集中プログラムは今
更新日:2020年06月24日(投稿日:2020年06月24日)

これまでお話ししてきたように、アメリカなどで近年、多数の場面緘黙症の子どもや保護者を集めた集中プログラムやキャンプが行われています。緘黙児を対象とした治療目的のプログラムだけでなく、保護者を対象とした緘黙改善のためのトレーニング等をも行うものです。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される今の状況で、こうした催しは実施可能なのでしょうか。
集中プログラムやキャンプが行われなくなると、緘黙児者や保護者にとって痛手でしょう。支援の選択肢の一つを失うことになるからです。
また、推測ですが、主催者にとっても痛手かもしれません。主催者は民間の専門機関であることが多く、収入源につながる可能性が考えられるからです。集中プログラムやキャンプに限らず、新型コロナ感染拡大の影響により、緘黙児者や保護者の間で受診離れが進み、民間専門機関の経営を圧迫していないか心配です。
そこで、支援者らはどういう対応を取っているのか、プログラムのウェブページを見て確認してみることにしました。その結果、バーチャル開催のプログラム、新型コロナ対策を施した上で開催するプログラム、新型コロナについては今のところ特に何も書かれていないページなどがあることが分かりました。
バーチャル開催
既にバーチャル上で開催されたプログラムがあります。ニューヨークのChild Mind Instituteが主催するBrave Buddiesや、ペンシルベニア州のSMart Centerが主催するCommuniCampがそうです。ただし、CommuniCampは6月のみの措置で、7月と8月はバーチャル開催ではありません(後述)。
◇ Brave Buddies One-Day Virtual Session
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◇ Virtual CommuniCamp – Selective Mutism Anxiety Research & Treatment Center | SMart Center
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また、ニューヨークのKurtz Psychologyが主催するMighty Mouth Kids Campや、メリーランド州のAlvord, Baker & Associates, LLCが主催するCCC Kids Campは、今後バーチャル開催を予定しています。
◇ Mighty Mouth Kids Camp | Kurtz Psychology
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◇ CCC Kids Camp | Alvord, Baker & Associates, LLC
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この他、未決定ながら、バーチャル開催の要素の導入を示唆するところもあります。
◇ Outside Voice Selective Mutism Day Camp — Pinnacle Counseling and Testing Center
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これらの中には、集中プログラムの創始者や、有名な支援者が関わっているものも多いです。
バーチャル開催には、遠方の人でも参加しやすい利点があり、その点について触れているウェブページもあります。集中プログラムやキャンプというと、わざわざ遠方から参加する親子がいるという話を聞くことがあります。中には、外国から参加する親子までいるそうです。
それにしても、バーチャル開催とは、一体どういう内容なのでしょうか。今までのプログラムと、どう違うのでしょうか。プログラムのウェブページを見ても私にははっきり分からないのですが、素直に、今まで現実世界で行っていたことをバーチャル上に移したのだろうかと見ています。例えば、CommuniCampとCCC Kids Campのページには共通して「バーチャル遊び」(virtual playdates)という言葉が出るのですが、これはおそらく緘黙児同士の遊びの時間をバーチャル上でとるというものなのでしょう。
感染症対策の実施や政府のガイドラインを守って開催
一方、感染症対策を行ったり、公のガイドラインを守ったりして、開催するところもあります。バーチャル開催ではありません。
ミシガン州のThriving Mindsが主催するConfident Kids Campや、フランドル(アメリカではありません)の緘黙団体Vereniging Selectief Mutismeが主催するZomerkampがそうです。
◇ CKC's COVID-19 Response and Plan — Thriving Minds
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◇ Zomerkamp 2020 - Selectiefmutisme.be
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先ほど「バーチャル開催」としてお話ししたCommuniCampも、7月と8月はソーシャルディスタンスを守りながら開催するそうです。
◇ SO EXCITED to announce our location for...
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今のところコロナについて言及なし
開催予定の情報を載せているものの、新型コロナへの対策については、今のところ特に言及がないところも多いです。
◇ Selective Mutism Adventure Camp Details
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◇ Selective Mutism Service | NYU Langone Health
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◇ Brave Bunch Program for Children with Selective Mutism » Center for Anxiety & Related Disorders | Boston University
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◇ Selective Mutism Intensive Treatment Camp | California | Bay Area
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◇ Confident Crew Summer 2020 - Central Health Child Department
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中止?
この他、集中プログラムやキャンプの開催情報を載せなくなったところもあります。中止ということなのでしょうか。
不明
これは、新型コロナの感染拡大を受けたバーチャル開催なのか、そうでないのか、どちらにも解釈できそうに思われた例です。
フロリダ国際大学子ども家族センターが主催するBrave Bunchという集中プログラムなのですが、プログラムの有効性を「ランダム化比較試験」という信頼性が高い方法で検証しようとしています。注目に値するのですが、果たしてどうなったのでしょうか。
◇ Selective Mutism
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結び
バーチャルでの集中プログラムやキャンプの開催は、これまでにない動きです。アメリカはもともとウェブセミナーやオンライン診療が緘黙支援の世界でも広まっており、バーチャル開催が行われる土壌があります。
最後に、Mighty Mouth Kids Campを主催するニューヨークのKurtz Psychologyは、上記リンク先ページの中で次のような前向きなことを述べています。
皮肉なことに、コロナ禍は、私たちが保護者や子どもたちをいかに支援するか再概念化する、素晴らしい機会を与えてくれました。
Ironically, this has given us an incredible opportunity to re-conceptualize how we help parents help their kids!
未曾有の状況の中で、新たな支援法が生まれれば面白いです。