「場面緘黙犬」は存在するのか
更新日:2022年07月25日(投稿日:2022年07月25日)

不安症であれば、犬にもある
場面緘黙症の犬もいるという話を読んだ覚えがあります。もう10年以上前でしょうか、海外の緘黙専門のウェブサイトにそう書いてあるのを読んだ覚えがあるのです。
ですが、その時以外で、犬の緘黙に関する話は聞いたことがありません。学術論文でも読んだことがありません。ガセネタか、私の記憶違いかもしれません。
もっとも、不安症は犬にも表われることがあります。分離不安症、雷恐怖症、音に対する恐怖症、人や物に対する恐怖症、全般性不安症などがあるそうです(倉持, 2018)。このうち音については、「ガンシャイ」という言葉もあります。銃(ガン)の音を怖がる(シャイ)猟犬のことですが、銃声に限らず音を怖がる犬のことをこう呼ぶ場合もあるようです。
これには環境要因の関わりが指摘されています(倉持, 2018)。一方、遺伝的要因がどの程度関与しているかは、専門家ではない私には分かりません。不安症に結びつくほど強い不安を生まれつき感じやすい犬はいるのでしょうか、いないのでしょうか。
犬は言葉を話さない
ただ、犬は人間と違って言葉を話せません。ですので、特定場面で口を利けない緘黙は、犬には成立しないのではないかと思います。強いて言えば、特定場面で吠えることができない犬なら、いるかどうかといったところでしょう。吠えない犬も心配ですが、口が利けない人間に比べれば、どれほど問題視されるのでしょう。このあたりは、犬を飼ったことがない私には分かりません。
そもそも、人間とは違って、犬は飼い主の手を離れて社会的に活動する場面が注目されることは少なさそうです。例えば、学校に通う犬はいません。このため、緘黙のような症状を示す犬が仮にいたとしても、そういう場面が気づかれ、問題視されることは多くはないような気がします。
結局のところ、緘黙は、言葉を話すことができ、学校など家族から離れた活動が重要視される人間だからこそ、問題視されるのではないかと今のところは思います。人間と犬の不安症の比較研究をしてみると、人間の不安症の特徴が浮き彫りになるかもしれず、面白そうです。