にあり得ると思います。

というのも、1973年(昭和48年)には、十亀史郎『講座情緒障害児 第3巻 自閉症児・緘黙児』という200ページほどの本が出ているからです。また、翌1974年(昭和49年)には、全国情緒障害教育研究会編『情緒障害児の教育-緘黙・孤立児-』という、これまた200ページほどの本が出ています。

1986年(昭和61年)には、山本実、中山文雄編著『緘黙症・いじめ-正子の場合-』という、例によって200ページほどの本が出ています。こうした時代背景を考えると、緘黙の専門書が1981年(昭和56年)に出ていても不思議ではないというのが私の見方です。


もっと広く流通していたら


流王氏は先の1962年の論文の中で、次のように述べています。

従来、心因性無言症について、一括して論ぜられている傾向があった。われわれはその原因、症状、無言場面などから、心因性無言症を細分して考察するのがよいと考える。(41-42ページ)

心因性無言症の原因を明きらか(原文ママ)にするのは難しいことであるが、その発生原因として、素因的なものと誘因的なものに分けて考えるのがよいと思う。(43ページ)

現在でも通用しそうな視点です。流王氏の著書がもっと広く流通していたらと思います。