HSP/HSC概念の取り扱いについて

更新日:2020年08月30日(投稿日:2020年08月30日)
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最近、場面緘黙症の情報をインターネットで調べると、HSPとかHSCという言葉を目にすることが多いです。HSPやHSCという概念は、メディアで取り上げられたり、関連本が多数出版されたりしており、流行になっているようです。

このHSPやHSCという概念、私が初めて聞いたのは10数年前のことです。ある専門職の方が、場面緘黙症Journalの旧掲示板で話題にされていたのを見たのがきっかけです。皆様の関心事をサイトに反映させたい……という思いから私は許可を頂き、関連本を、場面緘黙症Journalの書籍コーナーで紹介してみることにしました。

ですが、今では書籍コーナーからHSPやHSCの本を削除しています。

書籍コーナーに限らず、HSPやHSCについては、場面緘黙症Journalでは原則取り上げないのが現在の方針です。その理由についてお話したいと思います。

HSP/HSCとは何か


まず、HSPはHighly Sensitive Personの略です。直訳すると「非常に敏感な人」ですが、違う訳で世に知られているかもしれません。

また、HSCはHighly Sensitive Childの略です。直訳すると「非常に敏感な子ども」ですが、違う訳で世に知られているかもしれません。

HSPやHSCは、感覚処理感受性(Sensory Processing Sensitivity)を持つ人や子どものことです。これは気質の問題であり、病気や障害の類いを表す概念ではありません。提唱者は、アメリカのエレイン・アーロン博士(臨床深層心理学)です。

既存の概念として、感覚過敏 (Sensory Sensitivities) や感覚処理障害 (Sensory Processing Disorder) というものがありますが、どうもこれらとは違うようです。

ただ、私は詳しくないので、詳しい説明は省きます。詳しくはないので、場面緘黙症Journalとしてはあまり取り上げたくはありません。


HSP/HSCに、どれだけの学術的裏付けがあるのか


そもそも、学術的にどう位置づけられているものかがよく分からず、首をひねっているところです。

学術文献検索サイトでHighly Sensitive Personなどと検索しても、尺度の研究などが多少出てくるのですが、話題になっている割にはヒットする文献が少ないです。Sensory Processing Sensitivity(感覚処理感受性)なら、検索結果が少し増える程度です。

以下のリンクは感覚処理感受性に関するレビュー(学術論文の一種)なのですが、結論の中で「感覚処理感受性に関する研究はいまだ初期段階」 (research on SPS is still in its infancy) と述べられており、現時点での学術的裏付けの乏しさが示唆されています。

◇ Sensory Processing Sensitivity in the context of Environmental Sensitivity: A critical review and development of research agenda
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インターネット上では、心理学分野に詳しいと見られる人の間から、HSPやHSCは「トンデモ」だとか「疑似科学」だという批判まで一部で出ています。一方、HSPやHSCは「トンデモ」ではないものの、「いまSNSや一般書でみられるHSP情報は、学術的なHSPとは解離している」という指摘もあります。

↓ 後者の立場の方の意見。飯村周平氏(東京大学・日本学術振興会特別研究員PD)のTwitterアカウント。
◇ 「いまSNSや一般書でみられるHSP情報は……」
「新しいウィンドウで開く

どちらにしろ、こういう概念を取り扱うのは、場面緘黙症Journalとしては慎重になってしまいます。


緘黙の学術文献で、HSP/HSCの話題は見たことがない


学術文献と言えば、緘黙をテーマとした学術文献でも、HSPやHSCの話題は見たことがありません。もっとも、私は専門家ではなく、国内外の全ての学術文献を隅から隅まで把握しきれているわけではないのですが、おそらくそのような文献は存在しないのではないかとさえ推測しています。あったとしても、ごく少数でしょう。

また、査読がある学術雑誌に緘黙の論文を掲載したことがあるなど、いわばちゃんとした専門家が関わる緘黙のサイトやウェブセミナー等でも、HSPやHSCの話題はほとんど目にしたことがありません。

それならば、場面緘黙症Journalとしても、安易に取り上げたくないと考えたくなります。


結び


場面緘黙症Journalは、HSPやHSCという概念の使用に消極的です。過去に取り上げたこともないではありませんが、現在はある程度削除しています。その理由は、以下の3つです。

○ あまり詳しくないから
○ 学術的裏付けがしっかりしているかどうか、分からないから
○ 緘黙の学術文献等で、HSPやHSCが取り上げられているのを見たことがほぼないから

そもそも学術的裏付けが弱い?から(2つ目の理由)、緘黙の学術文献等でも話題になっていない(3つ目の理由)のだろうと思います。学術文献等で話題にならないので、私としてはHSPやHSCについて勉強する気が起きず、「あまり詳しくない」(1つ目の理由)となっています。

それに、HSPやHSCって、怪しげな情報もあるんですもん……(この概念を評価している方、ごめんなさい)。これも、勉強する気が起きない理由になっています。

最後に、緘黙の「セミナー商法」「自称セラピストによるビジネス」「偏った思想へと導くイベント」等が問題になっています。緘黙とHSP/HSCについて語る専門家や支援者の話にも、用心しましょう。