緘黙を発達障害とする一部報道
更新日:2022年10月20日(投稿日:2022年10月20日)

緘黙は発達障害なのか
日本の一部メディアが、場面緘黙症は発達障害であると説明しているのを以前から時々見かけます。
私は専門家ではないのですが、なぜそのような説明をするのかと首をひねっています。Twitterでも、疑問を呈する意見がこれまで何件も投稿されています(Twitter上の意見が全て正しいと言うつもりもありませんが)。
発達障害は、アメリカ精神医学会のDSM-5というマニュアルでは「神経発達障害」として、また、世界保健機関の分類ICD-10では「心理的発達の障害」として定義されているのですが、そこには緘黙は含まれていません。
ただ、日本の発達障害者支援法では、発達障害に緘黙を含めています。この法は支援の谷間を生まないという趣旨ゆえか、「小児<児童>期の社交不安障害」までも発達障害に含めています。
発達障害者支援法で定める発達障害は、おそらく一般的に理解されている発達障害とは違う、特殊なものではないかなと私は考えています。これを根拠に、緘黙を発達障害とする説明には私は違和感を持ちます。
また、現在のところ緘黙は不安が関係している、不安症(不安障害)というのが一般的な理解です。緘黙を発達障害とすると、緘黙の理解を遠ざける懸念が考えられ、そのことからも、緘黙を発達障害とする立場には違和感を持ちます。
なぜ緘黙を発達障害と説明するのか
ですが、それでも緘黙を発達障害と説明するのには、何らかの理由があるはずです。私になりにその理由を考えてみました。
1 教育や福祉の立場から
緘黙は発達障害者支援法の対象である事実は、教育や福祉の立場からすると重要そうです。緘黙を発達障害とする一部メディアは、教育や福祉の立場から書いたのかもしれません。
2 理解や支援が広がりそう
発達障害はある程度知られるようになってきています。緘黙のその一つだとすることで、理解や支援が広がるようにしようという狙いからかもしれません。いわば、発達障害にあやかろうというわけです。
また、緘黙は発達障害者支援法の対象であることを知らない人も多いので、同法のもと支援を受けられることを周知する狙いもあるかもしれません。
3 緘黙を発達障害者支援法の対象から外させない
緘黙が、発達障害者支援法の対象から外れるのではないかと懸念する声が、緘黙関係者の間で広まっています。メディアを通じて緘黙は発達障害と繰り返すことで、緘黙は発達障害であることを既成事実化しようという政治的思惑からかもしれません。
もっとも、本当にこのような理由からかは分かりません。