緘黙支援に役立つアプリは?(1)
更新日:2018年02月21日(投稿日:2013年11月19日)

場面緘黙症Journal をスマートフォンでご覧になる方が多くなった今日、緘黙児・者支援に役立つアプリを「関連書籍」コーナーでご紹介したいと考えています。ですが、そうしたアプリの話は私は日本では聞いたことがありません。
ですが、英語圏の国の情報を調べると、緘黙のために開発されたアプリや、緘黙児に役立ちそうなアプリが推薦されたりするのを目にしたことがあります。そこで、そうした英語圏のアプリを研究し、日本でも使えそうなものはないか考えてみたいと思います。
緘黙児支援のために開発された iPadアプリ
最初に見るのは、まさに緘黙児支援のために開発された Lift-Off! という iPad アプリのゲームです。iPad に向かって声を出せば、熱気球が離昇して(lift-off)、空を飛ぶというのがゲームの基本的な内容です。家族の前以外の場面で、このゲームをします。ゲームを通じて楽しみながら、緘黙を克服できるというわけです(こういうゲームを「シリアスゲーム」と呼ぶそうです)。
この種の発話を促す道具は、使い方に気をつけたいものです。発話に妙なプレッシャーを与えず、スモールステップで、できれば不安階層表(どきどき不安チェックシート、会話力の階段)を作って、発話に取り組んでいきたいものです。
このゲームは米国のセントラルフロリダ大学の関連機関が開発したもので、このプロトタイプのアプリが、2013年1月にフロリダ州オーランドで開かれた第3回シリアスゲーム・バーチャル環境年次展示会において Best Show of Academic に選ばれました。なお、まだ商品化はされていません。
※ 以下のリンクは、主にパソコンでの閲覧向けです。
↓ セントラルフロリダ大学 RETRO Laboratory のページへのリンク。ページ下の方にはゲーム画面も公開されています。
Lift-off! 紹介ページ
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特に緘黙児のために開発されたアプリ
Plant Love Grow という出版業者が Lola's words disappeared という本とアクティビティブックを出しているのですが(日本の Amazon では購入不可)、これは特に場面緘黙症の子を対象に作られたそうです。このアプリ版が近々発売されます。
アプリの内容は不明ですが、公式サイトを見る限り、本やアクティビティブックとはそう変わらなさそうです。本やアクティビティブックは、どうも認知行動療法のもののようです。幼児期を専門とする心理学者とのコラボレーションで制作されたものだそうです。
Lola's words disappeared 紹介ページ
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Free Candle
iPhone、iPad 上で、バーチャルな "ろうそく"に火をつけることができるアプリです。マイクロフォンに息を吹きかけると、ろうそくの火が消えます。同種のアプリは Android 端末用にも出ています。
これは場面緘黙症と社交不安障害を合併したある17歳の少女への行動療法の初期段階に使用され、学術発表されたことがあります。最初は口を開けて、次いで息を吹きかけ、その後、発話へと細かい段階を踏んでゆきます。アプリを活用することにより、ゲーム感覚で息を出すことができます。これまた中央フロリダ大学の研究グループです(Bunnell and Beidel, 2013)。
iTunes Store、Free Candle 紹介ページ
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SPL Meter
上述の学術発表された行動療法で用いられた、もうひとつのアプリです。音量をデシベル単位で測ることのできる騒音計です。緘黙児の発話行動の形成を徐々に促す中で、活用されました (Bunnell and Beidel, 2013) 。
iTunes Store、SPL Meter 紹介ページ
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Google Play、SPL Meter 紹介ページ
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QuickVoice
ボイスレコーダーアプリです。緘黙児に対する行動療法の一環で用いられ、学位論文で発表されました。予め声を録音しておき、教室で必要な場面で Bluetooth スピーカーを通じて再生することにより、間接的に言語的交流を行うという使い方でした(Breda, 2013)。iPhone、iPod、iPad 用製品。同じ名前のアプリが Google Play に出ていますが、よく分かりません。
iTunes Store、QuickVoice 紹介ページ
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次回に続きます。
[続きの記事]
◇ 緘黙支援に役立つアプリは?(2)
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[文献]
◇ Breda, L.I. (2013). The Use of Cognitive Behavior Therapy Combined with Computer Technology in the Treatment of Selective Mutism: A Case Study.
Retrieve November 18, 2013, from
http://www.callutheran.edu/schools/cas/programs/psychology/teaching_learning/documents/HTSelectiveMutism-AiliBreda.pdf
◇ Bunnell, B.E and Beidel, D.C. (2013). Incorporating Technology Into the Treatment of a 17-Year-Old Female With Selective Mutism. Clinical Case Studies, 12(4), 291-306.
Retrieve November 18, 2013, from
http://www.researchgate.net/publication/235734728_Incorporating_Technology_Into_the_Treatment_of_a_17-Year-Old_Female_With_Selective_Mutism/file/72e7e5162dc2bbd20b.pdf