安心できる環境づくりだけでは…
更新日:2023年01月29日(投稿日:2023年01月29日)

「話せるようになる見込みは低く」
ある場面緘黙症の研究概要に、こんなことが書かれてあるのを見つけました。
安心できる環境づくりや発話に代わる表現手段の保障といった、いわゆる合理的配慮のみでは話せるようになる見込みは低く……
これは、信州大学の奥村真衣子助教による科研費研究「場面緘黙の専門資源へのアクセスが難しい地域における遠隔支援の検討」の研究概要の一部です。
↓ 国立情報学研究所のサービスKAKENへのリンクです。
◇ 場面緘黙の専門資源へのアクセスが難しい地域における遠隔支援の検討
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環境づくりは必要だが、それだけでは不十分
私は専門家ではありませんが、全くその通りだと思います。
SNS上で、緘黙児者への支援において、安心できる環境づくりを非常に重視している人を見かけたことが複数回あります。まるで、そうした環境を整えれば、緘黙児者は話し出すとも解釈できるような意見です。しかも、そうした意見は多数シェアされたりします。
おそらくそれは、安心できる環境づくりに配慮されないまま、発話を求められた経験のある人が多いからではないかと思います。また、緘黙児者に適度な頑張りを促すよりも、環境を整えることを強調する意見の方が、耳障りがよいからだろうとも思います。
確かに、安心できる環境づくりは重要です。しかし、そうした環境をつくりさえすれば緘黙児者が話し出すかというと、そういうことは起こりにくいのではないかと思います。米国の場面緘黙症センターも、緘黙児の不安を和らげても、それだけでは大抵の場合、非言語コミュニケーションのステージに留まってしまい、言語コミュニケーションのステージに至るには不十分であるとしています。
↓ 詳しくはこちら。このブログの下記の記事へのリンクです。
◇ 「不安を和らげるだけでは、発話には不十分」
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また、特定の場面(人、場所、活動)で話さない経験を積み重ねると、その場面ではますます話せなくなってしまいます。英語圏では、こうした効果をcontamination(コンタミネーション)と呼ぶこともあります。そうした場面では、安心できる環境づくりをするだけでは、発話には至りにくいのではないかと思います。
↓ contamination(コンタミネーション)について。このブログの下記の記事へのリンクです。
◇ contamination(コンタミネーション)効果とは何か
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結局のところ、安心できる環境づくりは必要ですが、それだけでは十分でなく、その上でスモールステップの取り組みを行うなどしなければ、発話には至りにくいのではないかと思います。