DSM-5-TRでは、診断名は「場面緘黙」か
更新日:2023年07月02日(投稿日:2023年07月02日)

日本語訳が出る
米国精神医学会の診断基準DSM(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)。その第5版の改訂版DSM-5-TRの日本語訳が、2023年6月に発行されました。
この改訂により、診断名が従来の「選択性緘黙」から「場面緘黙」に変わったかもしれません。
DSM-5-TR日本語訳に、そう書かれてあります……と言いたいところですが、実物を私は読むことができません(すみません)。
ですが、出版社である医学書院のウェブサイトで、ごく一部の内容を確認できます。下記ページ「立ち読み」で読むことができる目次に、「場面緘黙」と記されています(22ページ)。また、同ウェブサイトで読むことができる「序文」にも、「選択性緘黙(DSM-5-TRでは場面緘黙)」という記述があります。
↓ そのページ。医学書院ウェブサイトへのリンクです。
◇ DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル
(新しいウィンドウで開く)
Twitterにも、DSM-5-TRの診断名が場面緘黙に変わったという情報が複数出ているのですが、出典が明らかな情報と、そうでない情報があります。
DSMは日本でも広く参照されていて、影響は大きい
DSMは、米国精神医学会の診断基準でありながら、日本でも広く参照されています。それだけに、もし本当にDSM-5-TRの診断名が場面緘黙に変わったのだとしたら、影響は大きいです。これからは「選択性緘黙」という呼称は使われなくなっていくかもしれません。
ただし、世界保健機関の国際疾病分類ICD(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)では、事情が異なるのではないかと思います。日本語訳がある最新版(ICD-10)は、私が知る限り今でも「場面緘黙」ではありません(ICD-11の日本語訳、まだ出てませんよね?)。
緘黙の診断名をめぐっては、「選択性緘黙」よりも「場面緘黙」の方が適切という意見が以前より出ていました。また、「日本場面緘黙研究会」など、「場面緘黙」の呼称は広く使われてきました。今回の動きはそれを受けてのものかどうかは、私の知るところではありません。