『かんもくの声』について
更新日:2020年02月17日(投稿日:2020年02月17日)

先日発売された『かんもくの声
本の基本情報
著者:入江紗代
書名:かんもくの声
出版社:学苑社
発売日:2020年2月10日
発行日:2020年3月1日
ページ数:287
サイズ:B6サイズか
文字方向:縦書き
本の概要
緘黙の経験や、緘黙に対する考えを書いた本
本書は、著者の緘黙についての経験や考えをまとめたものと概ね言えるのではないかと思います。『私はかんもくガール
こうした本は、著者の経験が時系列に書かれることが多いです。本書の場合も大体そうなのですが、その一方、時系列が前後する場面も目立ちます。例えば80ページでは、中学校の文化祭の話をしていると思ったら、次は幼稚園と小学校の鼓笛隊や音楽発表の話に飛んでいます。必ずしも時系列には拘らず、ところどころ、トピック別に話をまとめる形をとっているようです。
また、著者は当事者活動に携わる活動家でもあり、緘黙と社会についての考えを書いた第5章にはその一面が現れています。これは、類書にはない特徴です。
文章の本
本書は、日本語の文章のみで書かれた、紙の本です。当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、ここのところ出ていた緘黙経験の和書は、『私はかんもくガール』に『かんもくって何なの!?』といったコミックエッセイや、『あなたの隣の話さない人
本書は写真や挿絵が一つもなく、シンプルに文章のみで伝えています。また、この2冊のコミックエッセイについていた専門家の解説はなく、著者の文だけで構成されています。
深刻な内容が、ストレートに
本書は、著者の深刻な経験がストレートに書かれています。また、ちょっと刺激が強いと感じる部分もありました。これから読むことを検討されている方は、留意して頂きたいです。
感想
『私はかんもくガール』に『かんもくって何なの!?』、そして今回の『かんもくの声』など、経験者の和書が近年複数出て、結構なことだと思います。読み比べると、緘黙を経験した方も多様であることが分かります。私としては、本書には共感できない部分も多かったですし、著者とは根本的な感性の違いも感じたのですが、これも人それぞれということでしょう。
さて話が変わりますが、奇しくもこの本が発売されたちょうど同日か翌日に、はあちゅうさんがInstagramのコメント欄の中で、ご自身の緘黙経験についてこうお話されていたのがとても印象に残っています。
「私は当時の記憶があんまりないです...!」
◇ そのコメントを含んだInstagram投稿
(新しいウィンドウで開く)
※ 『かんもくの声』出版とは無関係のコメントです。
また、コメント欄をよく見ると、はあちゅうさんは、「場面かもく症」と脱字か誤記かを繰り返してしまわれたようです(後に修正)。「経験者なのに当時の記憶があまりないなんて、しかも場面緘黙症の名前を間違えるなんて、信じられない!」と驚く方もいらっしゃるでしょうが、こういう経験者がいても何の不思議もありません。そして、私はこういう方の緘黙経験にも関心があります。
そろそろはあちゅうさんのように、緘黙だったことをあまり覚えていない方や、(はあちゅうさんがそうだと言うのではないのですが)小学校低学年で緘黙が治るなど、緘黙が比較的長期化しなかった方、あるいは「私は緘黙の経験者だ」という当事者意識が薄い方の経験談を単著で読んでみたいです。そういう方もだいぶいらっしゃると思いますので。
ですが、そんな本が出るわけがありません。同じ緘黙の経験談でも、本になりやすいものと、そうでないものがあります。