people-first language-障害よりも、まずその人に焦点

更新日:2020年02月07日(投稿日:2020年02月07日)
アイキャッチ画像。

people-first language とは


場面緘黙症がある子どもは、英語で次のように書くことがあります。

children with selective mutism
children with SM


selective mutismは、場面緘黙症の意味です。また、SMはその略です。分かりやすくお伝えするために一部を日本語にすると、こうなります。

子ども with 場面緘黙症

ポイントは、子どもが先に来て、緘黙がそれに付随しているような記述であることです。

この記述の仕方は、緘黙に限らず、障害がある人を表わす場合に使われることがあります。例えば、

people with disabilities

で「障害がある人」を表します。disabilityは障害という意味です。

こうした記述の仕方は、people-first language とか、person-first language と呼ばれています。障害よりも、まずその人に焦点を当てるべきという考え方が背景にあります。

この書き方は、アメリカでは現在の主流だそうです。

ただ、批判がないわけではありません。例えば、この記述法は人と障害を分けていますが、障害はその人にとって欠くことができないアイデンティティであると考える人もいます。また、この記述法には、障害はネガティブなものという意味合いが暗に含まれている(障害はネガティブなものではないという見方をする人がいます)という批判もあります。この他、様々な批判があります。


identity-first language とは


これに対して、次のような記述法もあります。

selectively mute children
SM children


障害者一般の場合、こうなります。

disable people

このように、障害を表す形容詞等が先に来て、人が後に来る書き方をすることもあります。こうした書き方を、identity-first languageと呼びます。

障害者の中には、people-first language に先程のような批判的見方をして、こちらの書き方を志向する人も増えてきているそうです。例えば、ろうを文化と考える、ろう者社会(デフ・コミュニティ)の人たちや、全米視覚障害者連合はこの立場です。また、自閉症を脳の多様性と捉える「ニューロダイバーシティー」の立場からも、この書き方をとる人がいます。


緘黙の関係者の間では?


では、緘黙の関係者の間ではどちらの記述法がとられているのでしょう。緘黙に関する英語圏の主要ウェブサイトの記述を調べたところ、次のような結果でした。

○ Selective Mutism Association(アメリカの緘黙団体)
→ people-first language と identity-first languageが混在

○ Child Mind Institute(ニューヨークの非営利団体)
→ people-first language にほぼ統一

○ SMart Center(フィラデルフィアの緘黙治療センター)
→ people-first language と identity-first languageが混在

○ SMIRA(イギリスの緘黙団体)
→ people-first language と identity-first languageが混在

両方の表現が混在している場合が多いです。関係者の間でも様々な考え方があるということなのか、中立的立場をとる団体が多いのか、単にあまり深く考えている人がいないだけなのか、そのあたりのところは私には分かりません。




参考にしたもの


漠然と参考となったものです。手当たり次第に。

◇ Collier, R. (2012). Person-first language: Noble intent but to what effect? Canadian Medical Association Journal, 184(18), 1977–1978. doi: 10.1503/cmaj.109-4319
◇ Crocker, F.A., and Smith, N.S. (2019). Person-first language: Are we practicing what we preach? Journal of Multidisciplinary Healthcare, 12, 125–129. doi: 10.2147/JMDH.S140067
◇ Draper, A.E. (2018). Navigating the labels: Appropriate terminology for students with disabilities. General Music Today. doi: 10.1177/1048371318792230
◇ Haelle , T. (2019, July 31). Identity-first vs. person-first language is an important distinction [web log]. https://healthjournalism.org/blog/2019/07/identity-first-vs-person-first-language-is-an-important-distinction/