この翻訳書は?

更新日:2024年03月28日(投稿日:2024年03月28日)
アイキャッチ画像。

翻訳書『VOCAL』


場面緘黙症の新しい翻訳書が3月6日に発売されたのですが……どういう翻訳書なのかよく分からず、戸惑っています。

↓ その本。Amazon.co.jpへのリンクです。今回、アソシエイトリンクは張っていません。
◇ VOCAL: 場面緘黙症を実証に基づいた戦略で3時間以内に克服、子供を発話へと導こう!
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上記ページでは、翻訳者が明らかにされていません。サンプルを読んでも分かりません。買って内容を確認していないからかも知れませんが……。なお、著者のFacebookやInstagramアカウントによると、中国語やスペイン語、ポルトガル語、ドイツ語の翻訳書も出版されているそうです。さらに、韓国語の翻訳書の出版も予定されています。

また、出版社名がISBN-13の番号になっています。こんな出版社があるはずがありません。アマゾンジャパンは出版社を通さずに紙の本を出版するサービスを行っており、もしかしたらそれを通じて出版されたものだろうかと思います。なお、Amazon.co.jp以外のインターネット書店でも本書を検索したのですが、見つかりませんでした。


原書について


なお、原書については、私は以前から存在を認識しています。

書名:VOCAL: How to help your child be vocal and conquer selective mutism in less than 3 hours with a proven strategy!
著者:Poling Bork
発売日:2022年10月7日
出版社:ISBN-13の番号と同じ(?)

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※ リンクは、アメリカのAmazon.comの該当ページへのものです。アソシエイトリンクではありません。

翻訳書の情報でも確認できる通り、著者は緘黙の経験者です。また、著者の子どもも緘黙を経験しました。そして、緘黙の研究や治療、支援に従事する専門家でもあります。

↓ 著者が発表した緘黙の論文の1つ。
◇ Bork P, and Bennett S. (2020). Video self-modeling, fading, and reinforcement: An effective treatment package for children with selective mutism. Clinical Child Psychology and Psychiatry ;25(2), 446-455.
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さらに著者は、カナダの緘黙団体 Selective Mutism Foundation の創設者でもあります。Selective Mutism Foundation というと、同名の緘黙団体がかつてアメリカにあったのですが、その団体はどうも解散したらしいです。現在 Selective Mutism Foundation というと、このカナダの団体のことを指します。

↓ そのカナダの緘黙団体のウェブサイトへのリンクです。
◇ Selective Mutism Foundation
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本書で活用されているというビデオ・セルフ・モデリング、刺激フェイディング、強化については、これまでも緘黙の治療で活用されてきたもので、特に後者2つについては最もオーソドックスな技法と言ってよいのではないかと思います。ただ、これらの組み合わせ方にオリジナルティがあるのだろうと思います。


改めて翻訳書について


こういう言い方は適切かどうか分かりませんが、著者はこのようにしっかりしたバックグラウンドを持った方というのが私の認識です(詳しくは存じ上げませんが)。内容も、そんなに突飛なことが書かれていそうには思えません。既に発表された論文の内容と重なるものなのだろうと推測します。

ただ、お話しした通り、本書の翻訳者がはっきりしません。また、実績のある出版社から出た本ではなく、編集者など第三者のチェックが入ったかも分かりません。そして、本書の宣伝文句が「緘黙を(中略)3時間以内で克服」などと、話が上手すぎるようにも思えます。なので、この本は大丈夫なのか、怪しい情報商材とは違うのかなどと戸惑ってしまう部分があります。

このうち出版については、実績のある出版社以外から緘黙の本が出ることは、英語圏では最近よく目にします。そうした本の中には、評価されているものもあります。ちゃんと出版社から出ていないから信用できないと決めつけるのもよくないと思いますが、本書がどうなのかは、まだ読んでいない私には判断できません。買って読めばよいのでしょうが、お金が……。