『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』読みました

更新日:2019年04月01日(投稿日:2019年04月01日)
アイキャッチ画像。
先日お話した新刊『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』を読み終えました。

原書は2014年に通読し、その後もつまみ食いのような形で部分的に何度も読んできたのですが、今回翻訳書という形で久々に通読しました。改めて読んで、具体的な支援法をよくまとめた本だと感じました。

もう少し読んだ感想を書いてみたいと思います。まずは、本の基本情報のおさらいからです。

本の基本情報


○ 著者:エイミー・コトルバ(Aimee Kotrba)
○ 監訳: 丹明彦
○ 訳: 青柳宏亮、宮本奈緒子、小暮詩織
○ 書名:場面緘黙の子どものアセスメントと支援:心理師・教師・保護者のためのガイドブック
○ 原書名:Selective Mutism: An Assessment and Intervention Guide for Therapists, Educators and Parents
○ 出版社:遠見書房
○ 初版発行日:2019年3月1日
○ ページ数:212

著者のエイミー・コトルバ氏は、緘黙や社交不安を専門とする臨床心理学者。ミシガン州ブライトンでクリニックThriving Mindsを運営されています。かつてアメリカ最大の緘黙団体の理事長を務められた経験もあります。2018年8月には、主に保護者を対象とした緘黙の本を共著で出されました。

◇ 保護者向けに書かれた、新しい緘黙の本(米)
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監訳者の丹明彦氏(目白大学准教授)は、「大学に所属しているものの、過去20年以上にわたって、継続的に週20セッションを行う臨床家」であり、「場面緘黙のセラピーも現在進行形で複数行っている」(197ページ)そうです。翻訳を担当した青柳宏亮氏(横須賀市児童相談所・児童心理司)とともに、緘黙の論文を発表するなどされているのを目にしたことがあります。


本の概要


本の内容は、書名通り、「場面緘黙の子どものアセスメントと支援」について具体的に述べたものと言ってよさそうです。想定読者も副題通り、心理師・教師・保護者の三者です。

ただ、アセスメントについては本文11ページ分と付録11ページ分の合わせて22ページ分で、ページ配分としては全体の1割程度です。具体的な介入方法に関する内容が、総ページ数の多くを占めています。

巻末には「付録資料」があります。169ページから196ページまでの27ページ分あります。

今年発売された別の緘黙の和書とは対照的に、文章が多いです。


感想


今や海外では主流の支援法の一つでは


本書で示されている支援法には「ブレイブワーク」「親子相互交流療法」(PCIT)といった、日本の読者にはおそらく馴染みが薄いと思われる支援用語が、重要な位置を占めています。

私は専門家ではありませんが、これらによる支援法は、今や海外では主流の一つとなっていると言っても過言ではありません。今回の翻訳書の出版で、ようやく日本に本格的に紹介されました。

「ブレイブ」(brave)は「勇敢な」という意味ですが、これは海外、特に北米では頻繁に目にする言葉です。海外では、緘黙支援のキーワードの一つといってもよさそうなほど頻出しています。

親子相互交流療法にしても、この支援法においては数少ない認定マスタートレーナーのスティーブン・クルツ博士(Steven Kurtz)や、同博士がかつて勤務していたChild Mind Institute(ニューヨーク)を中心に、緘黙支援で取り入れられ、普及活動も行なわれています。

これまでの緘黙の本のように、行動療法が支援の中心ですが、このように日本の類書にはないことも書かれてあります。このほか、学外の心理相談室での集中的治療や動機づけ面接法、認知的介入など、本書は多様な支援法を示しています。

保護者が果たすべき役割


近年、日本で発売された緘黙の和書2冊は、いずれも学校場面で緘黙がある児童生徒にいかに対応するかがテーマでした。このため、主に教師が果たすべき役割に焦点が当たっていました。

今回の本は扱う範囲が広く、保護者が果たすべき役割にも重きが置かれています。この点も、既存の類書との違いとして挙げられます。

翻訳が非常に読みやすい


本書は、翻訳書としては日本語が自然で、非常に読みやすいです。翻訳の正確性については、逐一原文と照らし合わせたわけではないので分からないのですが、問題なく意味が通る日本語です。特に最後の、第8章末尾の翻訳は傑作です。

「監訳者あとがき」が面白い


丹明彦氏による「監訳者あとがき」は率直な書き方で、かなり面白く思われました。これまで緘黙の本を書かれた日本のどの専門家とも、違う文章です。

本書はアメリカの本ですが、この「監訳者あとがき」では「日本の学校環境での支援実践の可能性」についても述べており、日本の読者には役立ちそうな内容です。

主人公は緘黙児者本人


本書、特に「監訳者あとがき」を読んで確信したのは、心理士・教師・保護者はあくまで援助者であり、主人公は緘黙児者たち本人だということです。

北米で緘黙児者に「ブレイブ」であれと勇気付ける支援者を私はよく目にして、緘黙を乗り越える主体は緘黙児者本人ではないかと私も感じていました。日本ではこうした勇気付けについてこれまであまり触れられなかった一方で、緘黙児者の環境に注目が集まっています。確かに環境は重要ですが、主人公は緘黙児者本人なのだということも忘れないでいたいです。




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