緘黙行動が維持・強化されるサイクル

更新日:2019年02月23日(投稿日:2019年02月23日)
アイキャッチ画像。

回避のサイクル


下の図は、発話の回避により、緘黙行動が維持・強化される悪循環を描いたものです。

「発話を促される→不安が強くなる→大人が代わりに答える→不安が軽減する→緘黙行動が強化される」と書いています。

場面緘黙症の原因をリスク要因、引き金、維持要因の三つに分けるとすると、これは維持要因に相当するものの説明です。学習心理学を背景とした考え方と思われます。専門的には「負の強化」(negative reinforcement)と呼ぶようです。

「大人が代わりに答える」とありますが、ここは主語が「子どもの友人」や「同級生」でも構わないでしょう。何らかのかたちで発話が回避できれば、大体同じことではないかと思われます。緘黙児者の気持ちを勝手に読んで済ませてしまう(mind reading)といったことも、挙げられます。


英語圏では割と目にする図


この図ですが、緘黙に関する英語圏の情報に触れていると割と目にします。

例えば、イギリスでは緘黙治療の定番の書 The Selective Mutism Resource Manual(第2版)には、「どのようにしてプレッシャーと回避が緘黙の一因となるか」(How pressure and avoidance contribute to selective mutism)の説明として出てきます(40ページ)。

また、先日お話した、2018年8月に出たアメリカの保護者向けの本Overcoming Selective Mutismにも、「場面緘黙症サイクルの維持-回避のサイクル-」(MAINTAINING the Selective Mutism Cycle -The Cycle of Avoidance-)として登場します(58ページ)。

※ ただし、本などによって、図の仔細は異なります。


なぜか、日本ではあまり見ない


ですが、日本ではこの図を目にした覚えはちょっとありません(私の不勉強ゆえだったら申し訳ないのですが)。先日出版された新しい本『イラストでわかる子どもの場面緘黙サポートガイド』でも、思った通り見つかりませんでした。あれだけイラストが大量に挿入された本であるにもかかわらずです。

別に図ではなくても、この図の趣旨を文章で解説していれば同じことなのですが、やはりこのように説明したものを見た覚えはあまりありません。

なぜ日本ではこの図を見かけないのか(逆になぜ英語圏ではよく目にするのか)は、専門家ではない私には分かりません。どちらにしろ、上の図のような考え方の理解は、日本ではあまり広まっていないものとみられます。


「安心できる環境作り」「合理的配慮」の罠


私は、この図から教えられるところは、日本でも大きいと思います。

よく緘黙児者が安心できる環境作りが大切とされますが、不安の除去の仕方をこのように誤ると、緘黙行動が維持・強化されることにもなりかねません。

また、最近は「合理的配慮」が緘黙支援で大きなテーマの一つですが、これも配慮の名の下に、このような接し方をしてしまうと、緘黙行動が維持・強化されることも考えられます。

図のような悪循環は断ち切る必要があります。そのためには、緘黙児者が答えやすいかたちで答えさせるのです。なお、この点について興味がある方は、次の記事をご覧ください。

◇ 緘黙児が口頭で答えやすい質問(症状が軽い場合)
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