洋書・緘黙児の新学期の不安感の緩和

2013年02月26日(火曜日)

場面緘黙症の子の支援では、おそらく世界で最も有名ではないかと思われる Elisa Shipon-Blum(エリザ・シポンブラム)氏の著書を1冊読みましたので、その感想のようなものを書きたいと思います。同氏は、場面緘黙症の研究治療センターを運営しているほか、米国では最大手の緘黙支援団体の創設者でもあります。

同氏は多くの著書を出しているのですが、今回私が取り上げる本は、2011年に改訂されたEasing School Jitters for the Selectively Mute Child(第3版)です。本の題名を訳すと、『場面緘黙症児のための学校での不安感の緩和』といったところでしょうか?

対象読者は、緘黙の子を持つ親や教育者、セラピストです。平易な英文で書かれており、分量はペーパーバック版で42ページと少なく、すぐに読み切ることができます。この分量であの価格は、類書に比べるといささか高いような気もしないまでもありませんが、発行元もぎりぎりの価格設定だったのでしょう。

書名の通り、学校での不安感の緩和がテーマですが、特に、新学期(back to school)での不安感の緩和に力点が置かれています。ですが、このテーマについて書かれた部分は、分量としては実はさほど多くはありません。42ページの本書のうち、全体の4割ほどです。

後半は、"Ask The Doc" と題して、緘黙に関してよくある質問とその回答が23例、示されています。これまた全体の4割近くを占める内容です。"Ask The Doc" というと、Shipon-Blum 博士が創設した米国の緘黙支援団体 Selective Mutism Group ウェブサイトに "Ask The Doc Archives" というコンテンツがあり、現在日本のかんもくネットがこれを「SMG~CAN(米国)Q&A」としてその邦訳を掲載しています。両者を少し比較したのですが、両者はそれぞれ違うもののようです(ひょっとしたら、数例ぐらい共通したQ&Aが混じっている可能性もなきにしもあらずですが、そこまで厳密に調べてないので分かりません)。また、緘黙でQ&Aというと、『場面緘黙Q&A』が思い浮かびますが、『場面緘黙Q&A』の質問項目はかなり整理されているのに対し、本書の "Ask The Doc" は、実際にあった緘黙に関する具体的な相談と回答をそのまま掲載したのではと思われるような生々しい質問ばかりです。例えて言えば、場面緘黙症Journal 掲示板に寄せられた相談と回答をそのまま掲載したような感じです。

不安の強い緘黙の子にとって、新学期をどう迎えるかは確かに一つの問題だろうと思います。実際、海外では新学期に備えたワークショップが行われているのを見たこともあります。この問題を取り上げ、緘黙児の心理と対策を具体的に提示した本書は、面白い試みをしたものだと思います。ですが、本の分量やページ配分を見ると、このテーマのみで1冊の本にするのは難しかったのだろうと変な推測をしてしまいます。それにしても、こうした、緘黙児の新学期の不安感の緩和というかなり専門的な問題を扱った本が出たのも、既に米国では緘黙の本が何冊か出ていて、しかもそれが一定の売り上げがあったからではないかと思います。

本書は、ペーパーバック版のほかに kindle という電子書籍版も出ています。私事ですが、私が最初に買った電子書籍が本書です。Amazon.co.jp で決済を済ませるや否や読むことができたので(ペーパーバック版なら、手元に届くまでに数日~数週間かかります)、便利な世の中になったものだと感心したものです。kindle 版の書籍は、Amazon 社から発売されている Kindle Paperwhite 等の専用リーダーや、スマートフォンやタブレット端末向けの kindle アプリ(無料)で読むことができます。