ある専門家「緘黙放置の結果、自殺思考が起こることも」

更新日:2018年11月19日(投稿日:2018年10月25日)
アイキャッチ画像。

起こり得る負の結果の一つとして、挙げられる


場面緘黙症が治療されなければ、何らかの負の結果が起こり得ます。

アメリカを代表する緘黙専門家の一人、Elisa Shipon-Blum(エリザ・シポンブラム)氏は、この起こり得る負の結果を9つ挙げ、その最後の一つに「自殺思考と、自殺の可能性」(Suicidal thoughts and possible suicide)を挙げています。

↓ 動画です。29分33秒から始まります。2018年3月12日投稿。


このシポンブラム氏の見解は、同氏が運営する緘黙の研究治療センター(SMartセンター)のホームページにも書かれてあります。

↓ そのホームページです。中盤あたりに書かれてあります。ここでは負の結果は8つ挙げられています。
◇ What Is Selective Mutism – Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center | SMart Center
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この問題について言及した専門家は、シポンブラム氏が初めてではありません。認定臨床専門カウンセラーの Donna Mac氏も、著書の中で取り上げています(Mac, 2015)。

同氏は、緘黙の診断そのものは自殺既遂の特定のリスク要因ではないものの、緘黙児者の多くは孤独、絶望、無力、無価値、重荷といった多くのリスク要因となる類の思考や感情を、長期的に経験すると述べています。

同氏はまた、強い不安が自殺既遂の一つのリスク要因である可能性を示唆しています。


今のところ研究がない、明らかになって欲しい


緘黙の経験者と見られる方で、自殺思考の話をした方は、日本でも以前からインターネット上等で見かけることがありました。場面緘黙症Journalも、コメントを頂いたことがないことはありません。

ただ、緘黙と自殺の関係については、私が知る限り研究は出ていないはずです。冒頭のシポンブラム氏も、何を根拠にあのようにおっしゃったのかは、はっきりしません。

緘黙を経験していない人でも、命を絶ちたいと考えることはあるでしょう。緘黙経験者と見られる方が、その種の投稿をネット上で行っているのを見たからといって、では緘黙にはそのリスクがとりわけ高いかというと、そこまでのことは言えません。

とはいえ、シポンブラム氏があのような見解を示したことはインパクトがあります。緘黙と似た社交不安症など、他の不安症については自殺のリスクに関する研究があるようです。そうした先行研究を調べると、緘黙についてもリスクがあっても不思議ではないと思わされます。緘黙についても詳しいことが明らかになることを期待します。

どちらにせよ、緘黙が軽く見られて放置されることは無くしたいです。