BBCの緘黙ドキュメンタリー、早くも50万回再生

更新日:2019年01月27日(投稿日:2019年01月27日)
アイキャッチ画像。
2010年にイギリスのBBCで放送された場面緘黙症のドキュメンタリーと見られる映像が、YouTubeに投稿されました。制作者に許可をとっての投稿とみられます。

再生回数は既に50万回近く、コメント数は2,500件以上を記録しています。1月11日に公開されたばかりなのに、これは驚異的な数字です。

この動画は、海外の緘黙関係のFacebookページでは取り上げられています。そこで、私もここでご紹介してみることにします。また、50分近くもある英語の動画ですので、分かる範囲で概要説明も行なってみたいと思います。

↓ その動画です。48分40秒。


↓ YouTubeのページでご覧になる方はこちら。
◇ Raising A Child With Selective Mutism | MY CHILD WON'T TALK
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ドキュメンタリーの概要


このドキュメンタリーは、2010年2月にBBC Oneで放送されたものとみて間違いなさそうです。

↓ 放送された跡。BBCホームページへのリンクです。
◇ BBC One - My Child Won't Speak
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BBC Oneは、日本で言えばNHK総合テレビに相当するそうです(『リーダーズ英和辞典』第2版より)。上記ページによると、やや遅い時間帯に2度放送されたようです。

内容は、緘黙がある少女たちが、緘黙を克服するための取り組みを行う様子を追ったものです。その少女たちは、次の3人です(リンクは動画へのリンクです)。

○ Red(8歳)
・眼鏡の子、 ノーサンプトンシャー在住。
・表情は豊かで、ホワイトボードで筆談は行なっている。
・祖父(同居していない)と話すことが課題。
・ボイスレコーダーを内蔵した本を通じて祖父と会話(23分59秒頃~)。
・携帯電話のボイスメールを通じて祖父と会話、同じ家の敷地内のかなり離れた場所から(34分8秒頃~)。

○ Megan(10歳)
・動画サムネイル画像の子で、ドーバー在住。
・表情には、笑みが見えることも。
・学校の担任教師は、彼女の声を聞いたことがない。
・発話中、徐々に人を近づけていく取り組みが成功(15分48秒頃~25分22秒頃~)。
・自分の緘黙について書いた文章を教室で読み上げてもらい、同級生への助けを求める場面も(31分45秒頃~)。
・6ヶ月23回のセラピーのセッションの後、教室で少し声が出るようになる。

○ Danielle(15歳)
・ポニーテールの少女、ケアフィリ在住。
・14歳までわずかな人としか話せず。
・1年前、誰も知る人がいない学校への転校を思い立ち、それにより話せるようになった。
・カメラの前でも普通に話すが、それでもなお緘黙を完全には克服できていない。
・商店でチョコレートを買おうと試みるがレジに持っていけない、レジで予期せぬ会話をしなければならなくなる可能性があるため(27分15秒頃~)。
・話せなかった頃の友人と久しぶりに会ってみたが話せない、しかも友人間で異性の話題になり……(39分01秒頃~)。
・その後、話せる友人ができた。


感想


このドキュメンタリーはイギリスではある程度有名らしく、私も以前から存在は知っていたのですが、視聴したのは初めてです。そこで、動画を見た感想を書いてみます。

具体的な取り組みを映像化


やはり具体的な取り組みを映像で見ることができたのは勉強になりました。Meganさんに対して行なわれた徐々に人を入れていく取り組みは、まさにイギリスで有名な「スライディング・イン(スライド・インとも訳される)」技法です(15分48秒頃~25分22秒頃~)。

ただ、治療経過については、やや断片的な内容になっている感も、なきにしもあらずでした。例えば、言語聴覚士のMaggie Johnson氏が、Redさんが祖父と話せるようになるために、録音機器を通じた言語コミュニケーションを提案しています。あれは思い付きで提案したものではなく、Redさんが筆談はできる状態だったことを踏まえてのものと思われます。もし筆談すらできなかったら、取り組み内容も変わってきたはずです。そのあたりの背景がドキュメンタリーでは説明されていません。

なお、Maggie Johnson氏の治療についての詳しい情報は、同氏の共著 The Selective Mutism Resource Manual 参照。動画13分53秒頃にちらっと出てくる、リング製本の本です。


「学校」で「話せない」ことだけではない


緘黙というと、かつて「学校緘黙」という呼び方もあったように、「学校」で「話せない」ことによく焦点が当たります。

ですが、緘黙の問題はそればかりではありません。このドキュメンタリーは、祖父(同居していない)と話せない様子や、買い物ができない様子なども撮影し、多様な緘黙の問題を示しています。

もっとも、学校で話せないことの重要性はやはり大きいので、もう少しだけそのあたりの取り組みの様子を見たかった気もしないでもありません。


もっと深刻な状況に置かれていた緘黙児者も多くいたはず


映像を見て、かつて私が学校で話せなかった頃のことを思い出しました。ただ、私の場合、もっと重かったように思います。今回の少女3人は話せなくても表情があったりと、重度の例はないように思います。

また、3人とも、家族に緘黙であることを認識されています。言語聴覚士が関わり、専門的な支援を受けている子もいます。ですが、そんな緘黙児者ばかりではないはずです。イギリスでは、このドキュメンタリーを見て、我が子が緘黙であることに気付いた(それまで知らなかった)という親もいたそうです。緘黙はイギリスにおいても認知度が低いですし(特にこのドキュメンタリーが放送された当時は)、気付いてさえもらえなかった緘黙児者も少なからずいたのではないかと思います。


放送から9年が経ち、あの3人は今頃どうしているでしょう。なお、3人のうちDanielleさんについては、2015年に出版されたSelective Mutism in Our Own Wordsという本に寄稿されています。