教育関係者向けの手引きが、出る(米SMA)

更新日:2020年01月25日(投稿日:2020年01月25日)
アイキャッチ画像。

著者には専門家だけでなく、保護者や先生も


アメリカを代表する場面緘黙症団体 Selective Mutism Association (SMA) が、教育関係者を対象とした手引きをまとめ、ウェブサイト上に公開しています。URLから見て、2020年1月に出たばかりの新資料とみられます。

↓ その手引きです。PDFファイル。608KB。Selective Mutism Association ウェブサイトへのリンク。
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著者は、以下の7名です。いずれも、SMA理事会のメンバーです(各著者にはSMAウェブサイトの紹介ページへのリンクを貼っています)。ただ、全ての理事会のメンバーが、著者として名を連ねているわけではありません。

○ Rachel Busman, Psy.D., ABPP
○ Emily Doll, M.A., M.S., CCC-SLP
○ Jenny Foster, B.S.
○ Jami Furr, Ph.D.
○ Lisa Kovac, Ed.S., Ph.D.
○ Kristin Leos, B.A.
○ Katelyn Reed, M.S.

この7名には、臨床心理学者や言語聴覚士など専門家はもちろん、保護者や幼稚園(保育園?)の先生も含まれています。

筆頭著者のRachel Busman氏は臨床心理学者。子どものメンタルヘルスを扱うニューヨークの非営利団体Child Mind Instituteの不安症センター上級ディレクターと、場面緘黙症科ディレクターを担当しています。


概要


手引きは全27ページからなる内容です。緘黙の児童生徒への支援の目的を「負の強化のサイクル」を断ち切ることとし、具体的なアドバイスを提供しています。

ここで言う「負の強化のサイクル」とは、以前このブログでお話しした下の図と、大体同じです。英語圏では、緘黙を説明する際、よく登場する図です(図の描き方は、本やウェブサイト等によって多少異なります)。

「発話を促される→不安が強くなる→大人が代わりに答える→不安が軽減する→緘黙行動が強化される」と書いています。


この手引きを読んだ印象


教育関係者の立場をよく考えてまとめられている


私は教育に携わる人間でないので、この手引きが実務に使えそうなものかどうかは判断できません。ただ、教育関係者の立場をよく考えてまとめられている印象を受けます。

例えば、子どもの緘黙は親が気づかず(家では話せるため)、教師が最初に発見する場合も多いです。その場合、どのようにして親に緘黙の話題を持ち出すかとか、クラスで緘黙についてどう話すかといったことも、書かれてあります。


PCITの技法が盛り込まれている


それから、緘黙支援ではアメリカでもはやお馴染みの親子相互交流療法(PCIT)の技法が、簡単なかたちで盛り込まれている点にも注目したいです。

緘黙でPCITといえば、緘黙児者の集中プログラムの中などで、保護者や支援者向けにその技法の習得が図られている印象を私は持っていたのですが、教育関係者もこの技法を習得すべしということなのでしょう。教育関係者向けに改めてまとめた格好になっています。

※ 緘黙児へのPCITの適用については、日本語文献では『場面緘黙の子どものアセスメントと支援』(翻訳書)で一部紹介されています。


アメリカ国外にも、一定の影響力があるかも


もっとも、IEPや504プランといった制度面の話や、推奨文献にイギリスでは定番の The Selective Mutism Resource Manual が含まれていないあたりを見るに、これはやはりアメリカ向けの手引きなのでしょう。

とはいえ、提案されているアドバイスの多くは、国を問わず有効そうです。そして、SMAは世界を代表する緘黙団体の一つでもあり、アルゼンチン、中国、ドイツなど世界8カ国にインターナショナル・コーディネーターを置くなど、アメリカ国外にもネットワークを持っています。

このため、今回の資料は、学校現場における緘黙児支援のグローバル・スタンダードになる……とまでは言いませんが、アメリカ国外にも一定の影響力はあるかもしれません。

※ スペイン語圏で場面緘黙症の支援を行う Mutismo Selectivo Internacional が、早速、この手引きの翻訳に乗り出しているようです。スペイン語は世界三大言語の一つとも言われるほど母語話者が多く、翻訳が出ることにはインパクトがあります。

↓ Mutismo Selectivo Internacional の Facebookページへのリンク。
◇ El 20 de enero, finalmente luego de años...
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