英語検定試験、緘黙への配慮は

更新日:2018年07月03日(投稿日:2018年07月02日)
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「話す」能力を問う検定試験の重要性が増している


大学入試センター試験は無くなります。既に繰り返し報道されている通り、2020年度からは、新たに「大学入学共通テスト」が始まります。

新しい制度では、英語に「民間事業者が実施する試験」が活用されます。従来のセンター試験で問うてきた「読む」「聞く」能力に加え、「書く」「話す」能力をも測るためです。しばらくは現行のマークシート方式の試験と併存するかたちになりますが、2024年度からは、民間の検定試験に全面移行します。

特に、「話す」(スピーキング)能力を問う試験は、緘黙がある受験生には重要な問題です。単に話すだけでなく、「積極的にコミュニケーションを図ろうとする意欲や態度」(英検3級以上)を評価する検定もあり、これはなかなか厳しいです。大学入試に限らず、民間の英語検定試験を受ける人は多いと思うのですが、緘黙児者にとってはどうなのでしょうか。

こうした検定試験では、障害がある受検者への配慮が提供されています。緘黙については、何らかの配慮が行なわれているのでしょうか。調べてみました。


方法


英語検定試験も様々ですが、今回は、特に新しい大学入試制度での活用が認定されている9種類の試験について、配慮の情報を公式ホームページで確認しました。

[調査対象]

ケンブリッジ英語検定TOEFL iBTテスト、IELTS、TOEICGTEC、TEAP、TEAP CBT、実用英語技能検定(英検)

※ リンク可能なページについては、リンクを貼っています。なお、GTECについてはPDFファイルです(387KB)。PDFを閲覧するには Adobe Reader が必要です。こちら新しいウィンドウで開く)からダウンロードできます。


結果


緘黙に対する配慮を明記した検定試験はありませんでした。

近いと思われるものとして、「言語障害」(ケンブリッジ英検)と「音声言語障がい」(英検)への配慮があります。例えば英検では、「音声言語障がい(吃音症・その他)」に対して、次のような「発話への配慮」を提供しています。

話がつまる、大きな声がでないなどの状況を面接委員に伝え、注意して聞くよう配慮します。面接の実施方法・評価方法は通常通りです。

また、次のような配慮項目を挙げる検定試験もありました(TOEFL iBTテスト)。言語障害等がある受検者に対し、スピーキング試験を省略する用意があるそうです。

(only applicants who are deaf or hard-of-hearing or have speech disabilities)
○ Listening section omitted
○ Speaking section omitted

それから、これは中学生レベルですが、英検4級と5級のスピーキング試験の場合、「発話に関する配慮」として問題文の音読免除が選択できるほか、質問への解答方法として音声での録音以外(テキスト入力・代理タイピング・代理応答)を選択できるそうです。なお、配慮のあるなしに関わらず、4級と5級のスピーキング試験は専用サイトにアクセスして受検する形式で、自宅、学校などで好きなときに受検できます。

この他、「受検上の特例措置」について明記したものもありました(ケンブリッジ英検)。「独自の裁量により、受検者の該当テストのスコアに、加点し調整することがあります」とのことです。適用の条件としては「一時的・恒久的に身体的に障害のある受検者で、受検の際に身体上の障害による受検上の配慮が受けられなかったり、十分でなかったりした場合にも適用されます」と書かれてあります。

ただ、これらの措置が、緘黙について適用されるかどうかは分かりません。

考察


配慮について


緘黙のようなあまり知られていない障害だと、なかなか配慮の対象として明記してはもらえないのかもしれません。なんとか該当しそうな障害を探すなり、個別に問い合わせるなりすることになりそうです。

先程の英検の「音声言語障がい(吃音症・その他)」は、もしかすると緘黙のような障害も視野に入れているのかもしれません。ただ、あの配慮内容は緘黙にはちょっとしっくりこないのではないかと私などは思います。緘黙の場合、全く声が出なかったり、出たとしても、ごく小さな声で単語や、せいぜい一語文、二語文を話せる程度だったり、そうした傾向があるのではないかと思います。これだと通常の評価は難しそうです。

緘黙の症状も様々ですので、配慮のあり方も様々ではないかと思いますが、緘黙全般にほぼ共通して言えそうなこととしては、「安心できる環境を設定する」や「視線を見ない」「返事はゆっくり待つ」といった配慮が欲しいです。緘黙への配慮については、緘黙の状態によっても、また、試験によっても違うと思うので、検定試験の主催者に問い合わせてみることも場合によっては必要かもしれません。ただ、こうした配慮でどこまで積極的に話せるようになるでしょうか。

いっそ、TOEFL iBTテストの言語障害等に対する措置のように、スピーキング試験を免除という選択肢を用意していただければ、という思いもないではありません。GTECという検定試験でもスピーキング試験が免除されることがあるのですが、それは高度・重度難聴があり、かつ口話にも障害がある受検者の場合であり、緘黙に適用される見込みはどうでしょうか。


申し込みについて


ただ、配慮の申し込みには事前申請が必要です。申請の際には診断書や障害手帳のコピーなどが必要とされる場合があります。ですが、緘黙がある未成年の中には、家族の理解が得られず、診断を受けるまでには至らない人もいるものと考えられます。そうした人の場合、配慮の申請ができません。

気になるのは、学校単位など団体で受検する場合です。私は最近の高校の動向は知らないのですが、大学入試で民間試験が導入されるとすると、団体で受検を申し込む高校が増えることはないでしょうか。その場合の配慮については、どうなるのでしょう。高校に緘黙への理解がない場合はどうなるのか、また、周囲とは違う方法で受検することを本人がどう感じるか、そのあたりのところが気になります。

あと、配慮案内が英文で書かれている検定試験がありました。高校卒業レベル以上の英文のように思われます。受検生はこれを読みこなせるのでしょうか。もっとも、水準の高い英語学習者が受ける検定であれば、これも分かります。


たとえ話せるようになったとしても……


少し話せるようになったものの、発話に苦手意識が残るといった人にとっても、スピーキングは難しい問題だろうと思います。下手に話せてしまうと、かえって配慮は受けられなくなってしまう可能性も考えられます。

また、かなり話せるようになった人でも、緘黙だった頃に学校場面で英語を話す訓練を十分に積めず、そのことがハンディになっている人がいるのではないかと思います。


むすび


英語検定試験の実情を知りもしない私が、ホームページ上の情報だけで悲観的なことを並べてしまいました。ですが、緘黙経験者にも英検に合格した人はいます。

それにしても、民間の検定試験は国公立大学も活用するはずなのに、民間試験とはいえ、緘黙がある受検生への配慮がもし提供できなければ遺憾です。合理的配慮の提供は、国や地方の行政機関なら法的義務です。

※ 事実かどうかは分かりませんが、このような情報があります。