緘黙児者の隣に座って話しかける
更新日:2022年04月22日(投稿日:2022年04月22日)

2013年に、場面緘黙症の重要な論文が出ました。ランダム化比較試験という信頼性が高い方法で、緘黙児へのある介入法の有効性を検証したものです。緘黙児者のランダム化比較試験は当時としては先進的でした。私が知る限り、日本ではいまだに発表されていません。
この論文の筆頭著者は、ノルウェーのBeate Oerbeck氏でした。
↓ その論文です。英文。
◇ A randomized controlled trial of a home and school-based intervention for selective mutism – defocused communication and behavioural techniques
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この研究で検証された緘黙児への介入法は、行動療法と "defocused communication" というものを軸にしたものです。行動療法は日本でも「スモールステップの取り組み」などと呼ばれポピュラーですが、"defocused communication"とは何ぞや?
defocused communication は、「焦点ぼけコミュニケーション」が直訳だろうかと思います。変な訳ですが、とりあえず以下ではそう記載します。なお、ノルウェー語では defokusert kommunikasjon となります。
焦点ぼけコミュニケーションとは
論文によると、焦点ぼけコミュニケーションは、(ノルウェーでの?)数多くの緘黙児との臨床経験から開発されたものだそうです。
詳しい説明は、以下のページの説明が分かりやすいのではないかと思うので、そちらをご紹介します。ノルウェー語のページですが、Google翻訳で日本語で読めるようにしています。
↓ そのページです。ノルウェーの場面緘黙症協会ウェブサイトへのリンクです。Google翻訳で日本語に翻訳されます。
◇ 場面緘黙症の治療
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私は専門家ではないのですが、上記サイトの説明にはうなづける部分があります。
例えば、緘黙児に話をする時は、隣に座るという箇所(2番目の項目)。これは緘黙関係だけでなく、一般的にも使われるテクニックです。相手の真向かいに座ると、緊張が高まりやすいからです。私がお世話になったある臨床心理士は、カウンセリングの場面では真正面ではなく、いつも斜め向かいに座っていました。また、私が大学時代に受けたある授業では、向かい合うのは「対決の構図」だとして、先生は黒板の前で学生に向かって話すのではなく、教室内をあちこち歩き回りながら話されていました。
それから、「たとえ反応しなくても、子供に話しかけてください」という箇所(3番目の項目)は、日本の一部の緘黙当事者・経験者の主張と重なります。何も反応がなくても、緘黙児者は話しかけられるだけで大体は嬉しいものだというものです。
ただ、うなずいたり首を振ったりして答えられる「はい」「いいえ」型の質問(5番目の項目)は、注意が必要ではないかと私などは思います。非言語コミュニケーションすら取れない場合なら、まずはそこから始めるというのは分かります。ですが、ある程度の段階に達したら、適切な方法で、発話を促すことも考えるべきではないかと思います。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
↓ 場面緘黙症Journalの過去の記事より。
◇ 緘黙児が口頭で答えやすい質問(症状が軽い場合)
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現在でもノルウェーでは行われている
この焦点ぼけコミュニケーションは、現在でもノルウェーでは行われているらしいです。最近発表された以下の文献でも、紹介されています。
↓ Psykologi i kommunenというノルウェーの心理学サイトへのリンク。Google翻訳で日本語に訳しています。ボリュームたっぷりの記事です!2022年公開記事。
◇ Selektiv mutisme hos barn og unge - hvordan arter det seg i barnehage og skole og hva er god hjelp?
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