『イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド』読みました

更新日:2019年01月21日(投稿日:2019年01月21日)
アイキャッチ画像。
昨年末に、新しい場面緘黙症の本が出版されました。年の瀬の発売とあって購入はしばらく控えていたのですが、このほど読み終えました。読んだ感想等を書きたいと思います。

本の基本情報


○ イラスト:にしださとこ
○ 著者:金原洋治、高木潤野
○ 協力:かんもくネット
○ 出版日:2018年12月15日 第1刷発行
○ 書名:イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド-アセスメントと早期対応のための50の指針
○ 出版社:合同出版
○ ページ数:159
○ 本のサイズ:B5

にしださとこ氏はイラストレーター。これまで教科書や書物、雑誌など数多くの出版物でイラストを担当してきました。漫画も描く方で、『ぼくらのじかん。』という本も出しています。

著者は2名ですが、金原氏はかねはら小児科院長、高木氏は長野大学社会学部准教授です。両氏とも、緘黙の本に携わるのは今回が初めてではありません。

出版社の合同出版は、これまで緘黙のコミックエッセイを2冊出版しています。『私はかんもくガール』(2015年)と『かんもくって何なの!?』(2017年)の2冊でした。同社はまた、専門家による発達障害の本なども出しています。

ページ数は類書に比べると2割ほど少ない一方、本のサイズが大きめです。

合同出版の「イラストでわかる」シリーズの新たな一冊です。


本の内容


学校における緘黙への対応方法を示した本


本の内容を一言で表すと、学校における緘黙への対応方法を示した本と言えるのではないかと思います。対象読者も、主に教師が想定されているものと思われます。副題に「50の指針」とありますが、1から50まで指針が書かれているわけではなく、特に意味はありません。

小学校での緘黙への対応を最も念頭に置いているようですが、中学校や大学入試に関する記述も中にはあります。

本の構成を見ると、第3章「環境調整・関わり方の工夫・合理的配慮」が67ページ分あり、最も多いです。コラムや巻末資料等を除くと、本書の半分のページ数を占めます。


高木氏の担当分が8割


共著ですが、金原氏は第1章(29ページ分)を担当、高木氏は第2~第4章(110ページ分)の担当です。どなたが執筆したか明記されていないコラムや巻末資料等を除くと、高木氏の担当分が全体の8割のページ数を占める計算です。

この本の内容は、高木氏による2017年3月の著書『学校における場面緘黙への対応』(学苑社)と重なるところが大きいです。今回の本の8割は高木氏が書いたものですし、前の高木氏の本の出版から2年も経っていませんので、内容が重複するのももっともです。


最大の特徴は、読みやすさへの意識


本書の最大の特徴は、本の読みやすさに特段の意識を置いていることでしょう。具体的には、見開き2ページ毎に一つの項目をまとめ、具体的な助言を数個示すというものです。全体的にシンプルな印象を受けます。専門用語の使用も最小限です。『学校における場面緘黙への対応』が専門書に近かったのに対し、こちらは一般書に近いです。

特筆すべきは、イラストを数多く配置して視覚的にイメージしやすくする工夫を施している点です。書名にも「イラストでわかる」と強調してあることから、イラストを中心とした構成は本書が最も強く打ち出そうとしたポイントと思われます。

その一方で、余白が多くて文章は少なく、ページ数も少なめです。読み通すのに、あまり時間はかかりません。


感想


ほぼ高木氏の本


この本は、ほぼ高木氏の本と私は見ています(もちろん金原氏の担当分も重要ですけれども)。8割が高木氏の担当ですし、高木氏の専門性や緘黙に対する考え方が色濃く反映されています。

もっと言うと、ほぼ『学校における場面緘黙への対応』のイラスト版と言ってよいのではないかと思います。


分量が薄い本の良し悪し


見た目によらず分量が薄い本ですが、この良し悪しは一概には言えません。本書の想定読者は主に小学校教師でしょうが、多忙な教師が分量の多い本をどこまで読めるかは分かりません。イギリスでは「教師には本当に時間がない」として、わずか30ページの本が出版されています。ポイントを端的にまとめられたのであれば、かえって優れた本ということにもなります。

分かりやすさを重視した本のようですし、意図的に分量を少なくしているのではないかと私は思います。


最も注目されるのは、分かりやすさへの意識


本書で最も注目されるのは、分かりやすさを意識した本の構成です。こんなにイラストが多い緘黙の和書は、コミックエッセイや絵本などを除けば見た覚えがありません。例えて言えば、NHKラジオ「基礎英語」シリーズのテキストを見ているようです。この点で、『学校における場面緘黙への対応』との差別化に成功しています。

緘黙サイトの老舗「場面緘黙症専用」を運営する俊太さんは、この本についてTwitterで「何よりイラストが多くてわかりやすいのがいいですね」とコメントされています。

私は逆で、大人向けの本に、ここまでの量のイラストは必要だろうかと感じます。イラストや余白にスペースを多く割いて、肝心の説明文が少ないページも散見されます。もっとイラストや余白を削るなり縮めるなりして内容を圧縮した方が、ページの一覧性が高まって、私には見やすくなりそうです。

ただ、このあたりは好みの問題で、どちらがよいとも言えません。私などよりも、対象読者層が読みやすいと感じるかどうかの方が重要です。主要読者層と思われる学校教育界からはどう評価されるでしょうか。

にしだ氏のイラストは、本書の内容の視覚的理解を促すよう描かれています。また、小さなイラストから大きなイラストまで、見やすいものばかりです。本書を手に取るのは主に小学校教師でしょうが、にしだ氏のイラストは小学校の教科書に採用された実績があるため、馴染みのある絵柄を見て安心する教師もいることでしょう。本書は何より「イラストでわかる」ことが目玉ですので、やはり的確なイラストレーターが選ばれていると唸らされます。