医師国家試験出題基準と緘黙

更新日:2023年04月06日(投稿日:2023年04月06日)
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令和6年からの医師国家試験出題基準


令和6年版医師国家試験出題基準が公表されています。前回は平成30年版ですので、6年ぶりの改訂です。

医師国家試験出題基準は、「医師国家試験の『妥当な範囲』と『適切なレベル』とを項目によって整理したもので、試験委員が出題に際して準拠する基準」です。基本的考え方としては、「全体を通じて、臨床実習での学習成果を中心とした臨床研修開始前の到達度を確認することに主眼を置く」ものとされます。

↓ 厚労省ウェブサイトへのリンクです。
◇ 令和6年版医師国家試験出題基準について
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この令和6年版では、「場面緘黙」はレベル分類cとされています。このレベル分類は、高い順にa~cまで3段階あります。

↓ 情報源。88ページ(6ページ目)をご覧下さい。PDF。2.02 MB。厚労省ウェブサイトへのリンクです。
◇ 医学各論
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レベル分類cは、以下のような取り扱いです。

病態・疾患の概要:
臨床研修で経験すべき病態・疾患の範囲を超えるもの

診療のレベル(初療):
疾患概念を説明でき、鑑別疾患として想起できる

出題内容:
病名想起

↓ 情報源。2ページをご覧下さい。PDF。817KB。厚労省ウェブサイトへのリンクです。
◇ 令和6年版医師国家試験出題基準・ブループリントの趣旨
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つまり、「場面緘黙」は医師国家試験の出題範囲に入るということ。そして、出題される問題は、病名を想起できるかどうか問われるほどのレベルということです。

ということは、深い知識まで問われないようです。また、最低のcランクなので、5~10年に1度ぐらいの低頻度での出題になるのではないかと私などは想像します。


出題範囲から削除するべきという声もあった


厚労省資料から読み取れるように、今後の医師国家試験は出題範囲を絞る方針です。そんな中、緘黙は出題範囲に残ったかたちになります。

なお、令和2年度の厚生労働科学研究「ICTを活用した卒前・卒後のシームレスな医学教育の支援方策の策定のための研究」の分担研究報告書では、6人のワーキンググループメンバーのうち4人が、緘黙は出題範囲から削除するのが妥当としていました。残る2人のメンバーは、レベル分類c相当が妥当としていました。

↓ その研究。PDF。5.09MB。厚生労働科学研究成果データベースへのリンクです。
◇ 門田守人・伴信太郎. (2021). 医師国家試験出題基準の改定に向けた提言のための研究. In 門田守人 (Eds.), . ICTを活用した卒前・卒後のシームレスな医学教育の支援方策の策定のための研究 (pp. V-1-V-4).
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出題基準の検討


それにしても、資料を見ていると、国は出題基準を綿密に検討していたことが分かります(当たり前ですけれども)。私としては、医師国家試験に緘黙が出題されると嬉しい、なぜなら、そうすると医師志望者が緘黙について学ぼうとするだろうから、そして緘黙を理解していない医師が将来減るかもしれないからと単純に考えてしまいます。

ですが、医師志望者が学ぶべき事柄は多岐にわたります。その一方で、学べる量にも限りがあります。どの事柄をどの程度まで深く問うべきかは綿密に検討され、公正に出題基準が決定されなければならないと思います。

※ 医師国家試験で緘黙が出題された例として、私が確認できた範囲では、2020年(令和2年)と2012年(平成24年)があります。